ベルファストが大胆な行動を取ってきた次の朝―
―おまたせしましたぁ、指揮官様~
―赤城、度々ありがとう
―いえ、指揮官様と一生を添い遂げる身として、当然のことをしているまでですわ
いつも通りの赤城が、作ってくれた朝食を並べる。今日、翔一は重桜エリアで朝食を食べることにした。
今夜はロイヤルのKANSENたちが住まうエリアの城で、パーティがあるという。そのための準備があるため、ベルファストは朝からロイヤルエリアで働いている。翔一は彼女のことを思い出していた。
ベルはなぜあのようなことをしてきたのだろうか、普段あんな風に拗ねたような態度だったり、密着するようなことは無かった。赤城のように直接過ぎる思いをぶつけてくるKANSENもいるがそれは置いておくとして、やはりベルはこちらに好意を伝えてきたのだろうか、特別な思いを…
―指揮官様、今他の女のことを考えていますね…
―…お前はエスパーか?
―愛ゆえです♡
ハートがついていそうな声ではあるが、その目は深淵の如き闇が広がっている。それにしても、やはり赤城や大鳳は過激に思いを伝えてくる。それに加え、最近愛宕もその雰囲気が出てきた。もう少し抑えられないだろうか。
―ほどほどに…してくださいね…?
―あ、ああ…
そんなやり取りをしつつ、朝食を食べ始める。
―いただきます
―召し上がれ、指揮官様
翔一はベルファストが朝に不在の時に、よく赤城のもとに赴き朝食をご馳走させてもらっている。はじめに赤城の料理を食べたときに、はまってしまったのだ。筆舌しがたいが、なんとなくこの味が懐かしく感じ食べたくなる。
―…ふふっ
赤城が微笑んだ。意味も分からず、翔一は首を傾げた。
―ん?なんだ?
―指揮官様がとっても美味しそうに食べていらっしゃるので、幸せを感じずにはいられませんわ
―そんなに美味しそうに食べているように見えるか?
―はい、いつも
―…そうか
翔一は、機嫌を直した赤城としばらく過ごすのだった。
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執務室の前、朝食をとり終えて帰ってきた翔一が見たのは、今日の副秘書艦のビスマルクだ。彼女が話しかける。
―指揮官、やっと来たわね。留守だったからどこに行っているのかと思ったわ
―すまない、少し重桜の方に行っていてね
―そうか、朝から大変ね
ビスマルクにそう言われると、翔一は執務室のドアを開けながら返す。
―いや、たまに朝食をご馳走させてもらっているんだ
ビスマルクは執務室に入りつつ聞いたその言葉に、意外という反応をした。
―あら、そうなの?てっきり赤城に連れまわされているのかと…
―はは、その赤城が作ったご飯を食べてるんだよ
―へえ
翔一が作業机につくと、ビスマルクは何か言いたげに彼を見つめる。
―どうしたんだ?
―あの、指揮官は重桜出身なのよね?
翔一は何か問題があったのかと思ったが、他愛もない質問をされ安心した。
―それじゃあ、鉄血の方にも食べに来るといいわ、私も、その、それなりのものは作れるから…
―そうか、それなら今度お邪魔するよ
―…ええ
翔一が誘いを受けると、ビスマルクはそれまでの緊張した顔を緩める。
―そういえば、食堂では鉄血のKANSENはあまり見かけないな
―食堂に行っていない子たちの分は、こちら側で作っているわ
まあそうなるよな、と思いながら質問を返す。
―誰が作っているんだ?
―ツェッペリンよ
―ほう…
意外な名を聞く。この手のことでは一番縁遠いと思っていたが…
―あの子、誰がご飯を作る?って話になった時に最初に乗り出したのよ”我がやろう、何人分作っても変わらん”って、ふふっ
―そうか、あのツェッペリンがなぁ
会うたびにこの世を悲観したようなことをよく言っていたが、彼女にも温かいところがあるのだろうな。
そんなことを思っていると、机にあるコンピューターから電子音が鳴る。母港の誰かが通信を送ってきたのだ。
―指揮官、いるかにゃ?
送ってきたのは明石だ。最近姿を見かけなかったがどこにいるのだろうか。
―明石か、どうしたんだ
―ちょっと一人で倉庫に来てほしいにゃ。重要な話にゃ
―…わかった
そう言い椅子から立つと、ビスマルクが話しかけてきた。
―指揮官、仕事の準備、しておくわよ
―ああ、頼む
翔一は執務室を後にし、倉庫に向かった。
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倉庫―
薄暗いが、一般的な倉庫の印象と異なり小綺麗に物が整理された空間に入ると、奥には猫耳の影が見える。
―明石、いるか?
翔一が声をかけると返事が返ってくる。
―まってたにゃ、指揮官
―一体なんだ、重要な話というのは
明石は”にゃふっ”とにやけると、小さな四角い箱を取り出しこちらに見せてきた。
―これは…?
―KANSENの強化アイテムにゃ!
そういいながら彼女が箱を開けると、そこには指輪が入っていた。到底、強化アイテムには見えないが一応確認してみる。
―本当にそんな道具なのか?ただの指輪に見えるけど
―む、不知火にも言われたにゃ!いいから今度使ってみるにゃ!
冷めた反応をされるのは心外らしく、明石は声を荒げ翔一に無理やり箱を持たせた。
―わ、わかったよ。それにしても、これは俺が付けるのか…?
翔一がそういうと明石が”違うにゃ”と否定し、説明をする。
―これは指揮官との絆が深いKANSENにつけることでその真価を発揮するのにゃ。その相手に誰を選ぶかは指揮官次第にゃ
―そうか…
翔一の脳裏にベルファストの姿が浮かぶ、いまこの指輪を渡すとしたら彼女が…
―もちろん、これから指輪は量産していくにゃ!指揮官はこれでハーレムライフを満喫するといいにゃ!
―なっ
確かに指輪の意味のとらえようによっては、そういうことも不可能ではない、興味が無いといえば嘘になるか。しかし、今の翔一に大勢のKANSENたちにそのような責任を負えるかといえば、そんな自信は無かった。
―明石に渡してくれてもかまわないにゃん
―そ、そうか
さりげない明石のアピールに虚を突かれた。そして再び明石が話す。
―ま、そんな感じにゃ。困ったことが有れば相談しに来るといいにゃ
―ああ、それじゃ
明石が部屋の奥に戻っていくのを見送り、翔一も執務室に戻ろうと振り向くと、また明石の声が聞こえてきた。
―あ!恋の相談に関してはあんまり期待しないでほしいにゃ!
―あ、ああ…
終始明石に振り回される翔一なのであった。
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夕方の執務室―
橙色の光が執務室に入り込んできた頃、沈む夕日のように今日の仕事もあと少しで終わりそうであった。そんな中、ビスマルクがつぶやく。
―ふう、今日の仕事も終わりそうね、指揮官
―そうだな、いつもより早く終わりそうでよかった
―何か予定があるの?
―うん、今日ロイヤルの城でパーティをするらしくてね、それに呼ばれているんだ
ビスマルクは”そうなのね”と返す。
―じゃあもうひと踏ん張り、頑張りましょう
―ああ
それから仕事を終えるのに、そう時間はかからなかった。
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執務室前―
仕事が片付きビスマルクを部屋の前まで送った後、彼女と入れ替えにベルファストがやってきた。
―ベルか、どうしたんだ?
”ベル”という呼ばれ方にまだ慣れないようで、恥ずかしそうに目をちらちらと逸らしてベルファストが答える。
―ご主人様、パーティのお迎えに参りました
―そうか、でもまだまだ時間はあるようだが…
ベルファストは”ふふっ”と笑うと答える。
―紳士たるもの、身だしなみを整えるのもお仕事の内ですよ
―確かに、軍服のままでパーティには行けないな
着替えの時間のために早く来たという事だ、しかし翔一は疑問を持った。
―そういえば、この母港に男物の服なんかあるのか?
―こちらでお作りしましたので、問題ありませんよ
―そうなのか…ん、もしかしてあの時の…
―はい、先日ロイヤルの寮にいらした時に行った採寸でタキシードを
ある日に翔一はロイヤルエリアに呼ばれていた。その時イラストリアスに、翔一の服を作るという事で採寸されていた。当時はそんなことをして意味があるのかと思っていたが、まさかパーティのために作ってくれていたとは思わなかった。
―さあ、行きましょう。ご主人様
二人は早速ロイヤルエリアに足を運んでいった。
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ロイヤル城内―
当然といえば当然だが、翔一がまず案内されたのは女性が使うような更衣室だった。男性が翔一しかいないこの母港ではこのような場所を使うしかないか。また、この部屋は他のKANSENも使った後のようで、香水の甘い香りが少し残っていた。ここに来る途中で合流したイラストリアスが話す。
―指揮官さま、これにお着替えしてくださいね
―ああ、俺のためにありがとう
イラストリアスから渡されたタキシードは重量感のあるものだった。隣にいるベルファストがこちらに話しかける。
―お着替えが難しいようでしたら、いつでもお呼びくださいね
―うん…
先日のことが頭によぎり、歯切れの悪い返事になってしまった。
―それでは指揮官さま、外で待っていますね
―失礼いたします
二人がそう言うと部屋を出ていく。翔一はそれを見送ると、初めて着る服に苦戦しながらも着替えるのだった。
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翔一が更衣室を出ると、ベルファストとイラストリアスが寄ってきた。
―ご主人様、蝶ネクタイが曲がっていますよ
―ん、本当だ
そこからベルファストが急接近すると、両手で翔一のネクタイを直した。少し気恥しい気持ちになる。
―これで大丈夫です
そういいながらベルファストが微笑む。
―とっても似合っていますわ、指揮官さま
―そうか?
このような服を着たことがないため疑問で返してしまった。
―お似合いですよ、ご主人様
―そうか…
こんな話し方をしていると、イラストリアスが”ふふっ”と笑う。
―もしかして、緊張していますか?
―そう、かもな。このようなイベントに参加するのは初めてでね
そして、パーティが始まる時間が近い事を確認したベルファストがイラストリアスに話しかけた。
―イラストリアス様…
―そうね、私たちも着替えましょう。指揮官さま、少しお時間を頂きますね
イラストリアスに続いてベルファストも言う。
―すぐに戻って参ります
―ああ、ゆっくりでいいよ
二人は先ほど翔一がいた部屋に入っていった。
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更衣室内―
着替えながら、カーテン越しにイラストリアスがベルファストに問う。
―ベルファスト、指揮官さまのこと…好き?
―なっ、えっと、それは
想定していなかった質問に、ベルファストは顔を赤く染めた。
―ふふっ、わかりやすいわね
―やっぱり、分かるのでしょうか…
―ええ、声だけでも。ごめんなさい、ちょっといじわるだったかしら
―い、いえ、そんなことは…イラストリアス様
―ん?なあに?
ベルファストも気になっていたことをイラストリアスに問うた。
―イラストリアス様は、ご主人様のことをどう思われているのでしょうか?
その言葉にイラストリアスは濁して答える。
―それは、ひ、み、つ
―そ、そうですか
この時イラストリアスも頬を染めていたことは、カーテンでベルファストからは見えなかった。
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城内廊下―
二人が着替え終わり部屋を出てきた。そこには、今まで見たことが無いくらいに美しい二人が立っていた。翔一がその光景に呆然としていると、イラストリアスが話しかけてくる。
―指揮官さま、どうでしょうかこのドレス
イラストリアスは普段のような白い衣装ではあるが露出度が高く、ところどころに青いリボンのようなものも付いている。
―うん、似合っているよ
―ご主人様、あの、私は…
ベルファストは恥じらいながらも翔一に衣装の感想を聞いてくる。今思えば彼女のメイド服姿以外の衣装は見たことがなかったため、見とれてしまった。青一色のドレスを着ている。
―…ああ、すごく綺麗だよ
翔一は、ワンテンポ遅れて反応を返した。あまりに綺麗だと思っていたので、見つめてしまう。するとイラストリアスが微笑みながら翔一に話す。
―あら、どうしたんですか指揮官さま?ベルファストをそんなに見つめて
―いや、こういう姿のベルは初めて見たからね、新鮮で…
―ご主人様、少し、恥ずかしいです…
―す、すまん
―い、いえ、ご主人さまが謝る事では…
話が終わらないと思ったイラストリアスは二人の会話の間に入り、パーティ会場に行くことを催促する。
―さあお二人とも、会場に行きましょう
―はっ、失礼いたしました
―それじゃあ行こうか…
三人はパーティ会場である城のホールに足を向けるのだった。
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パーティ会場―
ホールに入るなり驚いたのは、そこにいるヒトの多さと耳を破るような一人の声だった。
―やあっと来たわね!下僕ぅ!
―うおっと…時間には間に合ってると思うぞ
やってきたのはエリザベスだ。仁王立ちするその姿の傍らには、ウォースパイトもいる。
―陛下、どうか落ち着いてください
―もう
ウォースパイトに言われてはっとしたエリザベスは嘆息した。そして、翔一の方に改めて口を開く。
―ごほんっ…ようこそ下僕!ロイヤルのパーティへ!それとイラストリアスとベル、案内お疲れ様!
―労いのお言葉、ありがたく頂戴いたします。陛下
翔一はこれに続き、純粋に思ったことをエリザベスに言う。
―それにしても、今日は昼のお茶会と違ってかなりのヒトがいるようだな
―ええ、もちろんよ。今日はロイヤルの子たちを全員集めたパーティなのだから
なるほどそれでか、と納得した翔一はあたりを見渡すと気づいた。
―ベルやほかのメイドたちもドレスを来ているけど、よく見るとメイドたちの代わりに饅頭やオフニャが食事や飲み物を運んでいるのか
これにベルファストが返す。
―はい、今日のような大規模なパーティの時は、食事などはメイド隊が作り、パーティの途中はあの子たちにお手伝いしていただいています
―ふふん、ロイヤル自慢のメイドたちが作ったディナーよ!たっぷり味わいなさい!
エリザベスがそう言うと、程なくしてパーティの始まりを告げる鐘が鳴った。
―さあ、楽しみましょ!
この声を皮切りに、ホールは今までより賑やかになった。
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パーティはまずダンスから始めるらしい、とはいえ翔一はダンスを嗜むようなことは無かったので、踊り方はわからない。どうしようかと思っていると、周りから凄まじい量の視線を感じる。皆、翔一と踊りたいらしい。もしここが重桜なら、赤城や大鳳が翔一の取り合いをしていたことだろう。そんな中、ベルファストが翔一に話しかけてきた。
―ご主人様、踊り方はご存じでしょうか?
―いや、分からなくて少し困っているところだよ
―それでしたら、一緒に踊っていただけるでしょうか?私がお教えいたします
翔一は断る理由もないし、ベルファストが相手なら安心するという事もあり素直に承諾する。
―ああ、頼むよ
ベルファストは微笑むと、すっと手を出してきた。
―ご主人様、お手を…
これを見ていた周りのKANSENたちは少し残念そうにしながらも微笑ましそうに二人を眺め、やがて自分の相手を探すのだった。
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―ふう、思ったより忙しいんだな、踊りというのは…
―ふふっ、でもお上手でしたよ、ご主人様
メイド長からの、初めてにしてはうまく出来ていたという評価に少しほっとする。ダンスの時間が過ぎると次は食事の時間だ。ホールの扉が開かれると饅頭とオフニャたちがワゴンや机を運んで来る。それから時間の流れは速かった。みんなと話しながら食事をし、以前までよりKANSENたちとの距離を縮められたと感じた。なによりもそれが、翔一の中で幸せだった。
パーティもお開きとなり、食事の片づけなどをあらかた終えるとベルファストが言う。
―ここまで片付けば、後は饅頭たちに任せてもいいでしょう
翔一は、そう言うベルファストの方に向くとつぶやいた。
―あっという間だったな、パーティ…
ベルファストは”ふふっ”と微笑むと翔一に聞く。
―お楽しみいただけましたか?ご主人様
―ああ、とても。また呼んでくれよ
―もちろんです
あたりに誰もいなくなったホールで二人話していると、翔一は大切なことを思い出した。
―あ!ベル少し待っていてくれ
―え?…はい
翔一は、ホールに来る前にいた更衣室に早足に向かった。
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更衣室前―
パーティがお開きになってずいぶん経ったのでさすがに誰もいないだろうと思っていたが、万が一のため部屋の前で耳をすました。
―なにやってんだ俺、変態みたいじゃないか…
そう思いながらも確認すると、幸いにも誰もいないようなので部屋には入る。
―ええっと、あったあった
翔一が探していたのは午前中に明石にもらった例の指輪だ。パーティが終わったらベルファストに渡そうと思っていたがここに置き忘れていた。
―よし
翔一は部屋を出て、もう一度ホールに向かった。
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ホールベランダ―
ベルファストはベランダで空を眺めていた。
”ご主人様、とても楽しそうに過ごしていらっしゃいました”
”そんなご主人様を見ていると、私も幸せになります”
”私は、あなたのことを…”
そんなことを思っていると、背後からその相手の声が聞こえる。
―ベル、そこにいたか
―ご主人様…
―待たせたね、渡したいものがあって
―渡したいもの…私に、でしょうか…
―ああ、といっても、これも貰い物というか何というか…
―貰い物?
―明石が作ったもので、なんでも、KANSENの強化アイテムらしい
―そうなのですか…ですが、なぜそれを私に?
―これは、俺との絆が深いKANSENが付けることで効果があるらしい
―え…?
―受け取ってくれないか、ベル
翔一が箱を開けると輝く指輪がある。これを見たベルファストは目を見開いた。まるでプロポーズされているようではないか。
―今これを渡せるのは、君しかいないと思っている
その言葉を聞き、自分がこんなに幸せになってもいいのかと疑いたくなるほどの感情があふれ出した。そして、
―ご主人様、ありがたく、お受け取りいたします
そう言いながら、右手を差し出した。すると翔一が指輪を持ち、彼女の薬指にはめる。ベルファストはその指輪を大切そうに、ゆっくりと左手で覆った。またその顔は、とろけたような笑顔だった。
―ご主人様っ!
ベルファストが翔一の胸に飛び込むと、彼もベルファストを抱きしめた。
―ベル、好きだ…
―私もです、ご主人様…
ホールからベランダにかかる光は、二人を祝福するように包んでいた。
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