方舟の主と◯◯たち   作:山田澆季溷濁

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二次創作ということを前提に、軽い気持ちで閲覧のほどよろしくお願いいたします。


限りなく透明に近い漆黒(ロサ)

『魚は頭から腐る』

 組織は上層部から腐敗していくという例え。

 ウルサスのことわざ。

 

 

【ロドス 事務スペース】

 

 本日は祝祭日のため、多くのオペレーター達が昼まで寝ることだろう。

 しかし、ロドス本艦は絶えず前方へ進む。

 自分が働かなくてもよいという反面、逆に働かなければならない人もいるということを忘れてはならない。

 

『お嬢さん? これ全部片づけといてくんね?』

「あっ、はい。分かりました……」

 

 

 

『ロサさーん。来週の担当変わってくれない? ちょっと用事できてさ~』

「えぇ。問題ありませんが……」

 

 

 

「あの、コレ置いておきますので……」

『…………』

「……大丈夫ですか?」

『…………聞こえてるって』

「あっ、失礼いたしました……」

 

 

 

「(疲れた……。あれ?)」

 

『チッ。貴族だったからって調子乗りやがって! どうせ俺たちのこと見下してんだろが!』

『おいおい、やめとけって。ⅭEOに聞かれたら大目玉じゃすまねぇぞ』

 

「(…………)」

 

 

【ロドス 第3会議室】

 

 ロドスには多くの人物が搭乗しているため、それに伴い施設設備も随時増設されていく。

 突発的に作ったはいいが、肝心の使用回数が1回だけという場所も少なくない。

 

 特にこの第3会議室はその象徴ともいえる存在だった。

 しかし、彼女からしてみれば、昼食を食べるには非常に都合の良い場所であった。

 

「ふぅ……。やはりここは落ち着きますわ……」

 

 彼女は小さな弁当箱と水筒を片手間に、日付が昨日の新聞を読むのであった。

 

「あら、運勢が五つ星ですって! なにか良いことが起きるに違いありませんわ!」

 

 お気に入りのクマのキーホルダーに話しかける。

 もちろん返事が帰って来るはずもなく、無駄に広く作られた会議室に声が反響する。

 

「はぁ……」

 

 そうして彼女は今日も一人で宿舎に戻るのであった。

 

 

 道中、見知った顔の人物を見つけると、彼女は勇気を出して声をかけようとした。

 

「ねぇ、イースチナ……」

 

「まったく、2分の遅刻です。なぜあなた達はそこまで時間をルーズにできるのですか?」

「グムは早く行こうって言ったんだよ? でもズィマーちゃんがまだ大丈夫だって聞かなかったんだよ?」

「今日って皆休みなンだろ? こんな早くに並ぶ必要ねぇって……」

「違いますよズィマー君。休みだからこそ並ぶのです。スイーツは待ってくれませんので」

「まぁ、イースチナが言うならそれでいいけど。なぁ、ロサ?」

 

「えっ、えぇ。そうね。その通りだと思うわ!」

 

 会話に入るタイミングを見失い、直立していたところで話を振られる。

 あまりにも唐突な出来事であったため、ロサも対応が遅れてしまったらしい。

 

「はン。なんも聞いてなかった癖によく言うぜ」

「そんなことないわ……」

「おい! 早く行こうぜ。その『すいーつ』って奴をシメによ!」

 

 グループの首魁であるズィマーの号令を合図に、ウルサス学生自治団は歩を進めて行く。

 別れ際、グムとイースチナは申し訳なさそうな表情でお辞儀をしたため、ロサも3人をお辞儀で見送った。

 

 残された彼女に訪れたのは、たった一つの虚無感であった。

 

 

 

【ロドス 宿舎】

 

「ロサ、ただいま戻りました」

 

 クマのぬいぐるみに話しかける。

 

「あなたはいつになったら喋るようになるのでしょうね……」

 

 しかし、いきなりぬいぐるみが喋ったら、それはそれで気味が悪いので、出来れば喋らないでいてほしいと思うのであった。

 

 

「ズィマー、スイーツの事を人だと思ってましたわね……」

 

「あっ、頼まれた仕事を終わらせないと……」

(そんなの必要ねぇよ!)

「…………え?」

(そもそも、それってアンタの仕事じゃねぇだろが! 無理してまでお願い聞く必要なんてねぇんだよ!)

「ですが、もう受け取ってしまったので……」

(そんなの撃ち抜け! 破れ! 燃やしちまえ! 言っておくがな、アンタにしか出来ない仕事なんてこの世にねぇんだよ!)

 

 

「う、うああああああ!!」

 

 ロサは机に身を任せ、うつ伏せの状態での睡眠から覚醒した。

 隠しきれない疲労感が悪夢を見せたのだろうか、とにかく彼女にとっては最悪の目覚めであった。

 

「はぁ、はぁ、気持ちが悪いわ……」

 

 彼女は気を紛らわす意味を込めて水を飲み干す。

 叩けば折れてしまいそうな色白の腕には、かつての自傷行為の痕が生々しく残っていた。

 

 

 

「あの、これ、昨日渡された物です」

『あっ、サンキュー。めんどかったやつだから助かったよ』

 

 

『来週の当番の話なんだけどさ~? 今週も変わってくんない?』

「えっ、今週もですか……?」

『えっ? 無理なの? ロサって仕事終わるの早いんでしょ?』

「まぁ、それなりにはですが……」

『だったら今週も大丈夫だよね。よろしくね?』

「…………」

 

 

『…………なぁ。あの荷物どこやった』

「それなら確かに昨日ここに置いておきましたが……」

『は? どこにもねぇだろが。おい。聞いてんのかよ!!』

「ひぃっ! ご、ごめんなさい!」

『ほんと使えねえな……』

 

 クスクス……クスクス……

 

「(…………)」

 

 

 

【ロドス 宿舎】

 

「ロサ、ただいま戻りました……」

 

 誰もいないロサの部屋。当然「おかえり」の声が聞こえるはずもない。

 

「はぁ、お弁当洗わなくちゃ……」

 

(オマエばっかり不公平だな? ここに来た時はワクワクだったっていうのに)

「あなたは何者なの……?」

(痛いだろ? 辛いだろ? 苦しいだろ? なのにアイツらは今日も酒飲んでベッドでお楽しみだぜ?)

「彼らの生活風俗なんて、わたしには関係ないわ……」

(はぁ~? いい加減自覚しろよ? この世界じゃアンタに幸せになる権利なんてねぇんだよ!)

「!! なんて酷いことを!」

 

(酷いだと? なら学園でやったことを思い出せ!!)

 

 

 

「ああああああああああ!!!」

 

「あ! あ! あぁ、あぁ、はぁ……はぁ……」

 

 その日、彼女は初めて仕事を休んだ。

 

 

 

『ねぇ~。昨日なんで休んだの~? アンタのおかげで大変だったんだけど?』

「あの、体調不良と記載しましたが……」

『は? そんなの知ってんだけど!! アンタのせいで仕事が多かったんだよ!! 謝れよ!!」

「ひっ……。申し訳ありませんでした……」

 

 

 

「あれ、わたしのデスクは……?」

『あぁ、それなら倉庫に移動させといたよ。宿舎に近いから便利だろ?』

「……なぜそのようなことを」

『あ? アンタのためにやったんだろが。言うことあるだろ?』

 

「ッ! ありがとう、ございます……」

 

 

 

【ロドス 事務スペース 倉庫】

 

 薄暗く、ジメジメと湿気が立ち込む倉庫。

 部屋の隅の各所には、カビか汚れかも分からないような物体が積もっていた。

 

「はぁ、捨てられてないだけマシですわ……」

 

 彼女はいつものように、行動隊の哨戒任務の精算をする。

 現在の彼女の状況とは裏腹に、手にした書類には輝かしい戦績の類が事細かに記載されていた。

 

 

 [作戦記録③ ◯月×日 任務遂行済]

 

 ・作戦立案者 ドクター、ケルシー、ドーベルマン及び後方支援担当班代表1名

 

 ・責任者 ドクター

 

 ・作戦参加者

 隊長 ズィマー、副隊長 イースチナ、グム、アブサント、シャイニング、シラユキ、グラベル、ヴィグナ以上8名

 

 ・後方支援担当班班長 オーキッド及び行動予備隊A6 、カシャ、ビーハンター。

 

 ・物資支援 カランド貿易

 

 ・作戦概要 今回の作戦は△月□日に実行された作戦任務②に続く殲滅作戦です。

 龍門旧市街において、拠点を築いていたレユニオンの基地を破壊する目的で立案されました。

 なお、龍門近衛局の許可を得た上での作戦となっているため、民間への被害、損害補償は全てロドス・アイランド製薬が担うことになっています。

 

 今回の作戦において、ただならぬ活躍をし、作戦任務並びに組織へ多大なる貢献を収めたとして、前衛オペレーターのズィマー氏に特別勲章を授与します。

 

 

 ◯月◇日 記入者 エイヤフィヤトラ

 

 情報室 確認 済

 執務室 確認 済

 総合事務室 確認

 

 

 

 ロサは紙面に記載された情報に目を通し、内容を確認した後に済の押印をした。

 そして、かつて共に地獄を味わった同郷の友が、素晴らしい成果を残したということに喜びを感じた。

 

「まぁ! ズィマーったら、向こうでも頑張ってるみたいで良かったわ!」

 

 彼女は薄汚れた倉庫の中で事務作業をこなす。

 

「……どうしてわたしばっかり」

 

 ロサが配属された職場は決して良いものではなかった。

 しかし、かつて虐げる立場にいた人間でもあったため、その苦しみを誰にも打ち明けることが出来なかった。

 

「うぅ……。うっ、ぐっ、なんで、わたしだって、こんなに頑張ってるのに……」

 

 彼女は嗚咽に喘ぎながら、人知れず静かに泣くのであった……。

 

 

【ロドス 宿舎】

 

「ロサ、ただいま戻りました……」

 

 クマのぬいぐるみが返事をする。

 

(ひひ、苦しいよな? 切ないよな? そうして大切な時間を失っていくんだよ)

「わたしはどこで間違えたのでしょうか……」

(最初からだよ! 奪い続けたクセに、奪われる番になったら泣き虫か!?)

「うぅ……。ごめんなさい、ごめんなさい……」

(謝って許されたら裁判所はいらねえんだよ!)

「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!!」

 

 彼女はナイフを自らの手首に押し当てる。

 

 耐え難い現実からの、残酷な逃避の一筋。

 彼女が真に憎むものは環境ではなく、自分自身であった。

 

 真白のカーペットに、深紅の数滴が滴り落ちる。

 

 

 

【ロドス 第3会議室】

 

 今日も彼女は一人静かにご飯を食べる。

 一人で食べるのにも慣れてしまったが、やはり誰かと共に居たいと心が叫んでいる。

 

「Вот мчится тройка почтовая~」

 

「綺麗な声じゃないか」

 

 不意に声をかけられ、彼女は驚きと同時に席から立ち上がる。

 

「すみません……。ここには誰も来ないので、つい……」

「いや、謝ることじゃないさ。悲しい歌が聞こえたものでな」

 

 不躾に侵入してきた男は、ロサの向かい側に座り、持参していたパンを食べ始めた。

 

「普段からここで昼食を取っているのか?」

「あっ、はい……。申し訳ございません」

「一人は寂しくないのか?」

「もう、何も感じなくなりましたので……」

 

 ロサの言葉に男は違和感を感じたようだった。

 

「嘘だな。じゃないとそんな目は赤くならんだろ」

「……えっ?」

 

 自覚していなかった点を指摘され、思わず困惑する。

 きっと正常な判断が出来ていなかったのだろうか、ロサは動揺を表情に表す。

 

「まぁ、なんだっていいんだが、実はこの会議室は解体することになってな。今日は下見に来たんだ」

「えっ、ここがですか……?」

「あぁ。私は反対したんだぞ? サボり場が消えるってな」

「そんな……」

 

 ロサはこれからどこで昼食を取ればいいか考えた。

 ロドスでは最大限の自由が保障されているため、医療棟以外での食事は当たり前であった。

 しかし、一人だけの空間というものは少なかったのだ。

 

「よかったら執務室に来るか?」

「執務室って、あなたは前線オペレーターの方なのでしょうか?」

 

「オペレーターも何も、執務室は私の部屋なんだがね」

 

 ドクターと名乗った男は、ポケットから名刺を取り出し、ロサに差し出す。

 そこには確かにドクターと書かれていた。

 

 そして、ロサはドクターに連れられ、執務室があるロドス中枢に向かうのであった。

 

 

 

【ロドス 執務室】

 

「自由にくつろいでくれ。何か淹れてくる」

「あの……。お邪魔します……」

 

 扉の先に2対の机と椅子、その先にはデスクスペースがあり、積み上げられた書類の束が日々の激務の様を物語っていた。

 ロサは控えめに椅子に座ると、どこからともなく猫の鳴き声が聞こえた。

 

 ニャーン……。

 

「あら? 猫の声……」

「猫ではない。ミス・クリスティーンだ」

 

 確かに部屋にはロサとドクターしかいないはずなのに、3人目の声が聞こえた。

 

「ひぃっ!」

「失礼。ミス・クリスティーンはご機嫌のようだ。珍しくな」

 

「おーい、ファントム? 。お客人が驚きだぞ」

 

 ドクターやケルシー医師には直属の諜報部隊が存在しているということをロサは耳にしたことがあった。

 きっと、ファントムと呼ばれた彼がその一員なのだろう。

 

「紅茶の方が好きだろう。ファントムも飲むか?」

「あっ、ありがとうございます……」

「……いただこう」

 

 ロサがカップに口に運んだ瞬間、猫が膝の上に飛び乗って来た。

 

「まぁ! 可愛らしい猫ちゃんですこと!」

「猫ちゃんではない。ミス・クリスティーンだ」

 

「クリスティーンに懐かれるなんてロサは幸運だな」

「? どうしてわたしの名前を……?」

 

 ファントムと呼ばれる男が、紅茶の匂いを味わいながら答える。

 

「ドクターは全員の氏名を把握している。知っていてあたりmニャーン! 

 

 何故か自慢げに話すファントムが言い終わる前に、ミス・クリスティーンが口を挟む。

 メンツが潰れたファントムは微妙な表情をしていた。

 

「ははは。今日は上手く決まらないな」

 

 そう言ったドクターはワインを片手に笑うのであった。

 

「待てドクター。そのワインには毒が入っているかも知れない。わたしが毒見しよう」

「ダメだ。アーミヤもケルシーもいないんだ。昼から飲んだっていいだろう」

「健康には気を遣え。よってわたしが没収しよう」

 

 

 一本のボトルを取り合い、いい歳した大人がくんずほぐれつしている。

 先程まで孤独を極めていたロサにとっては、誠に信じられない光景であった。

 

「フフッ、フフフッ」

 

 気づけば意図せぬ笑いが出ていた。

 2人と1匹が不思議な表情でロサを見る。

 

「アハハ……。ごめんなさい、あまりにもおかしかったので……フフフッ」

 

 彼女自身も感情に困惑しながら、目に浮かべた涙を拭った。

 涙? 

 

「あれ、涙が、ごめんなさい、そんなつもりじゃないのに……」

「今日は存分に泣くといい。ご所望なら特別に歌を歌おう」

 

 ファントムはそう言うとドクターから奪い取ったワインをグラスに注ぐのであった。

 そして、ロサは泣き疲れたのか、やがて眠ってしまった。

 

 

 

 数時間後、ドクターはロサの様子を見るために彼女を寝かせたソファーに近づいた。

 

「おーい、大丈夫か? 事務室には連絡しておいたぞ」

 

「…………ロサ?」

 

 ドクターは彼女の手首を握り、その表面を確認した。

 なぜそうしたかは彼自身も分からないが、しかしそうするべきだと感じたからである。

 

「これは……。穏やかじゃないな……」

 

 ドクターは彼女の腕と首に刻まれた線状の傷痕を確認すると、ケルシーの内線に連絡を入れるのであった。

 

「事務室を調べる。知恵を貸せ」

 

 

 

【ロドス 数日後】

 

 危機契約の期限が近づいているのか、戦闘オペレーターたちは慌ただしく通路を駆けていく。

 だからといって、一般職員であるロサの何かが変わったわけでも無く、普段通りの日常を送っていた。

 

「倉庫での仕事も案外悪くないものね……。陰口が聞こえませんもの」

 

 皮肉交じりに独り言を言い、書類に手を伸ばす。

 どうでもいいような物の中に一際目立つものがあった。

 

 

 

 [危機契約 25等級 報告書] 

 

 ・総作戦指揮 ドクター、ケルシー

 

 ・編成(随時変更アリ)隊長 テンニンカ、副隊長 シルバーアッシュ、サリア、アンジェリーナ、バグパイプ、ケオべ、フィリオプシス、ファントム、シャイニング、エイヤフィヤトラ、ブレイズ、シージ以上12名

 

 ・後方支援担当 危機契約委員会

 

 ・物資支援 危機契約委員会、カランド貿易

 

 ・作戦概要 今回の作戦は危機契約委員会が提示した条件の下、任務を完遂しなければならないものです。故に、人材及び物資に多大なるダメージが出ることでしょう。ですので、後方支援部は本作戦において発生した損害は、全て危機契約委員会に連絡してください。

 

 また、本作戦につきまして、目標期限内に等級18を超える条件のもと、任務を無事完遂いたしましたので、ロドスに特別名誉勲章並びに特別報酬が授与されます。

 

 

 追記 これ以上等級を増やして限界を超えようとするのは止めるよう、誰かドクターに言ってください。

 

 ◯月○日 記入者 スズラン

 

 情報室 確認 済

 執務室 確認 要検討

 総合事務室 確認

 

 

「まぁ! すごいわ! ドクターの指揮のおかげね! 後でいっぱい褒めてあげなくちゃ!」

 

 ロサはドクター及び上級オペレーターたちの活躍をまるで自分のことのように喜んだ。

 というのもつかの間、背後から不穏な影が迫っていた……。

 

 

 

『なに一人で喋ってんのよ気持ち悪い。コレ、全部やっといて』

「えっ、これ全部ですか……?」

『当たり前でしょ! 今日中に終わらせといて。わたしも暇じゃないの』

 

 薄汚れた床に置かれた段ボールの箱。

 もちろん中は書類の類である。

 

「自分の仕事は自分で始末するべきだと……」

『は? なんなの?』

「……いえ、何もございません」

 

 ロサは俯いたまま、無造作に置かれた段ボールを見つめていた。

 仕事を置いていき、軽やかに倉庫から出ていく一般職員。

 

「いやいや、そりゃあ流石にダメっしょ~」

 

 どこからともなく声が響き、一般職員が立ち止まる。

 

『ちょっと! アンタなにか言った!?』

「いえっ、何も言ってません……!」

 

「ここだよ、ここ。違うそっちじゃない。そう、ここ」

 

 ジワリと空間が歪み、小柄な男性が姿を現す。

 そして、倉庫の扉が乱暴に開かれた。

 

「まったく、嫌な予感というのは何故こうも的中するのか……」

 

「お手柄だな、ドクター。しかし、この状況は言い逃れ出来んぞ」

 

 ドクターとケルシーが入室する。

 それと同時に一般職員の顔色がみるみるうちに青くなっていく。

 

『違うんです! これは、わたしの物じゃなくて!』

「まぁ、私の専門は作戦指揮で、ケルシーは医療分野なのでね。そういう業務上のトラブルは彼女に言ってくれ」

 

 ドクターとケルシーの後方から、少女が姿を見せる。

 

「……言い訳は聞きたくありません。あなた達はロサさんに謝罪する義務があります。それを受け入れるか退艦するかを選んで下さい……!」

 

 怒髪天を衝くと言えば適切だろうか、とにかくアーミヤは未だかつてないほど激怒していた。

 

「変な事言わない方がいいぞ。イーサンがカメラで撮ってたんだからな」

 

 ロサは目の前で起きた激動の瞬間をにわかに受け入れられなかった。

 




今回も2部構成です。もうちょっとだけ続きます。

試作として行間の空白をいじってみました。
今回と前回、どっちが見やすいのですかね?
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