アズールレーン~希望への航路~   作:ざぎねぅ

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13話 叫べ指揮官!エンゲージ!! file1

母港近海、演習場―

 

 

新たなる仲間、開発艦たちが母港に誕生してから数日経った、輝く太陽に照らされた日のこと。

 

―ぅわあああ!

 

と、雄叫びのような悲鳴を上げて翔一、もといWARSが吹き飛んでいく。それを見ながらモナークと出雲が言う。

 

―ふんっ、まだまだだな、指揮官

 

―修行が足らんな

 

遠隔音声通信で話してくる2人にWARSは言う。

 

―流石に飽和攻撃は卑怯じゃあないか?しかも、今はこんなにデカい装置までつけてるんだ

 

WARSはそう言いながら背負っている大きい箱のようなものを指差す。そしてサンルイが言う。

 

―しかし、さっきのが実戦なら命を落とす可能性もあるぞ

 

―なっ、サンルイまで…

 

そんなやり取りを見て指揮艦からWARSとKANSENたちを見ていた明石が言う。

 

―指揮官!何度も言うけど後もう少し我慢してほしいにゃ!しっかりデータを集めて小型化してくにゃ!

 

WARSがそれに答える。

 

―ああ、分かってるよ!

 

WARSは片手を平にして口の横に添えながら言った。声は遠隔通信で届くのでそんなことはしなくても良いのだが、いかんせんまだ慣れないWARSの姿であったので、通信の感覚に慣れず、普通の人間がするような動作をしていた。

WARSの声を聴き終え通信を一旦切ると、明石は独り言をつぶやく。

 

―ふう、もう少しにゃ…

 

明石がひそかに開発していたWARSブレスは、先日指揮官に試したのはいいものの、うまく動作しなかった。WARSが背負っている大きな箱は、急遽設計をしなおして作ったもので、WARSブレスの代わりの役目を担っている。作り直したその装置が思うように動作し、翔一がエンゲージ出来たときは心底安心したものだ。

そんな中で箱を小型化し、再びブレスレット状にするためのデータ収集兼開発艦たちの演習は明石の中で大詰めを迎えているのだった。

 

―あ、主殿っ、お体は問題ありませんか?

 

伊吹が言うとネプチューンが続く。

 

―甘やかしてはいけませんわ、伊吹。この程度でへこたれる指揮官様じゃありませんもの…ね?

 

そう言いながらネプチューンはWARSを見る。

 

―ん、まあな

 

彼が微妙な反応をしたのは、ローンの怪しい様子を見たからだ。

 

―あんな風に飛ばされる指揮官を見て少しドキドキしてしまいました…ああ、なんだかいけないことをしているみたいですね、指揮官

 

ローンはそう言い、”ふふっ”と微笑みながら翔一を見つめた。

そんなKANSENたちを指揮艦から眺めるもう2人のKANSENがいる。ベルファストとエンタープライズだ。

 

―ご主人様、少しずつですがあの人数相手にも対応できるようになってきていますね

 

―うん、6対1であそこまで戦えるとは…WARSのスペックが高いという事もあるのだろうけど、さすが私たちを指揮してきただけあって、戦況を把握して戦う能力が高いんだな。とても頼もしいよ

 

―ええ、本当に

 

しばらく演習は続いた。ある時明石が音声通信用のマイクに口を近づけて外にいるKANSENたちに話す。

 

―みんな、もうデータは十分集まったにゃ!演習は終わりで良いにゃ、指揮官お疲れ様にゃ!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

執務室―

 

 

演習を終え、一行は執務室に戻ってきていた。明石はと言うと、WARSブレスの再開発を急ぐと言い倉庫に行った。

モナークが言う。

 

―指揮官、最後の一撃はよかったぞ

 

褒めてはいるがその声は少し悔しそうだった。翔一が答える。

 

―ありがとう、モナーク。それにしても最後まで誰にも一撃を入れられないんじゃなないかと必死になっていたよ

 

演習終了直前、やっとのことでWARSはモナークに模擬弾を一撃当てることが出来ていた。ローンが続く。

 

―でも、だんだんとみんなの攻撃に対応できるようになっていく姿はとても素敵でしたよ、指揮官…今度は2人っきりで―

 

―ええ、2人っきりで特訓しましょう、指揮官さまぁ…もちろん、や・せ・ん・の♡

 

ローンを阻んだその声の持ち主は赤城のものだった。そして突然の(いつもそうであるが)来訪に翔一が言う。

 

―今日もか、赤城。それで、仕事はどうしたんだ?

 

翔一の両手を握りながら赤城が言う。

 

―もう、冷たいですわ指揮官様。でも問題ありません、今ここにいるのは仕事の一環と言っても過言ではありませんもの

 

―そうなのか…ん?そういえば今日の副秘書艦は如月だったな…

 

―はい、今日はその送り迎えでここに来ましたの。ほら、如月

 

午前中は演習を予定していたため、副秘書艦の務めは午後からという事になっていた。そして今、如月を連れて赤城が来たというわけだ。優しい声で赤城が声をかけると、彼女の後ろから如月が顔を覗かせた。

不安そうな顔の如月が言う。

 

―し、しきかん…今日は如月が副秘書艦ですよね…?

 

―ああ、そうだぞ。如月は秘書艦になるのは初めてだよな?

 

―うん…はじめて…

 

執務室の雰囲気に慣れないようで、如月は緊張が解けていない。そんな中、ベルファストが言う。

 

―そんなに心配しなくても大丈夫ですよ

 

そう言いながら彼女は微笑む。エンタープライズも続く。

 

―なにも1人に任せることはない。分からないところがあれば、なんでも言ってくれ

 

翔一も言う。

 

―みんなで頑張ろうな

 

皆の優しい言葉に如月は少し安心したようで彼女の頬はゆるんだ。

 

―うん、がんばりますっ

 

そして赤城が言う。

 

―さて、私はこのあたりで失礼いたしますわ

 

”この後明石に呼ばれていますので”という赤城の言葉に翔一は疑問を投げかける。

 

―明石に?何かするのか?

 

―はい、WARSに関することでKANSENのデータが欲しいという事なので

 

翔一は”そうか”と返す。そして執務室から去っていく赤城を見守った。そしてエンタープライズは開発艦たちの方を向いて言う。

 

―それで、君たちはこの後どうするんだい?

 

モナークと出雲が答える。

 

―私は演習場をもう少し借りて訓練をしていこうと思う

 

―寮に戻って休息をとる

 

ネプチューンが言う。

 

―私はメイド隊の見学に行こうと思いますわ

 

それに続きローン。

 

―私はお散歩しようと思ってます。今日は天気もいいですし

 

伊吹とサン・ルイは、

 

―剣の修行をします

 

―私も寮で休むしよう

 

皆の話を聞き終えると翔一が言う。

 

―そうか、みんな今日はありがとな。助かったよ

 

ネプチューンが答える。

 

―いえ、とんでもありませんわ。指揮官様のご活躍、とても期待しています

 

―精進するよ

 

開発艦たちが執務室を出ていく。残ったのはベルファスト、エンタープライズ、如月、翔一だ。

 

―さて、仕事を始めよう

 

エンタープライズがそういうと如月が尋ねる。

 

―なにをすればいいんですか?

 

―そうだな…まずは…

 

エンタープライズは優しく仕事を教えていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

執務室―

 

 

如月が副秘書艦の仕事に慣れはじめた頃、サイレンが鳴り響いた。

 

―この音は…

 

如月が言うとエンタープライズが続く。

 

―セイレーンだな…指揮官!

 

―ああ、出撃だ…!

 

翔一は出撃させるKANSENを招集した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

海上―

 

 

いつものように出撃した翔一たち。今回の出撃メンバーはベルファスト、エンタープライズ、如月、そして開発艦の皆だ。待機要員として明石もいる。その明石は、ブレスの完成が近いという事で指揮艦の奥で作業をしている。

翔一は海上にいるKANSENたちに話す。

 

―みんな、頼むぞ。特に開発艦の皆は今回が初の出撃だ、無理はするなよ

 

―分かっています、指揮官。でも、みんなの役に立てるようたくさん沈めますよ~

 

―修行の成果をお見せします、主殿…!

 

ローンと伊吹がそう言うと、エンタープライズが報告する。

 

―指揮官、見えたぞ!

 

彼女には艦載機を発艦させ、セイレーンの詳細な位置を調べてもらっていた。その情報が新たにレーダーに映し出される。ヒト型のタイプは居ないが以前よりも量産型の数が多いように感じた。

 

―よし…エンタープライズ、そのまま攻撃を仕掛けられるか?

 

―ああ、いつでも行ける…!

 

相手との距離は10km以上は離れている。しかし、その数は多い。少しでも相手の戦力を削っておきたかったために出た言葉だった。そしてエンタープライズの答えを聞いた翔一が言う。

 

―なら、攻撃開始だ、出来るだけ広範囲に仕掛けてくれ

 

―了解!

 

翔一は続いて他のKANSENにも指示を出す。

 

―ベルと如月と伊吹の3人は前に出て雷撃、ベルは攻撃と同時に煙幕を張って相手をかく乱してくれ。サン・ルイとネプチューンは中距離からその援護だ

 

―”了解!”

 

5人は海を走りだした。波を蹴立てて進む彼女たちを見て出雲が言う。

 

―指揮官、私はどうすればいい

 

―出雲はモナークと共に相手を挟み撃ち、ローンは他に敵艦隊がいないか警戒しつつ自由に攻撃してくれ

 

―”了解”

 

―了解ですっ

 

しばらく見守っていると、KANSENたちが攻撃をする音が聞こえてくる。エンタープライズが行った航空攻撃で敵の戦力が削れる。すかさずベルファストの煙幕で相手の動きが鈍くなると、そこへ次々と魚雷が襲いかかった。

しかし、セイレーンも素直に攻撃は受けてはくれない。

 

―後ろの方から来ますわよ!

 

ネプチューンがそう言う直後、煙幕が広がっていないセイレーン艦隊の後衛から砲撃が繰り出される。凄まじいビーム攻撃は海を蒸発させる勢いだ。

 

―敵の攻撃も中々力のあるものだな、しかし…!

 

モナークは言いながら主砲を放つ。同時にスキルの青い特殊弾幕も発射された。広範囲に広がるその弾幕は、小型の船を襲えば否応なしに沈んでいき、大型の船を襲えばその攻撃機能を確実に破壊していった。そんな中、駆逐艦である如月はその素早い航行で縦横無尽に攻撃を続けている。

 

―えい!

 

如月の動きをサポートするようにベルファストと伊吹が攻撃する。

 

―次は少々痛くなりますよ

 

―この一刀、伊吹の嶺にかけて!

 

3人が墜としきれなかった船はネプチューンとサン・ルイが確実に撃破していく。

 

―敵さんとじゃれあう趣味なんてありませんわ

 

―塵は塵に、灰は灰に…

 

双方の攻撃の応酬は激しく続いたが、開発艦たちの力も相まってセイレーン艦隊は追い込まれていった。その時、その艦隊の後方の空間が歪み、黄色い光を携えて人型のセイレーンが現れた。

サン・ルイがつぶやく。

 

―あれは…

 

その言葉をよそに、テンションの高い声が聞こえてきた。

 

―よっしゃあ!今日は暴れられるぜえ!

 

指揮艦の中から戦場を見守る翔一がその姿を確認すると言う。

 

―ピュリファイアー…!

 

遠くから彼女が話しかける。

 

―よお、こっちの指揮官君!こんなに新しい子たちを引き連れて楽しそうじゃん!どんな戦いが出来るかなあ!

 

この言葉にネプチューンとローンが言う。

 

―貴方がどんな存在かよく知りませんが、簡単にはやられませんわよ

 

―こんなに元気な子、どこまで私の攻撃に耐えられるか気になりますねぇ

 

恍惚な表情をするローンを見て、ピュリファイアーは続ける。

 

―ははっ、こりゃぁ楽しみだ!

 

その直後、ピュリファイアーは攻撃を始めた。細かいビームの弾幕が張られる。

 

―その程度、取るに足らないな

 

サン・ルイはひらりと弾をかわしていき、攻撃を繰り出す。他のKANSENたちもそれに続いていった。以前よりも勢いを増した彼女たちの攻撃はさらにセイレーン艦隊の戦力を削いでいき、その数はもう数えられるほどになった。

ピュリファイアーがつぶやく。

 

―ふぅん、結構強いじゃん

 

そして…

 

―終わりだ!

 

エンタープライズが艦載機を飛ばし残りの敵を一掃しようとした。しかし、

 

―なっ

 

たちまちその艦載機が撃ち落されていった。指揮艦から戦況を見守る翔一も、レーダーからエンタープライズの艦載機が消えていくのが分かった。

セイレーンの艦隊の後方から新たにセイレーンが現れる。

 

―ピュリファイアー、あまり調子に乗って倒されるんじゃないわよ

 

現れたのはテスターだった。

 

―テスター…邪魔しようっての!?

 

ピュリファイアーはそう言いながらも攻撃を続けている、テスターが答えた。

 

―いいや、少しピンチな様だったから、助けてあげようと思ってね。たまにはこういうのも良いでしょ?

 

―ふんっ、勝手にしな!

 

自分の獲物だと言うような様子であるが、少し苦戦していたこともありテスターの援護を止めさせるようなことはしなかった。

ベルファストが言う。

 

―新しく敵が来たからと言って、私たちは怯みませんよ!

 

ベルファストは全弾発射をする。他のKANSENたちもそれに続くがテスターはそれをかわしていく。

 

―そんなものじゃ沈まない!

 

テスターが言うと反撃を開始する。小さい逆三角形の兵器が数多く現れる。自立型ビーム兵器、KANSENで言うところの攻撃機が飛んできた。

 

―ふふっ、盛り上がってきましたねぇ

 

ローンのつぶやきもよそに、テスターはビーム兵器だけでなくセイレーンの量産型艦船を追加していく。KANSENたちは魚雷攻撃や砲撃をしていくがなかなか敵の数が減らない。一つ一つは決して強くないがその数でKANSENたちを追い詰める。

 

―…!倒しても増え続けます!

 

伊吹が叫ぶ。

 

―うぅ…睦月ぃ

 

如月は目の前の敵の多さに怯む。魚雷を頻繁に撃つことが出来ればいざ知らず、そうもいかない。魚雷を再発射するまでに砲撃をするがやはり駆逐艦では火力不足のようで中々敵を撃破するまでにはいかない。その間にも敵は増え続ける。

 

―諦めるな!

 

モナークがそう叫び主砲を放つ。増えて密集していた敵が大量に破壊されていった。しかし、敵の増加は止まらない。

 

―はは!どうしたどうした!?もっとやろうよ!

 

完全に大勢を立て直したピュリファイアーは以前にも増して激しい攻撃をする。それは、味方艦隊の前衛を超え主力にまでも届く。

 

―く…弾が多いな…

 

出雲が言う。しかしそうは言っても敵の攻撃が止むわけではない。

この状況で翔一は思わずつぶやいてしまう。

 

―…っ、どうすればいいんだ

 

こう言う内にもKANSENたちは苦しんでいる。

その時、

 

―指揮官!完成にゃ!

 

―明石…!

 

指揮艦の奥で作業していた明石が飛び出してきた。そして完成と言うのは…

 

―できたにゃ!WARSブレスにゃ!

 




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