アズールレーン~希望への航路~   作:ざぎねぅ

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15話 ツェッペリンの悩み file1

海上―

 

 

 WARS ACHILLESを使いこなし、新たなセイレーンを撃破した数日後の話。

 再度現れたセイレーンの量産型と戦闘を行った翔一とKANSENたちは、指揮艦に乗り母港へ帰還する途中だった。

 

―あの時は助かったよ。ありがとうユニコーン

 

 翔一が言った。ユニコーンは先ほどの戦闘中、傷を負ったWARSとKANSENたちを自らの力で回復した。

 

―えへへ、ユニコーン頑張ったよ

 

―いつどのような脅威があるか分からない戦場で、瞬時にKANSENの回復が出来るのはとても頼りになる事です

 

 ベルファストは微笑み、照れた様子でうつむき頬を染めるユニコーンに言った。彼女は2人に褒められさらに恥ずかしくなったのか、両手に持つゆーちゃんを顔の前によせた。

 

―…

 

 そんな3人を眺める1つの影があった。

 

 ”卿は指揮官として、どんな気持ちで戦っているんだ…?”

 ”皆と生きて帰る。という気持ちかな…”

 ”俺は笑いあうことが出来る仲間達を守りたい…だから戦う”

 ”もちろんお前もその1人だぞ”

 

 そんな話を思い出しながら、その影は美しい銀髪を揺らし、窓から見える空を見つめていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

廊下―

 

 

 次の日の朝、いつものように翔一は食堂で朝食をとり執務室に戻ろうと歩いていた時のこと。背後から誰かがやってくる。

 

―指揮官さまぁ

 

 甘い声が聞こえると、翔一は右腕に温かく柔らかいものを感じた。

 

―ん?…赤城か、おはよう

 

―はい、おはようございます

 

 優しい顔がこちらを覗いた。赤城とのこんなやり取りも何度目だろうか、すっかり慣れてしまった。

 

―ふふふ

 

 彼女は何やら嬉しそうに目を細めた。

 

―どうしたんだ、そんなに嬉しそうにして

 

 翔一がそう聞くと、彼の目にもう一つの人物が映し出された。

 

―指揮官…と、姉さま…

 

 加賀だ。彼女は翔一に用があったらしいが相変わらず翔一にくっつく赤城の様子を見て微妙な顔をしている。

 

―あら、加賀も来ていたのね

 

―はい、例の報告をしようと

 

 報告…何のことだろうかと翔一は思うと加賀は続ける。

 

―指揮官、続きは部屋でしよう

 

 いつの間にか執務室の前についていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

執務室―

 

 

―おかえりなさいませ、ご主人様。お仕事の準備はもうできていますよ

 

 ベルファストが翔一を迎える。

 

―ありがとう、ベル

 

 そして翔一の目には彼を待っていた今日の副秘書艦、ツェッペリンが映る。加賀が彼女に近づき二、三話をした。

 

―ああ、あの事か

 

 ツェッペリンがそう言うと、エンタープライズが続く。

 

―そうか、完成していたんだったな

 

 最近、どうも空母たちの間に隠し事があるようで翔一はもやもやしていた。やはり思い切って聞いてみようか。彼は口を開く。

 

―空母のKANSENたちは最近、何かしているのか?

 

 赤城は満を持して、といった様子で答える。

 

―指揮官さま、赤城がもっと指揮官さまの役に立てるのですわ

 

―そうなのか?

 

 確かに赤城は、もちろん加賀も戦場において特に高い戦闘能力を持っている。演習だけでなく、実戦でも見せるその力はとても頼りになるものだ。赤城は続ける。

 

―はい。先日、指揮官さまが得た新たな力がありますよね?

 

―ああ、アキレスのことだな

 

 WARSの駆逐艦を模した形態のことだ。駆逐艦のKANSENより速く移動ができ、扱いに慣れるまで大変だったが皆との訓練で使いこなすことが出来るようになった。

 

―そうです。そして次は、私のような空母の力を扱えるようになりますわ

 

 彼女の言葉に翔一は合点がいった。WARSの新しい形態のために空母たちが明石の情報収集を手伝っていたという事か。そして赤城は”ふふっ”と微笑み続ける。

 

―その名も…

 

―WARS AETHER(アイテール)にゃああああ!

 

 ”バンッ”と執務室の扉が開き、明石が現れた。赤城は明石にセリフを奪われた形となり微妙な顔をしているが、それは置いておこう。

 

―朝から元気なものだな…

 

 ツェッペリンがつぶやいた。しかし明石は気にせず話す。

 

―指揮官の新しいフォームは空母の力を使えるにゃ

 

 明石は小型のホログラフィーを取り出した。そこにWARS AETHERが映し出される。

 

 

【挿絵表示】

 

 

翔一は映し出されたその姿の背中に指をさす。

 

―この灰色のパーツは何だ?

 

―それはKANSENたちの艦載機に当たるものにゃ

 

 明石は続ける。

 

―これを1つ1つ分離させて飛ばして航空攻撃が出来るにゃ

 

 エンタープライズが聞く。

 

―砲以外の武器が搭載されていないようだが、雷撃や爆撃は出来るのか?

 

―大丈夫にゃ。キューブが魚雷と爆弾を構成してくれるから心配ないにゃ

 

 そして、彼女は自慢げに語り始める。

 

―このアイテールにも、アキレスのように特殊能力があるにゃ。見えない敵も見ることが出来るのにゃ!

 

―見えない敵?

 

 そう言う翔一に明石が答える。

 

―そうにゃ。この世に存在する物なら目に見えなくなったものでも探知できるにゃ

 

 彼女はさらに続ける。

 

―もちろん能力を使わなくても普通の空母のKANSENよりも探知能力は高くなってるにゃ。ある程度なら海中の情報も読み取れるにゃ

 

―なるほど

 

 見えない敵、透明になるものなどか。今後そのような敵も現れるかもしれないし、それに対応できると言うのはありがたいな。海中も見ることが出来るという事は、潜水艦のKANSENたちの補助にもなるし、戦いの幅が広がるな。明石が一通り説明を終えるとポケットからカードを取り出す。

 

―それじゃアップデートしていいかにゃ?

 

―ああ、頼む

 

 翔一は左腕にWARSブレスを出現させ、明石の方に向ける。

 

―ほいにゃ

 

 明石がカードをブレスにかざすと、アップデートが行われる。カードが光となり消えると明石は満足げな顔をする。

 

―試してみるかにゃ?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

演習場―

 

 

 明石の提案に乗った翔一たちは早速、演習場に赴いた。WARSにエンゲージした翔一は海に波紋を描き、沖で待つKANSENたちに近づいていく。彼女たちの後方には指揮艦が見える。

 

―それじゃあ、指揮官。アイテールになってにゃ

 

 指揮艦内部から無線を使ってそう言う明石に翔一はうなずき、WARSブレスを構え舵を回す。

 

 ”AETHER DEFORMATION”

 

 WARSの姿が変わるのを確認すると、明石は彼に言う。

 

―指揮官、早速飛んでみるにゃ!

 

―ど、どうやって飛ぶんだ?

 

―飛ぼうと思えば飛べるにゃ!

 

 WARSは思い切って”飛べ”と思い、両足で海面を蹴った。そして、

 

―おおっ

 

 彼は先ほどよりも空を近くに感じた。

 

―どうにゃ?

 

―飛べる!

 

 WARSは海上にいるベルファストを見た。優しい彼女の表情が見える。WARSは宙に浮いたまま、少し前方に飛んだ。

 

―指揮官さま!

 

 赤城がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

 

―指揮官さま、初めての飛行でまだ体が慣れないでしょう?指揮官が難なく飛べるようになるまで、この赤城がお手助けいたしますわぁ

 

 赤城はそう言うとWARSの両手を握る。これまたいつも通りな彼女の様子にWARSは苦笑する。とはいっても顔は動かないが。

 

―ふふふ…

 

 なんだか嬉しそうだ。しかし、そんな彼女の様子とは裏腹に、明石が申し訳なさそうに言う。

 

―あのぉ…

 

―なにかしら?

 

―指揮官は特に補助なしでも飛べるはずにゃ…

 

―え?

 

 赤城は目を丸くして聞き返した。

 

―前回の反省から、指揮官の動きの癖と他のみんなの動きをいろいろ解析して、飛行時も特に練習無しで使えるようになってると思うにゃ…

 

―あら、そうなのね

 

 明石の話を聞き、WARSは一旦赤城に手を放してもらう。

 

―赤城、少し1人で飛んでみるよ

 

―はい…

 

 赤城は残念そうな顔をしたがWARSは続ける。

 

―まあ何があるかは分からない。隣で一緒に飛んでくれないか

 

 そう言われた赤城は先ほどとは逆にぱっと明るい表情に変化をすると、やはり先ほどとは逆の声音で答える。

 

―はいっ

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

演習場―

 

 

 特に問題なく飛行できたWARSは、KANSENたちと演習場を自由に動いていた。びゅんびゅんと飛び回るWARSの姿を見てエンタープライズが言う。

 

―ここまでの機動が出来れば実戦でも大丈夫だな

 

 明石が続く。

 

―指揮官、次は攻撃してみて欲しいにゃ。

 

 彼女が言うなり、海面に的がずらりと出てきた。それを見てWARSはうなずく。

 

―分かった

 

 WARSは攻撃を念じると背中についている灰色の武器、グレイフライヤーが飛び出す。全部で34機の航空機となるそれは、瞬く間に的を破壊していった。そしてさらに追加される的を爆撃、雷撃で木端微塵に砕いていく。

 しばらく攻撃の練習を続ける姿を見て加賀が提案する。

 

―指揮官、私が式神を出す。動く的を撃ち落してみろ

 

 そう言うと、彼女は両手に青い式神を持ちWARSに向かって投げた。俊敏に動き彼に迫る式神は、グレイフライヤーの攻撃を受けて消えていく。

 

―ほう、よく出来ているな

 

 加賀はいとも簡単に撃ち落されていく式神を見て驚いた。

 明石が言う。

 

―おお、ここまで順調に動かせるとは思わなかったにゃん。ま、さすが明石が設計しただけあるにゃ

 

 彼女はさらに続ける。

 

―指揮官、このまま続けるかにゃ?

 

 WARSは考えた様子を見せると言う。

 

―そろそろお昼だし、一旦終わろうか

 

 そんなことを言う彼の姿を見上げるヒトがいた。

 ツェッペリンは真上にある太陽に照らされ、しかし逆光で暗く見えるWARS AETHERの姿を、終始じっと見つめるだけだった。




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