方舟の主と◯◯たち   作:山田澆季溷濁

1 / 30
Wちゃんガチャ見事に外れました。対戦ありがとうございました。


序章 積む者
まだ休んじゃだめですよ?


「まだ休んじゃだめですよ?」

 

 本日の業務ノルマを終え、無駄に長い連絡橋を歩いていると、背後から声が聞こえた。無慈悲なまでの残業宣告である。

 振り返ると目の前にはウサギの耳。私の胸のあたりまでしかない背丈の少女は、私が所属する組織のトップである。

 年端もいかないというのに本当に立派な子だ。

 

「アーミヤか……。今日の仕事は処理したはずだが?」

「あれ? 新しいお仕事の話クルースさんからきいていませんか?」

「初耳だな。教えてくれないか?」

「はい……。ドクターも執務に慣れてきた頃ですので、空いた時間にオペレーターの皆さんのメンタルケアをしていただきたいのですが……。その……。ロドスの中には私よりもドクターのことを信頼している方もいますので……」

「なるほど。断る理由が無いな。承諾しよう」

「本当ですか!? ありがとうございますドクター!」

 

 てっきりバニラが飼育しているオリジムシの世話とかだと思っていたが、楽そうで安心した。

 コミュニケーションを取るだけで残業代が発生するとは最高じゃないか! 

 

「ちなみに残業代は出ませんからね?」

「えっ……」

 

 長い廊下を2人で歩いていると、前から来たオペレーター達が道を空ける。

 一般職員の驚いている様子を見る限り、アーミヤと私は歩いているだけで周囲に畏怖感を与えてしまうようだ。

 中には、私に対して恐怖の念を抱いているような目をしている人もいる。

 過去の私はどれだけヤバい人物だったんだ? 

 

「昔のドクターは少し怖い人でしたからね……。ケルシー先生もそれでよく頭を悩ませていたんですよ?」

「それほどだったのか……。付き合いにくい人だと思われていたんだな」

「皆さんは今のドクターの方が好きって言ってますよ?」

「それは嬉しいことだ……」

 

 ナチュラルに思考を読まれた気がするが、もうすぐ目的地に着くから触れないでおこう。

 

「思考を読むアーツがあれば便利だと思いませんか? ドクター」

 

 アーミヤ、今思考を読んだだろ。怖いからやめてくれないか。

 

「読んでませんよ。ところで、目的地ってどこなんですか?」

 

 いや、思考盗聴しt「女の勘ですよ? ドクター」

 

 おんなのここわい

 

 そんなこんなでふざけあっていると、前方から凄い速さで突っ込んでくる少女が1人。

 仕事終わりにコーヒーを飲もうと約束していたオペレーターである。

 

「こんにちはドクター! 待ちきれなくて迎えに来ちゃった!」

 

 彼女の名前はアンジェリーナ。鉱石病に蝕まれながらも周囲に弱みを見せない強くて健気な少女だ。

 そして、最近スキンシップが多くて困っている。

 困っているだけで嫌いだとは言っていない。むしろ好き。

 

「アーミヤちゃんも一緒にいるの? 荷物あったら全部ちょーだいね! まとめて浮かして運ぶから!」

「アンジェリーナさん……。その、通路でアーツを使うのは危険なので……」

 

 彼女ほどのトランスポーターならミスなどありえないが、アーミヤも大変だなと思った。

 

「大丈夫大丈夫! いざとなったらドクターに助けてもらうから! こんなふうに!」ムギュ! 

「ア、アンジェリーナさん!?」

 

 突如として抱き着かれた私は、ただ彼女の温もりと柔らかな匂いを受け止めることしかできなかった。

 申し訳ありません。ミッドナイトさん私にはあなたの教えの通りに抱き返すことができませんでした。

 

「アーミヤちゃんも抱き着いてみる? ドクターいい匂いするよ!」

「ア、アンジェリーナさん、周りに人がいるのでそのようなことはお控えになって……うぅ……」

 

 そのアーミヤの発言にアンジェリーナが敵を見つけたWのように笑う

 

「へぇ~。周りに人がいなければいいんだ~。これからドクターは私の部屋ティータイムだもんね! もちろん2人っきりで!」

「ッ!? ドクター? そのような話聞いていませんよ??」

 

 修羅場! 本能が理性に訴えている! ここにとどまるのはマズイ! 

 人が集まりだした頃に私が出した結論は

 

「まぁ、騒がしくするのもいけないからとりあえずアンジェリーナの部屋に集まらないか? ティータイムの埋め合わせは今度一緒に考えよう。アーミヤも黙っていてすまなかった。とにかくクッキーでも食べながらゆっくりお話ししようじゃないか。それで問題ないか?」

 

 自分でも驚くほど上手い切り抜け方だ。ミッドナイトのモテ男講座を受講しておいてよかったよ。もしかして才能があるのではないだろうか? 

 

「……うん! ドクターと一緒ならどこでもいいよ! でも埋め合わせは覚悟してね!」

「……まぁ、私こそ感情的になってしまって申し訳ございません……。あと、クッキーにはジャムをつけてくださいね?」

 

 完璧だ。危機等級18を突破したに等しいレベルの達成感が体を突き抜ける。

 周囲に群がっていた人たちも感嘆の声を漏らしていた。

 特にバイソンからは人一倍熱い視線を送られた。

 

 

 その後、アンジェリーナの自室にて、アーミヤが強がってブラックコーヒーを飲んで凄い顔をしているのを2人で笑った。

 それから私の私生活の話になると、2人は意気投合し、「内緒の話をするから」といってアンジェリーナのアーツで部屋の外まで吹っ飛ばされてしまった。

 何の話か気になるので、聴力が優れているスカジやヴァーミルあたりのサバイバルできる組に問いかけてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめ~ん、ドクタ~。アーミヤちゃんからのお願い伝えるの忘れて寝ちゃってた~。ゆるして~?」

 

 クルースの謝罪を聞いたのは、翌日の執務終了後だった。

 

「……クルース。オリジムシの飼育や世話に興味はないか?」

 

「…………ふぇ??」

 

 

 その後、バニラがペット友達が増えたと上機嫌で歩く姿が目撃された。

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字・脱字があったら教えてください。
次回から行動予備隊などのロドス組とのコミュニケーションを開始していく予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。