「何これ?」
「いやいや、四葉さんよ。この料理はどう見ても
「いや、おはぎじゃないのか?」
「コロッケだけど…………と言うか、
…………それは知らない方がよろしいかと。
「味には自信がある。3人とも食べてみて」
と言う訳で、俺と上杉と四葉の3人で試食。味の方はと言うと
「………ま、まぁ……良いんじゃないですかね?」
「美味いな!」
「あまり美味しくないー!」
俺は素直には言えずに濁したが、上杉と四葉は直球を投げる。
「何だ、四葉はグルメだな」
「上杉さんが味音痴なだけなんですよー!」
四葉が大正解。そして勉強もこの調子で大正解してくれ(切実)
「よし、じゃあ試験の復習を…………」
「待って。3人が満場一致で美味しいって言うまで作るから食べて」
「「「え」」」
「上杉が死んだ!この人でなし!」
「勝手に殺すな……………」
あれからコロッケ…………いや、
「何してんのあんた。ひとんちで昼寝?」
「二乃か。あれの食い過ぎで上杉が死んで、この人でなし!って感じなんだよ」
「え………何あれ?おはぎ?」
「コロッケ」
「コロッケはあんなに黒くないわよ!」
三玖に対する二乃のツッコミはごもっとも。あれはコロッケに似た別の何かだ……………。
「レシピ通り作っても全部これになって…………ちなみに、ソウゴが作ったのがこれ」
さっき、三玖にお手本を見せる為に作った。そして三玖も見る限り手順通り作っていたのだが、何故か全て
「あ、あのー…………火野君のコロッケ、食べても良いですか?美味しそうです!」
「どうぞー」
五月がぶれないのはもうツッコまん。毎回ツッコんでたらきりがない。
「ん~!美味しいです!今まで食べたコロッケの中でもかなり上位の方に入る美味しさです!二乃が作るのといい勝負になりますよ!」
──────この五月の感想が、とあるツンデレの闘争心に火をつけた。
「へぇ…………私のといい勝負、ね。なら、ここではっきりと勝敗をつけるわよ!決闘よ、決闘!」
「良いだろう、闇の
推奨BGM:熱き決闘者たち
こうして五月を審査員として、急遽闇の
=================
「見てれば何かを学べるかも…………!」
三玖はメモ帳を取り出してキッチンの方へ駆け寄る。
「……………完全に俺達の事は忘れ去られてるな」
「置いてきぼりですね…………」
さて、取り残されたのは上杉と四葉。もう誰も彼等が眼中にない。
「キングオブコロッケは俺だ!」
「いいえ、私よ!」
「凄い手捌き……!」
「早く食べたいです~!」
総悟と二乃の白熱した声、三玖の感心した声、五月の完成を期待する声を聞くと上杉はため息をつく。
「これは、今日1日潰れるな…………」
「あはは…………そう言えば上杉さん。二乃が上杉さんと火野さんがいるのに家から追い出そうとしなかったのに気付きましたか?」
「え?あー……………偶々だろ」
「そうでしょうか?…………見てください、上杉さん!皆、楽しそうですよ!皆が楽しそうな様子を見てると私も嬉しくなります!これも上杉さんと火野さんが家庭教師として来てくれたお陰ですね!」
「……………俺としてはコロッケ選手権で楽しむよりも勉強して欲しいんだがな…………四葉、次こそはお前も赤点回避するぞ」
「はい!頑張ります!」
四葉の元気な返事を聞いた上杉はフッ、と笑みを浮かべる。
「どうかしたんですか?」
「いや……………お前みたいな素直でまっすぐな奴が味方でいてくれて助かった、って思っただけだ」
「………………。どうして私が上杉さんの味方をするか分かりますか?」
「どうしてって………………」
「好きだから」
「…………え?」
見たこともない真面目な顔で言ってくる四葉の顔に上杉の目が見開かれる。頬が赤く見えるのは窓から入りこんで来る陽の光のせいか、それともあのコロッケのせいで視力が低下したのだろうか。
「………上杉さん。今、私は好きって言いましたよね?」
「は?いや………ちょ………?」
「あれは嘘だ、です」
「……………………」
無言で呆けた表情を浮かべる上杉に対して四葉はいたずらっ子のような笑みを浮かべて立ち上がった。
「やーい!引っ掛かりましたね!火野さんに上杉さんをからかう面白いやり方を教えて貰ったので、実践してみたらかなりの効果がありました!」
「あの野郎………もう誰も信用しない………」
「おあがりよ!」
「さぁ、召し上がりなさい!」
そして遂に両者完成した模様である。
「おお!どちらも美味しそうです!上杉さん、少し貰ってきましょうか?」
「俺が食い過ぎでダウンしたのを覚えてるか………?」
上杉の胃もたれは数時間後に解消したとさ。
================
数日後
「似合ってるじゃん、上杉。金髪ピエロも悪くはないが……………お前はペ〇ルギウスなんだよなぁ」
「いや、誰だよペ〇ルギウスって!?」
脳が震えたり、怠惰ですね~、とかの魔女教の奴です。上杉は知る由も無いだろうがね。
「そろそろ四葉辺りが来そうだし、試しに驚かしてみれば?」
「…………試しにやってみるか」
と、言うわけで待つこと5分。
「もうすぐ林間学校ですよ、上杉さん!」
「四葉」
「うわあああああああああ!!」
「ペニーワ〇ズの劣化版だァァァァァァ!」
「図書館では静かに!!!」
「「「すみません」」」
調子に乗りすぎました。
「こんなに仮装道具持ってきて、どうしたんですか?」
「ソウゴと一緒に肝試しの実行委員になったんだって」
「珍しいですね。上杉さんにしては珍しく社交的です」
「俺もやりたくてやってる訳じゃない。クラスの奴等に俺が自習してる間に、面倒な役を押し付けられただけだ。とびっきり怖がらせて、一生忘れられない夜にしてやろう………」
「ノリノリだね。…………ソウゴは何で立候補したの?無理を言って実行委員にしてもらったって言ってたけど」
「え?だって、人を怖がらせるのってめっちゃ愉☆悦じゃん」
「ドS…………」
「火野さんはどんな衣装を着るんですか?」
「それは当日のお楽しみで。ちなみに、衣装とかはオーダーメイドでその他色々と注文してね。俺の今の財布の残高は5円だ。……………早く給料とお小遣いくれないかなぁ…………課金できない………」
「………フータローより気合い入ってるね」
まぁ、好きな事には金を惜しまない性分ですからね。
「私のお友達から聞いた林間学校が楽しみになる話をしましょう!曰く、最終日に行われるキャンプファイヤーのダンスのフィナーレの瞬間に踊っていたペアは、生涯を添い遂げる縁で結ばれるというのです!」
「ええー?ほんとにござるかぁ?」
「ほんとにござるですよー!」
最近、四葉もノリが良いな。……………じゃあ、三玖と踊れば結ばれるのか?夢がありますな~!
「非現実的でくだらないな」
「うん」
「冷めてる!」
「現代っ子ェ………」
三玖まで否定的なの!?むぅ……………確かに非現実的と言えばそうかもしれないが。あくまで伝説で、100%結ばれる訳ではないだろうし。
「学生カップルなんてほとんどが別れるんだ。時間の無駄遣いだな」
「学生カップルからゴールインした奴に謝れ」
「そうですよー!」
四葉と共にブーブー文句を言っていると、三玖がポツリと言葉をこぼす。
「……なんで好きな人と付き合うんだろ」
「「え」」
何故好きな人と付き合うか………(哲学)
「うーむ…………俺のアンサーとしては『特別扱い』したいから、とか?」
「うんうん、火野君のアンサーは正解だね」
おやおや、誰かと思えば一花姉さんではないですか。
「三玖も心当たりあるんじゃない?」
「ないよ!」
「?」
何を話してたんだ?小声で聞き取れなかったが。女子トークってやつか?
「一花遅いぞ!今から勉強始めるぞ!」
「ごめん、フータロー君。今日は撮影入ってるからパスね」
「意外と忙しいんだなー、女優って」
「あのオーディション以来、仕事が軌道に乗ってるんだ。人気者は辛いね~」
ハッ!まだ駆け出しでしょーが。心の中でツッコミを入れた瞬間、一花のスマホから着信音が鳴る。
「あー、ヤバ………ごめん、三玖。林間学校の決め事がまだあったみたいで呼び出されちゃった。私は仕事に行かなくちゃいけないからいつもの頼んで良い?」
「うん。フータロー、ウィッグ借りるね?」
「あ、ああ………」
いつもの…………?
「何で上杉もついて来てるんだよ!」
「お前がついて来たんだろうが!
四葉には『しおりを熟読しといてー』と課題(?)を出して、『いつもの』が気になった男2人で三玖の後を追跡なう。
「あ、トイレに入った……………と、思ったらすぐに出てきた…………んん?一花!?」
「違うな、火野。あれは三玖が変装した一花だ」
「…………なるほど。そうして事を済ませようと言う魂胆か」
……………しかし。俺が見たり読んできたアニメやラノベでも、嘘をついた奴は大抵痛いしっぺ返しを喰っていると言う法則がある。大丈夫かね…………?
そんな不安とは裏腹に一花姉さん、もとい俺のクラスの教室に一花(三玖)が入る。
「な、中野さん。来てくれてありがとう」
この声は………前田だっけ。あんまり俺と絡みはないけど。
「えーっと、他の皆は?」
「わ、悪い………君に来て貰う為に嘘をついた」
ほぉ?……………にしても、三玖は演技うまいなぁ。今だけはcv.伊藤〇来じゃなくてcv.花澤〇菜に聞こえる。
「そ、それでですね…………お、俺とキャンプーファイヤーで踊って下さい!」
「私と?何で?」
「それは…………好きだからです」
なんと!告白キタァ!!その瞬間を立ち会ってしまったよ、我々。かなりレアじゃね?
「あ、ありがとう。返事はまた今度に」
「今答えが聞きたい!」
「えっ………まだ悩んでるから」
「じゃあ、可能性はあるんですね?」
「えっと……………」
「やれやれ、時間を無駄にしたな…………俺は先に戻って四葉をしごいてるわ。お前も早めに戻ってこいよ」
「えー、見ていかないの?まぁ、良いや」
と言うわけで、上杉離脱。俺は残ってこっそり見守っていると、案の定不安は的中した。
「おっ?…………中野さん、雰囲気変わりました?」
「「!」」
「髪…………いや、なんだろ…………そう言えば、中野さんって五つ子でしたよね。もしや………」
………………どうやら、残って正解だったらしい。そう心の中で呟いて俺も教室へ足を踏み入れた。
「ここにいたか、一花姉さん」
「そ、ソウゴ……君?」
「4人が探してたぜ。早く行って来いよ」
「おいコラ火野。何勝手に登場してんだよコラ。つーか、気安く中野さんを下の名前で呼んでんじゃねーぞコラ。………お、俺も名前で呼んでいいのかコラ」
「それは自分で決めろっての…………告白されれば動揺する人もいるでしょーが。返事くらい待ってやるのがハードボイルドってもんだろ」
「は、ハード……なんだ?」
…………どうやらハードボイルド知らないらしい。ただの知識不足のようだ。
「つーか、お前関係ないだろ!」
「ところがぎっちょん、大アリだね!」
「お、落ち着いて!」
「一…………中野さん。邪魔者をすぐ片付けるんで暫しお待ちを」
「ほーう?この東方不敗に勝負と来たか。良いだろう、この右手から放たれる爆熱ゴッドフィンガーを見せてやろう………!」
「上等だコラ!」
「ま、待って!」
ガン〇ムファイト、レディーゴー!しそうになった瞬間に一花(三玖)が間に入り、思いもよらぬ事を口にした。
「わ、私…………この人と踊る約束してるから!」
「(ファッ!?)」
「あ」
反応を見る限り、どうやら咄嗟に言ってしまったらしい。
「嘘だ!こんな奴が中野さんに釣り合う訳がない!」
「ぶっ飛ばすぞ」
「そ、そんなことない!………そ、ソウゴ君は………カッコいいよ………」
「つ、付き合ってるんですか………?」
…………えーい、ままよ!
「そ、そうなんですよねー。実は我々そう言うラブラブな関係にありまして。ねー?」
「う、うん!それじゃ、仲良くラブラブ帰ろうねー!」
ふー……………これだけ言えばもう引き下がるだろ。
と、思いきや
「ま、待て!恋人なら…………手を繋いで帰れるだろ」
うっ…………そう来たか……………。
「(嫌だったら後で謝るから今は許してねー……)そんなの当たり前だよなぁ?」
「!……………えっと、その…………とにかく、はじめてじゃないから…………本当にごめんね」
「…………くそー!林間学校までに彼女作りたかったのにー!」
ふー……………漸く諦めてくれたようで何よりだ。にしても、ヤバい………三玖と手を繋いじゃってるよォォォォォォ!!幸福感と嫌がってないかどうかの不安で心拍数が限界突破しそう~~~~~~~~!!
「あの………私が聞くのも変だけど、何で好きな人に告白しようと思ったの?」
「中野さんがそれを言うか…………そーだな。好きな人を独り占めにしたい、に尽きるな」
……………ああ、そりゃそうだな。俺も手を握ってる彼女を独り占めしたいわ。
「ったく、中野さんを困らせんじゃねーぞ」
「アッ、ハイ」
「ソウゴ君、行くよ」
ファッ!?そんなにくっつくとナニがとは言わないが当たってる!!当たってるから!!し………鎮まれ、俺のビースト………………!
教室を出て人目につかない所に着くと、俺も変装を解除した三玖も壁に寄りかかって座り込む。
「「つ……疲れた………」」
両者ともにこの感想である。
「………ソウゴ、ありがとう。来てくれなかったら危なかったかも………」
「良いってことよ………………それよりも、良いのか?勝手に一花姉さんと踊る約束しちゃったけど………三玖が一花姉さんに変装して踊るか?」
「!………い、いいよ。私が言っておくから、本物の一花と踊って(…………私は大丈夫)」
「(………結ばれる伝説………三玖や上杉も非現実的とか言ってたし…………)そっか。三玖がそう言うならものほんと踊るとしよう」
そして遂に林間学校前日
「よー、上杉。今何やってんの?」
『今は一花達に連れられて服を買ってた所だ。奢ってくれるらしい』
「へー、気前の良い事で。いいか、明日は絶対来いよ。お前が最初に驚かせた後に俺が驚かす手筈なんだからな。勉強したいとかでサボったら許さんぞ。引きずってでも連れて行くからな!」
『分かった分かった!さっき四葉にもうるさく言われた所なんだ。ちゃんと行く』
「そうか、それなら良いんだ」
マジで『勉強したいから林間学校休むわ』とか言いかねないからな、この勉強大好き男は。これくらい言っておけば大丈夫か。
「じゃ、また明日なペ〇ルギウス」
「だから誰だそいブチッ」
通話終了。
「頼んでいたものもAm〇zonから届いて準備万端!オラ、ワクワクすっぞ!早く明日にならないかな~!」
そんな楽しみでワクワクしている俺氏は────
「……………もしもし。………え?らいはが倒れた!?」
────上杉にそんな一報が届いた事を知らない。
to be continue………
選手権結果:五月が優勝を決められずドロー
総悟「命拾いしたようだが、次は俺が勝つ」
二乃「いいえ、勝つのは私よ。じゃ、次はカニクリームコロッケをどちらが美味しく作れるかで良いかしら?」
総悟「望むところや!」
上杉「何でコロッケに拘る…………?」
本日もありがとうございました!