―それじゃあ、楽しんでね…行きなさい、ストレンジャー!
ストレンジャーと呼ばれたヒト型の新型セイレーンは、その赤い目を更に赤く発光させ、起動した。それはWARSの方に一直線に向かってくる。
―ご主人様!そちらに向かっています!
―ああ、分かってる!
幸いなことに相手の航行速度は特質するほど速くはない。それならと、WARSはまたフォームチェンジする。
”ACHILLES DEFORMATION”
ストレンジャーはWARSに向かいながら砲弾を放つ。しかしWARS
―食らえ!
両腕に備わるアームバルカンを前方に構え撃ち出す。しかし敵は避けようとはしない、それどころか…
―攻撃が効いてないわ…
オイゲンが言う。彼女の言う通り、WARSの攻撃は全くと言っていいほどストレンジャーにダメージはなかった。彼女は何食わぬ顔でWARSに接近する。
―駄目か…だったら…!
WARSは駆け出しながら前方に跳んで体をひねり、背中と海面を平行にすると、トーピードを発射させた。当然それは、一直線にWARSに向かってくるストレンジャーに直撃する。目の前に煙が発生するが、それが晴れるとやはりなんともないような様子のストレンジャーがこちらに向かってきていた。
―これでもなのか…!?
驚愕する彼にモナークが言う。
―指揮官、援護するぞ!
砲撃がストレンジャーに迫る。直撃したが、やはり効かない。
―な…!
WARSと同様、モナークは目を丸くした。
―戦艦の攻撃も効かないなんて…凄まじい防御力です。どうすれば…
ベルファストがつぶやいた。一方WARSはACHILLESの切り札を発動させる。
―これなら…!
”OVER CLOCK”
WARS ACHILLESはこれから10秒間だけ音速で行動できるようになる。同時にWARSの通常形態と同じ攻撃力が出せるので、一気に攻撃を叩き込めばなんとか相手を撃破できるだろうと考えたのだ。
―…!
10秒間、目にもとまらぬ速さ、そして莫大な量のトーピードがストレンジャーを襲う。やがてオーバークロックの効果が切れると、それは一斉に爆発した。海のしぶきが柱のように上がる。
―はあ…はあ…
WARSは息を切らす。そして、
”ドン!”
ストレンジャーの砲弾がWARSに迫った。
―…!
その時、彼の目の前にオイゲンが飛び出した。
―指揮官…!
彼女はシールドを発生させると、迫る砲弾を消滅させよとするが、
―ぐっ…!
それも虚しくシールドは砕け、オイゲンに直撃する。爆発と共に彼女は海を背中で滑り転がっていった。
―オイゲン!
WARSは彼女を追いかけるがそれを阻むように彼女に追撃が加わる。まだ爆発の煙に包まれた場所から放たれた弾はオイゲンを貫いた。
―がっ…ぁあ!
彼女の横腹が削られ、メンタルキューブの粒子が噴き出す。
―オイゲン様!
ベルファストがオイゲンを抱きかかえた。
―だ、大丈夫よ…この程度…
彼女の傷は再生されていくが、このような状態になる攻撃を何度も受ければすぐに轟沈しかねない。恐ろしいほどの破壊力だ。
煙が晴れ皆が見たのは、魚雷の爆発で生じた煙を鬱陶しそうに払うストレンジャーだった。オイゲンのそばについたWARSはつぶやく。
―ど、どうすれば…!
そんな彼に静観していたオブザーバーが言う。
―あら、もう終わりかしら?
煽るような声音が聞こえたとき、再びストレンジャーの砲撃が行われた。それはWARSに迫るがしかし、先程までの疲労で回避が遅れてしまう。
―ぐあ…!
WARSは投げ捨てられた人形のように、海面を跳ねながら吹き飛んだ。更に追い打ちを何発もかけられ、WARSは大打撃を受ける。
―ぐぅ…くっ…!
まともに回避行動を行えないまま、ストレンジャーの攻撃を受け続ける。そして事もあろうことか、凄まじいダメージの影響でWARSへの変身が解除してしまった。WARSブレスが宙を舞う。
―ああ!し、指揮官!
エンタープライズが彼を抱きかかえる。
―エ、エンタープライズ…
―今は話すな。今からあなたを指揮艦につれて行く。じっとしていてくれ…みんな!指揮官を守ってくれ!
KANSEN達は一斉に動き出す。一方、ぐったりした翔一の姿を見た赤城とローンはセイレーンに殺気を向けた。
―指揮官様をこんな目に…!
―指揮官を傷つけたな…!
―”許さない!!”
2人は全力の攻撃を開始した。怒りをぶつけるだけの雑な戦法だった。おびただしい量の艦載機と砲弾、魚雷がストレンジャーを覆い包む。無駄なのは分かっていたが、少しでも足止めするにはこの方法しかないのだ。
ストレンジャーの周囲に再び爆発が起きるとその中からやはり砲撃が繰り出された。何度も飛び出す砲弾は赤城とローンに直撃する。
―ぐぁあ!
―くぅぅ…!
大ダメージを受ける2人と、ダメージを受けないストレンジャーを目にし、いろはが言う。
―どんだけ強いのよ、あれ!
そしてベルファストが苦虫を嚙んだような表情で言う。
―撤退するしか、ないのでしょうか…
諦めかけたその時、彼女の目に映ったのは翔一の身から離れたWARSブレスだった。
―…
ベルファストは一瞬だけ考えた。
”ご主人様はKANSENと同じような存在だからWARSに変身できる…それならば、同じようにKANSENでも力を使えるかもしれません…”
そう思った時、彼女の目の前にストレンジャーの砲弾が迫る。
―…!
前転してギリギリ弾をかわした彼女は、立ち上がると同時にWARSブレスを手に持った。そんな行動に加賀が言う。
―何をしているんだ
―もしかしたら…使えるかもしれません…!
―は…?
意味が分からないという顔の加賀をよそに、ベルファストは左腕にWARSブレスを付けた。そして舵を回すと、叫ぶ。
―エンゲージ!!
ベルファストの周りに眩い光が発生した。その光に包まれ、やがて現れたのはWARSではなかったが、姿は変わっていた。そんな彼女にモナークが言う。
―それは…
当のベルファストは自分の姿を見て言う。
―これは、寒冷地帯用の戦闘装束…
なぜこの衣装なのかは分からないが、とにかく自分の力が沸き上がるのは分かった。
―戦えます、これで!
ベルファストの姿を見てオブザーバーは目を丸くする。
―ほう…そんなこともできるのね…面白いわ
紺色の衣装に全身を包んだベルファストは、スカートをなびかせてストレンジャーに突き進んでいく。砲撃を繰り出すとストレンジャーは防御の姿勢をとる。当然直撃するがダメージはなさそうだ。
―これでも駄目ですか…しかし、諦めるわけにはいきません!
攻撃されるだけの敵ではない。ストレンジャーは向かってくるベルファストに主砲を放った。しかし、
―ふっ…!
ベルファストは真正面からその砲弾を受け、右腕で弾いたのだ。弾かれた砲弾はしばらく空を舞ってベルファストの後方で爆発する。その光景を見たオイゲンがつぶやく。
―とてつもない強化がされるのね、あの腕輪…
そしてベルファストは、
―どちらの攻撃も効かないようですね…それなら!
彼女は思い出した。WARSの特徴はKANSENの能力を上回っているだけではないことを。ベルファストは、ストレンジャーに格闘戦を持ち込んだのだ。
―はっ…!
彼女の拳が突き刺さると、ストレンジャーはよろめく。そして彼女も負けじと拳を返すが、この個体はあまり格闘は得意ではないのか、それはベルファストにひらりとかわされた。
2人は砲撃を交えた高度な戦闘を行う。またベルファストの麗しく、力強く、主人を守るために戦うその姿はさしずめ、”鋼の従者”と言ったところか。
だんだんとベルファストが優勢となっていく。すると、
―…!
ストレンジャーの足元から、白い霧が発生した。ベルファストは煙幕かと思い、ストレンジャーから離れる。
―…?
しかしよく見れば、ストレンジャーの足元の海水が沸騰していることが分かった。そんな状況を見たオブザーバーが言う。
―うぅん……そういうことね…
加賀がストレンジャーの方を見て言う。
―どういうことなんだ
不思議な目でその光景を見るKANSEN達。そして、ストレンジャーは稼働を停止した。
―まあ、今日はこんなものでいいでしょう。また会いましょ
オブザーバーはそう言うと、ストレンジャーを引っ張って黒い雲へと消えていった。
―終わった…のでしょか?
静寂を取り戻した広大な海でベルファストが言った。すると、エンタープライズからの通信が入る。
―みんな、周りに警戒しつつ一旦戻ってきてくれ
――――――――――――――――――――
指揮艦―
―それで、指揮官はどうなの?
オイゲンが指揮艦に戻って早々口に出す。
―今は気を失って寝ているにゃ
明石が言うと、赤城とローンが彼女に詰め寄る。
―どこにいるの?
―指揮官に乱暴なこと…してませんよね?
―ぅぅ…医務室にいるにゃ…あと変なことはしてないにゃ…
困り顔の明石だったが、そんな彼女に救いの手を差し伸べるように低い声が聞こえた。
―大丈夫だよみんな、心配かけたね
皆の前に翔一が顔を出した。
―あ、指揮官、もう動いて大丈夫なのか?
エンタープライズが聞くと、翔一は”ああ、それより…”と続ける。
―隣の部屋でベルが眠っていたんだが…どういうことなんだ…
加賀が答える。
―そうか、指揮官は見ていなかったんだったな
いろはが続く。
―指揮官のブレスを自分につけたのよ
―え…?
明石が詳しく説明する。
―ベルファストはWARSブレスを使ってWARSの力を自分に使ったのにゃ。姿はWARSのものじゃなかったけど、能力はとてつもなく上がっていたにゃ。KANSENとWARSの力を無理やり掛け合わせたから当然だけど、それもあってセイレーンを撤退させるまでの時間稼ぎはできたにゃ。でもブレスの影響でエネルギーを使いすぎて気を失ったのにゃ…
―そうか…そんなことが
翔一が納得すると赤城が言う。
―指揮官様、申し訳ありませんでした。私にもっと力があれば指揮官様はあんなことには…
―いいんだよ、赤城。全員全力を出してあの様だったんだ
―しかし…
気を落とす赤城に、翔一は優しく言う。
―でも、お前はしっかり生きて帰ってきた。俺にはそれで十分だよ
そうして翔一は赤城の頭を撫でた。
―ぁ…指揮官様…
赤城はとろけた顔をする。どさくさに紛れて彼女は翔一に抱き着こうとしたがローンに邪魔される。
―指揮官、私もとっても頑張ったんですよ
―ああ、よくやってくれた
同様に翔一はローンを撫でる。
―ふふ…
そして、いろはとオイゲンが近づく。
―じゃ、じゃあ私も撫でてもらおうかしら
―指揮官、私もちゃんと生きて帰ってきたわよ
そんな光景にエンタープライズは苦笑いする。
―ははっ、腕が2本じゃ足りないな…
一方、加賀は何も言わずジト目で翔一を見つめ、耳をピクピクト揺らすだけだった。
――――――――――――――――――――
母校、医務室―
皆は帰港してそれぞれの居場所に戻っていった。中でも翔一はベルファストを抱え明石と医務室へ向かった。ベルファストを看病する、と医務室に居続けた翔一は、母校に夕日がさしたころには彼女を寝かしたベッドの隅に上半身を置いて眠ってしまっていた。
窓からオレンジの光が差し込む部屋で、ベルファストは目覚める。
”ここは…母校の医務室……よかった、無事にみんなで帰ってこれたのですね”
ベルファストは近くにぬくもりを感じる。翔一だ。
―…
”ずっとここで私を見てくれていたのでしょうか…?”
ベルファストは上半身を起こすと、自分の愛おしい人の頭を撫でる。
”いつも私たちと戦って下さり、ありがとうございます”
無意識に、ベルファストは微笑んだ。すると、翔一が目覚める。
―ん…ぁ…寝てたのか
―お目覚めですか…?
―ごめん、寝てしまっていたよ
翔一も体を起こすとベルファストに目を合わせる。彼女の美しい顔に見惚れてしまう。
―しっかり、私のことを見てくれていたのですね?
―え…?
―なんでもありません
―…?
何でもない話を終えると、ベルファストは翔一に口づけした。
―…おかえりなさいの、キスです…
―そ、そうか…
翔一の知らない間に、ベルファストは素直に、彼に甘えられるようになったのであった。
にゃああああ!久しぶりの設定解説だにゃあああああああ!
今回はベルファストがWARSブレスを使った時の姿についてにゃ。あの姿は彼女も言っていた通り、寒冷地仕様の衣装にゃ。ちなみにthe animationのBlu-ray2巻についてくる限定着せ替えにゃ。かっこいい服にゃ。
何故あの格好になったかというと、WARSブレスでベルファストを無理やり強化しようとした結果、ブレスがベルファストの装甲を高めようとし、アーマー代わりに布面積の多いものを彼女の衣装ライブラリから持ってきたからなのにゃ!
分かったかにゃ?
それじゃあ、次回もお楽しみに!
WARSの設定についてはここ(ピクシブ)を見てにゃ
感想もよかったらよろしくにゃ
細かい設定、設定画はここ(ピクシブ)にゃ
どんな所がよかったですか?
-
キャラ
-
ストーリー
-
文章(全体)
-
文章(セリフ)
-
文章(地の文)