ドラゴンクエストⅧ 呪われし姫君と混血のジェミニ   作:レイ1020

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親としての想い

私には家族二人いる。いや、正確には二人しかいなくなってしまったのだ。兄上も妻も、私を残し先に逝ってしまい、残されたのは息子のチャゴスと、兄上の娘のシスティアのみだった。まだ二人は幼かったこともあって、二人の死に対してはあまり悲しみを見せていなかったように見えたが実際にどうだったかは私にもわからなかった。

 

 

とにかくその時から私は二人に寂しい思いをさせないようにと優しく接し、甘えさせた。だが、息子のチャゴスは甘やかしすぎたのか、どこかだらしないと言うか王族としてはあまり宜しくない性格へと変わってしまったのだ。父として・・・・・・少し嘆かわしくなってくる。

 

 

 

対してシスティアはチャゴスとは真逆で、何事にも真面目に取り組み、時には甘え、時には王女らしく勉学に励んだりして己自身を鍛えていた。その姿勢、態度はまさに次期国王にふさわしいものであり、私はすぐさま継がせるのはシスティアと決めた。・・・・・・それが、システィアを苦しめることになるとも知らずに・・・・・・。

 

 

 

システィアは元々明るい子だった。どこで何をしていても笑顔が絶えず、何事にもいつも楽しそうにして取り組む可愛らしい少女だったのだ。だが、私がシスティアを後継者にすると決めてから、それは崩壊への道を辿ってしまった。

 

 

 

『システィア!・・・・・・いったいどうしたと言うのだ?』

 

 

 

『叔父・・・・・・様?・・・・・・うぅ・・・・・・ぐすっ・・・・・・うわぁぁぁ〜〜〜っ!!!』

 

 

 

システィアに剣と魔法を教えていた両教師達が揃って降りたと言う話を大臣から聞かされ、私はすぐさまシスティアの部屋へと向かい、勢いよく中に入った。そこにいたのは今まで見てきた太陽のような笑顔とは対極的な、冷たく冷めたような表情で椅子に座っていたシスティアだった・・・・・・。

 

 

私が声をかけると、システィアは私の元へ駆けつけ胸に顔を埋めるようにして声を上げて泣き始めたのだ。私はあえて何も言わずに静かに背中をさすり、システィアが落ち着くのを待った。・・・・・・システィアがこのように声を上げて泣くのは見たことがなかった為、私も戸惑いを隠せなかった。

 

 

 

『私っておかしいの・・・・・・?さっきね?先生達よりも剣も魔法もできちゃって・・・・・・それで先生達を怖がらせちゃったの・・・・・・。ううん、先生達だけじゃない。周りにいた兵士さん達も同じような目で私のこと見てた・・・・・・。・・・・・・ねぇ叔父様?叔父様は・・・・・・私のこと・・・・・・怖い?』

 

 

いまだに瞳を揺らしながら恐る恐る聞いてくるシスティアに私は罪悪感を覚えた。・・・・・・どうしてこの子にこんな思いをさせてしまったのだと。元はと言えば私がシスティアに跡を継がせるなどと言ったことが原因なのだ。別に今この時期でなくてもよかったはず。もっと二人が成長してから改めて検討することもできたはずだった・・・・・・。どうやら私は・・・・・・一人の大切な家族を傷つけてしまったようだな・・・・・・。・・・・・・ならば、私にできることはただ一つ。

 

 

 

『怖いわけなかろう?お主は私の大切な家族なのだからな・・・・・・』

 

 

 

『叔父様・・・・・・』

 

 

 

『よく聞けシスティアよ。お主のことは私が一番よく知っておる。大丈夫だ。お主がどのように思われようと私はお主の味方である・・・・・・そのことを忘れるでないぞ?』

 

 

 

『はい・・・・・・』

 

 

 

私はただ、システィアの味方でいようと決めたのだ。システィアをこのように追い込んでしまったのは私の責任。だからこそその責任は私が受け持つことにした。将来、システィアがどのような目で見られ、蔑まれ、傷つけられようと、私だけはシスティアの良き理解者であり、親であろうと決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

 

 

それから約10年、システィアもチャゴスも健やかに成長していった。システィアは私が普段からしている様な政務をこなしつつ、国間での業務にも参加しながら日々を過ごし、いつでも私の後を継げる様にと言う意思表示が現れている様に見えた。チャゴスは・・・・・・あまり変わらず、よく勉学をほっぽり出してベルガラックのカジノへ遊びに出てしまうことがよくあった。息子は、王子としての自覚があるのだろうか?

 

 

 

それは置いておき、あの一件の後のシスティアは間違いなく変わった。以前よりもさらに勉学や稽古に励む様になり、そして・・・・・・笑わなくなった。もちろん全く笑わないわけではなく、国間同士でのパーティーや私などの身内間では多少の笑みは見せている。だが、私にはどうにもその笑みが本当のシスティアの笑顔の様には見えなかった。どこか無理をしているかの様な・・・・・・まるで笑いたくもないのに笑っているかの様な・・・・・・そんな笑顔に見えた。やはり、そう簡単にはあの時の傷は癒えぬか・・・・・・。そんな時だった。システィアから世界を回るたびに出たいと言う提案を受けたのは。

 

 

 

「だめだ。お主は自分の立場というものを考えるべきだ・・・・・・」

 

 

 

もちろん私は反対した。次期女王ということもあるが、家族を一人で外へ出すというのは不安でしかないことと言うこともあって、どうしても私は許可することはできなかった。

 

 

 

「わかっています。ですが、これは昔から決めていたことなのです。王位を継ぐ前に一度、世界を自分の目で見てみたいって。”王になる者、世界を知らずしてなり得る者では無い!”そう叔父上は以前おっしゃいましたよね?ですのでこの機会を糧に私は王として成長してこようと思うのです・・・・・・どうしてもダメでしょうか?」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

それには私も黙るしかなかった。確かにそれは私が言い聞かせた言葉だ。だが、それはその様なことをさせるために行ったわけではないのだ。だからこそ私はそれを否定しようとした。だが・・・・・・。

 

 

 

「ご心配には及びません。決して危ないことをしに行くわけではありませんので。それに、叔父様は私の実力を知っていますよね?それでもまだ?」

 

 

 

「わかっている・・・・・・痛いほどにな・・・・・・」

 

 

 

その持ちたくもない実力を持ってしまったからこそ、今のシスティアがあるのだ。途端に私は悲しくなった。目の前にいるシスティアは小さき頃の無邪気な笑顔を見せていたシスティアとはまるで別人の様で、無表情という仮面を被った王女システィアがそこにはいたのだ。昔のシスティアは・・・・・・もう戻ってこないのであろうか。

 

 

 

「システィア・・・・・・前みたく、笑ってはくれぬのか?」

 

 

 

ほとんど独り言の様にそうぼやいてみたが、その声はシスティアに届いていたらしくシスティアは首を傾げながら言った。

 

 

 

「はい?私は毎度ではありませんが、叔父様には笑顔を見せているつもりですが?この前の国間での挨拶の時でも私は笑ていたでしょう?」

 

 

 

「そうではない。今のお主は、心の底から笑えておらぬ。表面だけが笑っているにすぎぬ。・・・・・・本当は笑ってなどいたくないのであろう?女王になど名なりたくないのであろう?」

 

 

 

「っ・・・・・・」

 

 

 

私の痛烈な言葉にシスティアは少し身動いだ。その反応を見る限り・・・・・・どうやら私の推測は正しかった様だ。

 

 

 

「・・・・・・確かにそうですね。ですが・・・・・・それが私の定めですので、えり好みしている場合ではないのです」

 

 

 

「そうか・・・・・・」

 

 

 

やはり、簡単に姿勢を変えてくれるはずもないらしい。なれば、この旅でシスティアに変化があることを望むしかない。心配であるのは百も承知であるが、私はシスティアが昔の様に笑って過ごし、思うがままに生きてもらいたいのだ。それが・・・・・・親としてのたった一つの想いだ。システィアも言った通り、今のシスティアはかなりの実力者だ。多少の魔物であれば簡単に討伐できるであろう。・・・・・・よし!

 

 

 

「わかった。システィアよ、お主のその旅・・・・・・許可しよう」

 

 

 

「え!?ほ、本当・・・・・・い、いえ。それは本当ですか?」

 

 

 

一瞬であるが、システィアの表情が驚きと喜びが混ざったかの様な状態になったのを私は見逃さなかった。すぐに元の無表情へと戻ったが、それでも先ほどの表情ができると言うことは、いまだにシスティアは笑顔の作り方を忘れていないと断言でき、少し微笑ましくなった。

 

 

 

「真だ。だが、条件がある。適度で良いが、手紙をよこすように。くどいが、お主は次期女王となる者だ。そのようなものに何かあればたまったものではないのだ。・・・・・・その条件を呑めるのであれば、許可しよう」

 

 

 

システィアに出した条件をシスティアは少し考えながらも首を縦に振り、納得してくれた様だった。システィアは旅の準備をしてくると王の間を出ていこうとドアに手をかけた。だが、ドアが開かれる前になぜかシスティアは私の方へ顔を向けた。その向けられたシスティアの顔は・・・・・・私がずっと見たいと言ってきたものだった。

 

 

 

「叔父様・・・・・・ありがと」

 

 

 

「!?・・・・・・ふっ、久方ぶりだな。お主のその笑顔を見たのは・・・・・・」

 

 

 

システィアはそう言い残すと今度こそこの場を後にした。

 

 

 

「陛下・・・・・・殿下のあの顔・・・・・・」

 

 

 

「うむ・・・・・・久方ぶりに私のシスティアが帰ってきたかの様な心地だった・・・・・・」

 

 

 

横に控えていた大臣にそう言った途端、私の瞳から一滴の涙がこぼれ落ちてくるのだった・・・・・・。

 

 

 

 

 

––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

 

「本当にその装いで良いのか?お主は仮にも女王となる者。それなりの身なりというものが・・・・・・」

 

 

 

「構いません。今回の旅はあくまでお忍びで。ですから。旅の間ではシスティア・サザンビークではなく、ただのシスティアとして旅をしたいのです。ですので・・・・・・これで結構です」

 

 

 

そう言いながら服や身嗜みを整えるシスティア。その見た目からはとてもではないが王族とは思えない。まさに旅の者と言った感じで・・・・・・だが、それでもどこか新鮮味もあってシスティアは気に入っている様子だった。

 

 

 

「では、行ってきます!」

 

 

 

荷物をまとめ終えたシスティアは、一振りの剣を懐に下げ、サザンビークを旅立って行った。本当であれば、私も同行したいところであるが私は国王である身。その様な自由は許されない。だから・・・・・・私ができることは・・・・・・。

 

 

 

「神よ・・・・・・システィアの旅が、良きもの・・・・・・そして変革のあるものへとなることを祈る・・・・・・」

 

 

 

教会で神にシスティアのことを祈ることだけだった・・・・・・。




キャラクター紹介

クラビウス・サザンビーク

サザンビーク王国国王で、システィアの叔父。王子でありシスティアの従姉弟のチャゴスの父親。賢王として高く評価されているが、子育てには失敗。妻に先立たれ、唯一の息子であるチャゴスを甘やかしてきてしまったため、彼の意気地無さに苦悩している。その反面、システィアには頭が上がらず、次期女王として推薦したのも彼だった。そのことが原因でシスティアが変わってしまったことに心を痛めていたが、システィアに世界を旅させることで何か彼女に変化があって欲しいという願いがあったため、すぐに持ち直すことに成功。システィアの父であり兄のエルトリオがいるが、愛した女性を追うため城を出て以来行方不明となっている。国に問題が二つも起こって手詰まりになったときに「こんなとき兄上がいれば…」と漏らすこともある。息子のチャゴスがよくカジノに逃げ込むため、ベルガラックやギャリングの関係者を嫌っているらしい。
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