三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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ちなみに、作者はもう2、3年以上花火を生で見てませんねー。彼女でも出来たら行きたいなぁ、なんて思いながら書きました。書き終わったとき、謎の虚しさが残ったが気のせいとしておきましょう。


今日はお休み②

「もう花火大会始まるのに………何で家で宿題やってるのよ!」

 

これも全て、『祭りに行くのは良いとは言ったが、宿題をすっぽかすのは良いとは言ってねぇ!』と主張する上杉風太郎って奴の仕業なんだ。この5人は祭りに行く途中で勉強星人の上杉に会ってしまったのが運の尽きだったな。まぁ、花火大会で楽しんだ後に(5人が)大嫌いな勉強なんて気分的にしたくもないだろうし、お楽しみの前に厄介事を済ませておくのが良いだろう。

 

「いいかお前らー。1人でも逃げる素振りを見せてみろ。二乃が再び星奈さんの雷の犠牲になるぞー」

 

「何で私だけなのよ!」

 

「次は地下行きですかね」

 

「地下!?」

 

こんな感じでギャーギャー騒ぎつつも、二乃も含めて反抗もなく案外すんなりと宿題に取り掛かっていたので1時間もしないで宿題は終わらせた。

 

と言うわけで、今度こそ…………じゃけん、祭りに行きましょうね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと終わったー!」

 

「花火って何時から?」

 

「19時から20時まで」

 

「じゃあ、その間に屋台に行こー!」

 

宿題を終わらせて晴々とした表情を浮かべてる四葉、二乃、三玖、一花姉さんの4人。それと対称的に隣の上杉はどんよりとしている。

 

「おい、祭りに来てまでどんよりとした空気出すなっての」

 

「折角の日曜だってのに……………俺はなんて回り道をしてんだろうな………」

 

「良いじゃねぇか、たまには回り道もよ。普段見れない景色が見れてさ」

 

「そんなもんかね……………」

 

と、そこへ。

 

「何ですか、その祭りにそぐわない顔は」

 

むむっ。髪型が変わってるが─────。

 

「……………五月、だよな?」

 

「!…………意外です。火野君は私達の見分けがつくようになってきたのですね」

 

「……まぁ多少はね?」

 

ホットドッグを食ってたと言うのが決定的な証拠になったのは黙っておこう。

 

「火野はよく分かるな。つーか、顔が同じでややこしいんだから髪型変えるなよ」

 

「なっ……………どんな髪型にしようと私の自由でしょ!」

 

あーあ、怒らせちゃったよこの勉強バカ(上杉)は。デリカシーないのー。

 

「女の子が髪型を変えたら褒めなきゃ。もっと興味を持ちなよ~」

 

「そうなのか…………?」

 

いやはや、ほんと一花姉さんの言う通りでございますよ。

 

「ところで2人とも。浴衣は本当に下着を着ないか興味ない?」

 

「え」

 

「それは昔の話だ」

 

「ほんとにそうかな~?」

 

なっ、なにぃ…………!?なら是非とも見せ

 

「なーんて、冗談でーす!ドキドキした?」

 

…………み、見せてとか言うわけないじゃないですかーアハハ!つーか、見るなら三玖の方を…………って、なに言っとるんじゃ俺は!!完全に変態の発言じゃねぇか!!最低だ……………俺って…………。

 

「………………星奈さん。俺を殴ってくれ」

 

「いや、流石にそれはちょっと……………ほら、行きますよ」

 

星奈さんに促されて俺も歩き始める。何処に向かって歩いてるのかはさっぱりだが。

 

「あれ?一花姉さんは何処に行った?」

 

「少し離れた所で電話で話してますよ。…………それと総悟様。これ、いりますか?」

 

星奈さんから手渡しされたのは金魚がパンパンに詰まった袋×4。

 

「な、なんですかコレ………?」

 

「四葉さんと『どちらが大量に金魚を救えるか競争』をした結果、こうなりまして…………四葉さんも似たようなものでしたので、お店の方は涙目でした」

 

「来年から要注意人物として出禁にならなきゃ良いですが………らいはちゃんにあげるのは?」

 

「もう既に四葉さんがあげてまして…………」

 

あ、ほんとだ。らいはちゃんの手にも袋×4が。てか、反対の手に花火セットがあるんですが、それ今日いるんですかね………(困惑)

 

「この金魚はさておき……………皆さん何処へ向かっているのですかね?」

 

「俺に訊かれても分かりませんよ。あ、丁度良い所に。三玖に訊いてみますわ」

 

俺達は少し先を歩いていた三玖の元へ行く。

 

「なぁ、三玖。1つ聞きたいんだけども、皆は何処へ向かってるんだ?」

 

「二乃が予約したお店。そこの屋上から花火を見るの」

 

「ブルジョワですね……………しかし、そこなら人もいないでしょうし快適なのは間違いなしですね」

 

すると、側にいた二乃から声が掛かる。

 

「そう言えば、祭りに来たのにアレも買わずに行くわけ?」

 

アレ、とは?

 

「そういえばアレ買ってない……」

 

「アレやってる屋台ありましたっけ」

 

「あ、もしかしてアレの話してる?」

 

「早くアレ食べたいなー」

 

アレ、とは?(食い気味)

 

「せーの………」

 

「「「「「かき焼き氷そばリンゴ人形飴焼きチョコバナナ 」」」」」

 

バラバラじゃねぇか!!

 

「全部買いに行こう!」

 

「…………なぁ、火野。あいつらがほんとに五つ子なのか怪しく思えてきたんだが…………」

 

「奇遇だな、上杉。俺もだ。うーむ…………もしや、本当は三つ子で、残りの2人は宇宙人説もあり得るんじゃ…………」

 

「それはないだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの欲しいものを買い終わり、人混みを歩いている。その中でも二乃は誰よりも先に先頭を歩いていた。

 

「あんた達遅い!」

 

「…………二乃の奴、張りきってるなー。勉強もあれくらい張りきってくれりゃ良いのに」

 

俺のぼやきに星奈さんと三玖はクスッと笑う。そのまま三玖は花火に対する想いを話し始める。

 

「花火はお母さんとの思い出なんだ。お母さんが花火が好きだったから毎年皆で見に行ってた。お母さんがいなくなってからも毎年見に行ってる」

 

……………そうか、三玖らのお母さんはもう亡くなってたのか。そう言えばお母さんを見たことなかったな。そして、家族の大切な思い出ならば姉妹の事が大好きな二乃が張りきるのも納得だ。

 

「私達にとっては花火ってそういうもの」

 

「なるほどね」

 

「家族の大切な思い出と言うわけですか……………おや、わたあめの屋台が良いところに。ちょっと買ってきますね」

 

好物なのか反対側にあるわたあめの屋台の方へ行く星奈さん。俺も何か買おうかなー、と思って屋台を見回していると。

 

『大変長らくお待たせいたしました。まもなく花火大会を開始します』

 

そのアナウンスが掛かった瞬間、大勢の人々が一斉に動き始めて俺は人のビックウェーブに飲み込まれた。

 

「もう、物売るってレベルじゃねーぞ、オイ!これだから人混みは苦手なんだよォォォォォォ!」

 

前世でのP3の販売時の光景を思い出しながら、そのまま俺は流されて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あー、酷い目に遭った……………………」

 

漸く人の波から抜け出した俺氏。幸いにしてキッズに何回か足を踏まれた以外に被害はない。

 

「つーか、三玖や星奈さん達とはぐれちまった…………そして花火も始まっちまった」

 

周りに三玖、星奈さん、上杉らの姿は何処にもない。先程のビックウェーブのせいなのは明白だ。

 

「困ったな……………こういう時は………テッテレー!スマートフォンー!」

 

青いネコ型ロボットみたくひみつ道具を出すと思った?残念、ただのスマホでーす。

 

「これで電話すれば…………………って、電池が切れてるじゃねぇか!クソッ、ゲームしてないでちゃんと充電しとけば良かったな……………」

 

過去の行為を後悔してもどうしようもない。モバイルバッテリーもないので電話路線は諦めることにした。

 

「そうなるとこの大量の人の中から辺りを歩き回って探すしか…………ん?」

 

辺りを見回していると、少し離れた所にベンチに座り込む三玖の姿が。慌てて転びそうになりながら駆け寄る。

 

「三玖!」

 

「そ、ソウゴ?他の皆は…………?」

 

「三玖が1人目。あとの4人は何処にいるのやら………あ、そうだ!誰かに電話とかした?俺のスマホは電池がきれて眠りに着いちゃってよ」

 

「さっきしてみたけど、二乃しか出なかった。二乃は四葉とらいはちゃんを迎えに行くって」

 

二乃が四葉を回収するとして…………残るは一花と五月か………。

 

「よし、じゃあ2人で手分けして探すとしようか」

 

「あ、待って!足が…………」

 

三玖の足を見ると、赤く腫れていた。

 

「誰かに踏まれたのか?」

 

「うん…………」

 

三玖の足を踏みやがって、こん畜生め……………俺がその場にいたら死罪ものだぞ!!

 

「私の事は良いからソウゴは先に行ってて」

 

…………………………………。

 

「いや、それは俺には無理だな」

 

怪我してる女の子を放っておくなんて俺には無理だねっ!!

 

ちょっと待ってて、と断って俺は目先にあったコンビニで包帯を購入してすぐに三玖の元へカムバック。掛かった時間は僅か90秒。

 

「一旦草履を脱がさせて貰うぜ」

 

「う、うん…………」

 

「(………いやー、綺麗な足な事で。スベスベ…………って、おい!!んな事より応急処置だっつーの!!)」

 

暗黒面に堕ちる寸前で自分を取り戻し、手早く包帯を足に巻いた。

 

「これでよし、っと。少しは楽になるでしょ」

 

「う、うん…………あ、ありがとう」

 

「良いってことよ。じゃあ、三玖はここで休んでなよ。俺は一花と五月を探してくるぜ」

 

「………うん。気を付けてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………と、カッコつけたのは良いものの。やっぱり見つけるのはかなり面倒だな…………」

 

この会場に1000人位は来てるのだろうか?その中から2人を探すのはかなりハードだな。

 

『知人ですけどー!?』

 

…………この声を俺は知ってるな。声のした方へ急ぐと予想通りの人物がいた。

 

「やっぱり上杉か」

 

「誰かと思えば火野か。よく俺を見つけれたな」

 

さっきの声で目立ってたもんですから。

 

「で、お前はなにしてんの?」

 

「さっき一花を見つけたんだが、何故か逃げやがってな…………」

 

「に、逃げたぁ?」

 

「一花を見つけて話し掛けようとしたら謎の髭のおっさんに遮られてな。『一花ちゃんとはどんな関係?』って訊かれて、その答えに悩んでいる間に逃げられちまった」

 

「その髭のおっさんも気になるが、何で逃げたんだ?……………いや、今それを言ってもしょうがない。早く探さないとな」

 

「……なぁ、火野。あのアホ毛の女、五月じゃないか?」

 

上杉が指差した方向を見ると、確かにアホ毛の女がいた。あの髪型は多分五月だ。俺達はダッシュで距離を詰めて五月に声を掛ける。

 

「五月見っけ」

 

「!!……………なんだ、あなた達ですか」

 

「悲しいかな、残念そうな表情をされちゃったよ……………これで後は一花姉さんだけか。取り敢えず、五月と上杉はひとまず三玖と合流してろ。ここを真っ直ぐ行った所にあるベンチで三玖が休んでる。一花姉さんは俺が引き受けた」

 

「探しに行くなら俺も」

 

「体力なしのお前が無理すんな。歩きすぎで既に足が少し震えてんぞ。残りのお1人はスピードに優れた俺がとっとと探してくるわ」

 

「………分かった」

 

「分かりました。……………火野君」

 

探しに行こうとすると五月から呼び止められた。

 

「……………一花の事を、よろしくお願いします」

 

「…………ああ、任された」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそー…………何処に行きやがった!」

 

360度くまなく探すが中々見つからない。ったく、何故逃げたんだ?お母さんとの思い出の花火を5人で見るんじゃなかったのか?

 

「あとは一花姉さんだけだってのに……………!」

 

「………そっか。よかった、他の皆とは合流出来たんだね」

 

背後を勢いよく振り返ると捜索対象(一花姉さん)がいた。つーか、何処から現れやがった。

 

「こっち来て」

 

「は?ちょっ!?」

 

何故か俺の手を掴んで駆け出す一花姉さん。

 

「花火見た?凄く綺麗だよね」

 

「ちょ、何処に行くんだっての!?5人で見るんじゃ」

 

「はは。いーから、いーから」

 

「…………………」

 

どこか陰りのあるようにも見える笑顔で言う一花姉さんに引っ張られて路地裏まで連れてこられる。

 

「フータロー君から聞いてる?」

 

「聞いてるって……………髭のおっさんの事か?」

 

正解と言わんばかりに一花姉さんは頷く。そして───────唐突に壁ドンされた。

 

「その事は皆に秘密にしておいて。私は皆と一緒に花火を見れない」

 

「なん、だと………?」

 

to be continue……




おまけ

一花姉さん 「前から思ってたけど、ソウゴ君って私だけ呼び名が違うよね?姉さんってついてるけど、何で?」

総悟「長女だってのもあるし、一花姉さんって呼び方が何故かしっくりくるからな」

一花姉さん「へー、そうなんだ。まぁ、確かに私ってお姉さん気質だからしっくりくるのも無理はないよね!」

総悟「ハッ!」

一花姉さん「あー!今、馬鹿にしたでしょー!」

今日もこんな駄文を読んでくれてありがとうございました!

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