家庭教師の時間の15分前。上杉から話しておきたいことがあると言うのでマンション前に集合。そして話を聞いている内に俺の顔は般若の如くこわーい表情を浮かべる。お陰でマンションから出てきた子供は全員怯えて走り去る始末であるが、そんな事は知ったことではない。
そして、話を聞き終わった次の瞬間────
「…………んだと、この勉強馬鹿がぁ!!」
「すみませんでしたァ!!」
総悟は激怒した。必ず、かの目の前で土下座している上杉を粛清しなければならぬと決意した。総悟にはテスト前に五月と一悶着起こす上杉の心がわからぬ。総悟は、ただの勉強も出来るオタクである。漫画やラノベを読み、アニメと共に暮して来た。けれども三玖と会える機会を減らそうとする悪に対しては、人一倍に敏感であった。
「このバカチンがぁぁぁぁぁぁ!!全員赤点回避しなきゃクビだってのに、その可能性を高める事をしでかす奴があるか!!………………マジでどうすんだよ……………」
「ほ、ほんとにすまん!つい動揺と勢いで……………必ず何とかする……………」
「3秒以内にやれ。でなきゃぶっ〇す」
「それは無理があるだろ!!」
その後
・二乃にはクビの事は伝えない。
・上杉は五月と和解する。
・とにかく頑張る
上杉との話し合いでこの3点を決めた後、俺達はマンションの中へ入って行った。
それから数時間後、勉強しまくったので休憩と言うことで俺は上杉、一花、三玖、四葉と人生ゲームを楽しんでいた。1回だけな筈だったのに白熱してか結局3回も遊んでしまった。ちなみに、五月と話す機会は無かったのはお察しして。
「いえーい、勝ったー!」
「うーん、あと少しだったんどけどね………」
「ソウゴ、強すぎ……」
「3回やって3回とも火野さんが1位で上杉さんが最下位です!」
「何故三回連続で最下位なんだ……………」
「俺の別名『 』(くうはく)に敗北はあり得ないのさ。ゲームは始める前に終わっているが信条なのでね」
うん、まぁ…………何かかっこよく決めてるけど実際はノーゲー〇・ノー〇イフの最強ゲーマー兄妹からパクっただけなのだが。ガチでご本人いたらこてんぱんにされるんだろうなー。流石にあのチートレベルまでゲームは強くない。
「なんだー、勉強サボって遊んでるじゃない」
ここで家庭教師アンチの二乃が登場。
「ほー、挑戦者か。言っておくが、『 』に敗北はあり得ないぜ?」
「は?何カッコつけてるわけ?キモ」
あ?
「テメェ、榎〇祐先生に謝れゴラァ!俺を侮辱するのは構わんが、『 』と言うより、ノ〇ノラを侮辱するのは許さんぞォ!映画化もしてるのに!円盤もかなり売れたのに!」
「何を言ってるのかよく分からんが、落ち着け火野!」
離せ、上杉!羽交い締めにすんな!
「あんたも混ざる?五月」
!………い、いつの間に…………ステルス性能高すぎィ!だが、今がチャンス!行け、上杉!
「き、昨日は……」
「私はこれから自習があるので失礼します」
「あ、おい!」
ダメみたいですね(諦め) …………こりゃ、相当怒らせたようだな。
「……………ほら、あんたらもカテキョーは終わったんでしょ?帰った帰った!」
「へいへい」
「あ、ああ…………」
あーあ、取り敢えず今日はここまでかぁ……………もう不安しか残らん。
…………と、思いきや。
「…………もー、2人とも。何言ってるの?約束と違うよ?」
「「「え?」」」
「今日は泊まり込みで勉強教えてくれるって話でしょ」
「「ええーっ!?」」
「ファッ!?」
「…………と、言うわけでよく分かりませんが泊まる事になりました」
「よく分からないのですか…………」
俺は枕が変わると寝れない系男子なので、枕とかその他諸々を取りに帰るついでに星奈さんも説明しておいた。正直なところ、一花姉さんが助け船出してくれたのは助かった。これだけ時間があれば上杉も五月に謝る機会を見いだせるかもしれないし、何より赤点回避の可能性が少しでも増やせるだろう。
「………………まぁ、ご両親には私が説明しておきます。ですが、くれぐれも欲をスパーキングさせて新たな生命を誕生させないで下さいね」
「し、しませんわ!誰が(ピー)とか(見せられないよ!)みたいな事したり、(自主規制)的な事をするもんですか!」
「そこまでは言ってないのですが………」
「………………あ」
…………よーく考えたら今の俺、放送禁止用語やR18指定を喰らいそうなワードを連発したヤベー奴じゃん!最悪だよ、星奈さんの前で何やってるんだ俺はァ!せ、せ、星奈さんのせいなんだからね!(責任転嫁)
性よ…………じゃなくて欲をスパーキングさせないでとか柄に合わない事を言うから動揺しちゃったからなんだからね、ほんと!!…………あぁ、もう!言い訳してたら余計恥ずかしくなってきた!
「………これがエロ動画をこっそり見てたのが親に見つかって死にたくなるほど恥ずかしくなるような気分ってやつか……………中々に最悪だな……」
「? 何か言いましたか?」
「何でもないです、それでは!!」
そのまま走り去って行った。
「戻ったぜー。あれ、上杉はどうした?」
「先にお風呂に入ってるよ。ソウゴ君も一緒に入ってきたら?」
「死んでも嫌だね!」
男2人で風呂とか誰得だよ。
「ソウゴ、荷物多いね。何を持ってきたの?」
「えーっと……………まず枕でしょ?後はパジャマとかアイマスクに耳栓で、他にも水鉄砲に木刀、けん玉にゲーム機とかその他諸々」
「それ殆どいらなくない………?」
一花姉さんから何か聞こえた気がするが空耳としておこう。何も聞こえませーん。
「火野さん!この木刀に書いてある洞爺湖って何ですか?」
「あー………………代々、俺の家系は木刀に洞爺湖って彫るしきたりなもんで。男のロマンみたいなもんでいいでしょ?」
「はい!よく分かりませんがカッコいいと思います!」
まぁ、このロマンはSF人情なんちゃって時代劇コメディーの銀〇を読んでないと分かるまい。
「で、二乃と五月は相変わらず部屋に引きこもってるのか?」
「五月ちゃんは部屋にいるけど、二乃は…………あ、ちょうど帰ってきた」
噂をすれば二乃が来た。そして俺を見ると何故か不敵な笑みを浮かべる。
「二乃、何かあったのー?嬉しそうに見えるけど」
「ええ。とっても
………………あっ(察し)
俺は二乃にこっそり駆け寄って小声で話し掛ける。
「なぁ、二乃」
「…………何よ」
「例の条件を聞いたな?」
「…………ええ。言っておくけど、私は」
「違う違う、そうじゃなくて。お前にばらしやがった上杉を木刀でぶっ〇してきても良いか?」
「良いわけないでしょ!私達の家を殺人の現場にするつもり!?」
「ちぇ。分かったよ。じゃ、俺もお風呂入って来るわ」
「木刀持って殺る気満々じゃない!置いてきなさいよ!」
「頭を垂れてつくばえ。平伏せよ」
「は、はい………」
丁度お風呂から出た上杉を突撃。俺の顔を見て全てを察したのか、全裸で素直に平伏する。
「す、すまない火野………だがこれには深い訳が」
「誰が喋って良いと言った?」
「す、すみません…………」
はぁ…………まぁ、大方騙されたのだろう。自ら暴露するとは思えんし。パワハラ上司鬼のパワハラ会議パロはここまでにしておこう。
「取り敢えずだな、上杉。二乃に知られたからと言っても別に俺達のやることは何も変わらん。赤点回避を目指して教えるだけだ。出来る事は全てやるぞ!良いね?分かったら返事ィ!!」
「は、はい!!」
「よし、じゃあ俺も風呂に入るからさっさと出ていけ」
「ちょ、待ってくれ!せめて髪を乾かせて!いや、それよりも服を着させてくれ!」
「さっさとそのはしたないものをしまえ。もいで新しい仕事場としておかまバーに送るぞ」
「怖ッ!」
「ふー、さっぱり。待たせたな」
マジで広い風呂だったな。5人でも入れそう。
「…………火野。何だこれ?」
「『星砕き』と呼ばれる木刀や。んな事より、さっさとやるぞ」
木刀をしまって4人を座らせる。何故か二乃が離れた所にいるが気にしない気にしない。
「はーい、詰めて詰めて」
「!?」
み、三玖が俺の近くに…………!お、落ち着け火野総悟!スパーキングさせるな!
「三玖が分からない所があるって」
「い、一花……っ!」
「何でも教えるぞー、この上杉がな!あとよろしくー」
「人に全部任せるなよ!……………ああ!何でも答えてやる!分からないところがあったらなんでも聞け!」
「上杉さん!討論する、って英語でなんて言うんでしたっけ!」
「debate!デバテと覚えるんだ!確実に今回のテストに出るから覚えておくんだぞ!」
「だってよ、二乃」
「…………………」
俺の振りに一切反応せず無視。スルーされるのは少し悲しい。せめて反応してくれ(懇願)
「教えてほしいこと…………好きなタイプは?」
「「!?」」
え、マジですか三玖さん。
「ちなみに、上杉が好きなのはらいはちゃんだよ。こいつ、ロリコン&シスコンだし」
「誰がロリコンだ!」
シスコンは否定しないのか……。
「………俺は恋愛なんて興味がない。そう言うスタンスなんだよ」
「………………じゃあ、ソウゴは?」
「そうだねぇ……………」
…………折角だ。勉強に繋げるか。
「じゃ、ノートを3ページ埋めたら教えま…………って、もう取り掛かってるし…………」
単純と言うかなんと言うか。まぁ、やってくれてるんだし良いか。
「終わった」
「終わったよ~」
「終わりました!」
「いつになくやる気だしてたな……………俺の好きなタイプは──────細かいことは抜きにすれば、シンプルに優しくていい人、かな(流石にこの場で三玖とは言えん……………)」
「…………あ、もしかしてお姉さんの事かなー?」
「部屋が汚いので論外」
「酷いッ!」
意外と潔癖性なんで。ま、確かに一花姉さんはいい人だけどね。
「少なくとも我々に対しては優しくないし、二乃もあり得んかなー」
「こっちから願い下げよ」
両者、意見が一致。
「二乃は女としては見れないな。俺の中ではただの弄りキャラだ」
「誰が弄りキャラよ!」
「そう怒るなって。今も弄られて楽しそうじゃん?」
「あんたの目は節穴か!」
そんな感じでギャーギャー騒いで楽しんで(?)いると
「騒がしいですよ。勉強会はもっと静かなものだと思ってましたが」
誰かと思えば五月だった。
「悪いな、二乃が突っ掛かってくるもんだから」
「突っ掛かって来たのはあんたでしょーが!もういいわ!」
そう言って二乃は部屋に籠ってしまった。やれやれ、誰のせいでこうなったのやら()
「三玖、ヘッドホンを貸してもらえますか。1人で集中したいので」
「いいけど………」
「…………お前の事、信頼して良いんだな?」
「…………足手まといにはなりたくありません」
上杉の問いにそう短く返すと五月は自分の部屋へ戻って行く。結局謝れてないし。やはりいざ顔を合わすと謝まりづらいのかね。うーん、このままの状態を維持するのはまずいだろうし…………どうしたもんかね。
「……………ねぇ、2人とも。星が綺麗だよ。少し休憩しない?」
「俺は良いぞー。教えすぎてそろそろ暇になってきたしな」
「そこまでやってないだろ……………まぁ、良い。三玖と四葉も少し休憩……………は、必要なさそうだな」
三玖が四葉に歴代の将軍の名前を教えていた。こうやって教えあうのも悪くないだろうな。もっと成長したらお互いの得意科目を教えあえるようにしようかな。
さて、外に出て上を見上げると満天の星空が広がっていた。取り敢えず無言で連写する。
「そう言えば、オーディション受かったよ」
「おー、良かったじゃん。いつからやるの?」
「テスト後だよ。だから安心しなよ、フータロー君?」
「……………まぁ、それなら良いが」
………………さてさて。
「で、本題は?それだけを伝えにわざわざ寒い外に呼び出したのではないだろ?」
「鋭いね、ソウゴ君。……………フータロー君、五月ちゃんと喧嘩しちゃった?」
「……………気付いてたか。まぁ、いつもの事だ」
「そうだな。いつも通り、9割5分はお前が原因かなー……………」
「うぐっ…………」
「こらこら、ソウゴ君もそんなに意地悪を言わないの」
へーい。
「今日はいつもと違う気がしたよ。2人には、仲良く喧嘩してほしいな」
「仲良く喧嘩って……矛盾してるだろ」
要は喧嘩するほど仲が良い的な喧嘩って事かな、多分。
「あの子も意地になってるんだと思うよ。小さい頃から不器用な子だったからね。素直になれないだけなんじゃないかな?きっと今も一人で苦しんでる。私も出来る限りの事はするけど、フータロー君やソウゴ君にしか出来ない事もあるから。そこはお願いね?」
「上杉に出来ることか………………丸刈りにして全裸で土下座の謝罪?」
「何だよそりゃ!余計避けられるだろうが!」
ヌルフフフ。冗談はさておき。
「つーか、感心したぜ。ほぼ同時に生まれたとは言え、長女の責務を全うしてるんだな」
「あれ?ソウゴ君、やっぱりお姉さんに惚れちゃった?」
「ハハハ、こやつめ。俺を惚れさせるにはハリウッド女優になるか汚部屋を清潔な状態に一生保てるようになってから言えい」
そう言って俺はからかい目的で頭をわしゃわしゃ撫でる。
「もー、子供扱いしてるでしょ!」
「俺からすりゃ、どいつもこいつもガキみたいなもんよ」
一応前世の分も足せばもう30年以上は生きてるからな。……………まぁ、精神的には未だに高校生位な気がしなくもないが。永遠の高校生か?
「それにしても秋なのに暑いねー」
「俺ちゃんはいい加減寒いんですが…………戻らんと寒くて凍え死ぬぅ…………」
「いい加減戻るぞ。そろそろ再開しないとな」
上杉の後に続いて俺も中に戻って行った─────
「寒い…………かなぁ………?」
──────頬をほんのり赤く染めて白い息を吐いている一花姉さんに気付かずに。
そう言えば、Fate HF最終章のBDとDVDがもうすぐ発売ですね。早くまた見たいなー。
今日も読んでいただき、ありがとうー!