ますかれーど短編集 作:ぽんちょ
時系列はデビュー戦直前のタイミングです。
【ますかれーど第1スタジオ】
「ご主人様のご出発です!行ってらっしゃいませ、ご主人様!」
入退店時のSEが流れ、画面が終了画面に切り替わる。
SEを聞きながら、教えてもらった手順通りに配信機器を操作し、配信を終了する。
終了操作が終わった後、声を出さないようにもう1度、終了操作が完了しているか確認する。
『はいオッケーです!練習配信終了です!お疲れ様でした!』
バックヤードスタッフさんの声がインカム越しに聞こえる。
「ふぅ……終わった……」
思わず声が出てしまう。
椅子に座ったまま、体をほぐす動作をする。
関節から音が出る。体がほぐれていくのが分かる。
どうやら、心だけでなく体も相当緊張していたようだ。
(いや~……まだまだ慣れないねぇ……)
緊張を自覚して苦笑いする。
そう。
『人生初のVtuber配信』
の日まで、あと1週間を切っているのだ。
(さすがは私。この期に及んで、まだこんだけ緊張するとか……)
自分は緊張しやすい性格であると自覚している。
「いかにも」な傾向に、むしろ笑いさえ沸いてくる。
ここまで思考が及んだところで
ガチャッ
スタジオのドアが開く。
入って来たのは、忙しいハズなのに練習配信に付き合ってくれた支配人。
「えるたそ、お疲れさま。大分慣れてきたみたいだね」
「ありがとうございます」
「わざわざ練習に付き合ってもらって、ありがとうございました」
「構わないよ。練習に付き合うのも仕事の内さ」
「それでも……ありがとうございます」
今日はなのちゃん先輩の『実写お給仕』当日。
そう。
“ますかれーどのメインイベント”と言っても過言ではない『実写お給仕』の当日なのだ。
その準備が忙しくないハズが無い。
…といっても、実際に配信を行うのはここ、第1スタジオ。
私が退室したら会場準備を行うのだろう。
そんなことを考えていたら
「バックヤードスタッフからも聞いたと思うけど、機器操作や配信そのものは問題無かったよ」
「ゲームのリアクションもイイ感じだったよ」
「気になったところは……PC操作全般かな?まぁ、ここは追々慣れてもらうとして」
「総評は……『よくがんばりました』かな?デビュー戦までにある程度のカタチになってホっとしたよ」
支配人から今日の練習の感想や総評をいただく。
どうやら支配人の評価は、私の自己評価より良いらしい。
「そう言ってもらえると、私もホっとしました」
私も色々なVtuberの配信を見てきたが、実際に配信する側になると「こんなに難しいものか」と驚愕したのを覚えている。
特に、使い慣れていないパソコン操作が厳しい。
配信クオリティには厳しい支配人。
始めの頃は厳しい言葉を言われ、心を砕かれそうになることもあったけど……
それだけに、支配人から誉められるのは嬉しい。
「さて!今日の練習はこれで終わり!」
「今後のことはまた後で連絡するから、今日はこのまま解散でいいよ」
「わかりました。お疲れ様でした!」
【えるたそ控え室】
「あ"ー……疲れたー……」
うめき声を上げながらスマホの電源を入れる。
ご主人様たちからのリアクション通知の他に、同期になる『ありすちゃん』からのメッセージ通知が来ていた。
ありす
練習お疲れさま!
支配人から怒られなかった?
デビュー戦、一緒に配信できるのを楽しみにしているよ!
えるたそ
応援してくれてありがとう!
今日は支配人から誉められたから大丈夫!!
緊張するけど、私もデビュー戦楽しみだよ!
はっ!
気づいたらメッセージ送信ボタンを押していた……
これはいけない。
『帽子屋える』の公式アカウントでの発言が解禁されたのだから、無意識での発言や、考え無しの発言はしないようにしないと。
とりあえず、気持ちを切り替えるまでスマホは自粛して……と。
その後は……
ご主人様たちといっぱい遊んでもらおう♪
よーし!
帰りはいつものコーヒーショップに行こうかな?
新作が気になってるんだよね♪
いかがだったでしょうか?
2期生発表の波に乗り、
『ツイ廃のやべーやつ えるたそ』
をネタにしてみました。
今回のモチーフイメージ
スタジオでPCに向かい、緊張しながら配信するえるたそ