方舟の主と◯◯たち   作:山田澆季溷濁

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汎用的なオペレーターは書きやすくて助かります。


剣聖の拠り所(メランサ)

 オペレーターのメンタルケアをしろと言われても、専門的な知識を持っているわけではない。

 アーミヤ曰く、普段通りに接すれば問題ないとの事だが、そう上手くいくものだろうか。

 シルバーアッシュとプラマニクスの関係といった様な地雷を踏みぬいた際は責任を取ってくれるのだろうか。

 不安要素が胸を締め付けるのを確かに感じながら、今朝届いたメンタルケアのスケジュールを確認する。

 送り主がワルファリンの微かに血液の匂いがするA4用紙には、【行動予備隊A4】と雑に書かれていた。

 

 誰にもアポイントメントを取っていないため、自力でアドナキエル達を探さなければならない。

 それに、行動予備隊A4は休暇中ではないか。

 

 

 「困ったな・・・。」

 「・・・何を悩んでいる。力になろう。」

 「うおッ!?」

 

 思わず情けない声が出る。なぜレッドといいラップランドといいループスは気配を消すのがこれほど上手なのか。

 

 「不意打ちするつもりはなかった。だがな、ドクターにそこまで驚かれるとだな、その・・・傷つく。」

 「すまない。周囲をよく見ていなかったものでな。」

 

 見るからにしょんぼりしているペンギン急便職員の彼女はうちのお得意様である。

 最初の頃こそ無口だったが、いまではすっかり心を開いてくれている。別にチョコレートで口説き落としたわけではない。

 

 「困っているようだな。力になろう・・・!」

 

 感情表現下手なのか?とにかく助けてくれるようだからお言葉に甘えよう。

 

 「たいしたことではないんだが、行動予備隊A4の居場所を知りたくてな。」

 「それならスチュワードとアドナキエルはレクリエーションルームでダーツをしている。アンセルは自室で音楽を聴いていて、カーディーはドーベルマン教官に叱られている。メランサだけは居場所を特定できなかった。すまない・・・。」

 「あ、あぁ・・・。ありがとう。凄く助かるよ。はは・・・。」

 

 いきなり畳みかけてくるものだから少し引いてしまった。

 

 「フッ・・・。」

 

 めっちゃドヤ顔。エクシアにも見せてやりたいものだ。

 

 「ところで、なぜ居場所を知っているのか聞きたいのだが。」

 「・・・ワルファリンからの手紙を届けたのはわたしだ。」

 「盗み見たのか・・・。顧客の情報を・・・。」

 「見られて困るような文通はしないことだ。ドクター。」

 

 その通りである。非の打ちどころのない完璧な論破。

 

 「名残惜しいが、次の配達があるのでここで失礼する。・・・また届けに来る。」

 「勘弁だね。次からはエクシアに頼むようにするよ

 

 瞬きする間にペンギン急便職員は行ってしまった。

 テキサスが特定できない。つまり関係者権限が必要な場所で、メランサが好む場所。

 現在地から最も近いところから攻めていくことにした。

 

 

 【資料室】

 

 

 「やはりここにいたか。メランサ。」

 「ドクター・・・?なぜここに・・・?」

 「いや、特に何もないのだが、少しメランサとお話しがしたくてな。」

 「わ、わたしとですか・・・!?」

 

 このロドスにいる人の大半は特殊な経歴を持っている。

 中でもメランサはかなり珍しい部類にはいるだろう。

 ざっくり言うと、彼女は私とは隣を歩くことすら許されない程の上流階級のお嬢様。

 教育にも力を入れていたようで、彼女は何でもできるのだ。

 ピアノも、ヴァイオリンも、美術も、執筆も、剣術も。

 

 「何の資料を読んでいたんだ?」

 「カップラーメンの作法について調べていました・・・。その、いつかカップラーメン型のレユニオンが現れた時に、美味しく食べられるように・・・。・・・フフッ。」

 

 ユーモアセンスはイマイチみたいだ。

 

 「・・・カップラーメンを食べたことがないのか?」

 「はい・・・。体に悪いと言われて・・・。」

 「あー。話の腰を折るようで申し訳ないが、行動予備隊とは仲良くしているか?」

 

 最悪な話の切り出し方だ、スワイヤーから交渉術を学んでおいた方がよかったか?

 

 「・・・A4のみなさんはいい人ばかりです。何も知らなかったわたしがドクターのために闘えるのは、間違いなくA4のみなさんのおかげです。本当にみなさんには感謝してもしきれません・・・。」

 

 彼女は真面目なんだろう。それも人一倍。カップラーメンの作法なんて無いも同然なのに、わざわざ調べようとするほどに。

 自分を箱入り娘から剣聖と称賛されるまでに成長させてくれた仲間たちに、少しでも恩返しできるようになろうとしている。

 

 「確かに、メランサ。君を主軸とした作戦の時のA4は特に優秀な戦績を収めている。行動予備隊A4のリーダーであることをもっと誇りに思ってもいいほどだ。」

 「・・・そうなのですか?・・・知りませんでした。なんだか・・・嬉しいですね・・・。」

 「そうだ。メランサ。君にとって行動予備隊A4が大切でかけがえのない存在であるのと同じように、アドナキエルも、カーディーも、スチュワードも、アンセルも、君のことを行動予備隊A4の大切でかけがえのない存在だと認識しているよ。だからメランサ。もっと自分に自信を持ってみてはどうだろうか。」

 

 

 「ドクターは・・・褒め上手なんですね・・・。」

 

 そういって顔を背けた彼女の顔は赤く染まっていた。

 彼女は間違いなく強いが、あくまでもそれは戦場での話。

 鬼神が如き強さを誇るスカジが、実は寂しがり屋だというのと同様に、メランサにも欠点がある。

 それは自己評価の低さ、自信の無さ、失敗してはいけないと思い込んでいる強迫観念。

 それらを乗り越えた時、彼女は、いや、行動予備隊A4は更に成長するだろう。

 今回はメンタルケアを含めたアドバイスを兼ねて意見してしまったが、私ができるのは見守ることだけだ。

 まぁ、悪い方向に転ぶことはないだろう。

 

 

 

 

 『メランサの居場所が特定できた。』

 「えぇ・・・。」

 

 珍しくペンギン急便からの内線だから緊急事態かと思ったが・・・。

 なんと配達が終わってからずっと探していたそうだ。

 しかしメランサの居場所は4時間前に判明しているのだ。

 

 「テキサス。おまえ『も』焦ると周りが見えなくなるんだな。」

 

 

 『・・・なんだと?』

 

ガチャ! ツー・・・ツー・・・

 「・・・切られてしまった。」

 「アハハ!テキサス!ドクターにフられちゃったんじゃない!?アハハハ!!!」

 「・・・それは・・ありえない・・はず・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・全員揃ってこその行動予備隊A4なんです。」

 「じゃあ・・・誰かが永遠に帰ってこない日が来たら?」

 「強くなればなるほど、その日が近くなっていく気がするんです・・・。」

 「・・・もし、その日が来た時・・わたしはどうすればいいのですか・・・。」

 

 

 

 

 「その日なんて来ない。私の下で任務を行なう以上、誰一人として欠かせはしない。

これは私と(メランサ)との、いや、私と君たち(行動予備隊A4)との約束だ。」

 

 

 

 

 

 




テキサスさんはオチのためだけに無理矢理登場させました。

カップラーメンのくだりは、「ガンスリンガーガール」という漫画から引用しました。よかったら探してみてください。
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