三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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次でラストなんですけど、もう1時間後には投稿します。理由は……………………まぁ、引き延ばしにしてないでさっさと終わらせて本編に集中して、お気に入り登録者を目標の700人にまで持っていく為とかそんな感じ。

はい、よーいスタート。


エピソードⅦ Crime and Punishment part Three

殺せ。目に映るもの、全てを殺せ。何もかも壊してしまえ。

 

彼女の頭の中でそんな声が囁かれる。

 

「アハハハハハハハハ!!アハハハハハハハッ!!」

 

あの時と同じ狂気的な笑みを浮かべながら、我を失った星奈は殺戮の限りを尽くす。自身に攻撃を仕掛けてくるテロリストを1人、また1人と手に掛けていく。それを繰り返している内にテロリストは誰もいなくなった。暴走から経った5分あまりの出来事だった。

 

ガタッ

 

そんな音がした方を星奈が向くと、そこにはテーブルの下に隠れて怯えている子供の姿があった。勿論、星奈に子供たちの存在は何の害にもならない。考えるまでもなく分かるだろう、普通の状態(・・・・・)ならば。

 

「………………アハ」

 

赤黒いオーラを纏って星奈は近づく。子供たちは完全に腰が抜けているのか、泣きもせず震えるだけで動こうとしない。星奈は子供らが隠れていたテーブルを放り投げると、拳を強く握りしめる。

 

「……………………シネ!!」

 

そして、凄まじい勢いで振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………!?」

 

だが、その拳が振り下ろされる事はなかった。寸前でその拳を掴んで止めている者がいた。創真だ。創真は星奈に掴んでいない拳の方で殴られ、その拳は腹を貫通する。だが、創真はそれに表情を変えることなく、星奈の腕に予備のブレスレットを装着。その瞬間、星奈が纏っていた赤黒いオーラが消えて、正気を取り戻す。

 

「あ、れ……………………私は何を……………………ッ!?」

 

星奈は拳だけでなく体全体が赤い返り血で染まっている事、そして目の前の創真の腹に穴が空いている事に気が付くと一気に血の気が引く。創真の傷は一瞬で治ったが、それよりも創真を攻撃してしまったと言う事実に衝撃を受けていた。

 

「…………あ……………………」

 

視線を感じたかと思えば、リリィが庇っている子供らの姿があった。その目は自身を見ていて、化け物を見るような目で怯えていた。

 

「ち、違う………………私は………………ただ、皆を助けたくて……………………綾心さんを救おうと……………………」

 

「……………星奈ちゃん」

 

「来ないで!」

 

創真が近づこうとすると、星奈は拒絶の声を上げる。

 

「………私は、創真も傷付けた……………………命の恩人に対して……………………」

 

「星奈ちゃん、それは」

 

「……あぁ…………………………やっぱり、私みたいな化け物(・・・)は存在しない方が良かったんだ……………………」

 

涙が一筋流れると、星奈は窓を突き破って何処かへと去ってしまう。その後姿を創真は追うことが出来なかった。創真は床に何か落ちているのを見つける。それは星奈が身に着けていた楓からの誕生日プレゼントのネックレスだった。一先ずネックレスを回収して懐にしまう。

 

「……………………よろしいのですか?追わなくて」

 

「……………どこにいるかはすぐに感知できるし、すぐに彼女の元に移動できる。……………………ただ、追いかけても今の彼女では何も聞いてくれないだろう。それに……………」

 

「……………それに?」

 

「……………いや、何でもない。さて」

 

星奈の事だけを気に掛けている場合ではない事は創真には分かっていた。やるべき事はまだ他にもある。

 

「………………リリィ、その子供を外まで送り届けてくれ。恐らく警察が待機している。僕はここが封鎖される前に確かめたい事がある」

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ここが星奈ちゃんが暴走を始めた所だな。神聖力の残滓が濃い」

 

創真は星奈が暴走し始めたフロアに来ていた。そのフロアは星奈が暴れた跡がしっかり残っていた。辺りの壁や天井にはヒビや穴が出来ており、辺りには人間だった(・・・)ものが転がっていた。

 

「さっき、綾心と言っていたな。大方その人物が死亡した事が切っ掛けに暴走した、と言ったところか………………この世界で生きている『綾心』と言う名前の人物を調べろ」

 

創真専用のスマホに向けてそう言うと、スマホは検索結果を空中に表示する。そこには様々な『綾心』と言う人物の詳細が表示される。

 

「……………そりゃ大勢いるか。てか、全員を検索してもしょうがないだろ。………………はぁ、いつもなら考えるまでもなくすぐに分かるってのに何やってんだか。……………………今だけはこっちに集中だ。今から数十分前にこのデパートにいた『綾心』と言う人物は?」

 

星奈の事が気になってか集中できていない自分の頬を軽く叩いて喝を入れると、創真はさらに条件を絞って検索を掛ける。リストに表示される『綾心』の多くが除外され、最終的にリストに残った数は──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────『0』だった。

 

「………………初めからこの場に綾心なんて人物はいなかった、と。何者かが綾心と名乗って星奈ちゃんに近づいた。その正体は星奈ちゃんを狙う神界人、と言ったところか。後は……………………」

 

創真は近くにいたテロリストの遺体に触れると、一瞬で何かを確信したように頷く。

 

「……………………神聖術で操られていた痕跡がある。ほんの僅かだけ残滓が残っているな。僕らが来る前に痕跡を消す筈だったのだろうが、想定よりも早く僕らが来たことで痕跡を抹消しきれなかったのだろう。……………………これで確定した。全て仕組まれていた。僕の部屋に侵入しようとしていた奴も、僕を神界に呼び戻すための餌だった訳か。どうせ記憶を戻したところで得られるものも何もないだろう。……………………こっちは既に一歩出遅れていた訳か」

 

そう呟くと創真は悔しそうに拳を握りしめる。そこへ用事を終えたリリィが戻ってくる。

 

「リリィ、今回の事件は神界人の何者かのよって仕組まれていた」

 

「……………みたいですね」

 

リリィはテロリストから神聖術の痕跡を探知すると、誤魔化しは不可能と判断して同意する。

 

「どうやら今回の件での死亡者は操られていたテロリスト以外には誰もいないようです。…………………もう忘却の神聖術を行って宜しいですか?」

 

「………………あぁ、今回は神界人によって起きた介入だから『修正』を行う必要があるんだったね」

 

『修正』とは、今回の事案で言えばこの世界の人間に対し『このテロが起こったこと自体』を忘れさせる事を指す。この世界に住む人間によって引き起こされた事件などに対して『修正』は行わないが、神界人の介入で引き起こされた事案に対しては、本来起こる事がなかったものである為に『忘却の神聖術』で全ての人間から忘れさせ、さらに現場の事案の痕跡の抹消を行うことで、最初から何もなかった状態にする、言わば軌道『修正』を行うと言う事だ。なお、忘却の神聖術は神界人には効果がないように設定されている。

 

「……………………あぁ、そうだ。忘却の神聖術の対象に星奈ちゃんは含めないでくれ」

 

「それは構いませんが……………何故です?」

 

「ちよっと考えたいことがあってね。…………ダメかな?」

 

「……………。いえ、了解しました。彼女を術の対象から外します」

 

リリィが両手を広げると、空中に大きな術の文字羅列が浮かび上がる。

 

「忘却の神聖術、執行します」

 

そう宣言すると文字羅列は全方位に、ありとあらゆる方向に散らばっていく。これで誰も今回のテロ及び星奈の暴走は誰も覚えていない、例外(・・)を除いて。

 

「リリィは先に神界に戻っていてくれ。信頼できる君がいれば神界も安全だろう。現場の修復は僕が行うよ」

 

「………………分かりました」

 

そう返事をするとリリィは消え去った。

 

「さて、僕も掃除を済ませて立ち去るとするか」

 

そう呟くと、デパート内ヒビや穴が修復されていき、テロリスト達は何処かへと転送され、その血や肉片も消え去る。先ほどまで凄惨な現場だったのが、一瞬で何もかもがテロが起こる前の状態に戻っていた。

 

「……………………調べてみれば、操られていたとは言えテロリストなのには変わりがないようだね。変死死体として後で捜査機関に見つけてもらえるようにして、後の処遇は任せるとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての処理を終えた後、創真は横浜にあるランドマークタワーのヘリポートに座り込んで街の風景を黙って眺めていた。暫くそうしていると、また1人ヘリポートに現れると創真の隣に座り込む。

 

「ここ、第1位様の好きな街なんでしたっけ?」

 

「正確にはここの横浜ではないけどね。人間の時、社長をやってた時は横浜に本拠地を構えていたんだ」

 

その人物は秘書官のカノンだった。

 

「…………………星奈ちゃんは今どこに?」

 

「あのデパートを飛び出して以降、ずっと高速で移動中。どこに向かっているのかは知らないが、一応周りの人に見つからないように小細工はしておいたけど」

 

「そうですか……………良いんですか?追いかけなくて」

 

「追いつこうと思えば1秒も掛からないで追いつける。………………ただ、リリィには言わなかったが今の彼女に何て言うべきか悩んでてね」

 

第1位の発言にカノンは驚いた表情を浮かべる。彼女からすれば第1位を一言で表すならば『天才』であり、彼に乗り越えられない問題などないと思っていたからだ。

 

「悩む、ですか………………少し意外です」

 

「僕にだって悩む時くらいあるさ。君たちと同じようにね」

 

「それを聞いてさらに親近感が湧きました」

 

それから暫く2人の間に沈黙が流れる。カノンも何も言わない。ただ黙って横浜の風景を眺めている。

 

「……これはまだ仮説の段階だけど、正解だと思っている」

 

何分か経った後、第1位は突然語り始める。

 

「彼女は大量虐殺を行ってしまった自分が生きていて良いのかという『葛藤』と、楓さんの『生きていて欲しい』と言う願いとの板挟みにあっていたが故に、精神的に不安定な状態で神聖力も制御できなかったのだろう」

 

「……………………楓さんの願いって、悪い意味では『呪い』だった、とも言えるわけですね」

 

「そういう解釈はあんまり好きじゃないんだけど、それも否定できないね。……………………僕が犯した最大の間違いは、彼女をその『葛藤』と向き合わせるべきか否か、その答えを明確に出来なかった。今日みたいな事が起こる前に、もっと早く結論を出すべきだった」

 

「……………………今でしたら、もう結論は出ているんですか?」

 

そう尋ねると、第1位は首を横に振る。

 

「……………彼女はまだ幼すぎる。しかも、あの殺戮は神聖力が暴走しただけで、彼女の意志で行われたわけではない。まだ幼い子供に、そんな大量虐殺の罪を背負わせるべきなのか?全て忘れさせても良いんじゃないか……………………何て考える自分()いる」

 

「……………星奈ちゃん自身に自分のした事と向き合って欲しいと思っている自分もいるって事ですよね?」

 

「……まぁ、そうだね」

 

カノンの問い掛けに第1位は静かに肯定する。

 

「カノンが僕の立場だったらどの選択が正しいと思う?」

 

「………本当に難しい事を聞いてきますね………………」

 

そう言いつつもカノンは唸りながらも考え始める。また再び沈黙が訪れれる。その沈黙が破ったのは10分後。今度はカノンだった。

 

「………………すみません、第1位様。私なりに考えたんですけど……………………正直、どっちの選択も間違っていないです。どっちも正しいと思いました」

 

「………なるほどね」

 

「………………人間や神界人とかって、1人1人に個性があって、考え方や主義もバラバラじゃないですか?だから、人の数だけ色んな『正しさ』があると思うんですよ」

 

「……………………」

 

第1位は黙って続きを促す。

 

「数ある『正しさ』の中から、どれを自分にとっての『正しさ』とするかは自分で決断しなきゃいけないんですよねー、生きていくなら」

 

「……………………」

 

「正直、面倒くさいですよ。けど、それでも選ばなきゃいけない場面は山ほどあるんですよねー……………………生きてくって難しいものですね~、ほんと」

 

「……………そうだね。確かに、僕も人間だった頃は選択の連続だったね」

 

カノンの言葉に思わず昔を思い出したのか、第1位は笑ってしまう。

 

「って、結局これ答えになってないですよね。すみません、漫画みたいに変にかっこつけた事を言っちゃて」

 

「いや、そうでもないさ」

 

そう言うと第1位は立ち上がる。

 

「確かに、この二択はどちらも間違いではないのだろうね。けど、やはりどちらが自分にとって正しいのかを選んで、その正しさを信じて今やるべきことをやらなければならない」

 

「……………………」

 

「………………君と話していて思い出した事がある。僕は人間だった頃、中学時代に恩師(殺せんせー)を殺した。人間時代の僕はその先生を殺したという事実を忘れた事もないし、忘れたいと思ったこともない。殺したことの意味やその重さを受け止め、まっすぐに見て、受け入れて生きてきた。そして、今の僕がある訳だ。……………………何で今の今まで思い出さなかったのかねぇ………………人間時代も含んで100年以上生きているが故か、それとも自分の中では当たり前の事になりすぎて、わざわざ思い出す必要もなくなってたか………………………………………………決めたよ、カノン」

 

そう呟くと、第1位の背中から2枚ずつ2対からなる純白の4枚の翼を展開された。

 

「僕は今の自分のあり方が大好きだ。だから、そんな今の自分を作ってくれた『正しさ』が、彼女の為にもなると信じる事にした。………………これで、心すっきりだ」

 

そう言ってニヤリと笑う第1位にカノンも笑みを浮かべる。

 

「………はい、それで良いと思います。きっと、私が第1位様の立場でも同じ選択をしていました」

 

「そっか。……………君がいなければ、僕はまだここでどうすべきか悩んでたかもしれない。君と話せて良かったよ。これは大きな借りが出来たな」

 

「なら、今度スイパラを奢ってください!それでチャラって事で!」

 

「良いよ、好きなだけパフェでもケーキでも食わせてやる。…………………じゃ、自分のすべき事をしに行ってくる」

 

「はい、お気をつけて!」

 

第1位は一瞬でその場から空へと飛び去る。それをカノンは見上げていた。

 

「大きな借り、かぁ…………何度も命を助けてもらってるんだし、寧ろ私の方が第1位様に借りがめっちゃあるんだけどなぁ……………………これでちょっとは借りを返せてれば良いけど……………………ま、取り合えずスイパラ楽しみって事で、あとは第1位様に任せて帰ろ!」

 

自分の尊敬する第1位なら何とかしてくれると信じ、カノンもその場から消え去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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星奈side

 

一体、どこまで来たのだろうか。気づけば、何処かも分からない樹海に1人だった。

 

──────人殺し。

 

「……やめて…………………」

 

──────化け物

 

「あああああああああああああああああ──────!!」

 

頭の中で声がずっと響く。私を人殺しや、化け物と呼ぶ声が。どんなに走っても、叫んでもずっと響く。

 

「……………………どうして……………どうして私が生き延びてしまったの!?あの時、楓が生き残るべきだった……………………!」

 

そうだ。彼女は万能薬を開発し、多くの人を助けるという夢があった。眩しく感じるくらい、とても素晴らしい夢だった。けれど、その夢は志半ばで途絶えてしまった。私がいたから。私なんかが存在していたからだ。

 

あの時、私が死ぬべきだった。

 

『──────そう。あの時、あなたが死ぬべきだった』

 

「ッ────!?」

 

目の前にいたのは綾心。頭からは血を流していて、その目は虚ろだった。

 

『あなたが悪いんだよ。あの時、生きたいなんて願ったから。だから、彼女は──────私の妹は死んだの』

 

「い、もうと……………………まさか……………………」

 

『そう。楓は可愛い妹だったのに、あなたのせいで死んだ』

 

膝をついて頭を抱えてしまう。涙が溢れて止まらない。もう何も聞きたくない。けど、綾心の声が頭に響く。

 

『あなたは本当に傲慢だね、星奈ちゃん。よーく考えてみなよ。人殺しに生きる資格なんてあると思うの?』

 

「………ぁ……………」

 

『沢山の人の命を、人生を奪って。その家族まで悲しめて。なのに、自分だけはのうのうと普通の人生を送ろうとしている。……………………そんなの許される訳ないよねぇ?』

 

…………………何も言えない。言い返せない。全部、綾心が正しい。

 

『純粋な人間ですらな、化け物のあなたに生きる資格何てないんだよ。なのに、あなたは普通の人生を望んだ。だから、罰が当たったんだよ。禁止されていた神聖力を行使して暴走し、私も死んだ。多くの人が死んだ』

 

「……っ……………」

 

『生きていくなんて考えない方が良いよ。多くの人を殺した罪を背負って生きるなんて、ずっと茨の地獄を歩くようなものだよ』

 

……………………確かに、その通りかもしれない。

 

『けどまぁ、星奈ちゃんは私を助けようとしれくれたしね。良いことを教えてあげる。君の罪を償う方法を』

 

綾心がそう言うと、私の目の前に小型のナイフが落ちてきた。

 

『命を奪ったからには、命で償うのが筋でしょ?だから、死をもってあなたの罪は償われる。そして、あなたを蝕んでいる苦しみからも解放されるなんて、最高じゃない?』

 

………………。それは…………………何とも魅力的だ。私なんかの死で罪が償えるのなら、安いものだ。私の命など他の人間と比べれば軽いのだから。

 

これで全て終わりる。何もかもが、この一瞬で。私はナイフを持つと、自分の心臓に向けて狙いを定める。目を瞑り、勢いよく心臓めがけてナイフを振り下ろした──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────だが。

 

「……………………?」

 

来るはずの痛みも、衝撃もない。まだ意識もある。ゆっくりと目を開ける。ナイフは刺さる寸前で止まっていた。だが、止めたのは綾心でもない。創真でもない。そもそも、誰も止めていない。

 

──────止めたのは自分だった。

 

「……何で?」

 

「何でって、そんなの単純明快だよ」

 

声のした真上を向くと、創真が木の枝に座って私を見下ろしていた。

 

「回りくどいのは面倒だからはっきりと言おう。君がどんなに口先では死のうと言っても、心の奥底では生きたいと望んでいる。ただそれだけさ」

 

「違う!私は、もう生きるのなんて」

 

「じゃあ、何でそのナイフで刺すのを止めたんだい?」

 

「それは………………」

 

言葉に詰まる私の前に創真は降りてくると、私が持っていたナイフを一瞬で取り上げて、そのまま私から背を向けて少し離れる。

 

「………………仕方ない、少々手荒だが分からせてやるとしよう。君が心の奥底で望んでいる気持ちに、ね!」

 

そう言って私の方を振り向いた創真の手に持つナイフが私の心臓めがけて投げられる。そのナイフを受け入れるように私は手を広げる。そして、ナイフ私の心臓を貫いて──────

 

「っ…………!?」

 

──────ナイフは無意識に私の手がキャッチしていた。

 

「これで、もう言い逃れは出来ないね」

 

「……………………。あぁ……………………そっか。私、この期に及んでまだ生きたいなんて思ってるんだ…………大勢の人を殺した化け物なのに…………」

 

手からナイフが落ちて、私の足に刺さる寸前で創真がナイフを回収すると、そのまま粉々にしてしまう。そのまま創真は膝をついて私と目を合わせて話し始める。

 

「生きたいと思う事を悪いと思っているなら、全くもってばかばかしい。何故なら、生きたいと思うことは、君が化け物ではなくれっきとした人間である事の証拠だ。生きたいと思う自分を卑下する必要は全くもってない」

 

「………でも…………私は、人を沢山殺して……………………」

 

「……………気に入らないな。君は人殺しに生きる資格などないと本当に思っているのかい?もしそれが正しいのなら、僕も生きる資格がない事になってしまうんだがね」

 

「え……………」

 

創真にも生きる資格がなくなる……………………まさか。

 

「…………………僕も人間だった頃、人を殺したことがある。まぁ、正確に言えば人とは言えないかもしれないが……………………殺したのは中学校3年生の時の恩師さ」

 

「…………………」

 

「僕が……………いや、僕らが殺らなくてもどっちみちその先生は死んでいた。けど、絆を守って卒業する為に、恩師にすべき事だと皆分かっていた。だから、殺した事に後悔は一切ない」

 

創真がどういう状況だったのかは分からないが、その先生を殺したことに後悔はない事だけは分かった。…………………ふと、創真に聞いてみたい事が出来た。

 

「……創真は……………殺したと言う事実を受け止められたの?大切な恩師を殺したと言う事実を、忘れたいと思ったことはないの………………?」

 

「ないね」

 

私の質問に創真は即答だった。

 

「殺したという事実から目を背けるのは、正しくないと僕は思ってる。殺したことの意味やその重さを受け止め、まっすぐに見て、受け入れていかなきゃならないんだよ。後悔なく、胸を張って生きてくためにはね」

 

殺したことの意味やその重さを受け止め、まっすぐに見て、受け入れる……………………。

 

「…………………実を言うと、僕は迷っていた。君に自分のした事と向き合わせるべきか、それともまだ幼い君に自分のした事と向き合わせるのは過酷だから、忘れさせても良いんじゃないかって。どちらも正しいが故に、僕はすぐに答えを出せなかった。答えを出さずに君と生活していたが故に、君にまた手を掛けさせてしまった。………………けど、もう迷わないよ」

 

「!」

 

「君にあえて酷な事を問おう。星奈ちゃん、君が生きることを望むなら、多くの命を奪ったことの意味やその重さを受け止め、目を離さず向き合わなければならない。……………君にその覚悟はあるかい?」

 

「…………私は……………………」

 

真剣な目で創真は聞いてくる。多くの命を奪ったことの意味やその重さを受け止め、目を離さず向き合う覚悟。……………………私に出来るのだろうか?

 

『余計な事をしてくれるなぁ………………けど、今ならまだ行けるかな?』

 

ここまで黙っていた綾心がそう呟くと、辺りから人型のロボットが空を埋め尽くす程の数で現れる。そして、そのまま私目掛けて攻撃してくるが、その攻撃を創真がシールドを張って全て防ぐ。

 

「創真!」

 

「なぁに、心配しなさんな。この程度、どうってことない。何故なら、僕は強いからね」

 

……………………確かにそうだ。創真は強い。力的な意味でも、精神的な意味でも。それに比べて私は──────

 

「……………………私は、強くない。1人で自分のしたことに向き合える自信なんて…………………ない……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………けど」

 

けど、それでも私は……………私は……………………!

 

「…………私は、生きたい………………生きて……………………幸せになりたいよぉ…………!!」

 

言ってしまってから、『あぁ、やっぱりそうなのだ』と実感した。私の1番の望みは『生きて幸せになる』事なんだ。それはたぶん、誰もが心の底では抱いている想い。結局、私は他の女の子と同じような存在だったんだ。……………漸く、私と言う人間(・・)の事が分かった気がする。

 

「……………………創真。1つだけお願いがある」

 

「良いよ、言ってごらん」

 

「私は………あなたみたいに強くない………自分のしたことに1人で向き合える自信がない。けど……………………見て見ぬふりは出来ない。向き合わなければならない。だって、私は生きて、幸せになりたいから……………!」

 

「うん」

 

「……………だから…………私が自分のした事と向き合えるように…………私を支えて欲しい………………!」

 

それを聞いた創真は私の方を向くと嬉しそうに笑う。

 

「勿論、喜んで支えるよ。と言うか、頼まれずとも支えるさ。だって、血は繋がって無くとも僕は君の父親(・・)だからね。そうだろう?」

 

「………うん…………うん……………!」

 

思わず創真に抱き着く。創真は私を受け止めて、頭を撫でてくれる。暖かい手で、とても落ち着くものだった。

 

『…………あーあ。完全に立ち直っちゃったか。これで私の……………………いや、()の計画はパーだな』

 

そう呟く綾心だが、その姿が一瞬にして知らない男に変わった。

 

「あ、綾心じゃない…………?」

 

「綾心なんて人物は最初から存在しないよ。ここにいるのは、君のデパートでの暴走を引き起こした黒幕、殺し屋の神界人『マインドキラー』だけだ」

 

「……………楓の姉って言うのとかは、私を暴走させて自害に追い込むための嘘だったって事……………………?」

 

「あぁ、お前の言う通り。楓って奴に姉なんていねーよ。ぜーんぶ嘘に決まってるだろ。楓って奴を連想させるように顔立ちを変えたり振舞うようにして、あとは色々と動揺させる事を言って、ある程度精神的に揺さぶりを掛けさせた所でテロリストに殺されたように見せかければ、お前は暴走すると踏んだ。そして、結果的に俺のシナリオ通りに事は進み、あとは精神的に完全に参ってしまったお前をとどめとばかりに追い詰めて、自死させれば俺の任務は完了だったんだが……………………あと一歩のところでしくったか」

 

………………そうか、あの時制御装置のブレスレットがなかったのもこいつの仕業か。そう言えば、握手したときにブレスレットを触られていた。あの時に何かされたのだろう。デパートで見た楓の幻もあいつが見せた幻影。

 

全てこいつの仕業だったのだ。

 

「噂で聞いたことがある。標的を精神的に追い詰め、自害させる殺し屋。何とも悪趣味な奴だ」

 

「つれないねぇ、第1位。お前だって人間時代に殺し屋ごっこをしてたじゃねぇか。俺はお前と同じ穴の貉なん」

 

創真は一瞬でマインドキラーのもとに移動し、蹴りで空中から叩き落すがガードされていたのかあまり効いていないようだった。

 

「お前なんかと一緒にするなよ。僕はお前みたいな悪趣味はない」

 

「そうかい、そいつは残念だ。……………仕方がない、さすがに第1位を相手にしては叶わない。ここは退くとしよう」

 

「………………そうはさせない」

 

私はマインドキラーの前に立ちはだかる。楓と似た姿で私を追い詰め、あの星の写真など楓との思い出を利用された。この借りは返さなければ、私の気が済まない。

 

「…………………星奈ちゃん、そいつは君に任せるよ。僕はこの馬鹿みたいな数のロボットを片付ける。……………もう、君に枷は必要ない。必要なのはこれだけだ」

 

そう言うと、腕についていたブレスレットが外れる。そして、目の前にあのネックレスが浮かぶ。それを受け取ると、私は首に掛けた。

 

「ハッ、気でも狂ったか第1位。こんなガキに俺が負ける訳ねぇ。感謝するぜ、俺に任務完了のチャンスを与えてくれたことに」

 

「いやぁ、無理でしょ。だって君

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弱いもん(笑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==============================

 

「……………舐めた事抜かしてんじゃねぇぞ、クソが!!決めたぜ、このガキを絶対ぶっ殺してやる!!ただ殺すだけじゃない、苦痛に満ちた死を与えてやる!!」

 

煽り耐性のないマインドキラーは殺意マックスで星奈を見据える。だが、創真に動揺した様子はない。

 

「弱い犬ほどよく吠えるとはよく言ったものだ。……………………星奈ちゃん、君が今まで神聖力を制御出来なかったのは、人殺しを行ってしまった自分が生きていて良いのかという『葛藤』と、楓さんの生きていて欲しいと言う『願い』との板挟みにあっていたが故に、精神的に不安定な状態で神聖力も制御できなかった。けど、今の君ならもう大丈夫。だろ?」

 

「…………………うん。私はもう迷わない。生きるって、決めたから!」

 

星奈は神聖力を全力で開放する。彼女の全身から神聖力の白い光が放出されるが、その色が青色に変わる。彼女の体にも変化が起き、幼い体が一気に成長して、服がビリビリと破れていく。

 

「(なんだこのとてつもない出力は……………!?神聖力を完全に制御したとでも言うのか?!まずい、奴を今すぐ殺せと俺の直感が叫んでいる!)」

 

マインドキラーは星奈に襲い掛かるが、突如として布のような黒い影が地面から出てきて行く手を阻む。

 

「駄目じゃないか、今はプリキュアで言う変身シーンみたいなものなんだから。それを邪魔するのはご法度だよ」

 

そのまま黒い影は星奈を覆う。そして、影が霧散すると星奈の全容が見えてくる。髪型は変わらないものの、身長が伸び、胸も大きくなるなど子供から大人の体に成長していた。その身には黒スーツを身に纏っており、その首にはあのネックレスが掛けられている。

 

「な、なんだその姿は……………………!?」

 

「彼女は自分のした事と向き合う覚悟を決め、生きていくことを決意した事で精神が安定し、神聖力を完全に制御した。神聖力もフルパワーで使用できるようになり、それに合わせて体が適した姿…………………いや、ここは成長した言っておこうか」

 

「………………創真、あの機械の大群はお願い。私はこの男の相手を」

 

そう言うと星奈は青い神聖力を身に纏い、飛び出すのだった──────。

 

to be continued………




金沢に旅行行きてー(唐突)
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