新武器開発と褒賞
さて、その翌日
俺はメルド団長に声をかけて新兵器のテストの為に弓兵を三名呼んだ。
そして、その昼に国王やイシュタルといった重鎮達が新兵器の視察に来た。
その中には光輝達もいた。
「あ〜、うん。え〜皆様!本日はお忙しい処お集まりくださり有難うございます!」
俺は良く声が通る様にハキハキと声を出す。
「本日は私めが作り出した新兵器を紹介致します!」
俺は手を挙げると兵士達が魔物の頭蓋を持ってくる。
更にその上に魔物の毛皮が被せられる。
「ほぉ、アレなら実戦……いや、相手が突進しない分、矢が突き刺さりにくい……
さて、どうするのか?」
将軍らしき人物が髭を摩りながら呟く。
次に、三名の弓兵が配置につき矢を構える。
「む?あの弓……普通の弓ではないな」
「放て!」
俺の号令に弓兵達は矢を放つ。
パンッ!ドシッ!
放たれた矢は頭蓋を毛皮ごと深く貫く。
「馬鹿な!!?」
将軍は声を荒げながら椅子を吹き飛ばす勢いで立ち上がる。
「第二射!放て!」
パンッ!ドシっ!
通常矢を放つと次の矢を放つ迄に矢筒から矢を取り出し、矢をつがえ、弓を引き、構えると言う動作が必要である。
しかしこの矢は、ただ弓に付けられた牽引把を引く。それだけで次弾の装填が完了し、直ぐに放てられる。
「斉射!」
パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ!!
ガガガガガガガガガガガガッ!!
牽引把を前後させる度に矢が放たれ、その殆どが毛皮で包まれた頭蓋に深く突き刺さる。
放たれた時間は長くても僅か3秒、
そして放たれたのは先の二射を除くと28もの矢が放たれたのだ。
将軍は空いた口が閉まらなかった。
矢の威力は勿論のこと、あの連射速度は何だ?
何故アレ程の威力と速度を保てる?
将軍は訳が分からなかった。
そして、それは異世界組も同じだ。
「なっ…何だよ……アレは?」
清水幸利はオタクである。
そのジャンルはファンタジーや若干のミリタリーの小説やアニメをよく読んでいた。
しかし、彼の知識にもアレだけの威力と連射性能の弓は見た事が無かった。
「すげぇ連射だな」
坂上龍太郎は唯々弓の連射速度に感嘆する。
「そうかな?あんな大掛かりな装置を作れば誰だって出来ると思うけど……」
そこに水を刺すのは天之河光輝だ。
彼はモノを知らなかったがゆえに自分の中の常識で判断する御都合主義者だ。
だから大掛かりな装置を作れば誰だって出来ると思った。
まぁ、今回だけはその考えで合っていたが……
俺は矢を撃ち終えて、周りのざわめきが少し落ち着いた処で再び話し出す。
「今回ご紹介するのは地球に有る無反動ハンマーと呼ばれる工具の機構を応用した無反動矢!
そして、ショートボウを改良して連射性能を高めたリピーター・ショートボウの二つです!」
無反動ハンマー?
異世界組は聞いた事の無い工具の名を聞いて、頭の中をハテナマークを浮かべる。
天之河も流石に工具迄は知らなかった為に嘘だとは言わなかった。
「無反動ハンマーとは工具のハンマーの内部が空洞となっており、そこに小さな鋼球を多数入れる事により、叩いた時の跳ね返りを抑えるハンマーです!」
悠里は無反動ハンマーの説明を終えると、矢を取り出す。
「此方の無反動矢は先端の鏃と矢柄の間に鉛の輪を複数入れました。
効果は先程見た通りです!」
矢を揺らすと、中からシャカシャカと音がなる。
「原理は!?どの様な原理でそうなっている!?」
将軍は叫ぶ。悠里は落ち着いた声色で、
「はい。鏃が当たった時、矢の勢いで後ろにあった鉛の輪が反動で前に飛び、前方に当たります。
その時の衝撃が矢の跳ね返りを抑え、従来の矢よりも深く突き刺さるのです!」
悠里の説明により軍閥の人間は感嘆の声をあげる。
国王やイシュタルですら、魔人族の操る魔物相手に役立つ……否、先の弓と合わせれば強力無比……よもやすると勇者よりも魔人族を滅ぼす力になるかも知れないと考えた。
「続きましては、リピーター・ショートボウのご説明をさせていただきます!」
俺はリピーター・ショートボウを片手に持ち上げる。
「此方のリピーター・ショートボウですが、弓の部分はこの城の武器庫に有った物です!
それに此方の追加部分を付け加えてた事で通常では隙とも呼べる無駄を極限まで省き、
弓矢による連続狙撃と緊急弾幕射撃を可能と致しました!
威力、射程はそのままに!秒間で2〜4発を撃てるようになるリピーター・ショートボウ!
無反動矢と共に量産性も十二分です!」
俺は最後に頭を下げてから、
「これにて新兵器の紹介を終わらせて頂きます」
と、締めくくった。
それを見ていた視線に気づかずに………
神域
そこにはこの世界のラスボス。エヒトルジュエが使徒ノイントの目を通して下界の様子を観察していた。
「ほお、中々に面白い考えを持つ男だな……」
エヒトルジュエはそう呟くと、
「我が盤面を彩る道化師として使ってやろう」
クククと軽く笑う。
俺は説明会の後、謁見の間に呼ばれる。
謁見の間に入ると、王様が玉座に座り、その横にイシュタルが厳かに立っていた。
「良くぞ来られましたな。ユーリ殿」
「はっ」
俺は天之河も良く使う自己洗脳(要するに思い込みの類)で感情の一部に蓋をする。
そして胸に手を当てて頭を下げる。
「貴殿の作り出した武器……無反動矢とリピーター・ショートボウだったな。実に見事であった。
此れにより我が軍は飛躍的に戦力を向上させ、魔人族との戦いでより多くの魔人族を討つことができる!
よって貴殿には褒賞を取らす!」
兵士(礼装)が大きな袋を4つほど持ってくる。
「2000万ルタ入っておる。
他にも貴殿専用の研究室も用意させておる。
人員も幾らかは融通させようぞ」
凄い!それだけ有れば……
「国王陛下、でしたら少しお願いが………」
俺は願いを口にする。
「何と、その程度で良いのか?
その程度なら直ぐにでも用意できるが……」
「ありがとうございます。国王陛下」
俺は再び頭を下げ、失礼しますと謁見の間から出た。
「ふぅ……」
俺は自室に戻ると自己洗脳を解く。
「まずまずの成果だな……(原作に無い武器製作。八重樫の刀も二本以上作って可能なら彼女にカトレアを倒してもらう……が、ネックはやはり天之河……カトレアを殺そうとして逆に八重樫を死なせそうだ……)」
俺は小さく心の中で呟く。
此処には神の使徒であるノイントがどこで聞いているか分からないから心の中で呟くしか無い。
「とりあえず、新しい発明は明日からだ。
寝よ」
そして、俺はベットに潜り込む。
エヒトに眼を付けられた事を知らずに………
無反動矢(出典:ふかふかダンジョン攻略記)
作品の主人公ジャン(転生者)が自分の持つ知識から作り上げた矢。
作中では弓王と呼ばれる程の男が大金200万を支払って、その倍支払っても惜しくない。と言うほどの中世ヨーロッパレベルの技術なら知ろうとしただけで殺されても仕方ないガチ軍事機密。
リピーター・ショートボウ(出典:科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日記)
作品の主人公栗結大輔がゼロベースから考えた弓。
作中にて通常の弓から無駄を取り払う事で玄人並みの連射力ができるようになっている。