ハイダーの姿を暴いたWARS達。その一方でツェッペリン達は、彼らと別れて追ったセイレーン艦隊と戦闘を行っていた。
―U81、U556、お前たちは相手の後ろに回って不意打ちだ
ツェッペリンが潜水艦たちに指示を出した。
―探知されないように気を付けろ
彼女がそう付け加えると潜水艦たちは答える。
―”はーい”
ツェッペリンは前方の機敏に動き攻撃を行う前衛艦達を見た。一撃一撃は決して高くない攻撃力であるが、確実に敵艦隊の行動を鈍らせている。また敵艦隊は後方から潜水艦たちの雷撃を受け沈んでいく。そしてツェッペリンは艦載機を撃ち落されないように気を張り、隙を見て爆撃、雷撃を行っていた。
攻撃を開始してどれくらい経っただろうか。全ての敵艦が破壊された時、美しい満天の星空に陰りが見えた。
―あれは…?
その陰りはやがて空よりも黒い雲となっていき紫の雷を撃ち落とした。ツェッペリンはその黒雲に見覚えがあった。
―まさか
過去の戦闘記録で、翔一たちが黒いWARSに遭遇したことが示されていることを思い出した。しかしそれはWARSとなった翔一に撃退され、セイレーン達と闇へ消えていった。それ以降の出現は確認されていなかった。
今ここで現れるのか。そう思ったツェッペリンは身構える。
―全員警戒を怠るな、何か来るぞ!
彼女が言うと、ニーミも口を開く。
―は、はい。でもあれって…
レーベが続く。
―指揮官が前に戦った奴か!?
―そうかもしれない
ツェッペリンが答えると雪風が言う。
―どんなのが出てきてもこの雪風様が倒してみせるのだ!
勇敢な言葉であったが、彼女の声は少しだけ震えていた。
―とにかく気を付けろ
突如現れた上空の黒雲。ゆっくりとそれが晴れていった。しかし、
―何も…ありませんね……
ニーミが言う。
―どういうことだ
ツェッペリンはつぶやいた。
―U81、U556、そちらは何か異常はないか
海中で何かないかと思い、彼女は潜水艦たちに聞いた。
―ヒッソリ、コッソリ…って…ああ何もないぞ!
U81は突然のツェッペリンの言葉に返答が一瞬遅れた。そしてU556が続く。
―こっちも特に異常ないよ!
彼女が言ったその時だった。ちょうどU556が潜水しているところに、ほんの一瞬だけ、何もない上空から光の柱が突き刺さった。
―……!
―ココロ!
U81が叫んだ。そしてゆっくりと、U556の背中が海面に浮かんできた。
―な、なんだ今のは…!
明らかな異常事態にツェッペリンが吃驚した。
―ココロ!…ココロ!!
海面に上がってきたU81がU556を抱きかかえ、肩をゆすっている。しかし彼女の眼は虚ろで、U81にその瞳が向く気配もない。
―ぁ、ぁあ……しんじゃった…の…?
KANSENたちは、U556のエネルギー反応がロストしたのを感じた。
Z23は海面に浮かぶ潜水艦達から目をそらすことが出来なかった。
―そんな…何てこと……
そう言ったのも束の間、さらに光の柱が2本連続で現れた。気付いた時には、遠くで雪風とZ1が転がっていた。彼女たちは肉眼で見えるだけで、エネルギー反応を感じることは出来なかった。
―ぁぁ…ぁああああ!
ついにU81はこの光景に耐えきれなくなったようでパニック状態となった。しかしそんな声も、夜の海にフラッシュがたかれることで消えた。
Z23は度重なる異常に、恐怖でいつの間にか涙を垂れ流していた。
―い、いや…なんで……
一周回って喜劇とも言えよう圧倒的な敵の力に、Z23は涙もそのままに、半笑いでツェッペリンに振り返った。
―ツェッペリンさん…ど、どうすれば……
そんなことを聞かれても分からない。ツェッペリンはZ23を見つめることしかできなかった。
―…
次の瞬間には、Z23は膝から崩れ落ちていた。腕を投げ出してこちらに土下座しているような格好が目に入ってくる。
―ぁぁ……
兵器とは言え、さっきまで命だったものがあたり一面に転がっている。ツェッペリンはこの地獄絵図に小さく声を漏らした。
―…
数秒間、何も起きない。しかしこの数秒は、彼女にとっては無限の時間のように感じる。
”ドン”という音が聞こえた。その音の方を向くと、破壊しきれていなかったセイレーンの量産型が放つ砲弾が見えた。気付いた時にはもう遅く、その弾はツェッペリンに衝突する。彼女は吹き飛ぶ瞬間、月と星に照らされた自分の涙が見えた。
背中に衝撃が走る。どうやら量産型セイレーンにぶつかったようだ。
寒い。温かいのは、頬に流れる自分の涙だけだった。
こんな所で終わるなら、もっと鉄血の皆とどうでもいい話でもしておけばよかった。
ツェッペリンはその時、走馬灯のように翔一の言葉を思い出した。
”皆と生きて帰る”
”笑いあうことが出来る仲間達を守りたい”
同時に、昼の景色を思い出した。
皆、笑顔だった。自分の作った料理を頬張りながら、皆、笑顔になっていた。そんな景色を、いつまでも見ていたいと思った。
”我は…”
そうだ、今分かった。
”みんなと…”
自分が何のために戦うのか。
”みんなと……一緒にいたい…”
その時海上小さく、金色に輝く光ができた。その光は彼女を立ち上がらせ、やがて浮遊させた。そして彼女は光と共に、倒れた仲間達の元に飛ぶ。その姿はさながら天使のようで、皆に光の粒をひらひらと落としていった。
―んん、なんか目の前が光った気がするんだけど…って、ツェッペリンどうしたんだ!?
まず、U556が起き上がった。
―ぁああ!?……あれ、生きてる…
U81が目を覚ました。
―んあ、雪風様は最強なのだぁ
―お、俺はどうなったんだ…
雪風とレーベが空を仰いだ。
―え、わたし…どうなって…
最後に、ニーミが立ち上がった。
そして、
―ツェッペリン!応援に……な、なにがあったんだ
ハイダーを無事撃退したWARS達がツェッペリン達と合流した。
―お!これが覚醒ってやつ?
楽しそうにピュリファイアーがこちらを覗いていた。
―まだ撤退していなかったのか、ピュリファイアー
WARSがそう言うと彼女は答える。
―いやぁ、ちょっと忘れ物しちゃってぇ
加賀がおちゃらけるピュリファイアーを睨みつけたが、特に気にした様子もなくツェッペリンに向かった。その時、ツェッペリンの艦載機がピュリファイアーを襲った。
―ぉうわああああああ!
ピュリファイアーはツェッペリンになすすべなく攻撃され、爆散していった。
そして海には、平穏が戻った。
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母港、港―
翔一たちの激戦が終わり母港に戻るころには、水平線から朝日が顔をのぞかせていた。
エンタープライズは指揮艦から降りながら言う。
―それにしても、みんなのエネルギー反応が突然消えていった時は驚いたよ
ベルファストはエンタープライズに続く。
―ええ、どうなる事やらと…
翔一が言う。
―まあでも、ツェッペリンのおかげで助かったからよかったよ
一方U81は、
―ふぁ、大変なことがいっぱいあったからもう眠いぃ
他愛もない話しの中、KANSENたちは自分の寮に戻っていく。
―指揮官
後ろからツェッペリンの声が聞こえる。
―ん?
翔一は振り向いた。するとツェッペリンはまっすぐと彼の目を見る。
―卿の言っていることが、少し…分かったかもしれない
翔一の目には曇り一つない、晴れた彼女の表情が映っていた。
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海上―
時は少し遡り、翔一たちが母港に帰還しようと指揮艦に戻っているときのこと。
―…
姿は見えないが、じっと彼らを見ている者がいた。
”UNBALANCEよくやったわ、帰ってきて”
―…
オブザーバーの通信を聞いてもただ黙ったまま、浮遊している。
”…まあ、気が済むまでそこにいてもいいわよ。それじゃ”
オブザーバーからの通信が切れた。
―…
姿が見えれば幽霊にも間違われそうな佇まいのUNBALANCEはしかし、翔一に向ける憎悪だけは、それよりも大きいものだった。
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