発明の時間二回目と暗躍する者たち
ユーリは王城の謁見の間にいた。
「よくぞ戻ってきてくれたユーリ殿」
王様の声にユーリは一礼する。
「それで、ユーリ殿。
貴方は一人で王城に戻ってこられたのですかな?」
イシュタルが素直に問いただす。
「はい。それは……」
ユーリは語り出す。
先日勇者パーティを襲い、捕まえた魔人族を拷問したところ。
魔人族は魔人族の将軍であるフリードが手に入れた神代魔法の一つ変成魔法を使い、魔物の軍勢を作り出している事、
そして今も尚、戦力増強の為に神代魔法を手に入れようとしている事、
その為にハジメたちには神代魔法を手に入れ、迷宮を封印又は破壊する為の旅に出てもらった。
そして、自分は速やかなる戦力の増強の為に戻ってきた。
反逆者こと解放者たちに関しては、当時はエヒト聖光教だったのに、今ではエヒト聖教と名前が変わっている事から、当時の聖光教はエヒト神の名を語って自分たちに都合がいい様に振る舞っていたのではないのか?
そして、それを危惧した反逆者たちは教会を壊そうとしたのではないのか?
オルクス大迷宮の主人オスカー・オルクスの手記にも家族に手を出されたから反逆者になったと手記にも書いてあった。
そして、反逆者と聖光教は争い、反逆者たちは倒れ、僅かに残った者達は自分たちの使っていた神代魔法を封印し、後の誰かに託し、
聖光教も、その思想を危ぶんだ一部の人間が倒し、今の聖教になったのではないかと推測される。
反逆者たちも教会からの脱却=エヒト神からの脱却と考えられた為、そのままになってしまっていると推測している旨を伝えた。
「ふむ、ユーリ殿……それで、貴方はどうする予定ですか?」
「ええ、まず、工場を作ります。
この工場とは………」
ユーリは工場の概念を話していく。
「これにより、兵器、弾薬を大量に生産しこの国の兵士の戦力を増強します」
「ふむ、何か必要な物は有るかな?」
「はい。先ずは人手です。私一人で頑張ったとしても一人の作業量は知れていますし、他の作業もしなければなりません」
「二に土地、三に資材、四に彼等に払う給料などなど」
ユーリは必要な物を言っていく。
「ふむ、それではユーリ殿にはその工場を作ってもらうとしよう」
それからのユーリは工場の箱を作り出し、
旋盤から高性能旋盤を作り、更に高性能旋盤から超高性能旋盤を作り出す。
そして、超高性能旋盤から超高性能旋盤を大量に生産し、それを職人たちに使ってもらい単発式ライフルを製作してもらう手筈だ。
「これより、トータス初の工場を開設する。
工場とは工房と似て非になる物だ。
工房では鍛造の剣を作る場合、インゴットから叩いて、整形して、焼き入れして、研いで、塚を付けて、鞘に入れる。というのが基本……で良いか?」
ユーリの言葉に、職人連中は頷く。
「じゃあ、その工程を一人で全てやるのが工房。
工程を複数人で分割して作業の効率化を図るのが工場形式だ。
この方法では一つの工程だから、普通より早く作業を覚え、尚且つ分割して行える為工程時間の短縮が可能だ」
ユーリは新しい黒板を用意する。
「そして、作り出すのはライフルだ。
これはクロスボウが弓の張力で矢を飛ばす代わりに、この火薬の爆発の反動で弾丸を飛ばしていく」
ユーリは事前に作り出したライフル。弾丸。火薬を取り出し、皆に見せていく。
「確かに、以前見た大砲とやらとよく似ているな……」
「アレも火薬の爆発を一点に集中させて砲弾を放っていましたな……」
「ですが、大砲の砲弾は球形でしたが、これはどんぐりのような形をしていますぞ」
「むむ、このライフルとやら、中に溝みたいのがあるぞ」
「弾丸を回転………そうか!回転させて安定させる矢の様に、弾丸も回転させて安定させるのだな!」
優秀な鍛冶職人や錬成師たちはライフルを見て、仕様構造を把握していく。
「ですが、このライフルとやらは一発撃てば新しい弾丸を装填しなければなりません。
話に聞けば、最初に作られたドンナーとやらは六発も撃てると聞きましたが?」
そこに水を刺したのは教会から派遣された司祭だ。
まぁ、彼は悪意がどうとかではなく、強い武器が作れるのにどうして弱い武器を作るのか?と言った疑問だが、
「ああ、その理由はいくつか有るが………製作の簡易化による製作速度の向上。
構造の単純化による整備の簡略化。及び構造の強化だ。
ぶっちゃげた話、早く数を作れる武装を用意するのが現時点で最良と判断した」
「分かりました」
司祭は椅子に座ると聞くことに集中した。
「では、続きを話そう。
他にも大砲だ。試験的に作ったフランキではなく、地球で100年少し前に作られた後方装填式かつ自走が可能な大砲を作り出す。
これは大型の魔物対策及び、広範囲殲滅の為の榴弾を開発する。
余裕があればガトリングガンと言う兵器も作りたいが……銃弾と銃弾を繋ぐのをどうするか……
それに、通信機も作りたいしな……」
ユーリはぶつぶつと呟く。
「とりあえずは職人たちにはライフルや弾丸。
負傷軍人たちや孤児たちには単純作業をしてもらう」
ユーリは指示を伝え、
更に一部の錬金術師にはハーバー・ボッシュ法を伝え、必要な道具一式を製作を開始する。
しかし、それを見ている者がいた。
「あ?ハーバー・ボッシュ法?確か……空気からパンと火薬を無限に作るんだったよな?
あ〜、なんで原作壊すんだよ!!馬鹿か!?馬鹿なのか!?ガチでゴミ以下の分際でこの俺様がエヒトのクソになりかわってこの世界を(俺様限定)楽園にしてやろうって言うのによぉ!!」
神威である。
神威は貴族の姿からいつもの姿に変わると、王都にある屋敷で地団駄を踏む。
彼の頭の中では自分はオリ主だから何でも許されるが、モブ如きが原作を壊すなんて許されるわけが無い。
「ああ、もうダメだ……殺す。惨たらしく殺す。あのクズの所為で恵里がやるイベントぶっ壊れるわ。せっかく作ったガムテもどきも壊されるわ。天之河は死なねーわ。八重樫犯そうと考えていたのに、全て邪魔をするゴミには生きる価値が無え」
神威は息を吐き、敵対する転生者を殺そうと決めた。
「俺の物に手を出す奴は全員死ね……」
一方その頃、ハジメたちは………
「悠里も悪い奴だよね……人形で分身を作って囮にするなんて……」
「ん?そうか?敵対転生者は分からんが、
エヒトルジュエ関連としては中々いい手だと思うが……」
そう、王国にいるユーリは悠里が作り出した人形だ。
実は皆が再会した後、一人でガムテープを解剖していた。
そして分かったのが、人間では無い何かだと言う事だった。
因みに、サンプルとしてカトレアの血液や皮膚片等も調べたが、此方とも違っていた為、敵対転生者が召喚ではなく、創り出した人の姿をした何か……しかし、太陽光によって倒されるとは、まるで御伽噺の吸血鬼だ。
しかし、僅かに残った筋繊維の構造は使えたので、人形遣いの力を使って自分そっくりの人形を作り、それを王都に残したのだ。
今現在は最終決戦の為の下準備の為の行動をしている。
因みにカトレアは仮死状態にして冷凍保存中だ。彼女には今現在生きてては困るからな……
悠里はそう考えながら車を走らせていく。
途中でこの世界では珍しい和服姿の女性が見える。
「久しいの、ハジメ殿、悠里殿」
覚醒していないティオ・クラルスと合流した。