―指揮官!完成にゃ!
―明石…!
指揮艦の奥で作業していた明石が飛び出してきた。そして完成と言うのは…
―できたにゃ!WARSブレスにゃ!
そう言いながら明石は手に持ったものを翔一に渡す。
―よし、ありがとう明石…!
翔一はWARSブレスを受け取るとそれを左腕にかざす。するとブレスから青い光が放出され帯を構成した。それが腕に巻かれる。翔一はそれを確認するとブリッジから出ようと走りだす。扉が近づくほど鼓動が高まるのを感じる。これで戦場にいる仲間たちを助けられるだろうか。しかし翔一は自分を鼓舞する。”KANSENの皆と演習もやったんだ、あの人数相手に戦えるようにもなった…!”大丈夫だ、と言う強い決意をする。
海の風が体全身に当たった。更に緊張が増す。甲板の先端、隣には明石も立っている。そして…
―って、どうやって変身するんだっけ?
―にゃにゃ、忘れちゃったのかにゃ?
そう言って明石は続ける。
―まずブレスの舵の部分を回すにゃ
言われた通りにすると、WARSブレスの上部にある青い部分に巡洋艦のマークが表示された。
―そしたらブレスを構えてこう叫ぶにゃ指揮官!エンゲージ!!
翔一は明石の言葉に力強く頷いて叫ぶ。
―エンゲージ!
すると、WARSブレスから青く輝くキューブの光が溢れ出した。その光は翔一を包み込む。そしてそのまま光は翔一と共にKANSENたちが戦っている場所に飛んでいった。
戦場に降り立ったその光は、KANSENだけでなくテスター、ピュリファイアーの目を奪う。
ローンがつぶやく。
―あれは…
光を見てベルファストが言う。
―ご主人様……なるほど、明石さまの作っていたものが完成したのですね
そして、光が合成音声がその場に鳴り響いた。
”WARS ENGAGED”
光の中から現れたのは翔一が変身、”エンゲージ”した姿だった。
―よし、エンゲージ成功にゃ!
WARSは太陽に照らされ輝く。その姿にテスター、ピュリファイアーが言う。
―ほう、その姿を完全に制御下に置いたか
―じゃあ、どこまでいけるか試そうじゃん!
再び攻撃が開始されると、それをかわしながらWARSが叫ぶ。
―出雲とローン、サンルイ、エンタープライズは周りの量産型を頼む!
―了解!
WARSは右手にビーム砲を出現させた。目の前にある量産型に最大出力で砲撃をお見舞いすると、いとも簡単に沈んでいった。開いた海路を進み更にKANSENに指示を出す。
―ベルと如月、伊吹はピュリファイアーを頼む、ネプチューンとモナークは俺と来てくれ、テスターの相手だ!
―了解!
散開していく仲間たちが見える。WARSは早速テスターの方に向かっていった。後から2人もついてくる。テスターの攻撃をかわしながら自らも反撃している。テスターの近くに迫ると、WARSは左手にレールガンを出現させ彼女に撃つ。凄まじい速さの弾丸にテスターは避けきれず被弾し、その体組織が削られた。その部分を再生しながらテスターが言う。
―くっ…分かってはいるけど、お前の破壊力はやはり高いな…
WARSが答える。
―だったら、このまま撤退するか?
―いいえ、データも取りたいし、もう少し遊んでいくわ
そこでネプチューンとモナークが言う。
―遊べるほど余裕があるとでも?
―ここで終わらせる
2人は特殊弾幕を発動させる。WARSの攻撃も相まって、テスターは避けることが出来ず防御を強いられる。しかし、ただでやられる彼女でもない。テスターは防御しつつその巨大な艤装からビームを一斉掃射する。ギリギリのタイミングでWARS達はかわしていった。少しの間攻防が続き、テスターに隙が出来るとWARSは一気に彼女に近づいた。攻撃が続く中テスターが言う。
―開発艦ねぇ…確かに強いわ………がっ!
WARSがテスターに肉薄した時に鈍い音が聞こえた。彼女の腹にその拳が直撃していた。流石にこの攻撃は予想していなかったようで防ぐことが出来ず、テスターは十数m飛ばされていた。
―ぐぅ……なるほど、まともには食らいたくないわね…
WARSの強みは主となる装備の、遠距離武器の破壊力だけではない。その格闘能力は一線を画す。
吹き飛ぶテスターを追い、更に格闘攻撃を繰り出そうとする。それを認めたテスターはこれ以上接近されないようビームを放とうとする。しかしネプチューンとモナークの援護射撃が艤装に当たりWARSへの照準はずれ、ビームは明後日の方に向かった。
再びテスターの眼前へと迫ったWARSが言う。
―まだ行くぞ!
そう言いながら拳を突き出した。一方テスターは攻撃を防ぐ態勢を作った。連続で繰り出される攻撃に、かろうじて対応できているようだ。
―っ!…接近戦用には作られてないんだからっ…少しはっ、手加減しなさいよね…!
テスターはネプチューンとモナーク、そしてWARSに囲まれた。3人がかりの攻撃によっていよいよ後がなくなる。
ネプチューンが言う。
―さあ、もうじゃれあうようなことも出来ませんわ
モナークが続く。
―降参するか…?
WARSは両手のビーム法をレールガンを構えた。いつでも撃てる状態だ。本気でKANSENたちを倒すつもりであればテスターは焦ったであろうが、しかし彼女は冷静だった。周囲を一睨みすると言う。
―もう十分かしら……ピュリファイアー、撤退だ!
テスターはそう言うと自分の周囲にビームを放射、そして艤装で海を叩くと海水の飛沫を上げさせて3人をかく乱する。飛沫が止むとそこにテスターはいなかった。
―えぇー…まあいいか、じゃあね!
ピュリファイアーもそれに続いて撤退する。同時にセイレーンの量産型艦船も消えていった。
WARSは周囲を見て一旦の危機が去ったことを確認すると、張っていた力を抜いた。
―はあ…
例の黒WARSを撤退に追い込んだ時は気持ちが高ぶっていたので疲労感はあまり感じなかった。しかし、先ほどまでのようにKANSENたちと同じ環境で戦うことによって、その空気感を指揮艦から見ている時とは違う視点で感じ、今までとは全く違う緊張をしていた。
そんな姿を見たエンタープライズが言う。
―しっかり戦えていたじゃないか指揮官
翔一は戦場で直接戦うにおいてははっきり言って素人だ。不安も多分にあった彼に微笑むエンタープライズは、彼に安心をもたらした。
―ありがとう、エンタープライズ。開発艦の皆も、初めての出撃にも関わらずよくやってくれた
伊吹と出雲が言う。
―はい、これからも精進いたしますっ
―ああ、実戦でも十分実力が出せた。指揮官も、演習より良く戦えていたんじゃないか?
ローンとサン・ルイが続く。
―ありがとうございます、指揮官。でも、もう少し敵を沈めたかったですが、これはまたの機会ですね…ふふっ
―うん、あなたは的確に私たちを導いてくれた
皆の声に少し浮かれる翔一、そんな彼を見てネプチューンとモナークが言う。
―でも、これからが大切ですわよ指揮官さま
―戦場では油断が最大の敵だ
この言葉で今まで出撃してきた作戦を思い出した。様々な記憶が蘇る。もちろん2人が言ったことは忘れてはいない。
―ああ、分かってる。だから皆、これからもよろしく頼む!
WARSは仲間たちに頭を下げた。
―もちろんですご主人様。このベルファスト、全力であなたをサポートしていきます。さあ、お顔をお上げください
頭を上げると見えたのは、ベルファストの優しい微笑みだった。その後ろにも暖かにWARSを見守るKANSENたちがいる。
―如月も…が、がんばりましたっ
控えめに、しかし自慢げに声を弾ませて言った如月。彼女は小さい体ながらも、大量のセイレーン艦を撃破していた。WARSもテスターと戦っていた時にそれを気づいていた。そんな如月の頭をなでる。
―よく頑張ったな
―へへ…
如月は恥ずかしそうに頬を染めた。
手を離すと、近くからバリバリという音が聞こえた。周りを見るが何も怪しいものはない。しかし、
―ご主人様、それは…
ベルファストが言いながらWARSの左腕を指す。ブレスの部分だ。
―ん?………!
WARSブレスがひび割れていた。それを認めた瞬間WARSの変身は解かれた。
―おわぁ!
当然、人間に戻った状態で海上で立つことはできず、翔一は海中に沈む。
―ご主人様…!
―指揮官!
ベルファストとエンタープライズが彼の身を案じるが翔一はすぐに上がってきた。冷たい海に浮かぶ翔一は、今日が温かい日でよかったと思った。
―ぶはっ
―まったく…何があったんだ?
顔を水上に出すと、モナークが手を伸ばしてきた。
―ああ、ありがとうモナーク……あ…
翔一はモナークに差し出す手を止めた。そして自分の状況を整理した。今、海面から頭だけ出している状態だ。必然的に皆を見上げる状態になっている。助けてもらおうとしたのは良いものの、周りを一瞬見ると嫌でも(嫌じゃないが)KANSEN達のいろいろなものが見えてしまっていた。
モナークはそれを知ってか知らずか、何もなかったように言う。
―ん?…なんだ?
―あ、いや…何でもない…
そこでローンが言う。
―ふふっ、指揮官~……見たい…ですか?
―なっ、そういうわけでは…
更に、翔一の内心を察した伊吹は顔を赤くしスカートを抑える。
―あ、主様っ…見てない、ですよね?
一方エンタープライズも頬を染め、そっぽを向いたまま少し離れた場所に行ってしまった。
そしてネプチューンは悪戯顔で言う。
―ふっふふ、これはラッキーですね。指揮官様
サン・ルイは呆れた様子だ。翔一がこの状況をどう脱しようかと思考している最中に、出雲が彼の止まっていた腕を引きずりだした。彼女の顔もほんのりと赤くなっている。
―し、仕方のない奴だな…
―すまん…
流石KANSENというか、男一人を片手で吊るすくらいはなんともないようで、出雲は表情一つ変えず翔一を持っていた。雑に持っているのは気恥ずかしさもあるのだろう。ベルファストは吊るされた翔一を見て苦笑いした。
―見ていないかと言うのは、何のことだ…?
モナークはそう言いながら出雲に吊るされている翔一の胴に手を回し、今度は彼を脇に抱えた。
―さあ、戻るぞ
―あ、ああ…
何食わぬ顔でモナークは指揮艦へ足を滑らせていく。結局彼女は終始、事の内容を分かっていなかったようだ。
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指揮艦―
指揮艦に戻ってきた皆は、母港に戻るまでの間それぞれでくつろいでいた。そんな中で翔一はひび割れたWARSブレスを明石に見せていた。
―う~ん、これは作り直さないといけないかにゃ
明石はブレスを見るなりそう言った。
―そうか…すまない、もう少し気を付けていれば
―謝ることはないにゃ。元々耐久性はあまり考えていなかったから仕方ないにゃ
明石は更に続ける。
―今度はもっと頑丈に作るにゃ
指揮艦は高く上った日に照らされて進んでいる。
まだ母港までは時間がかかりそうだ。
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母港―
母港に着くと数人のKANSENが待っていた。一人は手を振っている。ジャベリンだ。こちらに声をかけている。
―しきかーん!
翔一は彼女の方に向かっていった。後ろから出撃したKANSEN達も出てくる。
翔一がジャベリンの近くに来ると口を開く。
―どうしたんだ、4人でそろって
ジャベリンの他に綾波、ラフィー、ニーミが近くにいた。翔一の言葉にニーミが答える。
―少しお散歩をしていたんですよ
ジャベリンが続く。
―そしたら指揮官たちが返ってくるという通信が入ったので、お迎えに来ちゃいましたっ
”へへっ”と可愛らしく笑うジャベリン。その隣にいるラフィーがつぶやく。
―指揮官、お昼寝…しよ
ラフィーは翔一の軍服の裾をくいくいと引っ張る。ちなみに翔一は戦闘が終わり、指揮艦に乗った直後に濡れた軍服を着替え、予備のものを着ていた。
―仕事がまだあるからなぁ
指揮官の答えに続き、綾波が言う。
―ラフィー、指揮官が困ってるです。お昼寝なら綾波の部屋を借りるといいです
―ん、そうする…zzz
部屋を借りるまでもなく寝だした。
―もう寝てる!?
ニーミが驚いた。
翔一は皆で何でもないことを話すということに幸せを感じていた。この小さなことだけで疲れが吹き飛ぶようだ。
ジャベリン達が話す。
―それじゃみんな、そろそろ行こうか。指揮官の邪魔になっちゃうかも知れないからね
―そうね、それでは指揮官、失礼します
―また今度、です
―ばいばい…zzz
翔一は彼女たちに手を振り、遠ざかっていくその姿を見送った。
さて、一休みしたら夕方まで仕事の続きだ。
どんな所がよかったですか?
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