アズールレーン~希望への航路~   作:ざぎねぅ

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7話 邂逅、コードG

パーティがあった次の日、KANSENの間である噂が広がっていた―

 

 

食堂ではいつも通りに多くのKANSENたちがいる中で、ある仲良し4人組が話していた。

 

―ねえねえ、私、昨日の夜見ちゃったの!

 

興奮気味な声を出し、染めた頬を両手で包みながら言ったのはジャベリンだ。

 

―見たって、何をですか?

 

唐突な話をされた3人の内、短い白髪の少女である綾波はジャベリンの言葉に続いた。この問いに彼女は食堂にいるKANSEN全員に聞こえるような大声を出して言う。

 

―指揮官とベルファストさんが抱き合ってるのを見ちゃったのぉぉおおお!

 

食堂が少しの静寂に包まれた。すると…

 

―”えええええええええええええええええええええええ!!!”

 

案の定、そこに驚きの旋風が巻き起こった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

パーティが終わりしばらくたったホール前の廊下―

 

 

 

”会場に忘れ物しちゃった”

 

そう思ったジャベリンは急いでホールの方に戻った。その入り口前にやってくると、何やら話し声が聞こえてくる。扉の隙間からのぞき込むと、2人の人影が見えた。

 

”ベルファストさんと指揮官…?”

 

何を話しているのかは小さくてよく聞こえなかったが、何とか聞き取ろうとしたその時、2人の距離に大きな変化が起こった。

 

―あ、あわわわわわ…

 

それを見たジャベリンは自分でも分かるほど顔を赤くすると、そこから忘れ物を取りに来たことすら忘れて足早に自分の寮の部屋に戻っていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

再び食堂―

 

 

―と、いう事なの…

 

ジャベリンの言葉を聞いていた食堂内のKANSENたちは事の顛末を聞き入っていた。それから話したのは、ニーミことZ23だ。

 

―そ、そんなことがあったの…でも、多くの子たちにこの事が知れたら…

 

”一部のヒトは黙っていないだろうし、指揮官争奪戦が起こるのも時間の問題かも…”というニーミの言葉に

 

―…抜け駆けしたから、しょうがないね…ねむ…

 

まだ寝起きのラフィーは日中よりも眠そうにそう言う。そして、気さくな笑いが食堂にこだまする。ネバダだ。

 

―はっはっは!指揮官のヤツ、ちょっと見ない間にそんなことまで出来るようになったのか!さっすがあたしの見込んだ男だな!

 

一番興味深そうに話を聞いていたのはクリーブランドで、こんなつぶやきをしている。

 

―パーティの後にそんなことが…私も、そういうことされてみたいなぁ…

 

この空間に静寂が訪れるのは、しばらくたった後だった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

食堂が喧騒に塗れる前、執務室内―

 

 

―し、き、か、ん、さ、まぁ

 

―う…

 

こうなることはある程度予想していたが次の日の朝に嗅ぎ付けてくるとは、赤城、恐ろしいな。こっそり変えておいた鍵も難なく突破してくるし。

 

―なんですかぁ?そこのメイドが付けているゆ、び、わ

 

赤城は翔一に密着しながらベルファストの手元をちらと見ると、再び彼の目をまっすぐ見つめ、その返答を待った。

 

―それは、その…そう!あれだ!強化アイテムなんだよ!

 

―強化…?

 

そんな2人のやり取りを見て、こうなることは分かっていたであろうベルファストは若干おろおろしている。

 

―あ、赤城様、ご主人様は純粋な善意でこの指輪を託していただいただけで…

 

言い終わらない内に執務室のドアノブがガチャガチャと激しく動きだした。

 

―指揮官様ぁぁああああああ!!

 

―大鳳か…

 

翔一がそうつぶやくと、いよいよどうにもならないという気分になった。幸い赤城が部屋に入ってきたときに彼女が鍵をかけたので大鳳が入ってくることはなかった。それも時間の問題だが…。そんな時に救いの手?がやってきた。

 

―大鳳…!何をしている!…姉さま、中にいるんですか!

 

―指揮官!どうなってるんだ、この状況は!

 

加賀とエンタープライズだ。この2人が来てからもひと悶着あったが、何とか大鳳と赤城を引きはがした。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

応接間―

 

 

指輪のことを詳しく話すと”とりあえず”納得してもらえたようで、少し前の修羅場のような状況からは脱することが出来た。大鳳が口を開く。

 

―では指揮官様、この大鳳の愛がまだ足りないというのですか…?

 

―あ、いや、それについては十分すぎるくらいだと思うぞ…赤城もな

 

そう答えるとエンタープライズが話す。

 

―それにしても、その指輪で私たちの力が上がるというのは本当なのか?やっぱり普通の指輪にしか見えないぞ

 

翔一は短く唸った。

 

―明石はただの指輪なんて作らないと思うし、量産するとも言っているからな…ベル、それをつけていて何か変わったことはあるか?

 

―はい…確かに力が漲ってくる感覚があります

 

ベルファストがそう言うと、赤城が話す。

 

―であれば、もっと多くのKASNENに指輪を渡した方が良いかもしれませんわね…

 

これに加賀が続く。

 

―ああ、戦場では弱いものから沈んでゆく、少しでも戦力の底上げが出来るのならこれを使わない手はないだろう

 

すると大鳳は、

 

―多くのKANSENが指揮官様に思いを抱いているのは確かですし…

 

この言葉で、この部屋の一人ひとりが複雑な感情を抱いた。ベルファストも例外ではない。この空気を流すようにエンタープライズが話す。

 

―ま、まあ、そうだな…皆がしっかり帰ってこれるようにするには、大事なことだ。どうだろうか、指揮官

 

―うん、行く行くはそうしたいと考えているよ

 

元々、一人も欠けることなくセイレーンとの戦いを終わらせたいと思っていた翔一はそう考えていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

応接間、解散後―

 

 

赤城、加賀、大鳳が重桜の方に戻るといい応接間を出ると、エンタープライズが翔一に話す。

 

―指揮官、私は、あなたについていくよ…ずっと

 

―…

 

翔一が突然の告白に戸惑っていると、彼女は顔を赤くし足早に扉の方に向かっていった。

 

―わ、私は先に執務室に戻るから…!

 

扉が閉じると、今度はベルファストが翔一に近づく。

 

―ご主人様…私はあなたが他の方の、その…特別な思いを受け入れても、かまいません…

 

―え…?

 

ベルファストは”その代わりに”と続ける。

 

―たまには私のこともかまっていただけないと、赤城様のようになってしまうかもしれませんよ

 

―ああ、うん、わかった…

 

彼女は翔一の反応が面白かったのかふふっと笑うと、仕切りなおすように言う。

 

―さあ、そろそろ戻りましょう。今日の仕事が終わらなくなってしまいます

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

執務室―

 

 

当然だが執務室に戻るとエンタープライズがいた。

 

―あ…

 

先ほどのことを気にしているのか、彼女は思わず声を漏らした。

 

―ええっと、さっきのは…忘れてくれ!

 

気まずくなったのか勢いで誤魔化そうとしたエンタープライズの両肩を、翔一は掴んだ。

 

―エンタープライズ、俺たちと…俺とともに歩んでくれ…!

 

拙い言葉であったが、それは翔一が先ほどの神妙な顔をしたエンタープライズへかける言葉をうまく紡げなかったからだ。その熱意だけは彼女に伝わった。しかし、今までこれほど翔一と接近したことがなかったエンタープライズは身を固くしてしまう。

 

―わ、わかったから、指揮官…近いよ…少し、恥ずかしい…

 

―す、すまん

 

翔一はエンタープライズから離れると、微笑んだベルファストが話す。

 

―あら、ご主人様、早速ですか?

 

その顔は赤城や大鳳のそれと違い、可愛い子供が悪戯したのを見たような時の微笑みだった。

 

―あいや、これは…ははっ………!

 

平和な時も束の間、セイレーンが出現したことを知らせるサイレンが鳴った。そして通信が入る。

 

―指揮官!セイレーンよ!

 

―愛宕か!他は大丈夫か!

 

委託を頼んでいた重桜のKANSENたちがその帰りに襲われたらしい、激しい砲撃と戦闘機のプロペラの音が聞こえてきた。

 

―くっ、爆撃機が多すぎる…!

 

―さすがにここまで多いと制空権はとれないな…

 

日向と伊勢の声も聞こえてきた。2人は最近、近代化改修をし航空戦艦となったがそれでも防ぎきれないほどの空母が相手側にいる状況であった。

 

―指揮官殿!応援を頼む!

 

高尾が言うと、翔一が答える。

 

―すぐ向かう!出来るだけ敵から離れて撤退線に持ち込め!

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

海上―

 

 

重桜のKANSENたちに設定した合流地点近くに来ると、出撃メンバーの一人である加賀が言う。

 

―指揮官、見えてきたぞ

 

―よし、そのまま赤城と制空権の確保にあたってくれ。エンタープライズは4人のバックアップだ

 

―”了解!”

 

今回の出撃メンバーは主力にエンタープライズ、赤城、加賀、前衛にベルファスト、潜水艦に伊168だ。またいつも通り、指揮艦の中に翔一とともに明石もいる。しばらく経って重桜の4人と合流する。制空においては拮抗しているという状態だ。高尾が話す。

 

―指揮官殿、かたじけない!

 

―ああ!傷はないか!

 

―みんな大丈夫よ!

 

―そうか、良かった

 

KANSENたちの無事を確認すると伊168が翔一に叫ぶ。何か見つけたらしい。

 

―指揮官!少ないけど相手に潜水艦もいるわよ!

 

―だったら、ベルといろはで対潜攻撃!隙を見て水上の艦隊も攻撃してくれ!

 

―”了解!”

 

翔一はベルファストを見て言う。

 

―ベル、頼むぞ…!

 

―はい。このベルファスト、ご主人様のため戦います!

 

―ベルファスト!全力で動いてほしいにゃ!指輪の効果を確かめたいにゃ!

 

―はい!

 

ベルファストは明石の言う通り全力で、戦場にいる誰よりも速い動きで戦線を突っ切る。攻撃した時の敵へのダメージもいつもより大きいようで、指輪の効果が伺えた。それを間近で見た赤城と加賀が言う。

 

―指輪の効果、かなりのもののようね

 

―私もあれで更なる力が得られるのか

 

激しい戦闘が続き、敵艦隊も殲滅できたという所で空にいつか見た黒い雲がかかった。

 

―ご主人様、これは…

 

―奴か…!

 

雲のより濃い部分から禍々しく輝く人型が表れる。その黒い鎧はベルファストの方を見て言う。

 

―ほう…来たか、この時が

 

言い終わると、鎧の手元に長く大きな砲が生成された。翔一たちは何かと身構えるとその砲はベルファストを向く。危ないと察知した翔一は彼女に叫ぶ。

 

―ベル!避けろ!

 

砲が放たれようとしたとき、鎧の背後から声が聞こえてきた。

 

―やっと…見つけた…!

 

―…!

 

それを聞いた黒い鎧は一瞬驚き、攻撃の手を止めた。そして声の持ち主は、鎧が現れた雲の暗い部分から飛んでくる。

 

―お前は…なぜここにいる…!

 

―ずっと探していたんだ、あなたを…

 

想定していない出来事の連続に、翔一たちは攻撃を続けるかどうかも迷っていた。程なくして鎧は”チッ”と舌打ちした。

 

―また別の機会にするとしよう…

 

―あ!待ってくれ…!

 

そう言うと凄まじい速さで雲を抜け、姿を消した。おいて行かれた方は寂しさと気まずさが入り混じったような表情をしていた。目はエンタープライズの方を向いている。その姿を見て伊勢と日向がつぶやいた。

 

―あれは…

 

―あいつに瓜二つだぞ…

 

2人の言う通り、長い銀髪、白と黒の服、大きな弓を持つ姿は帽子をかぶっていないだけでエンタープライズそっくりだった。

 

―…

 

エンタープライズはその姿に見覚えがあった。まだアズ―ルレーンとレッドアクシズに分かれていた頃夢で見た、いわば自分の中の闇のような存在だ。そしてその自分の闇は、こちらを向き黙ったまま黒い雲の方に上がっていく。やがて見えなくなると、だんだんと雲が晴れていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

帰投途中―

 

 

―さっきのが例のあいつか…

 

あいつというのは鎧のことだ。日向が言うと、伊勢も続く。

 

―すげえ威圧だったぜ…それにしても、後から来た奴は何だったんだ?

 

全員が気になっていたことだ。エンタープライズに何か関係がある事なのだろうか。

 

―エンタープライズ様に、よく似ていましたね

 

ベルファストの言葉に翔一も同意した。

 

―確かにそうだったな、あの姿や弓…エンタープライズ、何か知っていることはあるか

 

そう言うと、彼女は一瞬迷ったが夢のことについて話した。

 

―まだアズールレーンとレッドアクシズが分離していた時のことなんだが、その時に夢であれを見たことがあるんだ

 

それに赤城がつぶやく。

 

―夢、ねぇ

 

重桜に信濃というKANSENがいる。彼女は大半寝て過ごしているが、その間に違う次元の光景を見ることがあるという。そのような現象なのではないかと赤城は考えいていた。

 

―た、ただの夢なんだ。あまり気にしなくていいぞ

 

先ほど対面した以外で情報がないため、ここで話は中断された。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

母港到着直後―

 

 

指揮艦から出て執務室に戻ろうと歩いているとジャベリンが出てきた。

 

―あ、し、指揮官!おかえりなさいですぅ!

 

―うん、ただいま

 

元気ではあるがいつもと少し様子が違うように見えた。

 

―あ…ベルファストさんも…

 

―?…どうされましたか、ジャベリン様

 

―その…指輪、どうしたのかなぁって―だあああ!じれったあああああい!

 

―わあ!

 

後ろの木陰から出てきたのはエリザベスだった。彼女はジャベリンをどけて全力で翔一の方にやってきた。よく見ると周りの建物の影からこちらを覗くKANSENたちが多くいることに気づいた。

 

―下僕!私を差し置いてベルに婚約を申し込むとはどういうこと!

 

―へ、陛下、これはそういう事では…

 

―なぁにがよ!そ、れ、に!なんで出撃するときいつまでたっても連れて行ってくれないのよ!この私の婿となるものが私のそばにいてくれないとはどういうことかしら!

 

―陛下、それほどまでにご主人様を…

 

―あ、そ、それは特別によ!と、く、べ、つ!

 

収集がつかなそうな雰囲気なので”まあまあ”と止めようと思ったところにで口を開いたのは赤城だ。

 

―婿ぉ?

 

―ひっ、な、何か悪いことでもあるの!?

 

―指揮官様とは私が一生を添い遂げるの、あなたのようなチビガキには指揮官様は少しもなびかないわ!

 

チビガキって…。ついに艤装まで装備しそうな赤城を見かねた加賀が彼女を止めに入る。

 

―姉さま!

 

―しきかぁん、これからお姉さんと一緒に過ごすのはどう?

 

そっと翔一の背後から抱き着くのは愛宕だ。そして、エンタープライズが顔を背けながら軍服の袖を引っ張る。

 

―私は…えっと…

 

いよいよ身動きが取れなくなった翔一は、耳を疑うジャベリンの言葉を聞いた。

 

―も、もしかして、ここでいっぱいアピールしたら、指揮官とずっと一緒にいられるのかな…

 

ニーミ、綾波、ラフィーも続く。

 

―そ、そんなこと、ほんとに出来るかしら…

 

―ちょっと興味ある…です

 

―指揮官と毎日おひるねする…

 

KANSENたちは一斉に翔一を見るとこちらに寄ってきた。

 

―な、なんだ!?

 

―にゃにゃにゃにゃにゃ!指輪がきっかけで、ついに暗黙の了解だった指揮官不可侵条約が破られてしまうにゃぁぁあああ!

 

明石の叫びもむなしく、KANSENたちが翔一に飛びついてきた。

 

―わあああああああああああ!明石ぃぃぃいいいいいい!なんとかしてくれぇぇぇぇええええええ!

 

―むりにゃぁぁああああああああ!

 

2人の声は他のKANSENたちの声にかき消された。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

―次回―

 

 

ベルファスト「ご主人様…お誕生日の、プレゼントです…」

 

翔一「オルゴールかぁ、聞いてみていいか?」

 

 

 

翔一「また来たか…!」

 

黒い鎧「終わりだ」

 

翔一「ベル!!!」

 

 

エンタープライズ「お前は何者なんだ!!」

 

翔一「うぉぉぉぁぁあああああああああああああああああああ!!!!」

 

黒い鎧「ハッハッハ!君たちもよく知っている存在だよ!」

 

 

 ”WARS ENGAGED”

 

 

―誕生日、ささやかに―

 

 




次回は結構話が動くにゃ!

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