襲撃
子供達をフューレンのギルドに預けて、親元に帰れる者は愛子とデビットが連名で正式な依頼として冒険者に頼む事にした。
ミュウもデビットに抱きついて泣き喚いていたが愛子が優しく諭して別れた。
悠里はミュウ・レミアの周りに護衛の人形部隊を設置する事を決意した。
そして車を走らせホルアドに到着する。
悠里は生きていたから一度顔を出しておこうとの事だ。
他の面々も異議は無く、ホルアドのギルドにて待つ事にした…………すると、
バァン!とドアが勢いよく開かれる。
ギルド内に居た全員が顔を向けるが、誰も居なかった。
いや、気配が薄すぎて気づけなかったのだ。
「「「「「遠藤/くん!?」」」」」
「えっ?遠藤!?」
「はぁ!ハァ!南雲?それに皆……どうして?
嫌!そんな事はどうでも良い!!助けてくれ!!」
遠藤の鬼気迫る声に悠里は驚いた。
「ハァ!ハァ!」
俺、坂上龍太郎は
悠里に聞いていた通りに魔人族の女がやってきたのは良いが、
「へいへ〜い。ピッチャービビってる?」
こんなガムテを顔面につけたガキが出てくるなんて聞いていないぞ!
俺はライトニングカウルを再び発動させ、ガムテ野郎に突っ込んだ。
「魔人族の女にガムテープを顔に貼ったガキ?」
俺達迷宮攻略組と遠藤は高速でオルクス地下大迷宮を駆ける
尚、遠藤は悠里に背負い袋越しに背負われている。
「ああ、90階層に到着したら魔人族の女とガムテープを顔に貼った子供が出てきて、魔人族に降れとか言ってきて、天之河が断る前に攻撃してきたんだ」
俺はガムテープを貼ったガキ?
転生者の能力……俺の人形作成と似たような手駒系か?
と思いつつ遠藤の道案内で迷宮を駆ける。
天之河は兎も角として(光輝が変わった事を知らない為)八重樫達は救いたい。
俺達は帆を進めていく。
その頃、
魔人族と戦っていたが不利と見て、一時撤退し野村の作ったシェルターで治療と休息をしている勇者一行。
しかし、そこに龍太郎の姿は無い。
ガムテープの子供と今も尚戦っているのだ。
「行かない……と」
光輝は剣を杖の代わりに立ち上がろうとする。
「ダメよ!光輝!貴方の怪我はまだ治っていないのよ!」
光輝の服には少なくない血が付着していた。
今もジワジワとシミを増やしている。
「其れでも!龍太郎を一人にはして置けない!」
光輝は足に力を込める。
「待って!天之河くん!せめて治療を受けて!!」
治癒師の辻は治療をしようとするが、魔法が上手く発動できなかった。
既に彼女の魔力は底をついていた。
「……ごめんなさい。もう……」
無理もない。原作以下の戦力による戦闘で原作よりも負傷者が多く、香織も居ないこの状況で限界までやった彼女を誰が責められようか?
魔力回復薬も無く、最早これまでかと考えていると
ドガァン!
絶望がやってきた。
シェルターの壁を破り、魔人族の女が虚な目で此方を見ていた。
「目標発見…排除」
淡々とした口調で殺害命令を出す魔人族。
光輝は足に力を込め、立ち上がる。
力……力が欲しい!皆を守れる力を!あの時のような悲しみをしない為にも!!
光輝が力を求めると身体が軽くなる。
限界突破か?と思ったが、限界突破よりも遥かに力が湧いてくる。
本来の歴史ならメルドを殺された激情にて発動した派生技能【限界突破・覇潰】である。
この世界では力を求める純粋な想いがこの派生技能を目覚めさせた。
光輝はこれならと、動く。
激情に支配された動きが猛火なら、この光輝の動きは流水。
此方に向かう魔物達を斬り捨てながら魔人族へと向かう。
その動きに雫達は一瞬見惚れてしまうが、戦闘中な事を思い出し、僅かな敵を迎撃する。
光輝は自分で自分が信じられなかった。
以前は此処まで視界が広くなかった。
相手の動きが一体一体隅々迄分かる。
そして聖剣の一撃が魔人族の首を刎ねようとした時、
ドゴォン!
天井の一部が爆発四散した。
「「「ギャアアアアアアーーーー!!!」」」
その影響でアブメドを含む一部の魔物が押し潰された。
そして、
「どうやら間に合ったようだな……」
天井の穴から悠里、ハジメ、香織、ユエ、恵里、鈴が飛び出してくる。
そして遅れて、遠藤がロープを使って降りてきた。
「香織!」
「皆!久しぶり!」
クラスメイト達はスタイルは変わっていても、顔立ちや雰囲気は変わっていなかった為直ぐに気づけた。
「回天」
香織が呪文を唱えると、皆がみるみる内に回復していく。
「嘘……」
同じ治癒師の辻は中級の回天で上級以上の回復速度で皆を癒す力に驚きを隠せなかった。
「さぁて、定番のこの台詞を言わせてもらうぜ。
抵抗は無意味だ!降伏しろ!!」
悠里は魔人族であるカトレアを確認すると、ガストを構えて、降伏を促す。
しかし、カトレアが次に放った言葉は悠里の予想から完全に外れていた。
「敵転生者確認。モードバーサーク。殲滅せよ」
魔物達の血管が浮かび上がり、肉が盛り上がる。
「「「「ウガアアアアアアァァァ!!!!」」」」
けたたましい咆哮がその場にいた全員に響き渡る。
「やっぱりこうなったか……」
半ば予想していた悠里はガストを低出力(周りの壁を壊さない為)で連射する。
しかし、此方に向かってくる敵が多く、一弾倉では足りなくなる。
しかし、悠里は一人ではない。
「聖絶!」
鈴の作り上げた結界が魔物達の動きを遮り、
「この!」
「堕ちろ!」
ハジメと恵里の十字砲火が多くの敵を撃ち砕く。
「螺炎!」
そして、鈴の持つ黒傘から放たれる螺炎が敵の大半を焼き滅ぼした。
「んじゃ、眠ってろ!」
悠里はタイミングを見計らい、纏雷式スタンガンで魔人族の女を気絶させた。
この魔人族には聞きたい事が沢山ある。
「ハジメ達はこの女を拘束しながらクラスメイトの護衛を頼む。
俺と恵里達は龍太郎の援護に向かうぞ」
悠里の言葉に皆、頷くと悠里達は一斉に駆け出した。
「うおおおおぉぉぉ!!」
「ニャハハハハハ!」
龍太郎とガムテープの少年は戦っていた。
ガムテープの少年は
「オラァ!!」
龍太郎のカウンターが炸裂し、少年の頬へと突き刺さる。
「ニャロ」
しかし少年は大したダメージは無いかのように動く。
「クソっ!
一体全体どうなってんだ!?」
龍太郎は幾度も殴ったのだが、余りにも効いていない事に疑問が尽きなかった。
そもそもこの龍太郎は原作と違い筋力が18000以上。
生半な耐久力で顔面を殴られれば砕けたスイカみたいになってしまう筈なのだが、
「(コイツ……どういうカラクリなんだ?)」
龍太郎はこの不死身とも言える耐久力に何かカラクリが有ると踏んでいた。
拳は確かに当たるし、殴った感触もちゃんとある。
しかし、ダメージは少ないのだ。
そして幾度もぶつかり合うがどちらの攻撃も決定打にはなり得なかった。
そして、
「龍太郎!無事か!?」
縮地と重力魔法の力を使った高速移動で龍太郎よ元へと到着した。
「ありゃりゃ〜⭐︎お客さんだぁ〜!」
「ガムテープを顔に巻いたガキ……お前か?
ハルツィナ樹海を焼き払い、清水を攫い、ティオ・クラルスを傷つけ、ウルの街を壊滅させようとした転生者は!?」
悠里は怒りの形相で少年を見る。
しかし、少年は……
「知〜〜らない⭐︎」
極めてふざけた様子で返事をした。
「だったら、死ね!」
悠里はガストを撃つ。
弾丸はスラッグ弾だ。これで終われば良し、しかし、仮にも龍太郎と戦ってここまで生きているのだから避けるなりするだろうとの予測していたのだが、
ガォン!
弾丸は少年の顔面に直撃した。
悠里は僅かに驚くが、直ぐに避けられる様に周囲を警戒している。
「痛たたっ、よくもやったな……撃たれるなんてママにもされた事ないのにぃ〜!」
少年は額を抑えながら泣く。
悠里は僅かに気味の悪さを感じた。
初期の予定ではガムテの出番はなく、
光輝がカトレアを斬り殺してから嘔吐する予定でしたが、
情報の為にカトレアが生存しました。