アズールレーン~希望への航路~   作:ざぎねぅ

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8話 誕生日、ささやかに

朝の執務室―

 

 

ベルファストと翔一が他のKANSENたちより距離が近いという事が知られしばらく騒ぎが続いたが、それもほどほどに落ち着いてきた頃の話。いつも通り赤城が執務室の鍵を突破して翔一に迫っていた。エンタープライズはその対応をしている。

 

―指揮官様~

 

―ま、まあまあ…

 

そういいながら制止するエンタープライズだが、やはり赤城はものともせずにやってくる。

 

―指揮官様、今日は指揮官様のお誕生日なのでしょう?お祝いしましょっ。もちろん、二人っきりで…

 

赤城の言葉を聞いたエンタープライズが言う。

 

―え?そうだったのか、指揮官?

 

―そういえば、そうだったな…

 

指揮官として着任してから、母港の運営やセイレーンとの戦闘などで余裕がなかった翔一は、赤城に言われて自分の誕生日が今日だったことを思い出した。

 

―せっかくだ、二人きりと言わずみんなで祝わないか?

 

エンタープライズがそういうと、ベルファストが提案する。

 

―あまり広くはないですが、空いている部屋なら用意できますよ

 

そこで赤城は翔一と腕を絡めつつ渋々といった様子で口を開く。

 

―まあ、指揮官様がどうしてもというのなら、大勢でも構いませんわ

 

幼いころから軍などの施設にいた翔一はあまり人と触れ合うことがなく、誕生日を祝われるという記憶がなかった。そのため翔一は少し困惑する。

 

―い、いや、俺のためにそんなことしなくても…

 

これにエンタープライズは言う。

 

―仲間と誰かの祝いをするのは仲間との結束のためにも大切なことだぞっ

 

今にも”めっ”と言いそうな勢いで話す彼女に翔一は折れた。

 

―わ、分かったよ

 

するとベルファストは”ふふっ”と微笑むと言う。

 

―それではご主人様のお仕事の合間にお祝いすることとしましょう。これから準備を致しますね

 

そういい部屋を出ていくベルファストの後ろ姿を翔一は見送った。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

業務の合間―

 

 

お昼時、KANSENと翔一は、ロイヤルエリアの一角に集まっていた。広い机を囲むように席についていた。ここいるのは、加賀、エリザベス、エンタープライズ、ビスマルク、オイゲンだ。また、赤城とベルファストとツェッペリンが簡単に料理を振舞ってくれるらしく、今はキッチンにいる。

 

―指揮官が誕生日ねぇ、何歳になったの?

 

頬杖をついているオイゲンが翔一に言うと翔一が答える。

 

―26だ

 

この言葉にKANSENたちは驚いた。ビスマルクが言う。

 

―あら、そうだったのね。それよりはずいぶん若く見えるけど…

 

―ははっ、前の勤務地でもよく言われたよ

 

そんな話をしばらくしていると、料理を持ってきた赤城、ベルファスト、ツェッペリンが部屋に入ってきた。

 

―指揮官様、おまたせしました~

 

―ご主人様、お待たせしました

 

―待たせたな

 

3人は机に皿を並べていく。さまざまな文化の料理が並ぶという光景が目の前で広がっていく。これを眺めるエリザベスが言う。

 

―他の陣営の料理を食べるのは久しぶりだわ!おいしそうね

 

ここで加賀は、

 

―重桜料理の方は、姉さまが作ったものではないな…

 

というと赤城が答える。

 

―ええ、それぞれのレシピを教えあって作ったの。私は鉄血料理を担当したわ

 

これにベルファストとツェッペリンが続く。

 

―私は重桜料理です。異国の料理となると学ぶことも多いですし、作っていて楽しかったですよ

 

―我はロイヤル料理だ。意外とシンプルな作り方だったな

 

なるほど、いつも見るものとは微妙に違っていたのはそういう理由か。よく見るとそれぞれでアレンジがあるようで彼女たちの個性が出ているように感じる。みんなに用意されたコップに飲み物が注がれると、エリザベスが言う。

 

―下僕!誕生日おめでとう!かんぱーい!

 

それに続いて他のKANSENたちも言う。

 

―”おめでとう!”

 

―”おめでとうございます”

 

―みんな、ありがとう

 

翔一は、今までこのように祝われることを体験したことがないだけに、とても嬉しくなった。

 

―それじゃあ、いただきましょうか

 

ビスマルクがそういうと、みんなが食べだす。

 

―”いただきます!”

 

KANSENたちは、しばらく楽しいひと時を過ごすのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

執務室―

 

 

昼ご飯を食べ終わり、執務室に帰ってきた。エンタープライズはユニオンでの仕事があるため今はここにいない。2人きりの状態でベルファストは翔一の近くに寄った。

 

―ご主人様…

 

落ち着いた物腰のベルファストであったが、そわそわしたような感じで翔一に話しかけた。何かを隠すように両手を後ろにしている。

 

―どうしたんだ?ベル

 

そういうと、彼女は後ろ手に隠していたものを翔一の前に出した。木箱のようだ。

 

―ご主人様…お誕生日の、プレゼントです…

 

突然の事に翔一は驚く。

 

―そ、そうか…

 

緊張した翔一に向かって、ベルファストは頬を染めさらに彼に寄る。

 

―受け取って、いただけますか…?

 

―…もちろんだよ

 

両手を前に出すと彼女から箱を渡される。少しだけ触れ合う手に安らぎを感じる。

 

―ありがとう、ベル…それで、これは…

 

―オルゴールです。いつも身を粉にしながら働くあなたのために、少しでも癒しになったらと思って…

 

―オルゴールかぁ、聞いてみていいか?

 

そういうと、ベルファストは歯切れ悪く言う。

 

―できれば、私がいないところで…手作りなので、少し恥ずかしくて…

 

―手作り…俺のためにそこまで……本当にありがとな…ベル…

 

見つめあう2人を邪魔するようにセイレーンの出現を知らせるサイレンが鳴った。翔一は内心、苛立ったがそれは表情に出さずにベルファストに言う。

 

―それじゃあ、後で聞くことにしよう…行くぞ、ベル…!

 

―はい…!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

海上―

 

 

出撃しているのは、赤城、加賀、伊13、エンタープライズ、ベルファスト、エリザベス、オイゲン、ビスマルクだ。指揮艦には明石も乗っている。セイレーン出現位置の近くに迫っていくが、それにも関わらず敵の姿を発見できない事に疑問を覚えていた。

 

―むむ、警報が鳴った時はここら辺にセイレーンが出現してたはずにゃ。レーダーにも反応がないにゃ、おかしいにゃ…

 

今までの戦闘で敵の位置やレーダ―の反応が狂ったことがないので疑うのも当然だ。

 

―ああ、確かに変だ…

 

翔一はそういいつつ、外で海上を走る赤城、加賀、エンタープライズに声をかけようと、マイクに口を近づける。

 

―赤城、加賀、エンタープライズ、やはり敵は見つからないか?

 

赤城が答える。

 

―はい、ずいぶん先まで艦載機を飛ばしましたけど、エネルギー反応すらありません…

 

―そうか…

 

エンタープライズが艦載機を巨大化させ、それに飛び乗った。

 

―指揮官、肉眼で何か見えないか確認してくる…!

 

―分かった、気を付けろよ

 

彼女は”ああ”というと、バラバラというプロペラの音と共に上空に飛んでいった。そして加賀が言う。

 

―海底にいる可能性もある。伊13、警戒を解くなよ

 

―うん。でもこのあたりは海底まで見渡せないから、みんなも気を付けてね

 

結局しばらく敵の反応はなく、10分ほど巡回していると翔一はつぶやく。

 

―本当にセイレーンが出たのか…?警報は誤動作だったのだろうか…

 

そう言った時、ビスマルクの声が聞こえる。

 

―指揮官!空の様子がおかしい……黒雲が!

 

―また来たか…!

 

翔一がそう言うと、続いてオイゲンが言う。

 

―もしかして、あれが…

 

この言葉にベルファストが答える。黒雲と、轟音で走る紫の雷を見ながら、

 

―はい、多分これから、あの真っ黒なセイレーンが…

 

エンタープライズが急いでKANSENたちのもとに戻ってきた。

 

―これは…やっぱりアイツか…

 

数秒後、突如現れた黒雲が晴れていくと同時に、やはりあの黒い鎧が現れた。それは低い声でこちらに話してくる。

 

―前回は邪魔が入ったが、今日で終わらせる…ここでの俺の役目を…

 

役目を終わらせる。妙なことを言うそれは、KANSENたちに攻撃を始めた。しかし、反撃できない。ベルファストとエンタープライズが言う。

 

―ご主人様…!砲撃が出来ません!

 

―攻撃機も出せないぞ!

 

2人の声を聞いた翔一が明石に聞く。

 

―明石、前にも攻撃が出来ないようなことがあったが、原因は分かるか?

 

―わからないにゃん…KANSENの動きや攻撃の強制停止は指揮官の権限でもないとできないにゃ

 

―そうか…

 

翔一は目の前にあるモニタ―を見る。そこには外にいるKANSENたちのバイタルデータが表示されている。翔一、つまり指揮官には、万が一KANSENが暴走した時のために、その行動を強制停止させる権限がある。使ったことはないがモニターのパネルを操作すれば、停止しているという表示が出るはずだ。画面を見ている間にも黒い鎧はゆっくりとKANSENたちに近づいてくる。オイゲンの声が聞こえた。

 

―あの黒いの、手加減してるのかしら…

 

ビスマルクが続く。

 

―ええ、簡単に避けられるし、当たってもあまりダメージが無いわ

 

今のところ、敵はこちらを殲滅するような行動は取ってこない。海上を歩いてくるだけだ。そしてその足は、

 

―指揮官、敵がベルファストの方に近づいてるにゃ

 

明石がそう言う。

 

―分かってる。だがここからじゃ攻撃できない…

 

基本的に指揮艦は、安全確保のためKANSENたちとは離れて航行している。特に今回は敵がしばらく現れなかったこともあり、その発見のためKANSENたちを通常より遠くに行かせてしまった。今、敵との距離は砲撃の射程距離より遠い。KANSENたちの攻撃が封じられている中、指揮艦の攻撃も出来るか分からないが、接敵するため航行速度を限界まで上げた。攻撃可能射程まで移動する中、KANSENたちは今も敵の攻撃に耐えている。反撃できず避けるしかない仲間たちを見て、翔一は指揮艦の加速と同時に焦りも感じた。

 

指揮艦は全速力で航行し、射程距離に入る。翔一が、指揮艦が攻撃可能であることを目の前のモニターから知った時、敵はベルファストに急接近しだした。拳を握っている。殴るつもりだろう。彼女は避けようとしたがもう遅く、そして拳が当たる瞬間に低く小さい声が聞こえた。

 

―終わりだ

 

その声が聞こえたときには拳がベルファストに当たっていた。

 

―がっ…!

 

彼女は重い一撃に小さく呻いた。そして、敵が意図したものか分からないが、吹き飛ぶベルファストの体は放物線を描いて指揮艦の甲板に向かっていく。

 

―ベル!

 

翔一は反射的に外に出ようとする。そして明石が叫んだ。

 

―指揮官!外は危ないにゃ!

 

聞く耳を持たない翔一はそのまま甲板に出て、遥か遠くからこちらに飛んでくるベルファストを見つめる。翔一の顔には焦燥と敵への怒りが表れている。ベルファストがつぶやく。

 

―ご主人…様…

 

当然、翔一には聞こえない。そして、敵はベルファストを追うように飛んできた。他のKANSENたちもそれを全力で追う。

 

―なぜベルファストなんだ!

 

エンタープライズが言う。その声を聞いた敵がちらとエンタープライズの方を見るが、進行方向に向き直し更に飛行速度を上げた。しばらくして指揮艦の甲板にベルファストが落ち、その勢いのまま転がる。

 

―…!

 

翔一がベルファストを抱きかかえる。

 

―ベル、しっかりしろ!

 

―御心配には及びません…ご主人様…

 

ベルファストは何とか立ち上がり、目前に迫る敵を確認すると言う。

 

―ご主人様、ここに居ては危険です。艦橋にお戻りください

 

KANSENたちが指揮艦から1km程離れたところまで近づいた時、敵は指揮艦の甲板近くで浮遊していた。翔一とベルファストがそれを見上げている。そして敵は右手に長い砲を出現させベルファストの方に向ける。それを見たベルファストは翔一を突き飛ばした。

 

―…!

 

転んで立ち上がろうとした翔一は、砲が放たれる轟音を聞き、その弾に貫かれるベルファストを見た。彼女の体からは青い粒子が噴き出している。コアとなっているメンタルキューブが破壊されたのだ。

 

―ベル――!!!

 

思わず叫んだ翔一は走り出し、倒れているベルファストを抱きかかえた。ベルファストは消えそうな声で翔一に言う。

 

―ご主人様……オルゴール…聞いて、くださいね……

 

翔一は何も言えなかった。ベルファストはそんな翔一の頬をなでた。

 

―…

 

ベルファストは青い光の粒子となり、翔一の体を包んだ。光が見えなくなった時、翔一の腕には彼女の重みは無かった。

 

―あぁ…ぁぁぁ…

 

翔一は声を漏らす。そして、強い感情が湧き出した。

 

―うぉぉぉぁぁあああああああああああああああああああ!!!!

 

その感情は、ベルファストを失った悲しみなのか、敵への憎悪なのか、翔一にはどうでもよかった。とにかく、目の前の黒い色をした姿を消せる力を求めていた。その時だった、艦橋内にけたたましい警告音が響き渡った。そこにいた明石は、その音と共に発せられる合成音声に耳を疑う。

 

”Warning warning this ship is about to be engaged. Get out of here immediately. ”

 

―んにゃ!?この船がエンゲージ?どういう事にゃ!?

 

そう叫ぶと、指揮艦の近くに着いたKANSENたちが言う。

 

―明石、今のは何なのだ…!

 

―まさか、指揮官様…!

 

加賀と赤城が言った。エリザベスと伊13が続く。

 

―下僕!!ベ、ベルは!?

 

―海中にいたからよく分からなかったけど…さっきのは…

 

オイゲンとビスマルクが言う。

 

―くっ…間に合わなかった…

 

―こんなことになるなんて…

 

急に翔一の周りに黒い靄が出現した。それにエンタープライズがつぶやく。

 

―あれは、何だ…

 

指揮艦は黒い靄になっていった。その時明石は、

 

―にゃ…!床があああああ!

 

そう言い、靄に包まれながら海に落ちていった。

 

そして、ゆっくりと靄から離れていく敵に向かって彼女は叫ぶ。

 

―お前は何者なんだ!!

 

そしてその問いに答える気があるのか分からないが、それは静かに笑う。

 

―フ、フフフ

 

―何がおかしい!

 

ゆっくりと敵がKANSENたちの方に振り向くと言う。

 

―ハッハッハ!君たちもよく知っている存在だよ!

 

そう言った直後、海上に音声が響き渡る。

 

 

”WARS ENGAGED”

 

 

翔一がいたところを中心に、黒い爆発が起こった。

 

爆風が収まると、指揮艦があった場所に上空にいる黒い鎧と同じ姿があった。これにKANSENたちは当然驚く。赤城と加賀が言う。

 

―指揮官様!

 

―どういうことだ…!

 

明石は唖然としている。エンタープライズは、

 

―こ、こんなことって…

 

敵が言う。

 

―これからが本番だ!

 

敵が腕を広げると、周りからセイレーンの艦隊が出現した。これを見た翔一だったものは、雄叫びを上げながら、両手に出現させた砲で船を攻撃していく。それは凄まじい破壊力で、一隻一隻を一撃で破壊して行く。たちまち海上はマッハ10に近い弾速による砲撃と、レーザーの光で満たされていった。しかし、沈めても沈めてもまだセイレーンは出現する。翔一の攻撃でも倒しきれないほどに増えていく。この光景にエリザベスがつぶやく。

 

―下僕……なんてこと…

 

ビスマルクとオイゲンが自分の武器を見ながら言う。

 

―こんな状況になっても、まだ私たちは攻撃できないのか…

 

―そろそろ、倒しきれないほどの数になるわね…

 

次の瞬間、上から声が聞こえてきた。

 

―指揮官!もうやめてくれ、こんなこと!

 

先日現れたエンタープライズにそっくりなKANSEN(?)だった。飛んでくるその姿は、敵の黒い鎧に向かっていった。

 

―…またか

 

黒い鎧がそういうと、セイレーン艦隊の出現を止めた。

 

―今日はこのあたりでいいだろう…

 

鎧の周囲に雲が現れる。撤退する気だ。エンタープライズ(?)はその姿を追いかけるが間に合わず、鎧は消えてしまった。その間にも翔一は残りのセイレーンを沈めていった。しばらくしてセイレーンを全滅できた頃、翔一はKANSENたちに顔を向けた。そして砲を向ける。

 

―指揮官様!待ってください!

 

―指揮官、聞け!

 

赤城と加賀が翔一の方に走っていく。それに続いて他のKANSENたちも走る。すると翔一が苦しむように呻き声を上げた。

 

―ぐ、おぉ…

 

今にも倒れそうな動きをしている。赤城が翔一を抱きかかえた。

 

―指揮官様、お気を確かに…!

 

翔一はその声を最後に意識を失った。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

指揮艦内部―

 

 

翔一が倒れると程なくして黒い靄が発生し、そこから指揮艦が現れた。とりあえずKANSENたちは、元の姿に戻った翔一を運びベッドに横にした。まだ目を覚まさない翔一の周りに皆が集まっている。そんな中、エリザベスが涙を流しながら言った。

 

―げぼくぅ!なんでべるをまもってくれなかったのよぉ!!べるぅ…

 

あまりにも理不尽ないいように赤城が言う。

 

―いい加減にしなさい!これ以上、指揮官様を愚弄するような真似は許さない!

 

エリザベスがビクッとすると加賀が目を背けながら言う。

 

―弱いから死んだ…!

 

エリザベスはキッと睨んだ。この状況に耐えかねてビスマルクが言う。

 

―やめなさい!過ぎたことを言ってもしょうがないでしょ…!

 

静かになると、少し暗い顔をしていたオイゲンが言う。

 

―…それで?これはどういう事なのかしら、グレイゴーストの偽物さん

 

―偽物…か。確かにこちらではそうなるのかもな…

 

翔一が一時的に黒い鎧となった時に現れたエンタープライズによく似たヒトは、翔一が倒れた後KANSENたちと指揮艦に入り、黒い鎧のことについて説明するという話になった。その前に彼女は言う。

 

―そうだな…ここでは、コードGと呼んでもらおう

 

ここでエンタープライズが言う。

 

―…君は、どんな存在なんだ?

 

―別次元の君だ

 

間髪入れずにコードGが言う。そして続けてこう言う。

 

―あの黒いのも、こことは別の次元からやってきた指揮官だ

 

KANSENたちは”やはり”という顔をする。

 

―君たちが攻撃できなかったのは、指揮官…いや、ここではWARSと呼ぶことにしよう。聞いただろ?あの音を

 

皆は翔一があの姿になった時のことを思い出した。

”WARS ENGAGE”

確かにそう聞こえた。そして伊13が言う。

 

―そのWARSが私たちの指揮官と同じだから、その権限を使って攻撃できなくさせてたってこと?

 

―そういうことだ

 

エンタープライズが聞く。

 

―WARSと言うのは何の略なんだ?

 

―「Weapon Armor for Anti Seiren」の略だ

 

コードGは手の平を出し、ホログラムを出す。アルファベットが表示されていた。

 

―でも、あれはWARS本来の姿じゃない

 

ビスマルクが”そうなの?”というと、コードGは”うん”といい、さらに続ける。

 

―元々デザインされていたのはあんな色じゃなかったんだ。といっても、私は本当の姿を実際に見たことはないのだがな

 

オイゲンが聞く。

 

―それにしても、なぜあんな色になったの?

 

次のコードGの回答に皆が驚愕した。

 

―皆はWARSの胸の部分を見たかな。あれはメンタルキューブだ。それも、私たちに使われているものより古いタイプの、まだ制御するのが不安定なものだ。そのオーラが本来の体の色を侵食したのだと私は考えている

 

皆が唖然とする中、赤城と明石が聞いた。

 

―でも指揮官様は…

 

―普通の人間じゃ…

 

他のKANSENたちもそう思っている。そしてコードGは、

 

―そう思っていただけだ…指揮官は私たちと同じKANSENの技術で作られたんだ…

 

そういうとコードGは”詳しいことはこれを見るといい。昔の記録だ”と、ポケットからUSBメモリを出しエンタープライズに渡す。その時コードGは、一瞬赤城と加賀の方を見たがすぐに逸らした。エンタープライズがUSBメモリを受け取るなり言う。

 

―USB…ずいぶん昔の記憶装置だな

 

―時代が時代なんだから、しょうがないだろ?

 

ようやく落ち着きを取り戻したエリザベスが聞いた。

 

―なんで、ベルが狙われたの…?

 

当然の疑問だろう。しかも、初めて現れた時からベルファストを執拗に狙っているようにも見えた。

 

―おそらく、指揮官をWARSに覚醒させるための鍵なのだろう。君たちの世界でも、指揮官と一番距離が近いのは彼女だろう?

 

―…そうね

 

―そして私たちは、キューブを使って人々の記憶や思いから形を成して、力を発揮している。指揮官のキューブの力を呼び起こすためには、彼の大事な存在を破壊して、思いを爆発させることが一番速かったのだろうな。それが負の感情だったとしても…

 

―何のために…!

 

―それは…

 

言い始めると、ピピッと短く電子音が聞こえた。するとコードGが立ち上がりながら言う。

 

―そろそろ時間だ、また会おう…

 

―ま、まってにゃ!

 

明石が引き留めようとしたがコードGの足は止まらない。

 

―別の次元にいるのにもエネルギーがいるんだ、それじゃ

 

そういうと艦橋から出ていく。そして飛んでいくと、あっという間に姿を消した。それと同時だろうか、翔一が目を覚ました。翔一は全て覚えていた。ベルファストが消えたこと、それが原因で自分があの敵と同じ姿になり、暴れたことを。真っ先に赤城が話しかける。

 

―指揮官様っ…あぁ、よかった…

 

エリザベスが翔一の手を握り、再び目に涙をためて言う。

 

―げぼくぅ、わたし…ごめんなさい…

 

エンタープライズがつぶやく。

 

―指揮官…

 

翔一は顔をしかめた。KANSENたちはまともに話もできないまま、母港に帰還していく。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

母港、執務室―

 

 

夕日が沈む頃、翔一と出撃したKANSENたちは執務室に帰ってきていた。翔一の無の表情に誰も話しかけられなかった。静寂の中、翔一は一言だけぽつりと声を漏らす。

 

 

―一人に…してくれないか…

 

 

低く、深いその声に、皆はばらばらと執務室を出ていくしかなかった。

 

部屋に一人だけになると、ゆっくりと机の上に手を動かす。まだ記憶に新しい、ベルファストからもらったオルゴール。椅子に座ったままその箱を開くと、美しい音色が聞こえてきた。

 

 

その音は、夕日が沈み切り、部屋が月明かりで照らされるまで続いた。

 

 




さて、話が暗くなってきたけど安心してほしいにゃ!これから何とかなるにゃ!
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