三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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ロリババァ村正の話です。時系列としてはプールの後の想定です。


総悟と村正

夏休み某日

 

総悟の家から窓ガラスが割れる音と伴に村正が転がり落ちて尻もちをつく。

 

「何をするのじゃ、貴様!」

 

「それはこっちの台詞じゃろうが、このロリババァが!!」

 

神様によって始まった村正との共同生活は1ヶ月も経たない内に早くも亀裂が走りまくっていた。総悟の先祖は村正に対してひどい仕打ちをしている。村正の心が開かないのも無理はない。

 

そして、流石にそんな事が続けばいくら幸せ絶頂の総悟でもフラストレーションは貯まる。そう言った背景もあって、こうなるのは必然だった。

 

「てめ、俺が死ぬほど大切に保管していたラノベや漫画を無断で触った挙句破りやがって!それ抜きにしても、日ごろから和食がいいだのなんだの文句が多すぎるんじゃ!」

 

「ふん、あんなものまた買えば良いではないか!わしの刀よりも対して価値のないものじゃろう。しかも、わしは謝ったし、貴様の妹なんじゃろ?それくらい寛容に許したらどうなのじゃ?器の小さい奴じゃ」

 

「おま、『何か破れたわすまん』」のあんな反省の意が伝わらない謝罪で許すかボケェ!にしても、ラノベや漫画をあんなものだぁ……………!?」

 

総悟にとって漫画やラノベは自分自身を形作ってくれた大切なもの。それをあんなもの呼ばわりされて益々ブチ切れた。

 

「はっ、ラノベや漫画をあんなものならあんたの刀(村正)なんてクソよクソ。知ってっか?村正は妖刀として忌避されてたらしいぜ!お前の作った刀で歴史のちょっとした偉人が殺されたからなぁ!」

 

「っ!」

 

「んだよ、震えて。怒ってんのか?それに、刀なんてもう時代遅れの役立たず!だからお前は火縄銃も生み出せる術を身に着けたんだろ、強いから!刀より利便性があるから!どうせ刀に大した誇りも持ってないくせによ!いつまでも古くて誇りも何もないもので偉そうにふんぞり返ってんじゃ…………ね…………………」

 

そこまで言って漸く総悟は気付いた。村正は泣いていた事に。村正の涙を見て急速に頭が冷えた総悟は自分が女の子を泣かせた事実にショックを受けた。

 

「あっ………え…………」

 

「……違う……刀は………村正は…………………っ!」

 

村正は涙も拭わずそのまま総悟の家を飛び出す。それを総悟は追う事も出来ず呆然としていた。

 

「…………………」

 

そして、走り去る村正を追うように黒い車が走っていく事に誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なるほど」

 

「私がいない間にそんな事が…………」

 

暫くして遊びに来た三玖と買い物から帰って来た星奈は玄関前で呆然としていた総悟を部屋の中に入れて、そこで全て話を聞いていた。

 

「お2人の仲がよろしくないのは知っていましたが、まさかここまでとは気付きませんでした………不覚…………」

 

「そりゃあ、星奈さんに心配は掛けたくないですし、これは俺の問題でもあるんでね………………はぁ、マジでさっきまでの自分が嫌になるわ。何か、心にもない事がさらさら出てきちまって、村正を傷つけてしまった…………………」

 

「よしよし。別にソウゴだけが悪いわけじゃないから」

 

凹む総悟を三玖が優しく撫でる。

 

「ソウゴはどうしたい?」

 

「そりゃ………ひどい事言ったし謝らな『違うな。間違っているぞ』うわっ、ビックリした!?」

 

誰も呼んでもないのに現れたのは創真神だった。

 

「こうなる可能性が高いと思っていたけど案の定か。修学旅行中に色々と話はしたんだが……………悪いね、総悟君。こちらも例の後始末が忙しくてね。全くフォローに回れなかった」

 

「いや、そっちもそっちで色々とあったんだろうしよ…………」

 

「お父さん、違うと言うのは…………?」

 

「勿論、謝るのも大事だろうがその前にやる事がある。君は先ず知らなくてはならない。彼女の過去を」

 

「いや、それも大事なんだろうけど…………たぶん聞いても詳しい部分は話してくれねーんだよなー…………」

 

「あ、そう言えば私には簡単にだけど話してくれてた」

 

「へー……………何か三玖にはちよっと甘い気がするんだよな、村正って。って、んな事よりも」

 

「あー、別に本人からとか三玖さんから話してもらう必要はないで」

 

首を傾ける総悟に創真は解説する。

 

「ホラ、今の君と村正ってサーヴァントとマスターみたいな関係でしょ?で、アニメ見てた総悟君ならもう分かるんじゃね?」

 

「……………あ!夢の中でサーヴァントの記憶を見るアレか?でも、今まで見たことなかったな……………」

 

「そりゃ、君が心の底から彼女の事を知ろうとしてなかったからさ。心当たりはあるやろ?」

 

「…………確かに」

 

確かに詳しい過去は知ろうとしてなかった。無理に知る必要性はないと思っていたからだ。

 

「けど、今の俺なら見れる気がする!よし、寝よ…………って、今昼やん。全然眠くないわ」

 

「それなら任せたまえ。『ラリホーマ』」

 

某ド〇クエのBGMが流れた瞬間、総悟は爆睡した。

 

「zzzzz」

 

「もう寝ちゃった…………」

 

「後は目覚めるのを待ちますか。星奈ちゃん、お茶でも入れよっか。僕もやるよ」

 

「あ、はい」

 

「あ、私も手伝います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟side

 

『んっ………………ここは…………………?』

 

『気付いたか』

 

っ……………これは夢……………そうか、村正の過去か。何か爺さんと村正が話してる場面か。

 

『川から小娘が流れてきた時は儂も驚いたぞ。小娘、名前は?』

 

『名前…………………あれ、私の名前……………何だっけ………年は5歳なのは覚えてるけど、名前は……………………?』

 

………………記憶喪失か。

 

『どうしよう……………私、これからどうすれば…………』

 

『まぁ、川から流されたと言う事は親から捨てられと言った所かのう………………仕方がない、儂のところに住むが良い。1人きりだったから話し相手にはなるじゃろう』

 

『え?良いの…………?』

 

『おぬしが嫌でなければな。儂は千治村正と言う名じゃ」

 

『う、うん………分かった…………』

 

え、この爺さんが村正なん!?どゆこと?

 

答え合わせがされる事もなく場面は変わって、爺さんが刀を作っている場面に移る。

 

『ううむ…………これではないのう………………』

 

『お爺ちゃん、何してるの?』

 

『刀を作っておるのじゃ。じゃが、中々納得のいくものができなくてのう……………』

 

『ふーん…………ねぇ、私も手伝っても良い?』

 

『何?お主が?……………まぁ、いいが』

 

いや、いいんかい。危ない作業させんなよ、まだ子供やろ!……………と、思っていたが、どうやら村正は鍛冶師の才能があったようで、どんどん上達して行った。すげーな。爺さんの方も助手が増えたからか作業効率が上がったみたいで、また場面が映るとそこにはとても美しい刀が出来ていた。

 

『うむ、見事!これが儂の求めていた刀じゃ!』

 

『やったね、お爺ちゃん!』

 

『……………そうじゃ、折角じゃからお主が名前を付けるがいい。お主のお陰でもあるからのう』

 

『え、私が?うーん………………じゃあ、村正で!お爺ちゃんが作ったものだし!』

 

こうして生まれたのが村正、って訳か。そして、場面が次々と流れる。村正は滅茶苦茶売れたらしく。場面が飛ぶごとに2人の生活や豊かになって行った。工房もでかくなったし、村正………えー、ロリの方も身に着ける服装が華やかなものになった。

 

だが、幸せな時間はそう長くは続かなかったようで。

 

『…………儂も歳には勝てんか…………無念じゃ…………お前さんと作った刀をもって天下に知らしめたかったのう…………』

 

『お爺ちゃん…………』

 

病に伏した村正の言葉を聞いて何か決心がついたように見えた。

 

『なら、私は今日から千治村正を名乗る!そして、お爺ちゃんが作った刀を天下一の刀にしてみせる!』

 

『…………………そうか。あぁ……………安心したわい………自分らしく、幸せに生きるのじゃぞ……』

 

そうして、村正の名は受け継がれたのか。道理でいつもの口調も先代村正に似ている訳だ。…………………そうか、あいつにとって『刀』は先代村正との絆の証だった訳か…………それを俺は………………。

 

『なに?儂に弟子入りしたいじゃと?』

 

『はい、私も名刀村正の名を天下に轟かせたいのです!』

 

『!………………ふん、良いじゃろう。だが、儂は厳しいぞ』

 

1人の男が弟子入りを申し入れて来た。恐らく村正は人との関りが薄かったから気付かなかったのかもしれないが、どうにも胡散臭い匂いがした。

 

そして、数年後。予感は的中した。

 

『何故じゃ…………………何故こんな真似を…………………!?』

 

村正は刀を突きさされて重傷だった。工房にも火が付けられていた。犯人は弟子入りを申し入れた男だった。

 

『はっ、決まってんだろ。村正の技術を盗み、そしてその名声や富を全て俺のものにする為さ。お前は用済みだ。今日から村正は俺のものだ!』

 

こいつ…………こいつが俺の先祖…………………なんてクソ野郎だ…………干渉できないのがクッソ悔しい…………………!

 

『許さない………お爺ちゃんの刀を醜い欲望の為に………うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!!』

 

男も去り、誰もいない工房で村正の身体が炎に包まれたかと思えば大きな爆発が起きる。工房も何もかもが灰となって更地が出来ていた。そこにあったのは1本の刀。あの刀は、初めて作った『村正』だった。そこに魂が宿ってたのだ。妖刀『村正』の誕生と言う訳か。

 

『許さん………貴様だけは決して許さん…………!』

 

そして、村正は調査に来た役人に触れられた際に意識を乗っ取り、その体を操って調査を行っていた。あの男を殺そうとしているのは明白だった。ただ、捜査は難航したみたいだった。そりゃそうだ、この時代には今の警察組織みたいなハイテク機器とか監視カメラとかもないしな。

 

何度も体を乗り換え、漸く男を見つけたのはあれから20年後だった。あの弟子は家庭を作っていて結婚もしていて、性は『火野』となっていた。

 

そして、村正は全てを切りつくした。罪なき子供も、弟子の女房も、何もかも。

 

『なっ、何だ貴様!?俺が何をしたって言うんだ!?』

 

『二十年前、貴様は村正の技術を盗んで私利私欲のために使ったじゃろう。汚したな、村正の名を』

 

『ま、まさか……………!?』

 

『その罪、死で贖うが良い』

 

こうして、村正は弟子含む火野家を焼き払った。そこから村正は『刀鍛冶狩り』を行った。俺の先祖と伴に金儲けに加担した者達を切り払って行った。だが、村正は1つミスを犯していた。それは、火野家の襲撃の際に1人だけ子供を切り損ねていた事。そのつけが回ってきたのは、襲撃からさらに10年後。狩りを続けていた村正は襲撃を受けて敗れた。

 

『妖刀『村正』…………漸く追い詰めたぞ……………父と母、そして兄弟の仇…………………!』

 

『まさか、1人逃していたとは誤算じゃった…………………見事な腕前じゃったのは認めるが、わしをどうする?壊すか?やれるものならやってみるが良い』

 

『良いや。お前は殺さない。これは神官に作らせた特殊な力の籠った鞘だ。これでお前を封印する』

 

こうして村正は封印された。そして、暗闇の中1人で何百年もの間封印される事になった。だが、時代の流れとともに封印の力が弱まったのだろう。俺がこの世界に転生してきた頃、村正は力をほんの僅かだが取り戻した。

 

『ふん…………この程度では何も出来ぬか…………………封印されている間、外の状況はだいぶ変わったようじゃが、幸いにしてわしは火野の家にいるようじゃな…………………ならば、今は力を取り戻して奴の家を皆殺しにするまで…………………!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……!」

 

「あ、ソウゴ!」

 

「お目覚めですか、ソウゴ様」

 

目が覚めると三玖と星奈さんがいた。1時間くらい寝てたか。だが、その顔はどちらも険しい。

 

「何かあったんですか?」

 

「それが………村正さんが………」

 

「誘拐されたそうです」

 

「は!?」

 

誘拐?いや、でもあの村正が誘拐される何て考えにくい。……………待てよ。

 

『ちなみに、80km以上離れるとパスが繋がらなくなって、半日以内に消滅するから気をつけてねー』

 

そういや神様、そんな事言ってたな……………まさか、80㎞離れてるから、力が無くなってその影響であっさりと捕まった的な………!?

 

「そういや神様はどこ行った?」

 

「それが、お父さんは何か神界の方で秘書の人が結構ヤバいやらかししたそうでそっちの対処に行ってしまって…………………」

 

「行った直後に誘拐されたって連絡がきた。これ」

 

三玖が星奈のスマホ見せてくれた。そこには縛られて気絶している村正の姿があった。場所は………………これはどこかのボウリング場か?ボウリング場の球らしきものが写っている。にしても、あの秘書の人は何してんだ?いや、そんな事はどうでも良い。

 

「ちなみに、誘拐した奴はなんて?」

 

「総悟様との人質の交換だそうです。猶予は日没まで。警察に言えば命はないとの事です。総悟様のお父様にはまだ連絡していません」

 

俺と?…………村正は養子って事になってるから人質としては価値がないと判断したのだろうか。

 

「この家も見張られてるんじゃないですかね?」

 

「恐らく。四方から家を囲むように人の気配を感じます。数は3。ですが、プロではなさそうです。下手な動きをすれば連絡がいくでしょう。この場所は窓もないので見られる術はありません。盗聴器も確認しましたがなさそうです。どうしますか?」

 

つまり、こちらを囲む敵は3。だが、送られてきた写真と星奈さんが言う事から察するに、ほぼ確実にプロの仕業ではない。村正がいる場所は絞れる筈だ。ここから80キロ以上離れていて、かつ閉店しているボウリング場か。そう多くはない筈…………………よし、ネットでヒットした。しかも1つだけ。ここで恐らく確定だろう。

 

「…………星奈さん」

 

「私はいつでも大丈夫です」

 

「すみません、力をお借りします。あと、ここに行くとしたら何分で行けますか?」

 

「手段を選ばなければ5分で着きます」

 

どんな手段か分からないが、まぁ良しとしよう。戦力は十分すぎる。相手はプロではない。場所も特定出来た。条件はクリアされた。

 

「……………三玖、すまないがここで待って貰っても良いかな?30分以内に全部終わらせてくるよ」

 

「…………策があるんだよね?」

 

「勿論。それに、今回は俺1人じゃないし」

 

「ご安心ください、三玖さん。総悟様には傷1つ付けません」

 

「……………うん。分かった。気を付けて」

 

「ああ」

 

…………さて。さっさと妹を取り返しますか。




村正は精神的には幼いからメンタル的にはそんな強くないです。

ちなみに、本日のお昼に続きは投稿します。
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