そちらの方もよろしくお願いします
私―オリヴィエ・ゼーゲブレヒト―はワクワクしていた。
今日の占いで私は運命の人との出会いがあると言われたからだ。
武術が大人顔負けに強い私もまだまだ女の子。
運命の出会いがあると言われてワクワクしない方がおかしいというものだ。
しかし、朝、昼、夕方と過ぎていき、これといって変わった人には会っていない。
いつも通り、クラウスと組手をして、いつも通りリッドと勉強しただけだった。
深夜、皆が寝静まった時間に私はふと目が覚めた。
再び寝ようとも思ったが眠れない。
私は気晴らしに散歩をすることにした。
そして、ふと思い出した。
深夜に行ってみたいところがあることに。
そこはシュトラにあるとある森。
私も初めて来る場所だったが、街の噂によれば夜な夜なここで不気味な声が聞こえると有名だった。
その為、深夜は誰もここには近づかない。
しかし、森にはいって数十分歩いたが誰の気配もしない。
やはり所詮噂だったのだろうか?
そう思い引き返そうとしたときだった。
『――――――。』
『――――――。』
話し声が聞こえた!?
つまり、噂は真実だったのだ。
私は嬉しくなり声のなる方へと足を進めた。
そして、声のなる方で見つけたのは一人の私と同じくらいの目をつむっていた少年だった。
何でこんな時間にと思い声をかけようとしたときだった。
彼の目が急に開き天に手を伸ばした。
「我、『神滅具』の力を持ちしシャドウ・F・バロンが汝の枷を解き放つ。」
彼が呪文を唱え始めると彼を中心に見たことのない魔方陣が浮かんだ。
よくみると彼の手に赤いラインが浮き上がっている。
「来い、『獅子王の戦斧』!」
そう叫ぶと彼の右手に雷を纏った黄金の斧が握られていた。
驚きすぎて声が出なかった。
見たことのない魔方陣、黄金色に輝く斧
そして、何より驚いたのは、
(あ、あの斧しゃべってるーーーーーー!?)
喋る斧なんて見たことすらなかった。
私は興奮のあまりとうとう
「わぁー!凄いです。何ですか!そのかっこいい 斧!?」
隠れていた茂みから飛び出し声を出してしまった。
男の子は何が何だかわからないといった顔をして困惑していた。
「え、えっと、君は誰?」
男の子は手に持っていた斧を消して、私に問いかけてきました。
「私はオリヴィエ、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトです。
あなたは?」
「シャドウだ。シャドウ・F・バロン。
見たところ俺と同い年ぐらいか?
こんな時間に何をしている。
子供はもう寝る時間だぞ。」
な、なんて高圧的な物言いなんでしょう。
捕虜とはいえど私は王女ですよ。
まあ、確かに今は寝間着ですからそんな風には見えないでしょうけど・・・。
「それはこっちの台詞です。
あなたこそ何をやっているのですか?」
「修行だ。」
「修行ですか?」
「そうだ、俺は弱すぎる、これでは守りたいものすら守ることができないからな。
より早く、より強くならねばならないんだ。」
彼の最初の印象は最悪でした。
いきなり高圧的な態度をとるし、私と同じくらいなのに子供扱いするし・・・。
でも、そんな印象が一気に変わりました。
彼の目、あれは何か大切なものを失ったことがある目です。
そして、あの強い意志。
いったいどれだけの経験をしたらあのような目や意志になるのでしょう?
「あなたは強いですよ。
私にはそんな真似できません。
私は一人では絶対に生きてはいけません。」
「そんなものは俺だってそうさ。
でも、生憎俺にはもう失うものが無いからな。
後ろに引けないならもうあきらめて前にのめり込むしかないだろ?
それだけのことさ。」
「私にも出来るでしょうか?」
「出来る出来ないじゃないんだ。
やるやらないかなんだ。
諦めなければお前にも出来るさ。
ところで話は変わるが、後ろにいる物騒なおっさん達はお前の知り合いか?」
私はすぐさまその場所から距離を取りました。
すると、私のいた場所に大きな剣が降り下ろされていました。
「おいおい、糞餓鬼、ダメだろバラしちゃ。
もう少しで殺せたのにな。」
そこにいたのは大きなサーベル刀をもった四人の賊でした。
「ふん、バレる方が悪いんだ。
しかもその程度で気配を隠したと思っていたのか?
そう思っているのなら死んでやり直すことをオススメする。」
彼はこんなときまで皮肉でした。
「ふん、口だけは達者のようだな。
後でママのところで泣いても知らないぞ。」
賊は下種な顔を浮かべていました。
「ふん、両親ならとうの昔にお星様になっているんでな。
何故この女を狙う?」
わかった、彼がどうしてこんな目をしているのかが。
両親をなくしているんですね。
それがあなたをこんなにも強く動かしているんなんて・・・。
「なんだ?お前このお嬢ちゃんが誰か知らねえのか?」
「ああ、知らん。」
ガーン( ̄□ ̄;)!!
やっぱりですか!?
通りで私の対応が雑な訳ですね。
「この嬢ちゃんは聖王家の王女様なんだよ。」
「・・・・・・。」
言葉を失っているようだ。
それはそうだろう。
姫に向かってあの口調は少し不味いですからね。
でも、少し残念です。
やはり、私はどこまでいっても聖王女のオリヴィエなのですね。
彼のように私を一人の女の子として見てくれる人はいないのでしょうか?
「しかも、腕が無いせいでこのシュトラに送られてきた聖王家のお荷物なんだよ。」
っ!?知っていました。幼い頃腕をなくしてから家族からの扱いが雑になったこと、城の兵士からは哀れみの目で見られていたこと
でも、それって私のせいじゃないじゃないですか。
私だって好きで腕をなくしたわけじゃないんです。
私は気付かないうちに涙を流していました。
「言いたいことはそれだけか?」
「なんだと!?」
「こいつが王女だろうが、女王だろうが関係ねえし、興味もねえよ。
それに腕がないからといってそう悲観することだってないだろ?」
「え!?」
彼は私に近付き座りこんで泣きじゃくっている私の頭を撫でてくれました。
「俺はこいつを否定しねえよ。
こいつはお荷物なんかじゃない。
腕をなくしても必死に今を生きてるじゃねえか。
それを否定する権利は誰にもありはしない!」
彼の顔を見るととても怒っていました。
先程あったばかりの私のためにこんなに怒ってくれるなんて・・・。
「糞餓鬼がぁぁぁぁぁああああああ!!
黙って聞いてりゃいい気になりやがって!」
そういって賊は彼に向かって剣を降り下ろした。
ガキーーーーン
彼の手にはいつまにか一本の槍がありました。
聖なる力を強く感じます。
「俺は今非常に気分が悪いんだ。
頼むから死ぬなよ。後片付けが大変だからな。」
そういって一閃。
「ぐぅああああああ!」
剣を降り下ろした男の腕を切り落とした。
「おいおい、この程度か?
なら、さっさと失せろ!」
槍を先程とは比べ物にならないほど輝かせ賊に威嚇した。
「ば、化け物だあ!」
「逃げろぉ!」
そういって賊達は逃げっていった。
「なあ、メイビス?
神滅具は所有者の意志に答えるんだよな。」
彼は槍向かって話しかけた。
『はい、私たち神滅具はシャドウ様が強く望めば望むほど強い力を発揮します。』
槍が光ながら話した。
彼の武器は喋る武器のオンパレードですか?
「オリヴィエだったか?
少し我慢しろよ。」
そういって彼は
「我、『神滅具』の力を持ちしシャドウ・F・バロンが汝の枷を解き放つ。
来い『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』!」
斧を召喚したときとほとんど同じ台詞いい、1つの杯を取り出した。
「今からすることは俺のちょっとしたお節介だからな。
というわけでちょっと失礼。」
私に近付き、首筋一閃。
私は気を失った。
side change to シャドウ
俺は気絶したオリヴィエから数本の髪の毛を抜き取った。
『腕を再生させるんですか?』
「あぁ、偽善だってわかってはいるんだけどな。」
メイビスには俺が何をしようとしているかわかったようだ。
『そんなことはありませんよ。
それはシャドウ様の優しさですよ。』
「さて、『幽世の聖杯』
お前の力貸してもらうぞ。」
俺は聖杯の中にオリヴィエの髪の毛を入れ、彼女の腕の根本へとかけた。
「よし、これで良し。」
腕が直ったを見た俺は彼女を担ぎ、
「メイビス、城の位置はどこだ?」
城に連れていくことにした。
『いいのですか?彼女になにも言わなくて。』
「いいさ、だってこれは俺の偽善なんだから。」
『わかりました。
私は何も言いません。』
俺はオリヴィエを城の中の花壇のベンチに寝転ばせ、帰った。
side change to オリヴィエ
目覚めると、城内のベンチに横たわっていた。
何やら城の中が騒がしい。
そうか、私がいなくなったから。
私は上から照りつける太陽の光りを手で遮りながら起き上がった。
手?私は森に行ったとき義腕は外していたような気がするが。
そう思い手を見ると
「腕がある?なんで?」
気絶する前にシャドウの言った言葉が甦る。
<これは俺のちょっとしたお節介だからな。>
私は気付かないうちに涙を流していた。
昨日賊に襲われたときに流した悲しみの涙じゃない。
「う、うわぁぁぁあああああああん!」
「ヴィヴィ様がいらっしゃったぞ!」
「み、見てください、ヴィヴィ様の腕が!」
「き、奇跡だ!ヴィヴィ様の腕が治っているぞぉ!」
見つけた人達が私の回りで涙を流し喜んでいたが何も頭には入ってこなかった。
私は私の腕を治してくれた私の運命の人のことをしばらく泣きながら考え続けた。
「ひっぐ、ありぃがどう、ジャドウ。」
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