ドラゴンクエストⅧ 呪われし姫君と混血のジェミニ 作:レイ1020
「出たぞー!化け物だ!!」
船に揺られること数分、目的のその化け物はすぐに姿を現した。
「あ〜〜ったく気に入らねぇな〜〜。毎度毎度このオセアーノン様の許可なくこの海を渡りやがってよ〜〜」
その化け物は大きな大王イカのような魔物で、赤いボディを持ち数多の触手を私たちの前にプラつかせていた。思った以上のデカさに、エイト達は呆気にとられていた。
「結構でかいな・・・・・・」
「でもただのでかいイカでがすよ!怖くないでげす!!」
「何だと〜〜!!言いやがったな人間!よ〜しそこまで言うんならこの俺様の怖さってもんをお前達に教えてやるぜ〜〜!!」
「来るよ!ゼシカさんは下がって!」
「え、ええ・・・・・・」
ゼシカさんを下がらせた私たちはすぐさま臨戦態勢に入った。正直どんな攻撃をしてくるかわかったもんじゃないから、どう攻撃していいかわかんなかった。
「まるこげになれ〜!!」
「なっ!?火って・・・・・・まずい!」
まさか海の魔物が火を吐いてくると思っていなかったのか、エイトもヤンガスも動けないでいた。あれをまともに食らえばかなりのダメージになることは間違いない。とっさにそう思った私は、呪文を唱えた。
「【ベギラマ】!!」
「何〜〜!?俺様の炎を相殺しただとぉ〜!!」
「そんなこと言ってる場合なの?【火炎斬り】!」
呪文で火炎を相殺した後、間髪置かずに攻撃に移った私にオセアーノンは反応できなかったのか、私の攻撃をまともに食らった。
「ギャァーーー!!!」
「シシリー悪い!助かった!」
「こっからはアッシ達も!!」
オセアーノンが隙を見せた隙に、エイトとヤンガスが一斉に攻撃に転じた。
「【ギラ】!!」「蒼天魔斬!!」
「ウギャァァァ〜〜〜ッ!!!」
エイト達の攻撃を何の防御もなしに盛大に食らったオセアーノンは、体力の限界が来たのか、海の中へ沈んでいった。・・・・・・どうやら勝ったみたいだね。
「よし!勝ったな!」
「うん。無事に勝てて良かった」
「・・・・・・あの〜?」
私たちが勝利に喜んでいた時、突如海から聞こえてきた声に私たちは反応を示した。その声の主は、先ほど倒したばかりのオセアーノンだった。だが、先ほどと違って敵意はなく、喋り方もどこか温厚なように見えた。
「急に襲ったりしてすいません・・・・・・。ですが・・・・・・それもこれもあの海の上を渡って行ったあの道化師の仕業なんですよ・・・・・・」
「「「道化師・・・・・・」」」
道化師という単語に一斉に反応する私たち。とりあえず話の続きを聞くことにした。
「人間のくせに生意気だな〜と思って睨んでやると逆に睨み返されましてね?それ以来、奴に心も体も支配されてしまったんですよ。・・・・・・ですから、お詫びと言っては何ですが・・・・・・これを受け取ってください・・・・・・」
「・・・・・・これは?」
「【金のブレスレット】ね。身につけてると防御力があるから持っておいたほうがいいよ?」
何でオセアーノンがこんなの持ってるのかは気になるけど、そこは置いておこう。
「人々の皆さんにも迷惑をかけてましたけど、今後はもうこのようなことはしませんので、安心して船を出してくださいね。それじゃあ皆さん。良い船旅をば〜・・・・・・」
オセアーノンはそう言い残すと、静かに海の中に去っていった。本当はいい魔物なのかもしれないね。・・・・・・そんな魔物に船を襲わせるなんて・・・・・・やっぱりドルマゲスは許せないね・・・・・・。
「すごいじゃない!正直あまり期待してなかったからちょっとびっくりしたわ!」
「ひどいな・・・・・・」
「そっちから頼んだくせに・・・・・・」
「はは・・・・・・」
地味に傷ついてる私たちを他所に、ゼシカさんは話続けた。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。わたしはゼシカ・アルバート。あなたたちは?」
「俺はエイトだ。よろしく」
「アッシはこのエイトの兄貴とシシリーの姉貴の子分のヤンガスでがす」
「エイトにヤンガスね?よろしく。それで・・・・・・」
ゼシカさんが私の方を向く。私も自己紹介しないとね。
「ヤンガスがさっき言ったけど、私はシシリー。よろしくゼシカさん」
「・・・・・・」
「ゼシカさん?」
「あ、ごめんなさい。なんか貴女・・・・・・どこかで見た覚えがあるのよね・・・・・・」
「っ・・・・・・き、気のせいじゃない?」
ゼシカさんは、私の正体に気付いてないのかもって思ってたけど、そんなこと無かったかも。今後も気をつけないと・・・・・・。
「・・・・・・そうかしらね?まぁいいわ。とにかく、魔物を倒してくれてありがと!これでドルマゲスを追えるわ!じゃあいろいろ準備もあるだろうし、一度港町に戻りましょう。わたし、船を戻すように言ってくるわね」
ゼシカさんは船長さんの元に向かおうと、船底への扉を開けようとした時、何か思い出したと言わんばかりに目を見開き、こちらに戻ってきた。
「ん?どうかした?」
「3人とも。そういえば塔での事、まだちゃんと謝ってなかったわね。だから今ここで言わせて!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すいませんっしたーーー!!!」
「「「・・・・・・」」」
ゼシカさんの何ともお嬢様らしからぬ謝罪を聞かされ、呆然とした私たち。そんな私たちを尻目にゼシカさんは今度こそ船長さんのもとに向かっていった。
「・・・・・・随分と男っ気のある娘っ子でがすね・・・・・・」
「面白いんだけどね・・・・・・」
「確かに・・・・・・」
私たちがそんなことを考えている間に、船は港町へと引き返していくのだった・・・・・・。
次回でゼシカが仲間になります!