鈴谷(漢)の艦娘物語/艦これSS   作:マルカジリ軍曹

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2-3.鈴谷(漢)の日常/休暇編③

――

 

11:00-食堂

 

 結局、いつも通りで特に何も無かったわけだが、

 歩くことは元々好きだから良しとしよう。

 

 そして、今目の前にあるのは食堂。

 混雑する前に朝食兼昼食を取るべくやって来たのだ。

 

 食事はいつも食堂でとる。他には売店位しかないし。

 

 一応ここの食堂は24時間開いているのだが、

 定食等は朝昼夕のお決まりの時間だけ。

 簡易な麺類等は5:00~21:00位の範囲まで。

 

 その他の時間は別途話を通しておき、

 弁当の様な物を所定の冷蔵庫に入れてもらっておく。

 昨夜はそれだった。

 

「あ、鈴谷さん!おはようございます!」

「うん、おはよ~」

 

 食堂の前で佇んでいると、昨日の朝潮ちゃんが挨拶しながら

 近づいてきた。手をヒラヒラさせながらそれに応じる。

 

「今日のメニュー、何かお勧めある?」

「んー…そうですね…。これなんてどうですか?」

 

 首を傾げつつ、彼女が指を差したその先を見ると…、

 

 | C定食:鶏の竜田揚げ、サラダ、漬物、ご飯、みそ汁 |

 

 うん、他のは魚ばっかりだし、これで良いか。

 

「よさそうだね。じゃあこれかな」

「では、私もこれにします」

「ん?ちょっと早くない?」

「1230から出撃なので」

「そっか。なら一緒に食べよっか?」

「はい!」

 

 そういう事で、一緒に食堂の列に並ぶことになった。

 

 朝潮ちゃんとは何となく仲が良い。

 変な話、提督より良くしてもらってる気がする。

 何故かはよくわからない。気のせいかも知れないが。

 

 マーライオンがゲロゲロヴァー事件の後も普段と変わらない…

 いや、前より良くなったか?何故だろうか。

 

 元男と知られたら悪いリアクションがあると思っていたのだが、

 少なくともこの娘にはその傾向が無い。

 ただそこら辺は艦娘の感覚が違うだけかも、と思ったりはする。

 

「出撃って何処行くの?」

「何時もの近海掃除ですよ。大した事ありません」

 

 出撃。つまり深海棲艦を退治するための作戦行動だ。

 ただ出撃と言ってもいろいろな内容がある。

 

 朝潮ちゃんの任務は近海の弱い化物を掃除するためのモノ。

 他には拠点制圧や海域攻略といったものもある。

 

 その規模も様々で、一概にどうこうとはいえない。

 例えば掃除とは言っても、近海でないモノは、

 敵も比較的強いためにそれなりの規模になる。

 

「終わるのは何時位?」

「うーん、そうですね…ちょっと今回は長いかもしれません。

 あ、先に行ってますね」

 

 先に並んでいた朝潮ちゃんは早々に定食をトレイに移すと、

 何時もの場所取りに移動していった。

 席は空いてるのだから急がなくてもいいのに。

 

 こちらもトレイに定食を移して飲み物を確保し、

 それとなく食堂を見回すと…。

 先に移動していた彼女が手を振っている。

 

 ヤレヤレ、真面目な子だなーと思いつつ、そこへ向かう。

 

「じゃあ頂きます」

「頂きます」

 

 体面で座りつつ準備も済んで、さぁ、と食べ始めたわけだが…。

 目の前の彼女は下を向いてお箸に手を付けない。

 何かソワソワとしている。

 

 まぁ気にしてもしょうがないかとそのまま食事を続けていたが、

 ちょっと長いので聞いてみることにした。

 

「どしたの?朝潮ちゃん」

 

 そういった瞬間、顔がピクッとする。しまった…。

 ちゃん付けは止めてほしいと言われていたのだった。

 

「鈴谷さん!ちゃん付けは…」

「えっと、ごめんごめん。悪かったよ。えーと、朝潮?何かあったの?」

 

 社会人経験が長かったせいか友人以外で呼び捨ては少し気が引ける。

 とはいえ、彼女が嫌だと言っているのだから切り替えて行こうか。

 同僚にちゃん付けは失礼と言えば失礼だし。

 

 でも朝潮ちゃ…だって、こちらを鈴谷さん呼びなんだけどなぁ…。

 あー、もしかして「さん」なら良いのかな。

 

「えっとですね…鈴谷さん…アノ…」

「ん?」

 

 ちょっとモジモジしている。

 呼び捨てはバッド・コミュニケーションでは無かったらしい。

 

「鈴谷さんの部屋って…1人分、空いてますよね?」

「うん。空いてるけど。何?来たいの?」

「えっと、その…。はい」

 

 

 モジモジの上に目線を逸らして頬を赤くする、だと?

 

 貴様!俺を男と知っての狼藉か!?

 といって、狼藉するモノは何も無いのだが…。

 

 あれ?逆か。

 出会え出会え-、の出会うモノが無いのか。

 

 お主!その腰のモノは飾りか!?

 飾りどころか鞘だけで中身がありませぬ、ってか。

 

 うぅーん、やかましいわ!

 

 

「んー…。でも提督に許可を取らないと…」

「そう、ですよね…。でも取ったらOKってことで良いですか!?」

「うん、いいよ?でも、難しいかもね」

 

 むー…、意図は分からないけど、多分無理だろうなぁ…。

 

 何か喜んでしまっているようなのであえて言わないのだが、

 自分の部屋に来たいという艦娘は、実のところ初めてではない。

 

 今の部屋は表面が木製になっているのだが、元々は打ちっ放しの

 コンクリート製で、ベッドも鉄パイプ製の簡易なものだった。

 

 初めて見た時、ナニコレ収容所?的な感想しかなく余りに酷いので、

 最初は少しずつ廃材とかも利用して木で取り繕うとしたのだけど。

 

 でも提督にはすぐばれてしまって。

 結局燃えるとか言われて一度は撤去されてしまったのだ。

 

 しかし、そこは俺である。諦めず、提督と話し合いを続け、

 不燃木材というものも自費で購入し、それで一つ一つ仕上げていった。

 

 ついでにグラスウールや防音材等も入れたり、

 電源を増やしたりとか、色々やった。

 資格?当然取り直したさ。当たり前でしょ?

 

 結果、厚み分若干狭くなったが、今や全て外面は木製。

 ついでにベッドや棚も作った。

 

 燃えないのは明石設備主任の折り紙付きである。

 まぁ、何もここまで…という感じで呆れてはいたが。

 

 ただ素材単価だけでも、ちょっと言えない額にはなった。

 おかげさまで財布はほぼおけら。

 

 そうしてまだ殺風景だけど、木製の温かみのある部屋が

 出来上がっているのだ。

 

 どうだ、凄いだろう?

 

 …

 

 どうせ暇だったからでしょ?

 なんて、そんな事言わないで…。

 

 まぁ、そうなんだけどさぁ…。

 

 一応そこそこの給料は貰っているのだけど、

 お金の使い道もあんまりないんだよね…。

 かといって溜めておいても死んだら国に回収されるし…。

 

 国としては、ちゃんと艦娘にも給料払ってますよー的な

 態度を取り繕うための制度なんだろうけど。

 

 それにしたって、あんまりだよなぁ。

 だって、許可が必要ないのって食料品位だし。

 

 パソコンとかも買えないしね。

 いや、正確には買える事は買えるんだけど、

 一部国内メーカに絞られていて、無駄に高いんだよね。

 どうせ主要部品とか国内じゃ作ってないじゃん、

 とか言いたいんだけど。

 

 その上、変な監視ソフト入れないと認めてもらえないからさ。

 あぁこれは国産か。どうでも良いけど。

 

 何にしても高いのはまぁ許せたとして、

 私物にそんな事されたら買う気が無くなってしまうのよ。

 だって、それだったら、もう支給品で良いじゃん?

 

 あぁ…どっかで内緒で買いたい…。新規回線契約したい…。

 タブレットなら行けるかなぁ…。ホント、自由が欲しい…。

 もうイェーガーになってお外に進撃したい…。

 

 …

 

 ま、まぁそんな感じなので、あの部屋を見た娘が移りたいとか

 言ってくることはある。

 

 ただ、少し数が多いらしく、今のところ成功した娘はいない。

 そもそも俺が元男なので、そのことで止まってる気もする。

 今のメンバーは元々いた子だし。

 

 

 と、そんなこんなで食事が終わって朝潮ち…、

 いけないいけない。またちゃん呼びしてしまう。

 

 朝潮と別れた後、適当に回りつつも、

 次のお決まりの場所に行くことにした。

 

 そう、提督の執務室だ。

 

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