三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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特に言うこと無し!

どうぞ!


エピソードⅤ Crime and Punishment part one

あの事件から2週間が経ったある日の早朝。

 

第1位こと創真は日本の首都東京にあるタワーマンションの最上階のベランダにてパソコンでリリィとカノンとリモート通話をしていた。

 

『なるほどー、星奈ちゃんが楓が育った国に行きたいと。それでいま日本にいるんですね』

 

「ああ。ところで、リリィ。そっちでの調査は進んでいるかい?」

 

『はい。私が主担当で桐生と言う男と結託していた神界人を捜索していますが、まだ見つかっておりません』

 

「証拠となる人間やデータは全て消えてしまったからね。それに、僕らに悟られる事無く人体実験を進めていたと言う事は相当なやり手だ。すぐ見つかるような奴でもないか…………………こっちでも色々と調べるが、何か分かったらすぐに連絡してくれ」

 

『了解しました』

 

『そう言えば、星奈ちゃんの様子はどうですか?元気にしてますか?』

 

「まぁね。彼女はずっと研究所の中にいたから、毎日が新鮮みたいでね。その甲斐もあってか、楓さんを失ったショックから少しずつ立ち直りつつあると思う。……………っと、彼女が来たから切るね。じゃ、何かあったら連絡よろしく」

 

画面上の2人にそう言うと通話を終える。それと同時に星奈がドアを開けて入ってくる。

 

共同生活を始めてから2週間が経ったが、特に問題なく生活できていた。最初はお風呂の使い方やスマホの使い方やら一から百まで全て教える必要があったが、星奈は呑み込みが早く、一度教えてしまえばあとは全て自力で出来たので創真としても楽だった。

 

「おはよう、星奈ちゃん。どうだい、調子は?」

 

「おはよう、創真。体調面では特には大丈夫」

 

ちなみに、年齢的には当然創真の方が遥かに年上ではあるのだが、創真が『堅苦しいのは面倒だから』と言う事で星奈も敬語ではなく普通に話すようにしている。

 

「そっか、それなら良かった。何か不調を感じたらすぐに言うんだよ」

 

創真は彼女のバイタルデータなどの情報をもとに解析を進めている。解析が進んで色々と分かってくれば、その情報をもとに黒幕の尻尾を掴めたりするかもしれないからだ。

 

「今日もごはん食ったら外行くか。どっか行きたいところとかある?」

 

「…………………」

 

「どうかした?」

 

「……………ここ最近、ずっと色んな所に出掛けたり、遊んでばかりの生活で良いのかなって…………………それに、私が力を上手く制御できないせいで、創真にも時間を割かせちゃってるし…………創真だって本当は色々とやらなければいけない事もある筈なのに………」

 

それを聞いた創真は苦笑しつつ、星奈の頭を撫でる。

 

「あ………………」

 

「子供がそんな事気にするなよ。君は今までずっと研究所で辛い実験に耐えながら生きて来た。その分楽しい事を沢山しても、別に罰は当たるまい。あと、僕のやらなければならない事の中に君と一緒に過ごす事も入ってるよ」

 

「!」

 

「さーて、今日はどこに行こっかねー。僕も地球に来るのは久しいから色々と見て回りたい所が沢山あるんだよね~」

 

そう言って笑いかける創真。釣られるように星奈も笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                言語設定… オート…

                                           

                                ID入力を確認。

                                           

                                認証システム… 作動…

                                           

                                認証中…… 認証中……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        認証完了。機密任務に関する情報をアンロック。

 

《対神兵器抹消を目的とした特殊任務の概要》

 

殺し屋マインドキラーへ通達

 

無能な人間の失態により第1位に対神兵器の実験の事が感知され、処分を命じた対神兵器も第1位の手によって保護された。このまま第1位に対神兵器の事を調べられれば、我々の元に辿り着いてしまう可能性がある。潜入者によって我々には辿り着かれないように工作は行ってはいるが、第1位が工作をものともせずに我々の元に辿り着いてしまう可能性も十分にあり得る。確実にたどり着かれないようにする為にも、今回対神兵器の抹消を目的とした任務の実行が決まった。実験の成果とも言える対神兵器を抹消させれば、第1位らは有力な情報を得る事が出来なくなるため、我々の元に辿り着く可能性も大幅に下がるだろう。潜入者の情報によれば、第1位は対神兵器に関してまだ完全には把握しきれていない模様。全てを把握される前に、早急に対神兵器を抹消せよ。なお、今回は標的は対神兵器である為、可能な限り第1位との接触は避けるように。仮に第1位に捕縛されるような事態に陥った場合、情報漏洩を防ぐ為にも処分を行う。なお、この機密任務の詳細を外部に漏らした者も同様に処分を行う。

 

以上。

 

「……………………」

 

リリィは任務の情報を読み終わると眉を潜める。

 

「マインドキラー………………対象を精神的に追い詰めて自発的に自害させる、人格破綻者でもある殺し屋。自らは直接手を汚さない特殊な殺し屋だが、任務の成功率は100%…………………やはり悪趣味な殺し屋ですね」

 

リリィとしてはこういうタイプの神界人とはあまり関わりたくないタイプだ。人格破綻している点もあるが、人を精神的に追い詰める悪趣味な手口も気に食わない。

 

「つれないなぁ。君も味わってみれば良いのに。心からじわじわと殺していく快感を。何なら君も一緒に行く?」

 

リリィが後ろを振り向くと、そこにいたのは不気味な笑みを浮かべる男。噂のマインドキラーだった。

 

「丁重にお断りします。私は自分の持ち場を離れるわけには行きませんので」

 

「おや、それは残念。振られちゃった~。にしても、標的は人間と神界人との狭間を彷徨う兵器でもあり生物か。………………やりがいのある仕事だ。もうプランも決まったし、あとは準備して実行するのみだ」

 

「………………。今回は対象の傍には第1位がいます。彼との接触を断ちつつ、どうやって行う気ですか?」

 

「あぁ、その事なんだけど。君にも少し協力して貰いたくてね」

 

「………………私が?」

 

「そ。詳細はまた追って連絡するよ。じゃあね~」

 

そう言うとマインドキラーは手をヒラヒラ振って去って行く。その後姿をリリィは無言で見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件から1ヶ月経った日の夜。リリィは創真が滞在しているマンションに来ていた。

 

「悪いね、リリィ。急に呼び出して」

 

「いえ、お構いなく。それで、用件は?」

 

「君の意見が聞きたくてね」

 

創真が指を鳴らすと、空中に様々なデータが映し出される。

 

「………………これは彼女に関するデータですか」

 

「察しが早くて助かるよ。彼女の協力のもと色々とデータを取らせてもらってね。まぁ、全てが解明できた訳ではないが。一部のデータを基に少し前から考えていたんだが、神聖力の安定性が彼女の精神状態によって大きく左右されているんじゃないか、と思ってね」

 

「……………………」

 

リリィは内心舌を巻く。リリィは神界に保管されていた研究データを既に目を通しており、彼女の精神状態によって神聖力の安定性が左右される事もすでに認知していた。当然ながらリリィは創真にその情報をわざと教えていなかった。下手に情報を渡せばどこまで突き止められるか分からないからだ。

 

だが、いずれ彼が自力でこの情報を突き止める予感もしていた。ここまで早かったのは少し想定外だったが。

 

「………………えぇ、データを見る限りおそらく第1位様の仮説は正しいと思われます」

 

「だよね。君もそう言うのなら間違いないのだろう」

 

下手に否定しても逆に怪しまれると考え、リリィはそう肯定した。

 

「彼女はあの暴走以降、神聖力の制御が上手くできずに不安定な状態だ。意識がある内は何とか暴走はすまいとしているが、例えば睡眠状態などの無意識な状態では自制出来ないようでね。少し前までは僕が寝ている彼女の傍にいて抑えてあげていたよ」

 

「原因はもう分かっているのですか?」

 

「………………原因は幾つか考えられるが、まだ完全には絞り切れてない」

 

「では、今も進行形で彼女の神聖力を抑えているのですか?」

 

「いいや、今はこれを使っている」

 

創真はリリィに銀色のブレスレットを見せる。

 

「これは神聖力を安定させるための装置。安定性を維持する機能と出力を強制的に抑える機能が備わっている。僕が作った。今はこれを装着させて強制的にではあるが安定状態にさせている」

 

「(いつの間に………………そのようなものを自作出来るほど既に解析は終わっている訳ですか……………………それにしても)………………何故そこまで彼女のために動くのですか?」

 

リリィの問いかけに創真は手を止めると、無言で彼女の方を向く。

 

「彼女と知り合ってまだ1ヶ月。血のつながりがあるわけでもない。なのに、第1位様が自ら彼女の為に動く理由はなんですか?」

 

「理由、か。…………人間時代の僕と重なる部分があるから、かな」

 

「……………………」

 

「……………………既に知っているかもしれないが、僕も人間時代は彼女のように人間離れした強大な力を持っていた。まぁ、彼女のように制御できない類のものではなかったが。それに、彼女と同じく僕も人殺し(・・・)をした事がある。そういう同じ共通点もあるからか、何かと彼女にお節介を焼いちゃうのかな。まぁ、後は純粋に目の前に困っている人がいたら助けてあげたいと思うのもあるよ」

 

「……………そうですか」

 

リリィは第1位の生前については少しだけ知っていた。生前の彼には人間ではない『相棒(・・)』がおり、その相棒の存在もあって人間離れした特殊な力があった事。そして中学3年生の時に恩師を暗殺(・・)していた事も。

 

「では、私は戻ります。引き続き、今回の首謀者の行方を追っていきます」

 

「あぁ、頼んだ。カノンの面倒も見てやってくれ。よろしく頼むよ、リリィ」

 

「…………………はい。それでは」

 

創真に信頼を寄せられているリリィはそう返事すると神界へと戻っていくのだった。それを見送ると、創真は再びデータの方を見る。

 

「……………神聖力が不安定な原因、か………もし僕が想定している仮説の内の1つが正しいとすれば、それ(・・)を背負わすには彼女にはまだ荷が重いとは思うが……………………まだ完全に解析は出来ていないが、あの仮説が正しい場合はどうしたものかな…………………」

 

その表情は珍しく悩んでいるように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、創真と星奈がゲームで遊んでいるとリリィから創真に通信が入る。

 

「どうかした?…………………黒幕の仲間を捕らえた?それは本当かい?」

 

『はい。第1位様の部屋に侵入しようとしている怪しい人物がいたので捕らえました。大した実力もなかったので、下っ端かもしれませんが。これから尋問を行いますので、第1位様もおいでになられるのが良いかと』

 

「勿論そうさせてもらうよ。すぐに向かうから尋問の準備だけしておいてくれ」

 

『了解です』

 

通信を終えると、創真は星奈の方を向く。

 

「悪いね、ちょっと用事が出来たから神界に戻らなければならなくなった。もしかしたら結構長くなるかもしれない」

 

「大丈夫。大事な用事なのは分かっているから」

 

「ほんとごめん!あ、そうだこれを渡しておくよ」

 

創真は懐から財布を取り出すと星奈に渡す。

 

「僕の財布。これでお昼ご飯で何か好きなものでも食べてきな。近くにはショッピングモールもあるし」

 

「で、でも」

 

「大丈夫、僕は金持ちだから。使いまくって日本の経済を回しまくってくれ。じゃ、さよならいおん」

 

面白いのとつまらないの微妙な境界線の挨拶をわざとかまして第1位は消えた。部屋に取り残されたのは星奈だけ。暫く財布を見つめていたが、このまま突っ立っていてもしょうがないので星奈は外出の準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……………………そう言えば、1人で外出するのって久しぶりかも)」

 

いつも創真と一緒である事が殆どだったので、星奈が1人で行動するのは久しぶりだった。まぁ、1人で行動する際も何かしらの手段で見守っていたのかもしれないが。

 

「(……………………楓)」

 

ふと、星奈の脳裏に楓の姿が過る。何気なく首にかけているネックレスに触れる。このネックレスは楓から貰った最初で最後の誕生日プレゼントだ。あの日、楓の懐にあったのを見つけた創真が星奈に渡した。ネックレスが入っていた箱には銃弾が刺さっていた。この誕生日プレゼントの存在が一度は楓を守り、そして理性を失っていた自分を楓が命を懸けて助けてくれた事に繋がったのだ。

 

あの日以来、楓は肌身離さず身に着けている。

 

「私ねー、将来はキャビンアテンダントになるの~」

 

「あら、いい夢ね~。だったら勉強も頑張らないとね」

 

「(……………………夢)」

 

向かいから歩いてきた親子の会話を聞いて星奈は足を止める。

 

「(…………私の夢………本当に見つかるのかな………………創真は『夢なんて生きてればその内見つかるようなもんよ』とは言ってくれたけど……………)」

 

そんな事を考えていると、前方から強風が吹いて何かが飛んでくる。顔面に当たる直前でキャッチする。その何かとは写真だった。

 

「…………………!」

 

しかもその写真は星空の写真だった。脳裏に浮かぶのは楓が見せてくれた星空の写真だった。

 

「あ、ごめんなさーい!それ私のですぅ~!」

 

「えっ……………………」

 

目の前からアルバムを持った女の人が走ってきた。しかも、どことなく星奈に似ていて、面影を感じるような人だった。

 

「か……………楓……………………?」

 

「へ?」

 

「!……………いえ、何でもないです。………………ど、どうぞ」

 

「ありがとー!家で整理していたら、風が吹いて窓から飛んで行っちゃって大変だったよ~!いやはや、窓を開けっぱなしにしていたのに気付かなかったとは」

 

明るい雰囲気まで楓にそっくりだった。

 

「じゃあ、私はこれで……………」

 

「あ、待って!」

 

去ろうとする星奈の腕を創真がくれたブレスレットの上から掴んで止める。

 

「これ、とっても大事な写真なんだ。だから、拾ってくれたお礼したいんだけど……………あ、折角だからお昼ご飯でも奢るよ!」

 

「え…………で、でも」

 

「お願い!そうでもしないと私のが気が済まないから!ね?ね?」

 

「え、えっと……………じ、じゃあ……………………お言葉に甘えて……………………」

 

グイグイ来るのに押されたのもあって、星奈は承諾するしかなかった。

 

「よし、そうと決まれば早速行こう!あ、そうだあなたの名前を教えてくれる?」

 

「し、白水星奈です……………(ほんとに楓みたいにグイグイ来る……………………)」

 

「え、私と苗字一緒じゃん!私は白水(・・)綾心!よろしくね、星奈ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話には聞いていたけど、この牢獄内は本当に神聖術やスマホによる通信が出来ないんだね。確かリリィが設計から建造まで手掛けたんだっけ」

 

「はい。ここの囚人が牢獄の外部と連絡を取らせないように、ありとあらゆる通信手段での連絡が出来ないようにしています。……………あぁ、彼女(星奈)の事が気になるのでしたらご安心を。彼女は私の部下がモニタリングをしており、何か異変があればここに来て伝えるように言ってありますので」

 

「さっすが、分かってるじゃないか。じゃ、心置きなく尋問するとするかね」

 

「はい」

 

2人は牢獄内を歩いていく。第1位の後姿を見ながら、リリィは時計をチラリと見る。

 

「(………………作戦開始時間まであと少し。あとは指定の時刻まで第1位を足止めすれば良いだけ。…………………対神兵器の彼女に恨みはありません。ですが、これが私の仕事ですので。恨むなら、あなたが生み出される原因を作った第1位を恨んで下さい)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(さぁ、作戦開始と行こうかねぇ……………!)」

 

to be continued………………




遂に星奈を抹殺する為に殺し屋マインドキラーが動き出す。果たしてどのような作戦を実行するのか?

そして、楓と同じ苗字かつ似た雰囲気を纏っている綾心の正体とは?

次回をお楽しみに!デュエルスタンバイ!

……………………ところで水星の魔女ロスがいまだに続いてる同志いません?

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