執務室には、その中にドアを隔ててもう一部屋ある。基本的に業務以外の暮らしをするような、プライベートな場所である。この部屋は特に名前はないらしい。これから生活部屋と呼ぼうか。
そこに、この母港で生活するための物を置き、一通り整理したところでつぶやく。
―さて、行くか…
―もうよろしいのですか?
ベルファストが聞く。
―ああ、もう準備はできた。もともと荷物は少なかったしな
言い終えるとほぼ同時に、隣の部屋である執務室の扉を開ける音が聞こえてきた。
―…どなたでしょうか?
ベルファストはそう言うと、執務室の方に足を運ぶ。彼女がドアを開けると同時に、赤い影が見えたかと思うと、それはこちらに向かってきた。
―指揮官様~♡
―ぅお…!
ベルファストをよけてすすすっと寄ってきたそれは、獣の耳のようなものを頭に、そして、とても大きいしっぽのようなものをつけていた。こんなのが早足でやってくるのだから、変な声を出して驚いてしまう。
―やっと近くでお会いできましたわ、指揮官様♡
彼女は翔一との距離を詰めながらそう言う。なんだ、やけに近くに来るぞ…。
―あぁ、えぇっと…今日からここの指揮官になった、港翔一です…あの、君は…
さらに距離を詰めながら。
―あら、申し遅れてしまいましたわ。私、一航戦の赤城と申しますわ
赤城…なるほど、重桜の空母か。いや近い、そのまま進まれると当たっちゃう…なんか手も繋がれてるし
―いや、ちょっと、近すぎないか
―ふふ、私たちに近すぎというものはありませんわ~。むしろ密着している方が良いのですよ…?
わあぁ、やわらかい…というか結構すごい格好してるな。胸元が開いた着物だし…ん?スカート?じゃあこれは着物じゃないのかな…?そう思えばベルファストもなかなか激しく胸元が開いたメイド服だよな。
等のベルファストは、かなり驚いた顔をしている。
………ハッ、いかんいかん女性の前でこんなことを思ってしまうとは、気を取り直さないと。
―あら…?あらあらぁ?指揮官様、赤城のここが気になるんですのぉ?
―え、あ、違う違う!というか、少し離れて!
―んぅ…指揮官様のいけずぅ
赤城の肩を押して自分から剥がすと、拗ねたような声をした。
―ご、ご主人様…
少し困った顔でベルファストがこちらに話す。
―…それじゃあ、行こうか
―…?指揮官様、どこかに行かれますの?
―ああ、各陣営にあいさつをと思ってね
―そうなのですね!それなら、まず重桜の寮にいらしてください!
勝手に話が進んでしまった。
―ベルファスト、それでもいいかい?
―はい、ご主人様の意のままに
―そうか、なら行こう
3人は、重桜寮に歩を進めた。
―――――――――――――
寮につく直前、もう一人重桜のKANSENに出会った。
―姉さま、こんなところにいたんですね
―あら、加賀。どこに行っていたの?
―はあ、急に飛び出していったから探していたんですよ
彼女のシルエットはどことなく赤城に似ていた。
―指揮官様、こちらは私の妹、加賀ですわ
―加賀だ
彼女はひどくさっぱりした自己紹介をしながら敬礼する。これを受けてこちらも敬礼を返した。
―今日からこの母港の指揮官として従事する、港翔一です。よろしく
―ところで、重桜寮に何か用か
―ああ、各陣営にあいさつをしようと思って、最初にここに来たというわけだ
―そうか、なら、案内がてら私もついていこう
こうして、4人となった一行は寮に向かった。
寮だけでなく、重桜陣営が生活している区画は風情のあるものだった。鳥居があったり、長屋のようなものがある。翔一は重桜出身だが、このようなところは観光地でもなければ見ないような光景だと感じた。といっても翔一は物心ついた時から軍の施設にいたので、似たような光景を見たのかどうかすら覚えていないのだが。
一通り寮を回った後、最後に城のような場所に行くことになった。長門というKANSENに会いに行くという。
―普段外に出ることは少ないが、あっておいた方がいいだろう
加賀が言うとどこからか別の声が聞こえる。
―あら
―お
一人が長い銀髪、もう一人が長い茶髪をしていた。
―あの二人は…
―ご主人様、あのお二人は翔鶴様と瑞鶴様です
―なるほど
五航戦か…となると赤城と加賀の後輩的な存在か?
二人が話しかけてくる。
―先輩たちと…あなたは…
―今日からここの指揮官になりました。港翔一です。
敬礼をする。
―君が噂の指揮官だね。私は瑞鶴、よろしく頼むわ!
―翔鶴です。よろしくおねがいしますね
二人も敬礼を返し、自己紹介をする。
―ああ、よろしく
ここで赤城が尋ねた。
―ところで、長門は見たかしら?
―さあ、いつもの場所にいるんじゃないですか?…あ、あの子と一緒にお昼寝でも?
―指揮官様をご案内するだけよ
―ちょ、ちょっと翔鶴姉
なにか気まずい空気になった。
―顔を合わせるといつもこうなるんだ…
―そうなのか
加賀が補足してくれた。
―指揮官様、行きましょう。こんなのに相手していても時間の無駄ですわ
―お、おう
赤城はさっさと城に向かおうとする。
―そ、それじゃあ二人とも、また
おいて行かれるわけには行かないので、こちらは二人に別れを告げる。
―しきかーん!今度お茶しましょうね―!
翔鶴が手を振りながらそう言う。
―ああ!喜んで!
それに翔一も答える。その時、何か後ろの方から冷たい感覚があった。
―……!
赤城が何やら怖い顔をしていた。
―ひ~怖い怖い
翔鶴が言う。この二人はそんなに仲が悪いのか?
―あの子、要注意ね…
赤城が何かつぶやいた気がしたが、気にしないでおこう。
――――――――――
城の中に入り、長門がいるという部屋の前にたどり着いた。途中で陸奥という子にもあったのだが、彼女は長門の妹らしい。姉である長門はどんな人なんだろうか。障子を開ける…
―んぅ…すぅ…
そこには小さな女の子が眠っていた。昼寝をしている。もしかして翔鶴は本当にこのことを知っていたのだろうか。
―寝ているな
加賀が言う。
―ああ、寝てる
確認するように翔一もつぶやいた。
この子が長門か?陸奥と見た目の年齢はほとんど変わらないように見える。
―ん……ん!?
起きたか
―どうも、今日からこの母港の指揮官になりました。港翔一です…君が、長門かな?
長門は少し驚いたような素振りをし、こう言った。
―…余は長門…重桜の長門である!
かわいい声で、なんとも勇ましいセリフを放った。
―…
なんとなく黙ってしまった。
―よ、余は重桜連合艦隊旗艦―長門である。お主は指揮官か?天下を取る資格があるか、しかとこの目で見させてもらおう
寝ぼけているのか、今翔一が自己紹介した事を忘れているようだ。そこをつっこんでも仕方ないのでこう続ける。
―ああ、そうだ。これからよろしく
そういうと、長門はそわそわしながらこう言う。
―す、すまぬ。現在の重桜の長である余がこれでは、格好がつかんな…わざわざここまで出向いてくれたこと、感謝するぞ
―俺もあいさつをしに来ただけだから、大したことじゃないよ
この後少し話をし、重桜の区画を離れることにした。赤城と加賀は仕事があるようで、城を出た後分かれた。そもそも赤城は翔一を見つけた時に、仕事を途中で抜け出していたらしい。
――――――――――――
重桜寮から戻る途中、ふと気になったことをベルファストに聞いてみた。
―なあ、ベルファスト。この母港にはなかなか特徴があるというか、そういう人がたくさんいるのか?
これにベルファストは苦笑いしながら答える。
―ええ、癖のある子が多くいますね…
―そうか、じゃああれは…
先刻執務室に行く間に見たことがあるような人を発見した。
―ムフフ…
にやけながら重桜の駆逐艦の写真をバシャバシャ取っている。写真を撮ること自体はいいかもしれないが、その動きからどうしても不審者のように見える。
―ああ、あの方は…私と同じくロイヤル陣営、そして空母のアーク・ロイヤル様です
―本当に…KANSENか?あれではただのロリコ…
―ロリコンではなぁい!
―うぉあ!
少し目を離した隙に目の前に現れた。
―あ、あらかじめ言っておくが駆逐艦の子たちには何というか…そう、そ、そのはつじょ…じゃなくて、愛しく思っているが、マナーに従って自重しているわけだ。け、決して、犯罪ではないぞ…
急に大声をあげたと思ったら今度は恥ずかし気に言い訳(?)的な事を言い始めた。そこでベルファストが言う。
―アークロイヤル様、このような行動はお控えいただくようおねがいしましたが
―げ、ベルファスト…い、いや違うんだ。これはそのぉ…
―少しならいいのですが、最近は過剰に駆逐艦の子たちを追いかけていると伺ております。中には怖がっている子もおりますので
―く…!わ、わかったよ…
―それでは、ロイヤルの陣営の区画にお戻りください
このベルファストの言葉を聞き、思いついた。
―そうだ、このままロイヤルのみんなにあいさつに行くか
―――――――――――
―ふう、私は素直に寮に戻るとしよう。それじゃ閣下、また
―ん、また
ロイヤル陣営の生活する区画に入った後、ほどなくしてアークロイヤルは自分の部屋に戻っていった。
ここは重桜の静かな美しさと異なり、豪勢さがあるところだ。よく見れば、ところどころに花も植えられている。そんなロイヤルエリアの奥の方、ここにも大きな城がある。ベルファストが言うには、ここに合わせたい人がいるらしい。そんな城に入り、中庭に出た時、何やら忙しく動きまわる人たちがいた。
―あ!ベル!戻ってきたのなら手伝ってちょうだい!
母港についたときに出会ったエディンバラが、せわしなく何かの準備をしていた。
―姉さん、今はご主人様をご案内している最中なので
翔一の付き添いを優先してくれるらしい。しかし、他にも忙しそうにしている人がいるので質問する。
―ベルファスト、ここで何かするのか?
―はい、いつもこの時間帯はお茶会をしているんです
―そうなのか
―よかったら、参加してみてはどうでしょうか。皆様、歓迎していただけると思いますよ
ベルファストが微笑む。
―それに、ここにはご主人様にお会いしてほしい方もいらっしゃいます
―なら、参加しようかな
準備を見守りつつ、先刻会っていないメイドたちとも少し交流ができた。
――――――――――
―あなたが指揮官?
お茶会の準備が終わり、参加する人を待っていると後ろから甲高い声が聞こえてきた。
―ああ、そうだよ。きみは…
―私はクイーン・エリザベス。ロイヤルネイビー超弩級旗艦よ、この名を骨に刻んでおきなさい!
言葉の発しかたと内容から、高飛車そうな子だと感じた。これに翔一も返す。
―よろしく、エリザベス
―なっ…///
―ん?
なんとなく名前を読んでみたが、相手は言葉に詰まっているようだ。なにか変なことを言ったつもりはなかったが。
―ま、まあ、あなたがどーしてもそう呼びたいならそう呼んでもいいわよ!
―ん?…じゃあ、そうするよ
よくわからなかったがそうすることにする。
―ベル!指揮官の案内ご苦労様!
―ありがたきお言葉です。陛下
ここでエリザベスが何か思いついたようで、みんなに提案する。
―そうだ!今日はメイドたちもお茶会に参加しなさい!お菓子の数もいつもより多くあるようだし
―よろしいのですか?
―ええ、指揮官の着任祝いも含めてささやかなパーティーよ!
そういうと、ほかのお茶会参加者も各々椅子に座っていった。
―――――――――――
―さて、みんなの紹介をするわ
そう言いつつ、エリザベスは立つ
―今日来ているメンバーを紹介するわね
―この子はウォースパイト、私の側近よ!
―よろしく、指揮官
―ああ、よろしく
他に来ているKANSENと比べて小柄だが、近くに大きい剣を置いていることもあり、頼りになりそうだ。
―こっちはイラストリアス、そしてユニコーン
―よろしくお願いします。指揮官さま
とても落ち着いた印象だ
―よろしくね指揮官…あの、お兄ちゃんって呼んでいい?
―ん?ああ、いいよ
流れでいいよと言ってしまったが、お兄ちゃんと言われるのは少し恥ずかしい。
―それと、フッド
―フッドです。よろしくお願いしますわ、指揮官様
―今いるのはこのくらいね
エリザべスは紹介し終えると、静かに椅子に座る。そして翔一は、
―改めてこれからよろしく、みんな
それからは、楽しくお茶会を進めていくのだった。
にゃ!明石にゃ!今日はこれといって設定を話すことがないにゃ!あえていうなら、赤城や大鳳みたいなKANSENがいる理由にゃ!この設定は作者の自己解釈的なものだからあまり気にしなくてもいいにゃ。それじゃ行くにゃ!
まずKANSENたちは兵器でありながらも感情をもってるにゃ。でも指揮官という男に出会ったことで少し恋心を知るのにゃ。そんでもって指揮官はKANSENたちの指揮権があるから、KANSENたちの行動をある程度制御できるにゃ。またKANSENのソフトウェア上、指揮官がよほどおかしなことをしない限り、KANSENたちは指揮官に背くことが出来ないのにゃ。つまり指揮官の言うことは絶対ってことだにゃ!この事と恋心が混ぜ合わさり、こじれた結果、指揮官があらゆる意味で絶対的な存在になるのにゃ!んで、赤城や大鳳のように過剰な愛を指揮官に向けるKANSENが表れるのにゃ!結局KANSENのシステムやメンタルキューブのバグみたいなものにゃ!
今日はこんな感じにゃ!次も読んでにゃ!
細かい設定、設定画はここ(ピクシブ)にゃ
感想もよかったらよろしくにゃ
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