さて、七名揃ってオルクス迷宮を探索したが、原作通りに上層へと上がる階段はなく、《人形遣い》で出した人形達に探させると直ぐに下へと降りる階段を見つけた。
人形達に皆は一度見た恵里以外は驚くと、
「この話はまた後で」
との有無を言わさぬ発言に皆が黙った。
敵を倒し食っては強くなり、又敵を倒し食っては強くなるのサイクルを繰り返しながら下へ下へと降りていく。
モンスター達を時に人形達に戦わせ、
時に生身で戦う。
彼等はそんな中で悠里に不信感とも恐れとも言えない感情を感じた。
まるで此処を知っているかの様に、
50階に到着すると大きな扉が有った。悠里はドンナーで両橋の石像を破壊……いや、石像に化けていた魔物がそのまま息絶える。
「行くぞ………」
恵里だけは熱っぽい眼で見ていた。
ドアを開ける。
そこには………
「えっ?」
「嘘っ?」
「ブホッ!」
全裸の少女が、キューブ状の何かに拘束されていた。
「すいません。間違えました」
悠里は扉を閉めようとしたが、
「「「「イヤイヤイヤ!ちょっと待て!!」」」」
他の面々に止められた。
「安心しろ。直ぐに助ける。アレーティア王女殿」
少女は「何で……其れを?」と掠れた声で言った。
「ハジメ、悪いが俺と一緒に錬成を使って、コイツを助け出すぞ」
「ええ?うん。分かった」
ハジメは突然声をかけられ驚くが少女を助ける為に悠里と共に錬成を始める。
「「錬成っ!」」
「ぬぅ!」「此れは?」
二人は少女を立方体から出そうと錬成をするが、
抵抗が激しい。
二人は魔力を全開にし、立方体へと魔力を浸透させていく。
大量の魔力を流し込み、少女の周りがどろりと溶け、香織が毛皮で少女の身体を隠す。
「貴方は……一体?」
少女の言葉は、皆の総意だった。
「それを話すのは……」
悠里は錬成を使い地面から棘を生やす。
「ここを切り抜けてからだ!」
上空からサソリのような魔物が現れる。
「GYAAAAAAA!!」
しかし、サソリの魔物は棘に突き刺さった。
「ほい。錬成」
棘にもがき苦しむ蠍の上部に乗り込むと錬成で甲殻に穴を開ける。
そして、迫り来る毒液を回避しながら、曲芸の様に空中へと飛び込み、
「チェックメイトってやつだ」
タダダダダダァン!
全弾を蠍の空いた脳天に叩き込んだ。
悠里は近くに降りると蠍の動きが止まるまで警戒を解かずにしていたが、
十秒、二十秒、三十秒経過すると、警戒を解いた。
ふぅ、と一息ついた。
「さて、何処から話そうか……」
悠里は白髪をぼりぼりとかきながら呟いた。
一方その頃、
天之河光輝や八重樫雫達や騎士団を含む一行は三手に分かれていた。
いや、正確には四手か……
一つはオルクスに潜って鍛えつつ、可能ならハジメや悠里達の遺品を探す。オルクス攻略メンバー。
二つ目は戦略的に大重要な畑山愛子を守る。畑山愛子親衛隊兼素材探索隊
三つ目は悠里の遺したノートの化学グッズを作り上げる開発班
そして最後に元檜山一行。
彼等は檜山が死亡後も問題を起こしていた。
最初はオルクスへ行こうとしたが、オルクスに潜ろうとしない面々を見下す発言を繰り返し攻略組が彼等を拒否、それ以外にもハイドリヒ王国の兵士達を見下し、メイド達にハラスメント行為を度々行っていた。
拒否された日には、腹いせにメイドを強姦しようとしていたが光輝と雫が間に入って、彼等を打ち倒し、勇者の名の下に彼等を懲罰部隊(奴隷の首輪付き)送りとなった。
そして、彼等は問題の65階へと着いた。
油断も慢心もしない。ただ目の前の障害を打ち砕き、強くなり、皆で地球に帰る
それが死んでいったハジメ達の供養になると信じて……
「……………」
光輝はあの日の事を思う。
あの日、もしも自分が意固地にならずに撤退に参加していれば、誰も死ななかったのでは無いだろうかと、
「………光輝」
「大丈夫だ。香織達を失った時の様な轍は二度と踏まない」
光輝は息を吸い、
「皆!此処からは誰も行った事のない未知の領域だ!危険だと思ったら直ぐに撤退する!」
光輝の言葉に皆は力強く返事をする。
「行くぞぉ!!」
光輝の激励と共に彼等は前へと進む。
65階に着き、暫く歩いていると大きな広間に出る。
何となく嫌な予感がする一同。
その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。
「ま、まさか……アイツなのか!?」
光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。
光輝は唾を飲み込みながら辺りを見渡す。
此処でなら全力を出しても崩落しないと確信して聖剣を握りなおす。
「行こう!皆!メルドさん達の弔合戦だ!」
光輝の叫びに皆勇ましく声をあげる。
敵に負けないように鼓舞する為に、
「グゥガァアアア!!!」
魔法陣からベヒモスが現れ、殺意を宿らせた瞳で光輝達を睨み付ける。
「もう誰も奪わせない。お前を踏み越えて、俺達は前へと進む!」
「「「「うおおおおおおっ!!!」」」」
光輝の叫びと共に皆はベヒモスに負けない様な咆哮を上げる。
先手は、光輝だった。
「万翔羽ばたき 天へと至れ 〝天翔閃・穿〟!」
光輝が選んだのは斬撃ではなく刺突。
天翔閃の威力を一点に集中させた一撃をベヒモスへと放つ。
「グオオ!?」
ベヒモスは危険を感じたのか、角を赤熱化させ、右の角でそれを受け止める。
「グルルルっ!」
しかし、赤熱した角と光の刺突は、僅かに拮抗していたが威力に耐えきれずに角を切り裂き、人で言う右の肩口辺りを抉る。
「よし!永山達は左側へ、アランさん達は右側へ回ってくれ!」
「「了解!」」
永山パーティと騎士団は左右に展開する。
「グガァアアアア!!」
ベヒモスは残った角を前に向けて突進してきた。しかし、その速度は本来のベヒモスに比べると遅い。
「猛り地を割る力をここに! 〝剛力〟!」
「土壁!」
そこに永山が膂力を増した肉体で、
野村が土の壁を作り、ベヒモスの突進を止めた。
「全てを切り裂く至上の一閃 〝絶断〟!」
その隙を突いて、雫はベヒモスの左足の後ろに周り、神速の抜刀術をベヒモスの膝裏に叩き込む。
関節を切られたベヒモスはその場に倒れ込み、
「今だ!天之河!」
暗殺者の遠藤がいつの間にか首回りの甲殻を削っていた。
「よしっ!限界突破!」
光輝は切札の限界突破を使い跳躍する。
「うおおおおおおっ!!」
そしてそのまま聖剣の一撃をベヒモスの首に叩き込む。
常時の甲殻なら兎も角、遠藤の手によって削られた甲殻では聖剣の一撃は耐えきれず、深く刃がめり込む。
「〝光爆〟!」
聖剣に蓄えられた魔力と限界突破によって高まった魔力が、めり込んだ傷口からベヒモスの首全体に流れ込み大爆発を起こす。
爆発で生じた土煙が周囲を包み込む。
ケホケホと土煙が晴れたそこには、
頭と胴体が分かれたベヒモスの死体があった。
「か、勝ったのか?」
「勝ったんだろ……」
「勝っちまったよ……」
「マジか?」
「マジで?」
僅かな静寂の後、誰かが勝鬨を上げると、又一人、又一人と勝鬨を上げ、皆が勝利を祝った。
「香織、龍太郎、恵里、鈴、南雲、如月、俺達は前に進む。
だから、見守ってくれ。俺達が元の世界に帰れるように……」
そんな中、光輝は一人祈っていた。
「行きましょう。光輝……」
「ああ!」
光輝達は過去の悪夢を振り払い先へと進むのだった。
原作ネタは忘れないオリ主