☆6オペレーターのパワーに甘えていませんか?
優秀戦績者発表。それがどのような物なのかというと、漢字を読んで想像して頂いた通りのものである。
だが、敢えて説明しよう。それは、年に数回あるかないか分からない大規模作戦の際や殲滅作戦、合同訓練の際に収めた戦績をポイントとして換算し、その上位数名を部門別で年末に表彰するというものなのだ。
表彰されたことで賃金がどうこうするという訳ではないのだが、表彰されたものは今後の作戦の編成に組み込まれやすいというメリットがあった。
それと同時に、ドクターに自身の実力をアピールできる利点もあったため、殆どのオペレーターたちが表彰を受けようと尽力するのであった。
【特殊演習 チェルノボーグ郊外】
飛び交う弾丸やボウガンの矢が、速さのあまり線となり宙を裂く。
敵も味方も、どちらの陣営も射線が切れる遮蔽物に身を隠す。少しでも前に出れば、瞬く間に蜂の巣になってしまうことだろう。
多くのオペレーターが崩壊した瓦礫の山に背中を預ける。
すぐその向こう側には彼らと同じように敵の小隊が潜伏していた。
『おい、なんか投げ物ねぇのか』
『ダメだ。ここまでの迎撃で殆ど使っちまった。塹壕を掘るしかねぇぞ』
あるオペレーターの一人が、落ちたバッグを拾おうとして瓦礫から手を出す。
その瞬間、ヒュンッと音が聞こえたかと思うと、その伸ばした手の甲をボウガンの矢が貫いた。
『……ッッィイッテェ!!』
『なんだ!? おい、どうした!!』
『アイツらァ! ピンポイントで狙って撃ち抜きやがった!!』
苦悶の表情で突き刺さった矢を抜く。急いで止血しようと医療オペレーターが走り寄る。
そして、それすら狙い通りだったと言わんばかりに、彼らの真上に手榴弾が投擲される。
『ヤベぇ! 伏せろ!!』
放り投げられた手榴弾の軌道に、その場に居た全員が死を覚悟した時、
ドオオン!!
地面で起こるはずだった爆発が上空で起こる。熱い爆風と巻き上げられた砂埃がオペレーターたちの視界を塞ぐ。
そして、立ち込める煙の中から数名のオペレーターで構成された部隊が現れる。
「……なにこんな所でダラダラしてるんだよ」
『ヴァ―ミルの部隊だ! ドクターが増援を寄越してくれたんだ!』
「そういうのは後にしやがれ。まずは状況を打開するぞ」
危機的な状況を救いに、ヴァ―ミルたちが救援に来たのだ。残りの物資が残り僅かという中で塹壕戦に移行しようとしていた者たちは歓喜した。
遮蔽物の向こうから次々と投げ込まれる投擲物の数々。大きめの石ころから始まれば火炎瓶や、投げ槍もあった。
ヴァ―ミル率いる射撃部隊は危険物のみをボウガンで撃ち抜いていく。
『ス、スゲェ……』
「なにボーっとしてるんだ!? 負傷したやつは下がってろ!」
敵と思われる小隊の一人がたまらず遮蔽物から出てくる。
残念ながら、ヴァ―ミルはその一瞬の隙を見逃すほど甘くはなかった。
「……そこッ!」
ギャア! イッテエ!!
「ふん、あいつら素人の傭兵だな。おまえらが苦戦してるって聞いたからサルカズの連中でも居やがるって思ったんだが、これじゃ拍子抜けだな」
『悪ィ……。アイツら小隊単位で待ち伏せしてやがって、まんまと向こうの罠にかかっちまったんだ……』
「まぁ、そういうことはドクターに言ってくれ。オレたちはアイツらをコームインに差し出すだけでいいんだからよ」
「しっかし、遮蔽物が邪魔だな。建物ごと爆破できるのないのか? ダイナマイトみたいな」
『あったらこんなとこにいねぇよ!』
「ほーん……。めんどいなぁ。チマチマやってくか……」
露骨に嫌そうな表情をし、ため息をついたヴァ―ミルは、自身の部下である隊員たちに指示を出す。
「よーし、ドクターの部隊に支援要請を送った。ちょっとしたら火薬が到着するからそれまで我慢比べだ。耐え切れなくなった多動症のバカから死んでくからな」
『た、隊長。なんか暗くないっすか……?』
「……おん?」
ヴァ―ミルが自身の足元を見る。確かに隊員の言ったとおり、微かに周辺が暗くなっていた。
不思議に思ったヴァ―ミルたちであったが、すぐにそれがドクターが寄越した救援部隊が乗る飛空艇の仕業だということに気がついた。
「……なんだありゃ」
『バッドガイ号なら墜落するんじゃないのか?』
遮蔽物を挟んだ敵も味方も、上空に突如として現れた飛空艇を見つめる。
そして、思い出したかのように敵の小隊が飛空艇を墜落させようと集中砲火を開始した。
飛空艇の装甲が地上から放たれたものをはじく。
しばらくすると、飛空艇から謎の物体が落下していく。
その瞬間。
ドガアアアアアアン!!!
厄介ごとの種であった敵の小隊が、凄まじい爆発と共に建造物ごとはじけ飛ぶ。
天まで届くかのようなキノコ雲が発生し、周囲のオペレーターの鼓膜と飛空艇を激しく揺らす。
手榴弾の爆風とは比べ物にならない風圧がヴァ―ミルの髪を巻き上げる。
『なんだ!? なにが起こったんだ!?』
「お、落ち着け! 味方だ! たぶん……」
飛空艇からロープが数本垂れ下がり、医療班のオペレーターたちが降下してくる。
どうやら、ヴァ―ミルたちを救出しにきたようだ。
しかし、風圧と熱波をモロに受けたヴァ―ミルとその隊員たちの心境はそれどころではなかった。
〔大丈夫ですか? 重症の方から順に運びますので! 〕
『あぁ助かった! Lancetちゃんも来てくれたぞ……』
ヴァ―ミルは崩壊し、瓦礫の山と化した遮蔽物(だったもの)に近づく。
もくもくと上がる黒い煙の中に、一人の人物と思われる影があった。
「……これ、アンタがやったのか?」
朧月のような人影は静かにヴァ―ミルの方に振り向いた。それでいて、とても味方とは思えない冷徹な声で答える。
「そうよ。だったら何? 助けてあげたんだから少しぐらい感謝したら?」
「オマエがやらなくてもオレがやってたさ……!」
「そう? 言っとくけど、そういうことはやってから答えるべきだから」
ヴァ―ミルが眉間にシワを寄せる。
遥か後方に居たオペレーターたちはみんな撤退の準備に取り掛かっていた。
「『結果よりも過程が大事』とかおバカさんはよく言うけどね、そもそも結果を出せなきゃ過程なんて注目されないのよ」
「定期試験で最下位の人の勉強方法なんて誰が参考にするっていうの? みんな主席の勉強方法を参考にするわ」
「…………何の話をしてるんだ?」
「与えられた任務すらまともにできない犬はいらないってこと」
「なんだと!」
ヴァ―ミルが煙の中のサルカズに掴みかかる。
しかし、確かに胸倉を掴んだのだが、そのサルカズはするりとヴァ―ミルの拘束から抜け出した。
「まぁ、こわいこわい。バカだから頭に血が昇りやすいのね。かわいそうな子犬」
「……フッ!!」
挑発に乗ったヴァ―ミルが、目の前にいるサルカズの女性に向けて蹴りを入れる。
狙った部位は顎。シュンッと風を切る音が静かに鳴る。
「ふ~ん……? 意外とケンカ慣れしてるのね。でも、戦う相手くらい選んだら?」
「……避けるなぁ!!」
煙の中で二人の影が交差しあう。
ヴァ―ミルが放つ拳や蹴りは標的のサルカズには一切届かず、それどころか所々に反撃を食らっていた。
「はぁ……はぁ……。くそッ……」
「……もう終わっていい? 単調すぎて飽きちゃったんだけど」
汗を拭い、ギロリと前方を睨みつける。
「まだだ! まだオレは死んでない!!」
サルカズの女性がため息をつく。
「じゃあもうアンタの勝ちでいいわよ。これ以上すると怒られちゃうし」
後方からヴァ―ミルを探す声が聞こえる。
どうやら部隊の仲間たちが彼女を探しているようだ。
それは、撤退準備が終了し、ロドスに帰還するということを意味する合図でもあった。
「アンタ……名前は……?」
「アハハ! 雑魚に名乗る名前なんか持ってないわ? どうしても知りたいなら殺してネームプレートでも奪えばいいじゃない」
「オレはオマエのことが嫌いかもしれない……」
サルカズの女性の影がうっすらと消えていく。
「そろそろ戻ったら? 大好きな指揮官サマに褒めてもらいにね。わたしは先に戻ってるから」
ビュンッと風が吹き、辺りに立ち込めていた煙を散らす。
その場所にはヴァ―ミル以外の姿はなかった。あるとすれば、至近距離で爆発が起こったかのような焼け焦げた腕が瓦礫の隙間から生えていただけであった。
ヴァ―ミルは反撃を食らった頬をさすりながら、踵を返して部隊に戻るのであった…………。
【ロドス 搭乗ゲート】
薄暗い空間を眩しい照明が無理やり明るくしている。
普段ならばここで働く整備員たちは暇を弄んでいるのだが、作戦がある日は別であった。
帰還した飛空艇や車両から物資を運び、メンテナンスが必要な箇所があれば迅速にエンジニアに連絡を入れる。
忙しい事この上なしなのだが、それを言うなら事務室だって負けていなかった。
こんなところにいたら光量で頭が痛くなると思ったヴァ―ミルは、そそくさと執務室へ報告をしに行くのであった。
「くっそ…………。いてぇ」
後ろを付いて来ていた隊員たちが口を挟む
『どうしたんですか? 虫歯っすか?』
『ははは! 隊長は甘いモンばっか食ってっからなぁ!』
体の節々が痛む。戦闘慣れしている者特有の、後から響いてくるタイプの攻撃。
「……こども扱いすんなよ」
【ロドス 執務室】
「とりあえず、お疲れさま。相手の方が少々上手だったみたいだがな」
「う……。すまん……」
ドクターの言葉にヴァ―ミルが首をすぼめる。
「私は援軍は必要ないと思ったんだが、念には念をとアーミヤがな……」
「物資さえ揃ってればオレの部隊だけで余裕だったんだぞ!」
ドクターが作戦記録に確認の押印をする。
「はは。ヴァ―ミルの言う通りだな。次の作戦もよろしく頼むよ」
ヴァ―ミルは平らな胸を叩いて返事をする。
次こそは自分だけで。そう心の底で思いながら、彼女は執務室を出た。
う~ん、今回は難しいな……。そうだ、ヴァ―ミルに頼んでみるか。
スゴイじゃないか! 今年の狙撃部門はもしかしたらヴァ―ミルかもな。
「へへっ、身長が低いからってあんまこども扱いすんなよな!」
よし、今回も期待してるぞ。くれぐれもジェシカと仲良くな。
「分かってるって! オレさえいれば大丈夫なんだから、ドクターはどんと構えとけよ!」
ヴァ―ミルと入れ違いでアーミヤが執務室に入室する。
「ドクター。次回の作戦の話なんですが、どうも物騒な装備をしている者たちが多いらしくて……」
ドクターが額に手をあてる
「う~ん、ならば術師中心の編成になるな。最近ロサの才能が開花し始めたらしいし、大事をとって彼女も組み込むか」
「そうですね。今回もヴァ―ミルさんたちに周辺の哨戒をして頂いてから、本隊を向かわせましょうか」
【ロドス 宿舎】
自身の部屋にて、細々と置かれた盾を見ていた。
盾といっても、重装オペレーターが使用する盾のことではない。勲章として贈呈されるものだ。
狩人として活動していたヴァ―ミルの部屋には、武器の類が所狭しと置かれていた。
「なんか、これも汚くなっちまったな……」
何年か前の話である。
まだロドスにカランド貿易やライン生命のような戦力がいなかった頃。ドクターとアーミヤは限られた人材と物資でどうにかやり繰りをしていた。
これはその時に手にした栄光。
時には満足な結果を出せず、ケルシーに小言を言われる日もあった。しかし、そんな日々すらヴァ―ミルは懐かしく感じていた。
「たまには磨いてやらなくちゃな……」
その盾に刻まれた日は、もはや薄汚れ、ヴァ―ミル自身も思い出せずにいた。
小棚にはその盾しか置かれていなかった。
過去の栄光に縋るなど、もはや障害にしかならぬというのに。
「おい! 撤退するぞ!
た、隊長! 見てください! アレ!!
ペンギン急便だ! エクシアさんとテキサスさんだ! 助けに来てくれたんだ!!
ヴァ―ミル隊長! ドクターが救援部隊を寄越してくれたんだ!
「ドクターが……?」
スゲェ! あんなに硬かった装甲が溶けてくぞ!!
こりゃあ今年の最優秀賞はアイツらかもな!
「…………」
「みなさん、今年も一年お疲れ様でした。今年は昨年のこの日と比べて、多くの人が~~~~~~」
アーミヤが壇上に立ち、長いスピーチ原稿を読む。
ロドス中のオペレーターや職員が、この広間に集合していた。その多くの者たちはアーミヤの話す内容などどうでもいいと思っているようだった。
彼ら彼女らがここに居る目的はたった一つ。
今年度の優秀戦績者の発表を聞くためであった。
もちろん、その場所にはヴァ―ミルの姿もあった。
「化粧くせぇな……。早く発表されねぇかな」
「アンタこういうの嫌いなタイプだと思ってた」
横から聞こえて来た声にヴァ―ミルは驚く。
「……いつからそこに居たんだよ」
いつぞやのサルカズの女性は答える。
「そんなのどうだっていいでしょ? アンタここが戦場なら3回くらい殺されてるわよ」
二人がいるのは二階のため、歓喜に騒ぐ皆の様子がよく見えた。
そして、ヴァ―ミルとサルカズの女性を含む狙撃オペレーターの優秀戦績者が発表される。
「狙撃部門優秀賞、エクシアさん。最優秀賞、ロサさん。
受賞されたお二人に、多大な拍手をお願いします」
パチパチパチパチ!!
ロサー! グムダヨー!! オメデトー!!
ヤメロ! ハズカシイダロ!!
「……茶番ね。わたしが辞退しなかったら、順位が一つ下がることも知らないで」
サルカズが白い髪の毛先を遊ばせる。
隣からの反応が無いことを不審に思った彼女は、ヴァ―ミルの顔を覗き込む。
「自分の名前が呼ばれなくて残念ね。あっ、毎年そうだったか」
「…………どいつもこいつも」
サルカズの女性が半歩後ろに下がる。
「……ふ~ん? そういうこと……」
それでは、今作戦の編成を発表します。
隊長、ヴァ―ミルさん。副隊長、ヴィグナさん。
・ハイビスカスさん。
・サベージさん。
・ヤトウさん。
・アーミヤ
以上の6名です。
今回ミスったらケルシーに殺されるんだ……。ヴァ―ミル! 頼んだぞ!
「おう! 全部全部ぜーんぶオレに任せとけ!!」
それでは、今作戦の編成を発表します。
隊長、グレースロートさん。副隊長、ヴァ―ミルさん。
・ラップランドさん。
・ジュナ―さん。
・クーリエさん。
・リスカムさん。
・ススーロさん。
・アーミヤ
以上の8名です。
グレースロート。今回が鬼門だ。今後の私の食生活が天秤にかかっているんだ。頼んだぞ!
『料理ぐらいなら全部わたしがやってあげるっていうのに……』
ヴァ―ミルも、グレースロートの指示通り頑張ってくれ。主に私の賃金的な意味で頑張ってくれ!
「……おう! オレは副隊長だからな。面倒なことは片付けてやるよ!」
それでは、今作戦の編成を発表します。
隊長、エクシアさん。副隊長、テキサスさん。
・アンジェリーナさん。
・ラップランドさん。
・スカイフレアさん
・テンニンカさん。
・ヴァ―ミルさん。
・ススーロさん。
・クーリエさん。
・グムさん。
以上の10名です。
エクシアからしたら少しヌルい任務かもな?
『リーダー! そんな褒めて何にも出てこないよ?』
テキサスも、あまり暴れすぎるなよ。お前は加減が効かないんだから。
『…………善処する』
「…………オレだって、できるんだぞ……!」
それでは、今作戦の編成を発表します。
隊長、エクシアさん。副隊長、シルバーアッシュさん。
・エイヤフィヤトラさん。
・アンジェリーナさん。
・ラップランドさん。
・シャイニングさん。
・テンニンカさん。
・ファントムさん。
・クーリエさん。
・サリアさん
・ロサさん
・Wさん
以上の12名です。
それにしても、錚々たるメンバーだな……。
『全員リーダーの人脈のおかげだよ! 隊長を務めさせてくれてありがとね!』
『
「…………」
ロドスの大広間にて、アーミヤの締めの挨拶を無視して人々は騒ぐ。
その収拾がつかない事態にアーミヤとクロージャは呆れ顔で幕を下げるのであった。
その二階では二人の人物がピりついた雰囲気を発生させていた。
「どいつもこいつも、狩りを殺人と混同してるミーハー野郎ばかりだ……!」
「大切なのは『誰のために戦うか』だろうが……!」
「負け犬の言葉なんて、誰も聞きゃしないわ」
「……試してみるか?」
サルカズが笑いを堪える。
「はぁ? また痛めつけられたいの??」
「…………フッ!」
瞬間、ヴァ―ミルの足が動く。いや、動くというよりは揺れるといった表現が正しいだろうか。
少なくとも、サルカズの女性の目にはそう見えた。
そして鼻から数滴、赤く迸る鮮血が落ちる。
鼻を手で押さえながら質問する。
「…………はぁ? アンタいま何したの?」
ヴァ―ミルが下の階層を見て、
「……オマエらがいなかったら、オレが最優秀賞をもらってたんだ」
「オマエみたいなやつが来なかったら、ドクターの一番はずっとオレだったんだ……!!」
「昔みたいに、どんなときもオレを頼ってくれたんだ……!!!」
「オマエらさえいなければ! オマエらさえ…………」
ヴァ―ミルの背後に音もなく忍び寄る人影。
それは、サルカズの女性がこの地で会いたくない人物の一人であった。
「ぐあっ…………」
「…………」
その人影が照明に届く範囲に来た時、ヴァ―ミルのうなじに手刀を入れる。
ヴァ―ミルは濡れた雑巾のように脱力し、そのまま気絶してしまった。
「ケルシー…………!」
「おや、Wか。こういう行事には顔を出さないと思っていたのだが……」
W。そう呼ばれたサルカズの女性は歯を軋ませる。
「そいつをどうするつもり……?」
「ほう? 他人に関心を持つとは珍しいな。そうか、
百戦錬磨のWも大したことないんだな」
ケルシーが不敵に笑う。
とても安い挑発だった。それに乗っかる傭兵などきっといないだろう。
「どうするのかという質問に答えよう。彼女のメンタルは不安定なのでな、事件が起こる前に
そうだな、アズリウスがそんなことを言っていたな。まぁ、わたしも詳しくは知らんがな」
騒がしい一階とは対称に、Wたちが居る二階には何やら不穏な空気が立ち込めていた。
「そうだ。ヴァ―ミルの代わりにわたしが相手になろうか?」
「イヤよ。アンタみたいなバケモノと戦いたくないもの」
「…………ん?」
「…遠慮しとくわ」
「……ん?」
「………見逃してください」
「ん?」
「許してください…………」
頑張ってるのに認められないというのは辛いことですよね。
まぁ、それも『過程』よりも『結果』なんですけどね。