アズールレーン~希望への航路~   作:ざぎねぅ

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16話 母港がハッキング!? file1

重桜寮の一角―

 

 翔一たちが2体のハイダーと戦った数日後の朝。翔一は重桜寮にいた。まだ海からそう遠くない位置にある日が、障子を明るくする。開かれたそれから見える海を眺めていると反対側から声が聞こえてきた。

 

―指揮官様~、お待たせしましたぁ

 

 翔一は赤城に朝食に誘われ、久しぶりに彼女の料理をご馳走することにしていた。赤城は大きなお盆をもってこちらに来る。

 

―ありがとう、赤城

 

 翔一が言うと、赤城は目を細める。

 

―ふふっ、あなたを愛する者として当然のことをしたまでですわ

 

 そう言って目の前の机に皿を並べていく。

 

―それで…

 

 彼女は一変して目を吊り上げると翔一の周りを見る。

 

―なぜあなたたちがいるのかしら

 

―指揮官が重桜寮に来ると聞いて、お姉さん我慢できなかったの

 

 そう言うのは翔一の右腕を自分の両腕に絡める愛宕だ。

 

―指揮官さまのにおいがしたのでつい…ふふふ

 

 そしてその反対側で大鳳が翔一に身を寄せている。

 

―私は重桜の料理が気になっただけで…ええ、ただ気になっただけですよ。そこに指揮官がいたというだけで

 

 翔一と机を挟んで向かい側に座るのはローンだ。そんな3人を睨みつける赤城が言う。

 

―指揮官様との甘い時間を阻む挙句たかりに来るなんて…本当に邪魔な虫共ね…!

 

 その言葉に大鳳。

 

―あら、そんな乱暴なことを言うと指揮官さまに嫌われてしまいますよ~。ねぇ、指揮官さま?

 

 言いながら、大鳳はその豊満なものを翔一に押し付ける。

 

―え、あ、いや、それは…

 

 ああ、今ので赤城はさらに怖い顔をしているだろう。あんまり見たくない。

 ローンが言う。

 

―はやく赤城の作る料理がほしいです~。指揮官、私が食べさせてあげますね~

 

―はは、そうかい

 

 翔一は乾いた笑いで答える。そして愛宕は、

 

―だめよ指揮官、他の子からそんなこと。お姉さんにだけいっぱい甘えて、ね?

 

―…はい

 

 赤城が料理を取りに行った直後にこの3人が来たわけだが、さすがにこの状況はやばいと思ったものの、赤城が料理を作ってくれたこともあり逃げるに逃げられなかった。彼女は今も目を光らせている。どうにか出来ないものか。

 

―そ、そうだ、赤城。みんなにもお前の料理を食べさせてあげられないか?

 

 彼女は少し目を伏せて言う。

 

―え、でも…

 

 翔一は彼女を見つめた。

 

―俺も手伝うからさ…駄目か?

 

―指揮官様がどうしてもと言うなら…

 

 とりあえずは納得してくれたようだ。

 

―それならお姉さんもついていくわ

 

―私も一緒に行きます。指揮官

 

―指揮官様、ぜひ私もお連れください

 

―いや、お前たちはここで待ってるんだ。いいな?

 

 愛宕、ローン、大鳳が翔一の言葉に”はーい”と答えると、彼と赤城は台所に向かっていった。

 

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 台所までの道のこと。久しぶりに翔一と二人きりで過ごせる時間が出来たと喜んでいた赤城であったが、先ほどのことではっきりと顔にこそ出ていないが少し不満そうな様子だ。そんな彼女の気を察してか、翔一なりに赤城に喜んでもらおうとほんの些細な行動に出た。右隣りに歩いている彼女の手を握った。

 

―あ…

 

 赤城が声を漏らした。いつもは赤城が一方的に彼にスキンシップを取っていたが、翔一が赤城にこのように近づくことはなかった。翔一からの接近に驚いた赤城は、そんな意外な事から彼女にしては珍しく、しおらしく頬を染めた。そして、そっとその両腕を翔一の腕に絡めるのだった。赤城が感じた幸せはそれまでとは逆に、顔に出さずにはいられなかった。

 

 

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 部屋に戻ってからというもの修羅場のような雰囲気が漂う中、自分で口に箸を運びたかったのだが、それが必要ないほど4人からの”あ~ん”が絶えなかったのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

執務室―

 

 

 朝食を終え、執務室に戻ってきた翔一は自分の席に着き、目の前のモニターを見ていた。今日は前回の出撃について会議を行う。前回は敵の分艦隊が離れて分散していたことから、こちら側も分散して戦闘を行った。ツェッペリン率いる分艦隊は一度壊滅し、その後ツェッペリンが”覚醒”したと言う。この現象についてはまだ、それに至る経緯や情報があまり確認できていない。KANSENたちの為にもこの”覚醒”について話し合っておこうという事で臨時で会議を開くことにした。母港はとても広く、各陣営のリーダーたちが一度に集まるのは時間がかかるので遠隔で行っている。

 そして、いつも翔一の近くで補佐をしているエンタープライズは今回の会議に参加するため自室で待機しているそうだ。

 

―ご主人様、私は先ほど申した通りロイヤルの手伝いに参りますので、しばらく席を外しますね

 

―うん、わかった

 

 翔一は部屋を出ていくベルファストを見送ると、もう一度モニターに目を向ける。彼は会議の出席者を確認した。ユニオンからはエンタープライズ、ロイヤルはエリザベスとウォースパイト、重桜は長門、赤城、加賀、鉄血からはビスマルクとツェッペリンが参加することになっている。今回はこれに加え、ニーミ、雪風、レーベ、U81、U556も参加する。

 もうそろそろ時間だ。

 

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 元気で、かつ若干幼い声が聞こえる。

 

―聞こえるかしら?

 

 エリザベスだ。彼女の隣にウォースパイトもいる。

 

―聞こえるよ

 

 翔一がそう答えるのを皮切りに、次々とモニターにKANSENたちが表示されていく。

 

―私も大丈夫かな?

 

 エンタープライズが言う。翔一は”問題ないよ”と返す。

 

―みんな揃ったようね

 

 ビスマルクがそう言う。その言葉に翔一は”それでは始めようか”と会議の開始の合図をした。

 

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―まずは、ツェッペリンのことについてだな

 

 翔一が言うとU556が真っ先に口を開いた。彼女はビスマルクの膝の上で言う。

 

―ツェッペリンは目をギラギラ光らせて皆を復活させてたよ!

 

 とても元気にそう言うU556にビスマルクは苦笑いで言う。

 

―それは皆分かっているのよ。それで、他に細かいところで違いがあったとか、そういうところはないのかしら?

 

 レーベと雪風が言う。

 

―そうは言っても、俺たちが復活したときはそれくらいしか変わったところがなかったからなぁ

 

―雪風たちが起き上がる直前のことを聞かないといけないのだ!

 

 そこでエリザベス。

 

―確かにそうね。ツェッペリン、そこのところどうなのかしら

 

―そうだな…

 

 先日のことを思い出してみる。あの時は自分以外のKANSENたちが次々と死んでいき酷い不安にと焦燥に駆られた。その時翔一の言葉を思い出し、なぜ自分が戦うのか答えを見つけた。”皆と共にいたい”その気持ちに気づいたときには体が浮いていた。

 

―…

 

 思い出すと、ツェッペリンはみるみるうちに頬を赤くしていった。それに気づいた長門が言う。

 

―どうしたのだ?そんなに赤くなって、風邪か?

 

―い、いや、そうではなくて…

 

 いつも終焉だなんだと言っている口から”みんなと一緒にいたいと思った時にすごい力が出せました。”なんて恥ずかしすぎて言えない。思わず顔を伏せるツェッペリン。そんな彼女にビスマルクは、

 

―言いづらいことなのかしら?

 

―そ、そうでもなくて…

 

 そんなやり取りで皆の頭に”?”が浮かぶ中、ツェッペリンが言う。

 

―わ、分からない。記憶があまりなくて…

 

 変に嘘までついてしまった。彼女の言葉を受けて翔一が言う。

 

―うぅん…まあ本人が分からないなら仕方ないな

 

 そして思い出したように彼は言う。

 

―そういえば俺が初めてWARSになった時に復活したベルも、目が金に輝いていたな

 

 その言葉にウォースパイトが言う。

 

―確かにそうだったわね…それに至るまでの共通点はあまりなさそうだけど

 

 加賀も続く。

 

―かなり前の話だが、レッドアクシズとアズールレーンがまだ分離していたころにエンタープライズも覚醒していた

 

 赤城が言う。

 

―確かに随分と強い力を得ていましたわね。あの時の強さは身に染みて覚えていますわ

 

 若干、つんとした様子で言う彼女だった。続いてニーミ。

 

―謎が深まりますね…

 

―そうだな

 

 ニーミに翔一がそう答えると、話を少し切り替える。

 

―そうしたら次は、ツェッペリンの覚醒の原因の一つと言えるだろう見えないセイレーンについてだ

 

 先日の戦闘でハイダーという通常では姿を見ることが出来ないセイレーンが現れた。数は2体いて、どちらもWARS AETHERで撃破できた。しかし、同じ見えないものでもツェッペリンたちが戦った、というより一方的に攻撃された相手は違うらしいことが分かっていた。

 ニーミが言う。

 

―戦闘データから見ると、ツェッペリンさんたちと戦ったセイレーンは、先に現れたハイダーとは違うという分析結果が出ています

 

 翔一が言う。

 

―そうなんだよな。しかも…

 

 エンタープライズが続く。

 

―戦闘方法としてもハイダーは手数が多いのに対し、ツェッペリンたちが戦った方は一撃必殺といったものだったというな

 

 再び翔一。

 

―ツェッペリンたちに合流した時も、俺がアイテールだったにも関わらず何も探知はされなかった

 

 ”その時はすでに撤退していたからかもしれないがな”と付け加えると1つ質問した。

 

―ツェッペリンたちは本当に何も見えなかったのか?

 

 そう言うとU81が言う。

 

―うん、何もないところからビームが降ってきたからな

 

 やはり戦場において敵の姿が見えないというのは恐ろしいことだ。それで彼女たちも壊滅まで追い込まれたのだから。

 ツェッペリンが言う。

 

―今分かっているのはこれくらいしかないな。あまり話が進まなくて残念だが

 

―そうだな

 

 翔一が言った。

 結局、現状確認のようなことだけであまり話はなかったが、以降はこれからの母港のことについてなどを2、3話してから会議は終了になった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

昼前、執務室―

 

 エンタープライズはユニオンエリアで作業があるらしくまだ執務室には来ていない。ベルファストも同じくロイヤルの方だ。

 

―指揮官様~

 

―赤城、どうしたんだ?

 

 太陽が一番高く上るよりも少し前、執務室に赤城が来た。

 

―もうすぐお昼ですし今朝と同様、指揮官様と昼食をと思いまして

 

 せっかく誘ってくれたのだしそうしようかな。

 

―そうか、ならそれに甘えようかな

 

 赤城はにこっと微笑むと言う。

 

―ふふっ、それではまたお迎えに参りますね

 

―うん

 

 翔一がそう答えると、赤城は執務室の扉を開ける。そして翔一はもう1つ付け加えた。

 

―赤城

 

―はい?

 

 彼女は振り返る。

 

―度々ありがとな

 

 あまり聞かない翔一の優しい声に赤城は少し胸をときめかせ、頬を染めた。

 

―は、はい

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 暗い闇の中、セイレーン達が集まっている。

 

―あら、今回はかなりの変わり者ね

 

 テスターは新セイレーンのデータを見ながらオブザーバーに言った。それに続くピュリファイアー。

 

―こんなのは今までになかったよな

 

 2人の言葉にオブザーバーは答える。

 

―ええ、明確に形のない個体は開発に手こずったわ

 

 さらに彼女は続ける。

 

―それじゃあ、行ってきてくれる?UNBALANCE

 

―…

 

 オブザーバーの言葉に彼は静かに赤黒いキューブを手に取り、次元を裂いて消えていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

執務室―

 

 

 赤城が執務室から去るのを見送ると翔一は仕事を再開した。目の前のモニターを眺める。まとめた資料を転送しようとしたがいつまでも完了しない。ネットの調子が悪いようだが今までそんなことがなかったので本当にそうなのか疑わしい。母港のシステムに詳しい明石に相談してみるか。そう思ったその時、頭上の照明がチカチカと点滅しだす。さらにつけていないはずのエアコンまで動き出した。

 

―なんだ…?

 

 思わずそうつぶやいた翔一はやはり異常事態だと思い明石に相談しようと内線電話に手を伸ばす。繋がるのかと一瞬思ったがとりあえず試す。倉庫にかけてみると”ガチャ”と音がする。どうやら通じたようだ。

 

―指揮官大変にゃ!

 

 明石の声が聞こえるがしかし、

 

―声が遠いぞ、どうしたんだ

 

 明石は受話器を取ったはいいものの手に取らずに話しているようだ。

 

―指揮官、ネットにつながらなかったり電気がちゃんとつかなかったりしてないかにゃ!?

 

―その通りのことが起こってる。どうなってるんだ?

 

―母港のサーバーがハッキングされてるにゃ。ネットだけじゃなくて、電気とかの電子機器も遠隔操作できるようになってるから、変な挙動をしてるんだにゃ!

 

 ”しかも”と彼女は続ける。

 

―ここのサーバーは人類の最大の技術で作られてるから侵入できるのはセイレーンくらいにゃ。だから指揮官、サーバー用のコンピュータを見に行ってほしいにゃ。明石はハッキングを食い止めるのに忙しいにゃ!

 

―分かった。どこにそのコンピュータがあるんだ?

 

―出撃する時の港近くの海底にゃ!

 

―海底?どうやって行くんだ

 

 そんなところにWARSで行けるのか分からない。潜水艦のKANSENたちに頼むしかなくなってしまう。明石は言う。

 

―心配しなくても大丈夫にゃ、こんな時のために新しいWARSの形態を作っておいたにゃ!データを不知火に送ってもらってるにゃ、もうすぐ着くはずにゃ!

 

 そう聞いた直後、執務室のドアが開く。

 

―はあ、明石も人使いが荒いですね。今回は非常事態なのでとやかく言いませんが

 

 ちょうどいいタイミングで不知火が来てくれた。

 

―来たか、不知火

 

―はい、来ました指揮官さま。それではこれを

 

 不知火はそう言って手に持ったカードを翔一に渡す。

 

―ああ、ありがとう

 

 翔一はWARSブレスを出し、カードをかざす。カードがブレスに吸い込まれていく。明石は丁寧にも新形態の使い方を聞かずとも理解できるように、カードに情報を入れてくれたらしい。WARSの新しい形態、WARS NAUTILAS(ノーチラス)の情報が自分に流れ込んできたのだ。

 特殊能力は、超解析。どんな物体でも解析でき、情報を得られる。特に電子機器のハッキングやその対処は得意らしい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 これで問題なく海底でも活動できる。

 

―妾はこれで失礼します。妾も明石の手伝いをしますので

 

 不知火はそう言いながら執務室を出ていった。翔一も海の方に足を動かすのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

港―

 

 

 見慣れた場所。今回は指揮艦がないことくらいしか変わらない場所で、翔一はWARSに変身する。

 

―エンゲージ!

 

”WARS ENGAGEDE”

 

 さらにブレスの舵を回し、フォームチェンジする。

 

”NAUTILAS DEFORMATION”

 

―よし、行くぞみんな

 

―おー!

 

 翔一の声に答えたのは潜水艦のKANSENたち、伊13、伊168、U81、アルバコアだ。彼女たちは艤装を出現させ、一斉に海に潜っていった。WARSが後に続く。

 

―コンピュータは…

 

 WARSがそう言うと、先ほど聞いた声が聞こえてきた。

 

―そのまま下に行ってください

 

―不知火か

 

―はい

 

 不知火は続ける。

 

―今は下手にKANSEN同士のネットワークを使うと私たちまでハッキングされる可能性があるので、非常用のアナログ無線で通信しています。通信できるぎりぎりの距離まで妾がコンピュータまで案内します

 

―わかった。頼む




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