幕間の話、今回は一花姉さん。内容としてはタイトルの通り。
それではどうぞ。
「……………なにぃ!?声優のお仕事のオファーが来たぁ!?」
全国模試が終わって数日後。通常授業を行っていた総悟と風太郎。その休憩途中に一花姉さんに『相談がある』と言われ、そして上述の叫びに至る。
「ほら、前に出た映画の試写会があったって言ったじゃん?それを見たとあるアニメ監督さんが私に興味を持ってくれたらしくてね。名前のない、台詞の少ないモブのキャラなんだけど、一緒に仕事をしてみないかって言われたんだ。どんな内容かは台本を貰ってないから分からないんだけどね」
「へー。そんなに気に入られたのか、タマコちゃん。『……………う~ん。タマコには難しくて、よく分からないのです~。それよりもケーキを食べるのです~』」
「ちょ、みんなの前で真似するの禁止!」
「あんた、ほんと声真似上手いわね……………」
二乃も思わず感心してしまう。
「で、肝心の相談って?」
「いやまぁ、ちょっとどうしようか迷っててさ。その監督さんは声優としても才能がありそうとは言ってくれたんだけど、こういうお仕事はやった事ないしさ。私はレッスンとか受けてないし、声優としては素人だからどうしよっかなー、って」
「なるほどねぇ………………まぁ、俳優とか女優とかタレントでも声優としても上手い人もいるけどねー」
「ソウゴは俳優とかが声優やるのには否定的じゃないの?」
「まぁ、上手ければ別に全然良いかなー、とは思うよ。上手ければね(強調)」
ここ重要とでも言いたげに強調する総悟。
「ちなみにだが、俳優が声優の仕事をやった結果、下手くそだったらどうするんだ?」
「…………………(無言の笑み)」
「あ、もう何も言わずとも答えが分かった気がします……………」
四葉と五月の脳裏にキレた総悟が風太郎を巴投げするイメージが浮かんだ。上杉「いや、どんなイメージだよ!?」
「一花、これは受けるかどうかしっかり考えた方が良いと思います。でないと、場合によっては上杉君が酷い目に遭うかも知れません」
「何で酷い目に遭うのが俺なんだ…………」
上杉のツッコミはごもっともである。
「あ、そうだ!私に良い考えがあります!」
「何だ
「1回試しにアテレコをしてみるのはどうでしょうか?そしたら、一花が向いてるかどうか何となく分かるかもしれません!」
誰かコ〇ボイ司令官にツッコミを入れろや
「良いアイデアだ、四葉。じゃあ、勉強が終わったらやってみるか」
と言う訳で勉強終了後。
「丁度動画サイトに無料公開してあるアニメがあったのでこれを使うとしよう。どこにしよっかなー………………じゃあ、このシーンの台詞にするか」
練習に使うシーンを決めると、総悟はノートに縦書きで台詞を書き起こし一花に渡す。
「あ、台本って縦書きなんだね」
「うん。で、あと注意しなければいけないのが、台本のページをめくる時に音を立てたらやり直しになる。収録用のマイクは高性能だからな。それ以外にも、椅子から立ち上がる音、衣擦れや靴の音も立てちゃいけない。そういう音も拾っちゃうからね」
「へー、そうなんだね」
総悟の知識に一花が感心している間に全てのセッティングが終わった模様。
「じゃ、とりま俺と一緒に1回やってみるか。まぁ、ワイも素人だけど本番は誰かと一緒にアテレコするし、その練習と言う事で。じゃあ三玖と五月。合図したら再生ボタンと録画ボタンを押して貰っていい?」
「うん」
「はい、分かりました」
「ふー…………………よーい、アクション!」
《テイク1》
「あー、ダメダメ。ダメウーマン!(ブ〇ゾン)」
「うわー、私の所だけ映像と声がズレまくってるね」
「ていうか、アンタは普通に上手かったわね」
「まーね」
一花とは対照的に総悟は普通にアテレコが上手かった。他の皆も二乃と同じことを思っていた。
「うーん、映像と声がズレないように声を当てるのって意外と難しいね……………」
「ま、心配するな。何度もやってればその内『そこっ!』って感じでタイミングが分かって来るから」
「そっか。じゃあ、もう1回やってみるね」
《テイク8》
「んー………………タイミングは合うようになってきたけど、どうも演技が棒読みくさいな」
「自分では結構演技してるつもりなんだけど、実際録画したの見てみると棒読みみたいに聞こえるの、どうしてなんだろうね?」
「……もしかして、役になりきれてないとか?」
「おっ、三玖鋭いね!まさに俺が言おうとしていた事だよ」
褒められた嬉しそうにご満悦の表情を浮かべる。
「声優ってのは命を吹き込む仕事だからな。映像に映るキャラを生きてる人間にしなきゃならない。キャラクターになりきり、生きた台詞を言う事で命を吹き込む。これが声優の神髄…………………って、でぇベテランの大御所声優が仰ってたわ」
「でえベテラン?…………………あぁ、大ベテランと言う事ですね。相変わらず、火野君はたまにちょっと変わった言葉を使いますね」
「まぁでも、ここまでの付き合いとなればもう何となく分かるだろ?」
「まぁ、確かにそうですね……………慣れって恐ろしいものですね………………」
五月がそう呟く中、総悟は一花の方を向き直って口を開く。
「まぁ、そう言う訳で一花。キャラクターになりきる事と、後は強弱を意識して口をハキハキと動かすのと声色に表情をつけるようにする事を意識しな。勿論、映像とズレが無いようにする事も忘れずに」
「……………ソウゴ君」
「ん?」
「改めて思ったけど、声優さんってほんと凄いね」
「それなー」
それからも色々とダメだしされつつ、何度も何度も練習を重ねる事2時間半経過。
《テイク37》
「えーっと………………た、田中君は何か好きな食べ物とかある?」
「そうだな、俺は紅ショウガが1番好きだな」
「あ、、え?べ、紅ショウガ?」
「そうなんだよ。毎日三食、紅ショウガをおわん1杯分欠かさず食べてる。これが結構美味しんだよ」
「やばー!うちの彼氏、イケメンで優しくて百点なのに、紅ショウガマニアだ!だから、顔が若干赤いのとちゃうか!?」
「………………はい、カット」
三玖の声を聞いて一花は肩の力を抜いてふぅ、と一息入れる。
「お疲れ様です、一花。どうぞ、こちらを」
「ありがとう、五月ちゃん。………………ふー、お水が美味しいね!」
「一花、最初の頃よりすっごく上手くなってたよ!上杉さんもそう思いますよね?」
「まぁ、そうだな。最初は素人から見てもポンコツだったが、まるで見違えたな」
上杉も珍しく褒める。さて、肝心の録画映像を確認している総悟はと言うと──────
「…………………おぉ、ええやん!ズレもないし、ちゃんとキャラに命吹き込まれてるし、今までで1番良いぞ~」
「……………よっし!」
総悟からもお褒めの言葉を貰った一花は思わずガッツポーズ。相当嬉しかったのだろう。
「いやぁ、疲れたぁ……………」
「ねぇ、一花も声優の素質があるんじゃない?声優のお仕事、やってみるのもありだと私は思うけど」
「奇遇だな、俺も二乃と同じ意見だ。やはり一花には声優の才能もある。毎日30分位練習すれば十分通用するレベルだと思うし、やってみたらどうだ?」
「うん、そうする。明日社長と会うから引き受けるって言っておくよ」
自信がついた一花は声優のお仕事をやってみる事を決めるのだった。こうして、総悟アニオタ大先生による特訓は幕を下ろしたのだった。
数日後
「で、結果はどうだった?」
「監督さんや他のプロの声優さんからも『めっちゃ上手!』って褒められちゃった。リテイクなしの1発オーケーだったよ。あれから毎日練習したし、総悟君から言われた注意事項も守ったからね。色々とありがとね、ソウゴ君」
「どういたしまして。ちなみに、どんな役だったんだ?」
「主人公の同級生の役。思っていたよりも意外と出番はあったかなー。…………………まぁ、序盤でタコみたいなエイリアンに殺されて死ぬんだけど」
「やばー。ドラマだけじゃなくてアニメでも死ぬんかい!何でなん?どんだけ死亡キャラ引き当てるん?なぁ?」
「ほんと、何でだろうねー………………」
──────後に一花は女優だけでなく声優としてもそこそこの有名人となるのだが、それはまた別の話である。なお、演じるキャラの4割は途中で退場する模様
──────なお、映画は小規模上映のわりにそこそこヒット。レビューの中に一花の演技にケチを付ける者は誰も居なかったそうです。
やったね、一花姉さん!これで女優と声優の二刀流!あの大〇選手と互角(?)だよ!
第1位「互角とか意味わからん。いっちょん分からん」
そういや青ブタの映画面白かったです。ファンは見に行くんだよ!行け!冬のランドセルガールも忘れずにな!
次回からは星奈さんのお話です。準備が出来次第投稿するのでしばしお待ちを。
それでは、また次のお話で。