ますかれーど短編集 作:ぽんちょ
【ますかれーどの廊下】
(ももかもかです……ももかもかです……)
控え室を出てスタジオ入りをする道すがら、いつものルーティーンを行う。
頭の中で自己暗示のキーワードを唱え、今やすっかり「もう1人の自分」となった『萌々嫁もか』の仮面を被る。
『萌々嫁もか』はテンション高めな元気な性格。
『萌々嫁もか』を演じるために笑顔を作り、テンションを上げて気持ちを暖めていく。
【『ますかれーど』第1スタジオの調整室】
「おはようございまー……す…………」
スタジオの前室を兼ねている調整室に入ると、そこにはいつも居るハズのバックヤードスタッフさん達が居らず、代わりに……
実写配信の衣装のまま、涙を流すらぶぴーが居た。
「あ……もかたん……おはよう…………」
「あ、うん、おはよう」
「……ってそうじゃなくて!何で泣いてるの!?」
「うん……ちょっとね…………」
しっかり被ったハズの仮面が揺らぐ。
仮面の下から、私の本来の性質「仲間想い」「お節介焼き」が顔を出す。
ピンときた。
それにより目がジト目になる。
「もしかして、支配人に何か言われた?」
(あのウサギめ……)
と心の中で苦々しく思っていると、
「ううん。支配人に何か言われたワケじゃないよ」
らぶぴーはかぶりを振る。
(アテが外れたか……)
と思いつつ
「じゃあ、いったいどうしたの?」
とらぶぴーに確認する。
すると
「えっとね…………」
実は……
『ますかれーど』を辞めようと思ってーーーー
(ん?聞き間違えかな?)
「ごめんらぶぴー、よく聞こえなかった。もう1回言って?」
「うん……私、そろそろ『ますかれーど』を辞めようと思ってるの……」
(やっぱり、聞き間違えじゃなかった……!)
そう思うと私の素の性格が『萌々嫁もか』の仮面を押し退けて表に出てきた。
「昨日のらぶぴーの配信で言ってた件、やっぱ辛いの?」
当然の如く、私はなのちゃん、らぶぴーの配信の内容を把握している。
昨日、らぶぴーは配信中に
「らぶぴーを続けるのが辛い」
と泣き出してしまったシーンがあった。
あの時は結局、有耶無耶な感じになってしまったけれど……
「うん。やっぱり、私はらぶぴーじゃないほうがいいかなって思って……」
「そのことを、さっきまで支配人と話してたんだ」
「そうしたら、涙が出てきちゃって……」
「だから、少し1人にしてもらってたんだ……」
反射的にらぶぴーに声をかけようとするが
「おはようございます!もかたん、そろそろシステムチェックとマイクテストをお願いします!」
タイムアップになってしまったみたいだ。
バックヤードスタッフさん達が調整室に入ってきた。
確かに、そろそろ配信の準備をしないとマズい。
「あ!ハイ!わかりました!」
返事をしてスタジオに入る。
だけど、さっき伝え損ねた想い
らぶぴーが大切だよ
この想いは配信準備を始める前に伝えておかないと!
「いや、らぶぴーも必要だもん!フツーに」
配信スペースのカーテンを開ける。
「らぶぴーが居なかったら、私は続けてないレベルだよ」
配信用機材が乗ったデスクに目を向ける。
すると、そこには『そそり立つ』という表現がピッタリな、巨大なオトナの健康機具が鎮座していた。
あまりの衝撃に、『萌々嫁もか』の仮面が完全に吹き飛ばされた。
「え!?ちょっと待って、どういう状況ッスかこれ!?」
思わずスタッフさんに確認する。
「らぶぴーの私物です」
oh……
予想外の回答が返ってきた。
「え、らぶぴー、これ買ったの?」
「え、ヤバくないッスか!?」
「まさか使わないッスよね?」
あまりの衝撃に、思わず早口になる。
数多くの健康機具に手を出してきた私だが、これはさすがにサイズ的に無理だ。
太さは『いつものフランスパン』よりは細いが、とても使用できる太さでは無い。
私が『そそり立つ健康機具』に動揺していると、いつの間にか泣き止んだらぶぴーが近寄ってきていて
「じゃじゃーん!ドッキリ大成功!!」
『ドッキリ大成功!!』と書かれたフリップを出しつつ、満面の笑みを浮かべるのだった。
気付いたら支配人もスタジオに居て
「バッチリ録音してるよ!」
サムズアップと共にイイ笑顔を浮かべていた。
ハァ!?
ドッキリ!?
ここに来て、ようやく状況が理解できた。
ここまでの下りは、全て私をターゲットとしたドッキリ。
つまりはらぶぴーの涙もーーーー
「もうヤダ~!めっちゃ恥ずかしい!!」
思わず口に出してしまった。
顔が赤くなっているのがわかる。
あまりの恥ずかしさで、手で顔を隠す。
「もかたん!ナイスリアクション!!いや~、イイ画が撮れたよ!」
改めてサムズアップと共にこちらを称賛する支配人。
(誰のせいだと思ってるんだよ!!)
思わず心の中で愚痴る。
「あ、もかたん。1度控え室に戻っていいよ。落ち着いたら、改めて準備を始めるから」
「…………は~い」
支配人の指示に従い、控え室に戻る。
……なんか釈然としない。
【もかたんの控え室】
テーブルに突っ伏し、頭を抱える。
「あ"~~も"~~恥ずかしいっ!!」
気を紛らわせるために大声を出してみるが、恥ずかしさは変わらない。
このまま動揺が収まらないと、配信事故を起こすのが目に見えている……
こんな時は……
「助けて!ダニエル兄さん!!」
ダニエル兄さん(酒)の力を頼ることにする。
(配信前の飲酒だけど、構うものか!動揺しっぱなしの方が問題だ!)
と自分に言い訳をして、一気にダニエルを煽る。
すると…………
(ヤバい!いつもより酔いが回るのが早い!!)
体調のせいか、いつもより早く酔いが回る。
その結果…………
「…………う"ぅ~~~き"も"ち"わ"る"い"…………」
完全にベロンベロンになってしまった…………
さらに悪いことは続き……
「もかたん!?まだ準備できない!?そろそろ開始時間だよ!?」
タイムアップになってしまった……
その結果……
「うえ~~~い!酔っ払ったーーー!!」
泥酔した状態で配信を開始することになり……
「え?マジ!?公開するんですか!?」
自分がさっき引っ掛かったドッキリの様子を公開され……
「私の口から、皆様にお伝えしたいことがあり、こちらの動画を撮らせていただいております」
最後は『おしがま』しながら謝罪動画の撮影をすることになってしまった……。
もう!!
ホントに『とんでもない1日』だったよ!!!
いかがだったでしょうか?
今回の改変点
現実では「飲酒してから出勤」という発言でしたが、
「実は照れ隠しのために飲んだ事への言い訳じゃね?」と思い、今回のような改変となりました。
真実は、本人達のみが知っている……
実は、作者が二次創作短編集を書こうと思い立ったときに最初に考えついたネタが、第1+第2エピソードと今話だったりします。
今回のモチーフイメージ
笑いながら「ドッキリ大成功!!」のフリップを持つらぶぴー。
それに対してブー垂れているもかたん。