この間に漸くですが本編の方を進めていきます。長かった………………。
それではどうぞ。いきなり本編では殆ど語られることがなかった星奈さんの過去が大体全部語られます。
エピソードⅠ Anti-God Weapon
「……………………」
私は劣悪なスラム街で産まれた
何も信じれず育った私が子供の頃から信じられた事実。
それは『殺せば人は死ぬ』と言う事。
故に私はなったのだろう。殺し屋になる道を。
それが私の天職だったみたいだ。私が持っていた殺しの才能を上回る才能がなければ誰も逃れられない。結果、私は文字通り無敵だった。
数えて千人を殺す頃には、私は『死神』と呼ばれていた
────────そして、今。私は国を越えた非公式の研究組織のもとにいた。
言語設定… オート…
ID入力を確認。
認証システム… 作動…
認証中…… 認証中……
認証完了。最重要機密事項に関する情報をアンロック。
《対神兵器の実用に向けた実験概要に関する報告書》
先の戦いにより、第1位が持つ固有能力が強大である事を確認。現勢力では第1位を倒せる確率はほぼ0に近い。そこで、我々は第1位に対抗するべく対神兵器の開発を決定。神界で行えば第1位に察知される可能性が高い為、とある地球にて我々と契約した人間の科学者らが代わりに実験を行っている。第1位に我々の存在が知られる事のないように、我々は指示や知識・技術の提供を行うのみの干渉しか行わないとする。今のところ、第1位がこの実験の存在には気づいていない事が
現在、人間を対神兵器へと転用する実験を続行中。転用が成功すればあらゆる世界に存在する無数の人間が神に対抗しうる兵器となり、強大な戦力となる。現在まで100以上の実験を行ったがどの個体もフェイズ1の段階で機能停止。原因は不明。
しかし、111体目の個体(通称:AGW-111)は今のところ機能を停止は見受けられず、フェイズ1は終了。間もなくフェイズ2に突入予定。
第2段階の実験では本格的に未知の変化が多いことが予想される為、近い距離で目視する観察役が必要である。既に観察役の手配は科学者の1人によって完了しており、観察者は従順でそこそこ優秀であるとの事。外部に情報を漏洩させる事はないとの報告を受けている為、我々もその観察者を承認した。
以上を持って現段階の対神兵器の実用化に向けた実験に関する報告書とする。
なお、この報告書は最重要機密事項である為、外部への持ち出しは禁ずる。これを破った者には死の処分が行われる事を肝に銘じておくように。
某国非公式研究所
「ウギッ!」
ガシャンという音が響く。何事かと思って研究員らが振り向くと、1人の男が頭を押させて蹲っていた。
「準備が遅い。俺の世紀の研究を妨げるな」
そう吐き捨てて、自身が叩きつけて粉々になったフラスコのガラス片を踏みつけて背を向ける。
男の名は桐生誇太郎。バイオ企業の御曹子にし国際研究機関の科学者である。国を超えた非公式研究組織にて実験を行っていた。
そんな桐生はガラス越しに下の階を見下ろす。そこには拘束された少女が多数の装置に繋がれて苦悶の表情を浮かべていた。
「悪く思うなよ、モルモット。お前が苦しめば、俺はこの世の誰よりも天才となるのだからなぁ……………………!」
そう呟く桐生の目はまさに狂気に染まっていた。
「し、主任。監視役の主任の婚約者が到着したとの報告がありましたが……………………」
恐る恐ると言った様子で桐生の部下が報告するが、桐生は興味なさそうに口を開く。
「間もなく今日の分の実験は終了となる。あいつをさっさと監視部屋に入れておけ。モルモットも部屋に戻す。念のため口止めと、外部に連絡が取れる電子機器の類を全て回収するのを忘れるなよ」
「は、はい」
「それと、だ。1つ訂正しておくがあいつは婚約者ではない」
「そ、そうなのですか?」
「そうだ。あいつは
ただの道具に過ぎない」
「……………………」
拘束台を外された少女は無言で起き上がる。漸く苦痛でしかない人体実験が終わり、自由時間ではあるが少女は特に感情を浮かべずに部屋の壁に寄っ掛かる。一先ず次の実験まで休もうと目を瞑ろうとするが、強化アクリル板の壁で仕切られた向かい側の部屋の扉が開かれる音で視線をそちらに向ける。
「失礼しまーす……………えーっと…………………………………あ、取り合えず自己紹介するね。私の名は白水楓。今日からあなたの監視役をする事になったの。まぁ、何というかそのー……………………よろしく?」
「……………………」
少女は特に何も返さない。アクリル板の壁越しに沈黙だけが流れる、何となく気まずい時間が流れる。
「…………………えーっと……………………そ、そうだ!良かったらあなたの名前を教えてくれない?」
「……………………」
「………………ま、まぁ嫌なら嫌で教えてもらわなくても良「AGW-111」…………………あ、え?今、何て?」
思わず聞き返す楓に対して、少女はもう一度名前を告げる。
「被験体AGW-111。それが私の名前」
「…………………聞き間違えかと思ったけど、そうじゃなかった……………………」
この研究所で実験の被験者となっている少女の名はAGW-111。正式には
「既に聞いているかもしれないけれど、私は殺し屋だった
「あー、何かそうみたいね……………………でも、らしいって何で他人事のように?」
「……………………私にはこれまでの過去の
「な、なるほど………………ところで、年はいくつ?」
「さぁ。聞いてもないし、特に興味ない」
「(…………見た感じ、小学生の低学年くらいだよね?まだ幼いのに、実験台にされてるなんて……………)」
楓が複雑そうな表情を浮かべていると、楓は拘束台の上で横になる。
「私から話すのはこれくらい。後は勝手にして」
「え、あ………………うん」
どこか拒絶すら感じるような口調で言うと、暫くして静かな寝息が聞こえてくる。楓は備え付けの椅子に座ると、小さくため息をつく。
「……………………桐生さんが何をしてるのか分からないけど、郊外に漏らす事を禁じられてる辺り、絶対やばい感じがするんだよね……………………けど、私にはそれを止める力も権力もない…………はぁ…………何とも歯痒いね………………」
白水楓。24歳。
「……………………ふぅ」
研究所に来て1ヶ月が経った。
紙媒体の論文を読んでいたのを中断する楓。この研究所内では電子機器は全て没収されるので、研究論文を読むには毎度印刷をしなくてはならない。その為の代金がめっちゃ勿体ない。前に桐生に『コピー機とか使えないですかね~……………?』とそれとなく聞いたが一瞬で一蹴されたので、読みたくば代金を払って紙媒体で読むしかないのである。
「………………あっ」
そんな事を考えていると拘束された星奈が監視部屋に戻ってくる。論文を机に置くと声を掛ける。
「お疲れ様。少し休んだらバイタルチェックするから言ってね」
そう声を掛けるが特に反応は帰ってこない。出会って1ヶ月。あれこれ話しかけてはいるのだが、未だに反応は薄く、楓は少女との心の壁を感じていた。だが、楓は少しでも仲良くなろうと話しかけるのを止めなかった。
「えーっと……………………そ、そう言えば論文をコピーしに行ったらコピー機の紙がなかったんだ~!」
「そう」
当然反応も薄い。まぁ、ぶっちゃけどうでも良い話題だったのは楓も言ってから自覚したが。
「……………………うん、自分でも言っていて何だけどどうでも良すぎたね。たぶん誰でも薄い反応しか返ってこないよね~、あはは……………………」
「…………ねぇ」
「!……………………なになになに!?」
自分から話しかけてくれたのは初めてだったので、食い気味にアクリル板に近寄る楓。そんな楓に少し引きつつも少女は口を開いた。
「…………………相変わらずシャツがダサい」
「グホッ!?」
楓はダメージを喰らっているが、少女の口から飛び出した指摘はまぁ間違ってはいない。彼女が白衣の下に来ているシャツには、ムキムキの手足と羽を生やしたニンジンのキャラが載っており、とんでもなくダサいのである。これが彼女の残念な欠点の1つ。
「えー、やっぱダメかぁ……………………そのー、少しでも清涼剤にでもなれば良いかなー、って思ってんだけどなぁ……………………」
「……………………」
少女は何も言わないが、『それで清涼剤になる訳ないでしょ(辛辣)』的な事を言いたげな目をしている。と、そこへ。
「楓!チェックデータを取るのに何分かけている」
「あ、桐生さん。すみません、今から取」
そう言い終わるよりも前に楓が持っていたタブレットを桐生は奪い取ると、タブレットで頭を殴る。一切の躊躇なく。そのまま楓の頭を強く掴む。
「お前の親父がうちの親が経営しているバイオ企業の下請けだから情けでお前を貰ってやっているんだ。恩に報いろ。俺の命令には誠心誠意、全力で従え」
そう一方的に言い放つと、タブレットを楓の足元に投げつけると出て行った。
「あいたたた……………………じゃあ、チェックデータ取っていくね?」
先程まで痛みに表情を歪ませていた楓だが、少女の方を向く時にはもう笑顔を浮かべていた。
「………………………」
「……………………どうかした?」
「………………え?」
予想外だったのか、少女は思わず間の抜けた声を出してしまう。
「いや、何か怒っているような気がしたから……………………」
「っ!?……………………気のせい。やるなら早く初めて」
「え、あ……………………う、うん!じゃあ先ずは……………………」
「(……………………怒っていた?私が?……………………いや、あり得ない。別に私は彼女の事なんて何とも思っていない……………………筈)」
チェックを受けながら少女は心の中でそう呟いているのを楓は知る由もなかった。
それからまた数日後。
「ファッ!?今日はチェック項目がマジで多すぎる!」
実験を終えて帰ってきた少女を迎えたのはそんな叫び声であった。
「急いで進めないとまた叩かれる……………………あの人、頭ばかり狙ってくるから困った困った」
「……………頭を叩かれると何か問題でも?」
「ん?あぁ……………………こう見えても私は研究者だから。頭が悪くなるのは困っちゃうからね」
「………………研究」
少女はいつも楓が何か読んでいる事を思い出した。それは研究に関する何かしらの文章なのだろう。では、何の研究なのか?それを尋ねようとした矢先である。
「楓ェ!待たせるなと何で言えば分かるんだ!!」
「ヒッ!?すみません、あと3分位あれば終わるんでもう少し待っ」
「このノロマが!言ってダメなら体に教えてやる!」
そう言うと桐生はタブレットを奪い取り、楓の頭を目掛けて────────────
「やめろ」
その一言が発せられた瞬間、桐生の手が止まる。その場の空気が冷え切り、部屋を照らす蛍光灯が点滅する。その声の主は少女だった。
たった一言だが、それでも尋常ではない殺気が放たれる。楓はあからさまに表情に出してビビる中、当の桐生は内心冷や汗をかきながらも、何とかそれを表情には出さなかった。
「(……………………こいつの体内には自爆装置や力を抑制する制御装置が埋め込んである。殺される事は万が一にもないと理性では分かっているのに、一刻も早くここから離れろと本能が告げているみてぇだ……………………くそったれが)………………さっさと終わらせろ」
そう一言だけ告げると、桐生は去って行った。
「あ、行っちゃった。……………ふっ、勝ったね」
「あなたは何もしてないと思うのだけれど」
少女はジト目で冷静にツッコミを入れる。
「うっ、確かに……………………て言うか、ありがとね。けど、何で助けてくれたの?」
「………………別に。うるさいのが面倒だっただけ」
「あぁ、なるほどそういう……………………まぁ、理由は何でも助けてくれてありがとね、えーっと…………えーじー……………………何だっけ?」
「AGW-111」
「あぁ、そうそう!………………けどさー、それだと呼びづらい…………呼びづらくない?と言うか、可愛くないよねー。もっとこう、呼びやすい別の名前とかないの?本名とか」
「…………それが分かってたらもう言ってる」
それを聞いた楓は『それもそうだよねー』と呟きながら何か考えていたが、すぐに何か閃いた様子を見せる。
「………………そうだ!私があなたに名前をつけても良い?」
「……………あなたが?」
「えーじーなんちゃらだと呼びづらいし、可愛くないじゃん?だから、私があなたの名前を考えても良い?」
「……………………」
「どう?」
少女は暫く黙っていたが、やがて口を開く。
「……………………すきにしたら」
「え、良いの!?やった~!」
「……………けど、服のセンスのダサさからして、名づけのセンスもあるのかどうかも怪しい気はする」
「んなっ!?べ、別に服のセンスとネーミングセンスは関係ないでしょ!……………………たぶん、恐らく、メイビー」
《s》段々自信がなくなってて草《/s》
「うーん、しかし名前………………名前かぁ……………どんなのが良いかなぁ……………」
ぶつぶつ呟く楓を尻目に、少女は先程の行動について自問自答していた。
「(……………何で私は咄嗟にあの女を助けた?まさか、私が彼女に心を許し始めているとでも言うの?………………いや、そんな筈はない。そんな筈は………………)」
to be continued……………
《登場人物》
AGW-111…………………人間を対神兵器へと転用する実験台とされている少女。お察しの通り、後の星奈さん。本人は過去の記憶を全て失っているが、かつては『死神』と呼ばれた凄腕の殺し屋。年齢は不明だが、楓は小学生の低学年くらいと予想している。意外と毒舌。
白水 楓……………………かつては親の製薬会社の出資先の研究所でとある研究を行う医薬品開発者だったが、桐生の親が経営するバイオ企業の傘下に彼女の親の製薬会社が入った事もあって、今は桐生の
桐生 誇太郎……………………バイオ企業の御曹子にし国際研究機関の科学者。天才なのは間違いないが、性格は横暴。国を超えた非公式研究組織にて実験を行っている。唯一、神界人との接点を持っており、何かしらの契約を交わしている模様。楓とは婚約者の関係だが、本人は便利な駒としか見ていない。
取り合えず第1話終わり。色々と裏話もあるんですけど、それは然るべき時に話します。どのような経緯で『白水 星奈』と言う人物が誕生するのかを注目しつつ、次の話をお楽しみに。