方舟の主と◯◯たち   作:山田澆季溷濁

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最強の海洋生物ってシャチらしいですよ。


そして、いつか再び相まみえる(スカジ)

 とてもいい天気の朝でした。

 本日は休みということもあり、ドクターは日々の多忙を忘れ、昼まで寝ることにしました。

 

「ドクター、朝よ。ごはんを食べないと元気がでないわ。」

「…………スカジ? 早くない?」

「早起きは三文の徳よ。枕カバー変えるから起きて。」

「いや、今日は休みなんだけど……」

「はいはい、分かったわ。早く起きて」

 

 ドクターは言われた通りに布団を跳ね除け、温かなベッドから脱出する。

 時刻は07:00であった。

 折角の休みだと言うのに、とブツクサ呟きながら普段の制服に着替える。

 

「あっ、スマン。着替えるから外出ててくれると助かる」

「わたしは気にしないわ。脱いだら頂戴。洗濯に出すから。」

「私が気にするんだよなぁ」

「いいから、脱いだら頂戴。洗濯するから」

 

 服を脱ぐより脱がされるといったような形で普段の制服に着替える。

 そして脳がイマイチ覚醒していない状態で食堂に向かうのであった。

 

 

【ロドス 食堂】

 

「ふぁあ~、今日は何を頼もうかね…」

「あくびなんて情けないわよ。もっとシャキッとしなさい?」

「うす……。カツカレーにしようかな……」

「朝からカレーなんて不健康よ。わたしと同じサラダ定食にしなさい」

「うす……。分かりました……」

 

 日頃の不規則な生活のためか、未だにボケているドクター。

 そして、フラつく腕を抑えて列に並ぶスカジ。

 イチャつくというよりも介護の方が適切な表現だが、食堂をよく利用する人たちからすると実に見慣れた光景であった。

 

「……大地の味がする」

「好き嫌いしない。ただでさえ痩せ気味だというのに、他の人に襲われたらどうするつもり?」

「その時はスカジに守ってもらうよ……」

「はいはい、食べれたらジュース買ってあげるわ」

「子供扱いするなよ……」

 

 イフリータの気持ちがよく理解できたところで、ドレッシングに塗れたキャベツを口に入れる。

 何を隠そうこの男、かなりの偏食屋なのである。

 事実として、カップラーメンや糖源といった食べ物を好んで食すのであった。

 

 そして、背後から声をかけられる。

 作戦がない日だというのに重装備の女性。

 

「おい、その辺りにしておけよ。嫌がっているじゃないか」

「………なに? どちら様?」

「サリア。元ライン生命医科学研究所実験部門のサリアだ」

「…………」

 

 食堂が次第に静かになっていく。

 誰も上級オペレーター同士のいざこざに巻き込まれたくないからである。

 

「わたしたちは食事をしているのだけれど」

「そうか。ならばわたしがここに座っても構わんのだろう?」

「イヤよ。あなたが居ると空気が悪くなるもの」

 

「…………」

「…………」

 

「は?」

「あ?」

 

「(誰かたすけて!)」

 

 修羅場!! 

 ドクターは周囲の人たちに視線で助けを求めた。

 ▽ しかし だれも こなかった !! 

 

「キャベツに含まれる食物繊維など微々たるものだ。野菜の恥さらしといっても過言ではない」

「だからと言って好き嫌いしていい理由にはならないわ」

「野菜よりも肉を食べるべきだ。そう思うだろう? ドクター。」

 

 眼前で火花を散らす2人を見ながらサラダ定食を食べる。

 彼の周囲を取り巻く暗黒空間も、周りからしてみればいつものことであった。

 

「そんなことないわ。健康には最善の注意を払うべきよ」

「我々の体は肉で作られているんだぞ? ならば摂取するべきは肉か野菜か。言わずもがなじゃないか」

 

「ドクター。こんなカチカチ自称研究者の話なんか聞く必要ないわ」

「ドクター。こんな脳筋健康オタクの話なんぞに耳を貸すな」

 

「…………」

「…………」

 

「はぁ?」

「あン?」

 

 スカジが血管をヒクつかせながら答える。

 サリアも同様に、拳から鳴ってはいけない音を出させて返答する。

 

「まぁまぁ、朝ごはんも食べ終わったし、そろそろココ(食堂)から出ないか?」

 

 事態の緊急性を考えたドクターは、何よりもこの場から離れることを選択した。

 

「そうね。今日は休日だから部屋の掃除をしましょう? きっと埃が溜まってるに違いないわ」

「そうだな。休日ならわたしとスポーツでもしないか? どうせ体が凝り固まっているのだろう?」

 

「…………」

「…………」

 

「……なに」

「……貴様こそなんだ」

 

 見事に提案が割れる。

 お互い譲歩するという考えは浮かばないのか、とにかく言えることは2人は我が強いということだった。

 

「あ~、今日は1人でゆっくりしたい気分かな。はは……」

 

「そう。なら後で紅茶でも持っていくわ。きっと落ち着けるはずよ」

「そうか。ならば後で面白い本でも持っていこう。きっと気に入るはずだ」

 

「…………」

「…………」

 

「……殺るっていうの?」

「なに? 別にわたしは今ここで殺ってやってもいいんだぞ?」

 

「はぁ?」

「ん?」

「おン?」

「あぁ?」

 

 異様な雰囲気が立ち込める。

 生物としても本能なのか、脳が危険信号を発信している。

 それほど現在の状況は緊迫していた。

 

 そして、ドクターは変な争いを起こさせないために一芝居を打つのであった。

 

「……なんか、頭がいてぇ。」

 

「「!!」」

 

「ドクター。痛みを感じるのはどこの部位だ?」

「ドクター。やっぱり疲れが溜まっていたのね。無理する必要はないわ。ゆっくり部屋に戻りましょう?」

 

 どうやら上手い具合に引っかかってくれたらしい。

 このままベッドにフェードアウトすれば、後は時間が解決してくれる。

 

「あぁ、今日は早く寝させてもらうよ」

 

「待て。脳の血管を弛緩させるためには風呂に入るのが有効だ。多少無理してでも入浴する価値はあるはずだ」

「待って。偶発的な頭痛の場合は入浴するとよくなるわよ。試してみる価値はあるかも」

 

 なぜこういう時の意見は合致するんだ。

 なんてことを思いながら、半ば強制的に風呂場に投入される。

 

「えぇ……。なんで朝から風呂に入ってるんだ?」

 

 ドクターは自身が置かれた状況に困惑しながら、肩まで湯に浸かるのであった。

 そして、浴室の前にある脱衣所に不鮮明な人影が現れる。

 

「湯加減はどう? 熱くない? 言っておくけど、絶対に寝たらダメよ」

「うす……。気をつけます」

「そう。わたしは向こうにいるから何かあったら呼んでちょうだい」

 

 スカジの声が遠のいていき、今度こそ本当に1人になる。

 朝から胃腸に悪い出来事が続いたため、休日だというのにようやく安心できたのであった。

 

 

 脱衣所の出口にて、スカジはドクターが脱いだ服を抱えて部屋に戻る。

 道中、およそ仲がいいとは言えない相手と会敵する。

 

「……なぜ貴様がドクターの服を持っている?」

「今日はあなたと縁があるみたいね。わたしも運の尽きかしら」

「質問に答えろ。でなければわたしは貴様を売女か何かだと認識しなければならない」

 

「は?」

「なんだぁ?」

 

 顔を合わせる度に周りの空気を荒らしていく2人。

 スカジとサリアは似ている者同士だからか、お互いに嫌悪する何かがあるらしい。

 もっとも、それらを確かめる方法は彼女らにも分からないだろうが。

 

 今この瞬間において、2人に共通している点は、お互いその場に不相応な物を持っていたという点である。

 

「サリエルだった? なぜ入浴時の一式を持っているのかを教えてくれないかしら」

「サリアだ。二度と間違えるなよ脳筋が。記憶まで筋組織に侵されたか?」

「質問に答えなさい。でないとわたしはあなたのことを浴室に侵入しようとする売女か何かだと認識しないといけなくなるわ」

 

「は?」

「なに??」

 

 サリアはスカジを無視して通り抜けようとした。

 スカジは何か嫌な予感を感じ取ったのか、サリアの後を追って歩く。

 それに伴い、2人は自然と足早になっていく。向かう先は浴室。

 

 

「なんか騒がしいな……」

 

 湯船に浸かっている状態のドクターは外の騒々しさに違和感を感じた。

 基本的に希望的観測は外れて、嫌な予感というものは的中するようにできているのだ。

 

「ドクター。入るわよ」

「ドクター。入るぞ」

「ちょっ、はっ、ええっ!? マジィ!?」

 

 ピシャリと扉を開けて浴室に侵入してきた丸腰の2人。

 スカジは勢いに任せて行動してきたため、流石にバスタオルを巻いていたが、サリアの方は一糸纏わぬ姿であった。

 

 2人はある程度かけ湯をした後で、お世辞にも広いとは言い難い湯船に浸かる。

 

 目の前で揺れるたわわに実った双丘。

 性欲を持て余すところなのだが、サリアとスカジのギスギス具合を前にしては頑張るところも頑張らないようだ。

 

「サリエリ? 狭いわ。出てちょうだい」

「サリアだ。貴様の胸肉が一番体積を占めているんだから貴様が出ろ」

「イヤよ。あなたの体躯がデカすぎるのが悪いのよ。あなたが出て」

 

「…………」

「…………」

 

「するか?」

「しましょう」

 

 全裸の状態で勝負を決めるといったら殴り合い以外の方法はないはずだ。

 もっとも、スカジとサリアが殴り合えば5、6人の死者は覚悟しなければならない。

 ドクターは巻き添えになりたくないという思いから、とにかく2人を宥めようとした。

 

「まぁ落ち着けって……。お湯が溢れるでしょうが……」

 

「そうね。ここで始末したら湯船の表面積が減るものね」

「そうだな。異常なまでの心地悪さは感じるが、ドクターが言うのなら仕方がないな」

 

「…………」

「…………」

 

「は?」

「あ?」

 

 目と鼻の先の距離で一触即発、もしくは鎧袖一触。

 2人とも言葉に余計なトゲがあるせいで、一向に争いが終わらない。

 それどころか時が経過するにつれて事態が悪化しているまである。

 

「おい、出ろ。いい加減埋めるぞ」

「は? 身分を弁えなさい、三流オペレーター風情が」

「廉価版オペレーターは口が達者なのか。クールビューティー気取って何も面白くないぞ」

「マジで沈めるわよ。あなたこそウルサスのあの子とキャラが被ってるのよ」

 

 2人の真白の肌がほんのりと紅潮していく。決していやらしい意味ではない。

 むしろ危機的状況なのだ。

 ドクターは2人を刺激しないようにできるだけ気配を消していた。

 中途半端な発言をしてしまうと、それがきっかけで本格的に開戦してしまうかもしれないからだ。

 

「なんだと貴様!」

「命が惜しくないようね!」

 

 ザバンと音を立ててスカジとサリアが立ち上がる。

 胸を押し付けあいながら、双方が主張を押し通そうとする。

 

 それに見かねた、というよりもお湯の体積が減ったことに対して我慢できなくなったドクターが声をあげる。

 

「いい加減にしないか! 寒いわ!!」

 

「うぐっ……」

「あっ……」

 

 2人が途端に静かになる。

 さながら悪戯がバレてしまった子供のように、2人は黙りこくるのであった。

 そして、ドクターはそんな2人に対して思いの丈を畳みかけるのであった。

 

「そもそもだ! 本来休日なんだぞ! なんでお前たちの言いなりにならなくちゃいけないんだ!?」

「……すまない、反省する……」

「……ごめんなさい。本当に申し訳なく思ってるわ……」

 

 勢いに任せて言葉を吐き散らかしていく内に、次第に体温が上昇していく。

 それと同時に心拍も上昇していく。

 

「……ん? ……あっ」

「…………? あっ」

 

 サリアが何かに気づいたように顔を背ける。

 その様子にスカジが不審に思い、視線を下に移したタイミングで顔を紅くさせた。

 

「……どこみてんだよ」

 

 2人の視線が集まる自身の下腹部を見る。

 そこには血圧の上昇とともに膨張した邪悪剣があった。

 

「…………」

「…………」

「……その、すまん」

 

「…………」

「…………」

「いつまで見てんだよ!!」

 




ヤンデレネタが尽きてきました。
同じタイプの娘は1人で十分だと思ってるので、また勉強してきます。
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