三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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この話含んであと3話。もう番外編はこれでラストです。いい加減本編をやらねば。つーか、やりたい。

では、どうぞ。


エピソードⅥ Crime and Punishment part two

神界ではガチガチに拘束された男が創真とリリィによって尋問されていた。

 

「何も知らない、ねぇ」

 

「本当ですってば!気づいたらあの部屋の中にいたんです!嘘じゃないですって!」

 

「……………リリィ」

 

創真に名前を呼ばれたリリィは自身の見解を述べる。

 

「……………………神聖術で調べてみましたが、彼の言葉は嘘ではないようです。神聖術で記憶を消去されたのかと」

 

「ふむ………………大方、リリィに見つかったから情報漏洩を防ぐために消されたか。僕の固有能力でさっさと失った記憶を復元させるか」

 

「待ってください」

 

そう言うと創真は男に向けて手をかざして固有能力を行使しようとするが、それをリリィが止める。

 

「彼の戦闘力はさほど高くない。なのに彼をここへ送り込んできて、記憶喪失にさせたと言うことは」

 

「……………僕らが彼の記憶を復元させるのが敵の狙い、とでも?」

 

創真の言葉にリリィは頷く。

 

「敵は我々が記憶を復元させるのを見越して、復元させようとした瞬間に発動する何かしらの神聖術を仕込んでいる可能性があります。彼がこの場で自爆するようなものでしたら第1位様と私がいるので何とでもなるでしょう。ただ、記憶を復元させようとした瞬間に発動する神聖術が神界のどこかの街で遠隔作動するようなものだった場合、被害を防ぐ事は出来ません」

 

「……………ここって外部との通信だけで神聖術の全面的な使用は阻害してないのかい?」

 

「この牢獄内で神聖術の使用を完全に封じると、我々の方も戦力ダウンとなってしまいます。そこを突かれて奇襲されては命の危機もあるので。ちなみに、囚人が何か神聖術を発動させたりするなどの怪しい行動をすれば、すぐにシステムが探知して意識を奪います」

 

それを聞くと第1位は『なるほど』と呟く。

 

「…………だが、彼の消された記憶やどうにか復元させたい。彼の記憶をわざわざ消したという事は、僕らに知られてはまずい情報を持っていた可能性がある」

 

「それには同意です。ですので、ここは神聖術のプロである私にお任せを。私が分析をしつつ記憶の復元を行います。仮に何かトラップの神聖術が仕込まれていても、発動などさせません。ただ、1時間ほど掛かりますが」

 

「そうか。……………自信はあるんだな?」

 

「勿論です。私は神聖術に関しては第1位様にも勝っている自信はあるので」

 

それを聞いた第1位はニヤリと笑う。

 

「言ってくれるじゃないか。まぁ、いつか僕も神聖術に関して君を上回ってやるつもりだけどね。…………………取り合えず、今回は君に任せるよ。すぐに作業に取り掛かってくれ。ついでに僕も見させてもらうよ。何かあった時は君を守らなくちゃならないしね」

 

「………………了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、どうしたの?食べないの?もしかして調子悪かったとか?」

 

「あ、いえ……………そんな事はないです……………」

 

注文したハンバーガーを食べる星奈は動揺していた。その原因は言うまでもなく、目の前の楓にそっくりな女性である。

 

「(白水って苗字も一緒で、雰囲気まで楓そっくり…………もしかして本当は生きていた?………いや、そんな筈はない………………もしかして姉妹だったとか?けど、楓は妹や姉がいるなんて言ってなかった…………………)」

 

思考を巡らす星奈。その様子を見た綾心は手を伸ばすと星奈のほっぺをムニュっと掴む。

 

「もー、ダメだよ星奈ちゃん?食事中に考え事なんて。さつきからずっと難しい顔をしてるよ?」

 

「あ、えっと……………すみません、あなたが母に似ていたので、つい……………………」

 

「へー、お母さんに。お母さんってどんな人なの?」

 

「………………お節介で、どこか子供ってぽくて、ファッションセンスが皆無で、それでも立派な夢を持っていて……………………私の事をしっかりと見てくれる人、です」

 

「おー、めっちゃいいお母さんじゃん!……………………あれ、けどそんなお母さんと似てるってことは私もファッションセンスが皆無で子供っぽいって事………………?」

 

「い、いえ!そう言うわけじゃ」

 

「あはは、分かってるよそれくらい~」

 

綾心の笑顔につられて星奈も笑みを自然と笑みが浮かんだ。少しづつ親近感が湧いてきた星奈は綾心に質問をしてみることにした。

 

「綾心さんはこの辺りに住んでいるんですか?」

 

「そうだよー。実はつい最近ここに引っ越してきたんだ~。星奈ちゃんもここら辺に住んでいるとは思うけど、結構長年いる感じ?」

 

「……………実は私もつい1ヶ月くらい前にここに来たばかりなんです」

 

「へー、そうなんだ!じゃあそういう意味では私たち仲間じゃん!今まではどこに住んでたの?」

 

「……………今までは、海外の方に住んでいたんです。けど、父の事情で私と父だけ日本に来ることになったんです」

 

流石に自身の事情を話すわけにはいかないので、適当な理由を述べる星奈。まぁ、海外の方にいたのは間違いではないが。

 

「そっかー。じゃあ、海外での友達とは離れ離れって事か。寂しくない?」

 

「……………そう、ですね。正直、ここに来て数日は心ここにあらずって感じでした。けど、私の父が色々と元気づけれくれたので。今は大丈夫です」

 

「そっかー。お父さんはどんな人?」

 

「えっと………………父は優しくて、頭が良くて、強くて………………すごくいい人です」

 

「ふふっ、星奈ちゃんは両親に恵まれたね」

 

「………………はい」

 

楓とも創真とも血のつながりはないが、楓は言うまでもなく彼女にとっては母親であり、創真も自分の事を色々と気にかけてくれたり助けてくれる存在である事から、楓は勝手に創真の事を父親のような存在だと心の中では思っている。

 

「………そういえばなんですけど、さっきの写真って……………………?」

 

「ん?あぁ、これの事?」

 

星奈はふと、あの写真の存在が頭に浮かび、それについて尋ねてみると綾心は懐から先ほどの星空の写真を星奈に渡す。

 

「これはねー、私が取った写真なんだー。すごいでしょ~?」

 

「はい、本当に綺麗な写真だと思います」

 

「……………本当はお姉ちゃん(・・・・・)と一緒に撮ろうと思ってたんだけどねー……………先月の海外の事故で帰らぬ人になっちゃって」

 

「!!」

 

『お姉ちゃん』というワードに星奈は大きく反応する。

 

楓と同じ苗字、そして類似した雰囲気、先月に海外で事故によって帰らぬ人となった姉の存在。

 

星奈の中で点と点が繋がった気がした。

 

「あの……………………綾心さん」

 

「うん?」

 

「その…………………もしかして、そのお姉さんの名前って……………………かえ」

 

コツン

 

その時、星奈の靴に何かが当たった感触がした。テーブルの下を覗いてみると、そこには野球ボール位の大きさの黒い球体があった。

 

「(ボール?フードコートなのに、どこからこんなものが………………?)」

 

不思議そうに首を捻っていると、黒い球体は突然輝き始めた。

 

「危ない!!」

 

星奈が咄嗟に叫ぶ。何か考えがあった訳ではない。ただ、彼女の心が警鐘を鳴らした。黒い球体を掴んで誰もいない方向へ投げた次の瞬間、大きな爆発が起こり星奈と綾心の2人は吹き飛ばされるのだった─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいかい、星奈ちゃん』

 

『君はまだ神聖力を完全に制御できていない。正確にはあの時の暴走によって想定以上の出力で行使した事で、不安定な状態になったと言うべきかな』

 

『だから、今はこのブレスレットをつけていてくれ。これは神聖力を安定させるための装置だ。安定性を保つ機能と出力を強制的に抑える機能が備わっている。これをつけている限り暴走はない筈だ』

 

『もしも僕がその場にいなかった場合には、ブレスレットのこの六角形のマークを押せ。そしたら、僕がどこにいても一瞬で君の目の前に転送される』

 

『だから、星奈ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に神聖力を行使しちゃダメだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……………………うんん……………………」

 

「あ、良かった!星奈ちゃん、目を覚ましたんだね!」

 

意識を取り戻した星奈は自分が綾心におんぶされているのに気が付いた。辺りは騒然としていて、銃声や悲鳴が飛び交っていた。

 

「一体、何が……………」

 

「私もよく分かんないんだけど、なんかテロ的な感じ?映画とかで出てくるような銃を持った特殊部隊みたいな奴が沢山いたって感じ!」

 

「!(………………そうだ、創真を呼べば何とかしてくれる筈………………ブレスレットがない!?)」

 

神様である創真なら何とかしてくれると考えるが、いつの間にかブレスレットは消えていた。もしかしたら先ほどの爆発で外れてどこかに吹き飛んでしまったのかもしれない。

 

「よし、この非常階段を使っ!?」

 

綾心の目の前に音もなくテロリストらが3人現れると、銃を乱射。綾心は慌てて近くの柱の陰に隠れた。

 

「(どうすれば…………創真と連絡を取ろうにも、専用のスマホが手元にない。あれもどこかに吹き飛んでしまったみたい…………………普通のスマホだと別の世界にいる創真には連絡は取れない……………………どうする?どうすれば良いの……………………?)」

 

「ッ……………………ちょっ、ごめん……………………一旦降ろすね……………………」

 

綾心は星奈を降ろすと、床に倒れこんでしまいそうになるのを星奈が慌てて支える。

 

「!!」

 

「アハハ……………………どうやらさっきので幾らか食らっちゃったみたい……………………」

 

綾心の太ももや肩から血が出ていた。先の銃撃で命中していたのだろう。

 

「あー……………これはダメだ。星奈ちゃん、君だけでも逃げて」

 

「な、何を言って………………」

 

「………………この怪我じゃ足手まといになる。私が囮になるからその隙に逃げて。………………大人が子供を守るのは当然の義務だからね」

 

そう言って痛みに耐えながら精一杯の笑みを浮かべる綾心。その笑顔が楓のものと重なって見える。

 

「(また、私だけが助かるの…………………?また、楓の時みたいにこの人が犠牲になって。自分だけ生き残って……………………それで良いの……………………?)」

 

そう自問自答する星奈。迷っている間にもテロリストらは無言でじりじりと近づいてくる。

 

『──────星奈ちゃん』

 

「ッ!」

 

懐かしい声が聞こえた。振り向くと、そこにいたのは楓だった。

 

『─────あなたには力がある。その力で、皆を助けてあげて』

 

そう言うと楓はフッと消えた。もしかしたら今のは星奈が見たただの幻だったのかもしれない。だが、今の言葉で星奈の心は決まった。

 

「(…………ごめんなさい、創真。けど、私はあの時のように自分だけが助かるのは、嫌だ………………!)」

 

「星奈ちゃん…………?」

 

立ち上がった星奈を見つめる綾心。そんな彼女に向かって星奈は口を開く。

 

「ここで待ってて。私が何とかする」

 

「え……………?」

 

そして、星奈は約1ヶ月ぶりに神聖力を開放する。神聖力の白いオーラが身に纏われる感覚が久しい。

 

「(大丈夫、私なら出来る。平常心で、落ち着いていれば出来る……………!)」

 

星奈が飛び出すとテロリストらは星奈に向けて銃を乱射してくるが、星奈は銃弾の雨を軽々と避けて急接近すると、1人のテロリストの銃を蹴りで弾き飛ばすとそばにあったレジを掴んで顔面にぶつける。怯んだすきに手加減したパンチで吹き飛ばすと、男は壁に叩きつけられて気を失う。2人目のテロリストは足払いで転ばせると、そのまま腹部に踵落としして意識を奪う。

 

「あと1人…………!」

 

撃ってくる最後のテロリストの背後に神聖力を生かして一瞬で回り込むと、軽々と放り投げる。テロリストは叩きつけられた衝撃で銃を手放すが、すぐに立ち上がるとナイフを手に星奈に襲い掛かる。だが、星奈はナイフによる攻撃を難なく避けると、ナイフの刃を掴んで粉々に砕くとサマーソルトキックを顎に命中させて戦闘不能にした。

 

「はぁ………………はぁ……………………はぁ……………………やった……………………制御出来た……………!」

 

神聖力を制御しつつ、テロリストの命を奪わずに無力化できた。その喜びを嚙み締めつつ、星奈は綾心のところに戻る。

 

「綾心さん、もう大丈夫。テロリストは全員倒……………………し……………………?」

 

先ほどまでいた場所に戻ってきたが、綾心の姿はなかった。よく見ると、床にあった綾心の血の跡がどこかへと続いていた。

 

パアァン──────。

 

そんな音が星奈のいるフロアに響いた。星奈は早まる動悸を抑えつつ、銃声がした場所に向かう。その場所に着いた星奈は目先で誰かが倒れているのを発見した。

 

「………嘘だ嘘だ嘘だ……!」

 

星奈が駆け寄ると、倒れていた綾心を血で手が汚れるのも気にせず抱き起す。

 

「……………………」

 

綾心は何も言わない。ただ、黙って星奈の頬に手を触れると、微笑みを浮かべて静かに目を閉じた。星奈には彼女の体がフッと軽くなる感じがした。

 

「あ、あああぁ……………」

 

また救えなかった。その事実と彼女の最期の笑みが楓が最期に浮かべた笑みと重なり、半ばパニック状態で涙が止まらない星奈の思考が完結しない。そんな彼女をどこかに潜んでいたテロリストが包囲する。

 

『目標、()に釣られました。今より一斉射撃で始末します』

 

──────()。つまり、自分をおびき出すための餌として、彼女はその命を散らした。自分の存在が、彼女を死に至らしめた。その事実と、彼女を殺したテロロリストに対する憎悪。

 

「ああああぁぁぁ…………A――urrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrッ――――――――!!」

 

それらは再び、赤黒いオーラを纏う(暴走状態)には十分すぎるトリガーだった──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第1位様ぁ!!」

 

牢獄の一室で作業を見学している第1位と作業中のリリィの元に飛び込んできたのはカノンだった。

 

「何だいカノン、そんな焦った様子で。また何かやらかし」

 

「星奈ちゃんがヤバいです!またあの時と(・・・・)同じ神聖力が観測されたんです!しかも、モニタリングをしていたリリィさんの部下は眠らされていて、どうやら5分前からずっと暴走しているみたいなんです!」

 

「なっ……………」

 

創真は一瞬動揺するが、すぐに冷静になってリリィとカノンの方を向く。

 

「リリィ。一旦作業は後回しだ。転移装置で行く。念のため一緒に来てくれ」

 

「了解です」

 

「カノン。全ての数字持ちに警戒態勢を取らせるように通達。作っておいた防衛システムも警戒レベルマックスで作動させろ。リリィの部下がが眠らされたということは、刺客が既に内部にいる可能性がある。気を付けろ」

 

「わ、分かりました!」

 

第1位はリリィを掴むと、牢獄の壁をぶち壊して外に出ると転移装置を作動させて星奈のいる地球へ向かうのだった──────。

 

to be continued………………




牢獄内では外部と通信が出来ないので、異変を発見したカノンは走って牢獄に来ました。お疲れさんです。

次回もお楽しみに。
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