ありふれた転生者は世界最高   作:TNKエース

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クラスメイトサイドのお話です。


覚醒の勇者

覚醒の勇者

 

悠里達が落ちた翌日、雫は昼過ぎに目を覚ました。

全体的に汗臭く汚れていたので湯浴みをして、香織を起こしに行った。

 

「香織、もう朝よ」

 

ドアを開けると、そこには誰も居なかった。

 

「あっ」

 

そして思い出す。香織は檜山の性で奈落の底に落ちたのを……

 

「そう……だったわね。香織も鈴も恵里も皆落ちたんだった……」

 

現実逃避していた雫は、心の中の糸が切れた。

静かに涙を流す。

 

食堂に入ると、ザワリ、ザワリとクラスメイト達がざわめいていた。

 

「どうかしたの?」

 

雫は辻に聞くと、

 

「如月くん。お気遣いの紳士が過ぎるって話よ」

 

「へっ?」

 

「遺言書。如月くんのね」

 

「遺言書?」

 

辻が指さしたのは一冊のノート。表紙には遺言書と書かれている。

 

『拝啓、諸君。

これを皆が見ているという事は俺は実戦訓練で死んでいるのであろう。

もし、怪我で気絶しているだけだったら何も言わずにこのノートを燃やしといてくれ』

 

「彼は今回の事を予見していたの?」

 

『言っとくが、予見だとか予測ではなく、保険だ。

何らかの事故で死亡する可能性だって0じゃない』

 

そして、中には貴族が使う様な封筒と封蝋だ。

中には日本語で名前が書いてある。

 

尚、

 

「何が清水利幸だよ!おれは清水幸利だぁ!」

 

「浩介の字は浩輔じゃない!」

 

名前の書き間違いも多少あったが、

 

その中で八重樫雫の名もあった。

 

雫は手紙を取り、封蝋を外し手紙を読む。

 

『八重樫へ、お前の事だから何でもかんでも自分がやらなきゃ……とか考えてねーか?

そんなお前に一言言わせてもらう。

 

自惚れんじゃねぇよ!!

 

全て、自分で抱え込んでんじゃねえよ!!

少しは人を頼れ!天之河に流されるな!奴のケツを蹴っ飛ばしてでも間違っていると言ってやれ!!』

 

それを見ながら雫は僅かに涙を流す。

 

「何よ……人の気も知らないで……ええ、良いわよ!光輝のお尻を叩いてあげるわよ!」

 

雫の最後の言葉にクラスメイト達はえっ?となってしまい、雫は赤面してしまう。

 

悠里の残した遺言書にはメルドや龍太郎達のもあったが、彼等が落ちてしまったので、そのまましまった。

 

最後に、もう一枚ノートがあった。

此方はラボメン用の指示書だった。

 

それには新しい開発物やアイディア等がいくつも書き込まれていた。

 

彼女はそれを持ち、これをゲルドに渡そうと考えた。

 

最後に、

 

「皆……おはよう……」

 

起きてきた光輝に遺言書を渡す為に、

光輝の顔は酷かった。いつもはその名の通り光り輝くようなイメージがあったが、今の光輝は曇っていた。

無理もない。香織や龍太郎の幼馴染が二人、友人が二人、志は違ったが仲間とも言える者が一人、そしてメルドが死んだ……いや、皆生きていると信じ込んでいた。

いつもの思い込みである。

そして尚もはぶられるハジメ。

 

「光輝、如月くんからの遺言書よ。読みなさい」

 

「ああ、後で読むよ……今は「読みなさいっ!!」……わ、分かった」

 

光輝はいつもと雰囲気が違う雫に気圧され、遺言書を読む。

 

『よぉ、天之河。とりあえずお前の悪いところ書いておくぜ。

この二週間と八重樫から聞いた話と討論での話から、お前の性格だとかを見出せた』

 

光輝は俺に悪いところだって?と叫び、手紙を破ろうとしたが……

雫が奪い音読する。

 

『お前の悪いところは、“状況”も“結果”も見ずに【信じて】【貫き通そう】としているところだ。

もっと言えば、お前は主義者だ。自分の言葉が唯一無二に正しいと言うな。

 

良いか?

 

通常“主義者”とは宗教家と同様だ。

彼等が固執する何等かの“結論”は宗教で言うところの“神”であり、

論破されようが前提が変わろうが結論だけは変えない。

 

例え、どう言われようとも、言っていた事が180度違っていようと結論は変えない。

 

お前はそれと同じなんだよ。

 

良いか、よく観察しろ。表面的なものではなく、中の中まで観察してから結論を出せ、

正義が正しいから間違っていないのではなく、

その間違った正義だから正しくないと言うことも考えろ!』

 

手紙はここで終わっている。

 

「お……俺は間違って……いたのか?」

 

「そうね。少なくとも南雲くんに関する事は間違っていたわ」

 

光輝はその後無口になり、高速馬車で王都へと戻った。

 

 

 

 

 

翌日、王宮上層部やイシュタルが呼び出され、アランは今回の一件を報告する。

 

辺り一体阿鼻叫喚である。

 

無理もない。神の使徒が奈落の底に落ちたのだ。

未知の領域に、まだ未熟な彼等では生きている筈もなく、使徒は死んだと思い込んでいた。

 

此れが原作の様に無能と蔑まれたハジメだけなら兎も角、この世界の彼はラボラトリーのメンバー。

しかも、オルクスへ行く前日にドンナーの試射で功績がある。

 

しかも、兵器開発の要の悠里、戦闘能力の高い坂上達が落ちた事で……全ての責任は檜山にあると誰かが叫び、皆が同調する。

光輝も気落ちしている為か何も言わずに、

イシュタルは檜山大介を異端者と認定した。

 

 

 

 

 

「(おお、おお、あの野郎そんな事までしていたのか……

つか、檜山の野郎。俺様の女を落とすとはな……苦しめてから殺せばよかった)」

 

貴族の一人はそんな事を考えながら場内を歩いていく。

 

「(まぁ良い。俺のハーレム築く為にも、ハジメたちには概念魔法を手に入れて地球に帰る術を手に入れてもらわないとな……それまで、楽しめ

NTRってのも楽しみたいから喃……)」

 

貴族は下卑た顔をしながら去っていく。

 

 

 

 

 

一方その頃、光輝は充てがわれた自室で項垂れていた。

悠里の書いた手紙のだ。

悠里とはやり方は違うが目指すべき道(平和)は同じだと思っていた。

しかし、その彼にあそこ迄言われるとは思わなかった。

両親にも言われなかったのに(言っていますが、ちゃんと聞いていません。多分話しかけても話半分で直ぐに忘れていたんでしょう。ちゃんと向かいあっていれば変わっていたのかもしれないが)

 

「光輝……」

 

「雫……」

 

雫が部屋に入ってくる。

雫は光輝の隣に座り、待っていた。

 

「雫……」

 

「何?」

 

「俺は間違っていたのか?」

 

「ええ、そうね。イジメの事とか、如月くんとの事とか、私の事とか……」

 

「雫の?」

 

「覚えてる?小学生の頃、私が虐められていた事……」

 

「ああ、覚えているよ。俺が解決し「解決してないわよ」えっ?」

 

雫の言葉に光輝は驚愕する。

 

「そんな?あの時、あの子達はイジメをやめてくれるって言ってくれたのに?」

 

「そんなもの、光輝の前だけよ。

それなのに光輝は…私に言った事覚えてるの?」

 

光輝は思い出す。

 

『雫の勘違いじゃないのか?』

『皆、良い子だよ』と、

 

「そ……そんな」

 

「如月くんの遺言書通りよ。貴方がやった事は表面上解決した様に見えているだけで何も変わっちゃいない。寧ろ悪化させるだけ……

それだけじゃないわ……………」

 

それから雫は光輝に愚痴を漏らし続けていく。

光輝のやった事に対する不満をぶつけていく。

 

それを聞くたびに光輝の心に傷ついていく。

 

そして、全てを聴き終える頃にはすっかりと項垂れていた。

 

「そんな……俺がやってきた事が全て無駄だったなんて……

どうして誰も言ってくれなかったんだ?」

 

「言ったわよ。貴方が聞かなかっただけで……」

 

雫は冷たい目で見ていた。

 

「ううっ……」

 

光輝は少し唸ると、

 

「雫!俺を殴ってくれ!」

 

「はぁ?」

 

素っ頓狂な事を言い驚愕する雫。

 

「俺は雫を守ると言いながら一度も守れなかった。そんな不甲斐ない自分に別れを告げたいんだ!頼む!」

 

光輝はベットの上で土下座する。

 

雫は少し呆然としたが、溜息を吐くと、

 

「分かったわ」

 

観念して光輝を殴る事にした。

 

「ありがとう」

 

光輝は感謝の意を示す。

しかし、光輝は忘れていた。

 

彼女の実家が剣術道場(忍者屋敷)にして徒手術も有るという事を。

 

「はぁ!!」

 

ゴスっ!

 

雫の体重と筋力は坂上に比べると遥かに低い、しかしスピードはかなり早い。

つまりは、彼女の拳はかなり強いのである。

 

キレのある一撃が光輝の頬を貫く。

 

八重樫流の打突は衝撃を逃さない打突。

光輝は後ろに倒れずにそのまま倒れ伏した。

 

「…………」

 

流石に殴った本人である雫はこれはいけないと思い光輝を介抱した。

 

 

 

 

 

その翌日

 

城の一室で光輝は残ったクラスメイトを集めた。

 

「皆、聞いてくれ。

俺達はこれからどうすれば良いのか?

それを皆で考えよう。

如月の言っていた様に議論をするんだ!」

 

光輝は今までの様に自分で全てを決めずに皆で良い案を出そうと考える。

勇者光輝は変わった。この変化が良いのか悪いのか、それはまだ誰にも分からない。

 

 




おめでとう。勇者(笑)は勇者(未熟)に進化した。次の進化ツリーは、
勇者(半熟)又は勇者(愚)又は勇者(堕)です。
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