三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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次回は幕間の物語です。もしかしたら明日は投稿は無理かも知れないのでご了承を。


第3巻
積み上げたもの


「来週から中間テストです。今回も赤点は30点以下とするので、各自復習を怠らぬように」

 

教科書を盾にして漫画を読んでいる俺の耳に定期テストの到来を知らせる先生の声が入ってくる。ページを捲る手を止めて隣をチラリと見ると、爆睡している一花姉さんの姿があった。

 

「…………こんな調子で大丈夫かねぇ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間、暇潰しに上杉の教室に行ってみると、丁度五月と話してる真っ最中だった。

 

「休み時間なのに予習してるなんて偉い!家でも自習してるんだってな?それに無遅刻&忘れ物もしたことない!お前は姉妹の中で一番真面目だ!」

 

ふむ、あれか?勉強会に参加させようと誉めまくって口説いてる最中だろうか。

 

「そ、そうでしょうか」

 

「そうだ!ただ、馬鹿なだけなんだ!」

 

「いや、馬鹿はどう見てもお前だろうが!」

 

思わずツッコミながら俺も教室へ入って行った。

 

「なんだ、火野か。お前からもガツンと言ってやってくれ」

 

「いや、五月じゃなくてお前にガツンと言いたいわ!」

 

そんな口説きで参加する訳ないでしょうが!こいつ、勉強は出来てもやはりある意味馬鹿だ!

 

「………………そうですね。私も1人では限界があると感じてました。この問題を教えて貰っても良いですか─────先生」

 

「分かりました、後で職員室まで来なさい」

 

ほらー、言わんこっちゃない。さらに参加しなくなったじゃん……………。こいつ、某アーサー王の如く人の心が分からないんじゃないの、ガチで。

 

「どうしてこうなった………」

 

「(オメェのせいだよ)」

 

「兎に角、次だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お次は二乃である。

 

「二乃、中間試験は」

 

「みんな行こー」

 

おそろしく速いスルー。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね!

 

「あの人、二乃の事呼んでなかった?」

 

「あいつら私のストーカー」

 

「おい待て!上杉はストーカーでも変態でも何でも良いが、俺はどう考えてもストーカーじゃないだろうが!」

 

「何で俺は良いんだよ!…………二乃!俺は諦めないぞ!祭りの日は一度付き合ってくれただろ!もう一度考え直してくれないか!」

 

こ、こいつ………よりを戻そうと説得しているように聞こえる事に気付かないのか。だが、面白そうなのでもう暫く放っておこう……(ゲス顔)

 

「なんならお前の家でも良いぞ!あと1回だけで良いんだ!お前の知らない事をたくさん教えてやるよ!」

 

だ、ダメだ………笑いを堪えられそうにねぇ…………完全に(ピー)したい人の発言じゃねぇか………このままだと上杉がビースト(意味深)と誤解されかねないのでここいらで止めますかねー。

 

「おっ、おい………ブフッ………上杉…………フフッ、ちょいとそこいらで止めとけって………グフフ………誤解を生むからよ………」

 

「は?誤解?何を言ってんだよ。なっ、に…………二乃?」

 

上杉の目の前には羞恥で顔を赤くしている二乃が。ここで漸く上杉が何かまずかった事に気付いた時にはこの説得の結末は決まっていた。

 

「誤解されるでしょうが────!!」

 

「ブヘッ!?」

 

二乃の ビンタ こうげき!

 

こうかは ばつぐんだ!

 

あいての 上杉は 倒れた!

 

二乃は 去って行った!

 

「あーあ、真っ赤な紅葉が出来ちゃったね」

 

「き、今日はなんて厄日だ………どうして俺がこんな仕打ちを…………」

 

ほぼお前のせいだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局五月と二乃を除くいつメンで勉強会をする事に。2人の事は取り敢えず一旦忘れる事にした。

 

「上杉さん、火野さん!問題です!今日の私はいつもとどこが違うでしょうか!」

 

「お前ら、もうすぐ何があるか知ってるな?」

 

「無視!」

 

上杉はスルーの呼吸 二の型(適当)で完全に無視。 しょうがないから代わりに俺が解いてやんよ~。

 

「………………………あ、分かった!リボンが違う!」

 

「火野さん、大正解です!最近の流行はチェックだと聞いて変えてみました」

 

へー、そうなんだ。ファッションの流行とかあんまり気にしないからよく知らんが。そんな四葉のチェック柄のリボンを上杉が鷲掴みする。

 

「良かったな、四葉。お前の答案用紙も流行りのチェックでいっぱいだ」

 

「わ~~~、最先端~~~…………」

 

「そのチェックは流行るとまずいですぞ…………うーん、このままテストを向かえると嫌な予感しかしませんな」

 

「火野の言うとおりだ。このままでは試験を乗り切れない!だからこそ、この1週間で国数英理社を徹底的に叩き込むぞ。だから三玖も日本史ばかりやってな…………み、三玖自ら苦手な英語を勉強している、だと…………!?」

 

当の三玖は日本史ではなく英語をやっていた。俺からすればデジャブだけどね。

 

「ね、熱があるなら帰って」

 

「スパーン!」

 

「痛ッ!」

 

俺氏の こんぼう(丸めた教科書)叩き こうげき!

 

こうかは ばつぐんだ!

 

上杉は あたまをおさえた!

 

「熱なんかねーぞ、上杉。三玖は変わったんだよ。もう今まで勉強から後ろ向きだった頃の彼女はもういないのだ!」

 

「そ、そうなのか……?よく分からんが良い方向に変わったのなら何よりだ………………てか、今叩かれる必要あったか?」

 

「それはノリで」

 

「どんなノリだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー疲れた!」

 

「早く帰りたい………」

 

俺も四葉と三玖ど同意見だわ。疲れたし早く帰りたい。

 

「不味いぞ、火野。放課後だけでは全然時間が足りない。週末にどれだけ詰め込めれるかが重要だな………」

 

「……少しは肩の力を抜けよ、上杉。ずいぶんと根詰めてるが、別に俺らの目的は中間テストで赤点回避する事じゃない。卒業させる事だ」

 

「そ、それは……………確かにそうだが………」

 

ここで一花姉さんから援護射撃が入る。

 

「ソウゴ君の言うとおり、フータロー君は根詰め過ぎだよ。中間試験で退学になる訳じゃないんだし、私達も頑張るからじっくり付き合ってよ。ね?」

 

「………………確かに、2人の言う通りそんなに焦らなくても良いのかもな」

 

そうそう。そんなに気を張り過ぎるのも身体に毒だしな。

 

「あ、でもご褒美あればもっと頑張るかなー」

 

「駅前のフルーツパフェが良いです!」

 

「私は抹茶パフェ」

 

「ああ^〜、いいっすねぇ^〜。………てか、今食いてぇ」

 

「じゃあ、今から行きましょう!」

 

「早く帰りたいんじゃなかったのか…………」

 

確かにそう言ったな。あれは嘘だ。

 

「よし、行くぞ上杉!甘いもん食って消費した分の糖分補給じゃぁ!」

 

「上杉さーん!置いてっちゃいますよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファミレス

 

「……………そして、俺と四葉の誘いを勉強するからと断って帰るのがガリ勉の鑑の上杉氏。いやぁ、もうほんと尊敬しちゃうネ!」

 

「言葉とは裏腹にそうには聞こえないけどね…………」

 

よく分かってるじゃないか、一花姉さん。クラスで隣だから俺の事も分かってきたようだ。しかし、今更だが女子3人の中に男が1人いると何か気まずいな。気のせいか、妬む視線があちこちから突き刺さってるような気がするし。帰り道、後ろからグサッと刺されたりしないか心配だな。

 

「フータローはいつもあんな感じなの?」

 

「大体の誘いを勉強で断るぞ、奴は。そこまで勉強する理由ってなんなんだろうね」

 

尋ねてみたことはあるが、適当な理由で有耶無耶にはぐらかされてしまい、真の理由を俺は知らない。

 

「火野さんはどう言った経緯で上杉さんと友達になったんですか?」

 

「どう言った経緯?あー、それは」

 

その時、俺のスマホから電話が鳴る。3人に断ってから俺は電話に出る。

 

「誰だ誰だ、幕間の物語の話をしようとしてる最中に電話を掛けてくる輩は!!」

 

『…………火野君。娘が世話になっているね』

 

「(お…………お父様かよォォォォ!!)…………ど、どうも。こんにちは………何か、すみません………」

 

『構わないさ。顔を出せなくて済まないね。家庭教師の調子はどうだい?』

 

「あー、カテキョに関してはちゃんとやってますよ」

 

『上杉君も君と同じことを言っていたが、君もそう言うのなら本当なのだろう。順調そうで何よりだ。ところで、近々中間試験があると聞いてね』

 

「………………そう、ですね」

 

……………嫌なよーかんがする。

 

『少々酷だが、ここで君達の成果を見させて貰おう。一週間後の中間試験、五人のうち一人でも赤点を取ったら、君には家庭教師を辞めてもらう』

 

……………………え。ヤメテモラウ?

 

「………そ、そう来ましたか…………」

 

『この程度の条件を達成できなければ安心して娘たちを任せておけないからね。上杉君にもこの事はつい先程通達しておいた。それでは健闘を祈るよ』

 

それだけ言い残して電話は切れた。通話を終えた俺氏の心境はと言いますと─────

 

(あ…………あと1週間で全員赤点回避、だと……………!?とんでもねぇ難易度のハードルじゃねぇか!!目の前の3人は可能性がまだあるとしても、未だに教えを拒んでる残りの2人はかなりまずいだろ!特に二乃!勉強も嫌い、俺らも嫌い!最悪のスーパーベストマッチじゃねぇか!!しかも、これを知られたらさらに勉強しなくなるに決まってる…………!)

 

「……………ソウゴ?」

 

脳裏に無理ゲーと言う文字が浮かび上がってきた俺氏は三玖の声に引き戻された。

 

「(言えば逆にプレッシャーになりかねないか…………)な、何?」

 

「さっきの電話、多分お父さんからだよね?」

 

「ま、まぁね」

 

「何を話したの?」

 

「た、大した事ない………そう!せ、世間話さアハハ!」

 

「世間話だけでそんなに汗かくの…………?」

 

やめろ、一花姉さん!そこにつっこむな!

 

「緊張したんですぅ!声的にあの人何か怖そうだし!マジでそれだけだから!……………す、すみませーん!ジャンポパフェ1つお願いしまーす!」

 

「はーい」

 

話題を強制的に打ち切る為に、糖尿病になると言う都市伝説(?)で有名なジャンポパフェを注文。そして届いたパフェを5分で完食した。もう少し年取ってれば一発で糖尿病確定か?今はそんなことはどうでもいいが。

 

「あの量を1人で全部食べきっちゃった…………お姉さん、すごくびっくり」

 

「ソウゴって五月と同じく大食いなんだね」

 

「大食い対決すれば、五月といい勝負になるかも知れませんよ!」

 

「そ、そーかい…………なら、今度やってみるのも悪くないかもな……………」

 

ジャンボパフェのせいで甘いのは暫くもう良いやと思いながら、糖分を補給したからか冷静になった頭で覚悟を決めた。

 

(クビにされたら三玖といい関係を構築させる機会も減るし、何より5人を笑顔で卒業させると宣言したんだからこんな志半ばで終わりたくねぇ!こうなったら上杉と協力して何とかするしかねぇ!上等だ、やってやらぁ……………!)

 

俺は静かに闘志を燃やし始めたのだった。男は根性なんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたからは絶対に教わりません!」

 

「お前にだけは絶対教えねー!」

 

そして、勉強馬鹿(上杉)がハードルの難易度をさらに上げてしまったのをすぐに知ることになる──────。




神様「(あれ……………オリ主より原作主人公の方が足を引っ張ってね?)」

上杉「(何か失礼な事を言われた気が………)」

今日もありがとうございました!

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