父が亡くなった事によるバタバタも春先にはどうにか落ち着き、休学からの復学も、進級もクリアして私は高校三年生になった。
時の流れは残酷で、時間が悲しみを薄れさせていく。
悲しんでいても残された者たちはいつまでも先に進めない。
身寄りは無くなってしまったけれど、中学から続けていたモデルとしての収入と父の遺した貯金でどうにかひとりで生きていこうと決心して、引越しをしたり、進路を探し始めた。
…私はひとりでも生きていけるよと父に証明したかったのかもしれない。
そんな折の話だった。
私は283プロダクションのアイドルにスカウトされた。
当時の283プロダクションは旗揚げしたばかりの、まだまだひょっこの事務所で所属アイドルも人員も何もかもが足りなかったらしい。だから採用オーディションと並行してプロデューサー自身が自ら出歩いて街頭でアイドルのスカウトを行っていたとあとから聞いた。
私をスカウトしたのもその一環だったらしい。
『堂々としていて、自分の見せ方を知っている。君はアイドルとしての素質が十二分にある』
幾らスカウトする人をずっと探してたとはいえなんて、ふつうさっきまで撮影してたモデルに話しかけるものだろうか?
確かにまぁ、あの人らしいといえばあの人らしいけども。
正直な話、すごく怪しかったし、胡散臭さもそれなりに感じたけれど。
でも見るからに新人で、何も知らなくて、だからこそ持っているその輝きがあまりにも眩しくて。
そして、何より「私」を認めてくれた上で私を見てくれたことが嬉しくて嬉しくて。
…彼に、興味を惹かれてしまった。
だからあの場ですぐに、彼の問いかけに応えてしまった。
知らない人には絶対についていくな、なんて父にずっと言われていたのにね。
いま冷静にして思うと互いになかなか肝が座ったことをしている。
…彼が若い頃の父によく似ていたっていうのもあるのだろうか。
なんてね。……ああ、お察しの通りさ。
本当は整理なんて今でもついていない。彼に父を重ねてしまっていることにも薄々気がついてるさ。
でも、置いていかれた、取り残されたわたしをどこまでも遠くへ。
彼なら連れて行ってくれると思ったんだ。
ひとりぼっちのわたしを。
「……」
書記官も弁護人も、検察官も、傍聴席にも誰も、誰もいない、不気味なほど静かな法廷。
ダン、と木槌を鳴らし、たった一人の、この悪夢の主役を見下ろした。
目を伏せたまま笑う「私」を証言台に立たせる。
さぁ......「判決」を言い渡そう。