三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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今日は………………特にないんで前書きはパスよー。


勤労感謝ツアー 風太郎の場合

AM10:10

 

「ふふふ、今日は休日!勉強せずして何をすると言うのだ!」

 

そう呟くのはキング・オブ・ガリ勉の上杉しかいない。

 

「もー、お兄ちゃんたら。折角の勤労感謝の日なのに、勿体ないよ。あ、クレープの試作品第1号が出来たけど食べる?」

 

「おお、サンキュ。………うん、うまいな!」

 

まぁ、この男は貧乏舌なので『うまいな!』の言葉がいまいち信用性に欠けるのだがそれはさておき。

 

「…………そうだ、らいは。いつも働いてくれてるお前に贈り物を作ったんだ。ミサンガのお礼も兼ねてな」

 

「プレゼント!?なになに?」

 

「自作ですと、マフラーとかでしょうか?」

 

「いや、俺にそこまでの裁縫能力はないですから……………これだ!『ガチで見やすいテスト対策問題集!』」

 

「いらない」

 

「ほあーっ!?」

 

差し出して1.4秒で受け取り拒否。流石の上杉も若干落ち込む。

 

「別に私は働いてるつもりはないからいいけど、それよりも四葉さんにお礼をしてきなよ」

 

「四葉?何でだ?」

 

解せぬとでも言いたげな表情の兄に妹は長いため息をついてから喋り出す。

 

「お土産話によれば、林間学校は四葉さんにスキーを教えて貰ったりとか色々とお世話になったんでしょ?」

 

「………た、確かに………肝試しも担当じゃないのに手伝ってくれたしな…………」

 

「だったら、お礼の1つもあってもいいんじゃない?」

 

「し、しかし……」

 

「まぁ、お兄ちゃんに四葉さんへの感謝の気持ちがないなら良いけどね」

 

良心に刺さる言葉がトドメとなり、上杉は財布を持ってきて中身を確認する。

 

「財布の中は1652円…………これであいつが喜びそうな贈り物か……………」

 

何を送るのが良いのか上杉が考え込んでいると、突然家のチャイムが鳴る。らいはが玄関をあけると、そこにいたのは────

 

「やっはろー」

 

「あ、火野さんだー!お兄ちゃんに用事ですか?」

 

「兄貴じゃなくて星奈さんに用事があってな。あがらせて貰っても良いか?」

 

らいはは勿論快諾し、総悟は上杉宅にお邪魔する。

 

「総悟様、どうかされたのですか?私に用事と聞こえましたが……………?」

 

「えー………星奈さんにはいつも色々とお世話になっているので、その感謝の意を込めてこれをどうぞ、と思いまして」

 

「!………これは私のお気に入り作家の新作ですね。とても嬉しいです。ありがとうございます、総悟様」

 

「いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます。………良かったー、喜んでくれて。上杉は日頃お世話になってるらいはちゃんに何か渡したか?」

 

「…………これだ。即座に返品されたが」

 

「………そりゃそうだわな。誰が感謝の印にこれを渡されて喜ぶんや」

 

「うっ………そ、そうだ。火野、四葉が喜びそうなものを知らないか?」

 

これ以上、傷に塩を塗り込まれるのはごめんな上杉は話題転換も兼ねて総悟にそう尋ねる。

 

「四葉?何で急にそんなことを?」

 

「………実は─────」

 

上杉は包み隠さず全てを話す。

 

「なーるほど………そう言えばお前が入院してる最中にだな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それは家庭教師がお休みの日。5人用の課題プリントを作成し終わり、気分転換がてら総悟は最寄りのデパートに出掛けていた。

 

「秋と言えば食欲の秋…………秋が旬の食材が色々と揃ってんなー」

 

何気なく食品売場をぶらつく総悟。果物のコーナーを通り掛かると、袋詰めされているある果物が総悟の視界に映った。

 

「お、みかんだ。ラスト1袋か。旬は冬だからこいつは早生か。12個入りで600円…………美味しそうだし買うかー」

 

総悟が買おうとみかんの袋を掴んだ瞬間、同じタイミングで横から袋を掴む手が。その手の人物は──────

 

「火野さん……?」

 

「四葉……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

「そん時に四葉がみかん好きって聞いたんだよねー。見た目的にみかんに親近感があるらしいぞ。ちなみに、この後お金を半分ずつ出しあって買って、互いに6個ずつ持ち帰った」

 

「なるほど、みかんか………よし、安いのを買ってくる」

 

「おっ、待てい(江戸っ子)」

 

財布を持って出て行こうとする上杉の服の首もとを掴んで止める。

 

「何だよ火野。言っておくが、俺の財力的にそんなに高いのは」

 

「まぁ、話を聞け。そんなに金も掛からず、ただ買うよりももっと良い案がある。えーっと、確か…………あった」

 

総悟はスマホに表示されているとあるHPを表示

する。上杉だけでなく、らいはと星奈もその画面を見る。

 

「………これは………」

 

「これ良いと思うよお兄ちゃん!絶対楽しいし、四葉さんも喜ぶよ!」

 

「ただみかんを買うよりも、下手すればこちらの方が金銭的にお得だと思いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

「え………?みかん狩りに行かないか、ですか…………?」

 

目をぱちくりさせながら、四葉は上杉の口から飛びだした提案を動揺しながら復唱した。

 

「や、やっぱり風邪が治ってないんじゃ…………」

 

「治ってるわ!……………今日は勤労感謝の日だろ?四葉には林間学校で肝試しの手伝いをして貰ったからそのお礼に、と思っただけだ」

 

………手伝って貰ったんだからお礼をするのが当たり前だろ的な感じで言っているが、実際は妹に言われて動き出しただけである。

 

「それで、行くのか?行かないのか?行かないなら俺は帰って勉強するが(……帰ったら帰ったでらいはに色々と小言を言われるんだろうが………)」

 

「わー、行きます行きます!今から身支度してきます!」

 

「駅から出てる無料のシャトルバスが30分後に発車らしいから、さっさと済ませてこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四葉の身支度が終わり、2人は駅から出ている無料のシャトルバスに揺られること30分。目的地に到着した。

 

「想像してたよりもでかい果樹園だな…………もっと小さいのかと思ってたが」

 

「上杉さん、ぼーっとしてないで早くみかん狩りしましょうよ!みかんが私を呼んでいます!」

 

「分かったから引っ張るなっての!」

 

上杉は四葉と自分の分の計800円を支払って入園。これで園内のみかんは食べ放題である。さらに貰ったビニール袋に入る分は持って帰っても良いらしい。

 

「(やれやれ………折角天気も良くて、しかも休日で勉強し放題だってのに…………)」

 

「さぁ、上杉さん!今日はみかんを沢山収穫し、食べまくって元を取りますよ!」

 

そう言いながら笑みを浮かべる四葉。上杉は一瞬その笑顔が京都で出会ったあの子に重なって見えた─────ような気がした。

 

「(………未練がましいぞ、俺…………いい加減折り合いをつけろってんだ。京都で出会った子はあいつらの中には………………。折角勉強日和の休日だが、あいつが楽しそうな事に免じて良しとするか)」

 

そう結論付けて上杉は借りたハサミで茎を切って収穫したみかんの皮を剥いて、口に入れる。

 

「どうですか、上杉さん?自分で収穫したみかんのお味は」

 

「甘くてふつーに美味いな」

 

「どれどれ…………うーん、少し酸っぱくないですか?私のと比べてみて下さい!」

 

「モグモグ…………そんなに変わるか?」

 

「……そう言えば上杉さんは味音痴でしたね…………折角ですし、私が美味しいみかんの見分ける4つのポイントを教えて差し上げましょう!題して『四葉の美味しいみかんの見分け方講座』です!」

 

と、言う訳で突然四葉によるみかん講義が開始された。

 

「1つ目のポイントは色ですね。色がオレンジのものは完熟していますが、黄色とか黄緑のはまだ熟しておらず酸っぱい可能性がありますのでスルーしましょう!」

 

「…………じゃあ、こいつはスルーか」

 

「そうですね、このみかんはまだ収穫には早いでしょう。さて、2つ目のポイントは形です。品種によっては異なりますが、基本的にみかんは横から見て平らなのが美味しいらしいですよ!理由は知りませんが」

 

「知らないのかよ」

 

「3つ目のポイントはみかんの皮の表面のぶつぶつです!このぶつぶつが小さい方が美味しいそうです!何でかは知りませんが」

 

「そうだと思った」

 

「4つ目のポイントは軸の細さです。この軸が細ければ細いほど甘くて美味しいそうですよ!逆に太いと甘さが下がるそうです。何ででしょうね?」

 

「……………俺も知らないが、たぶん太いと水分が多く送られるから甘さが薄まって、細いと逆に甘さが濃くなるんじゃないのか?」

 

「そうなんですか?流石は上杉さんです!」

 

ちなみに、上杉はこれまで勉強した知識を元に何となくの予想で言っているが何気に正解だったりする。

 

と、言う訳で上杉は四葉から習った4つのポイントを元に収穫したみかんを食べてみると─────。

 

「…………確かにさっきのよりも甘い気がするな」

 

「ししし!講座の効果は絶大ですね!誉めてくれても良いんですよ?」

 

そう言って四葉は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、2人はみかんを堪能しつつ持って帰る分のみかんも収穫していた。

 

「ふぅ…………かなり収穫したが、50個以上は取ったか?らいはと親父が食い過ぎに注意すれば2、3週間は持つな。……しかし…………重い…………」

 

上杉の袋の重量は約5kg。物で例えるならスイカ1個分の重さである。収穫中は地面に置いていたが、いざ持つとなると運動不足で筋力のない上杉にとってはかなり肉体的にキツい。

 

「お待たせしました、上杉さん。ついつい選ぶのに時間が掛かってしまってすみません」

 

四葉も上杉と同じ位パンパンにつまっていて、重量もさして変わらないのだが余裕そうに片手で袋を持っていた。

 

「上杉さん、腕がプルプル震えてますけど大丈夫ですか?私が代わりに持ちますよ?」

 

「………だ、大丈夫だ………これ位何とも………」

 

男の意地故か、上杉は両手で袋を持って足を踏み出す。だが、意地だけではどうにもならず数歩ですぐに袋を下ろしてしまう。

 

「えっと……やっぱり持ちますね」

 

「………お願いします……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

停留場に着くがそこにバスの姿はなく、時刻表を見ると次のバスは30分後だった。すると、果樹園のスタッフが『みかんは預かってるからバスの時間まで近くをぶらりとしてな』と心遣いを貰ったので、上杉と四葉は果樹園の近くをぶらりと歩いていた。

 

「いやー、それにしても自然豊かだからか空気が美味しいですね!」

 

「確かに、こんな環境で勉強したらはかどりそうだな」

 

「何でも勉強に繋げるあたり、上杉さんらしいですね……………あ、小さいですけど公園がありますね。ブランコもありますし、少し乗って行きませんか?」

 

「ブランコなんて久々に見たな………まぁ、良いか。暇潰しにもなるだろう」

 

上杉はブランコを立ち漕ぎをしながら四葉の方を向く。

 

「(何か……良い庶民感だな) 久々だけど結構行けるな。凄いだろ、四葉!」

 

「もー、子供みたいに。私がお手本を見せてあげましょう!」

 

四葉も立ち漕ぎを始める。上杉と同じかそれ以上のスピードてブランコを揺らし、そして勢いよくブランコからジャンプして着地する。

 

「あまり広くないので本気では飛べませんが、こんな感じですかね。たまに行く公園のブランコなら本気で行けるのですが」

 

「たまに行く公園?」

 

「落ち込んだりした時はそこの公園に来てブランコでギコギコしたりしてるんです。勢いよく漕ぐと心暖かくなるほっこりした景色が見れるんですよ。……さぁ、上杉さんはここまでジャンプして来れますか?」

 

「………フッ、俺を舐めて貰っては困る。うおぉぉぉ!」

 

さらに勢いよく漕ぎ始める上杉。そして次の瞬間、四葉の側に着地する音がして、四葉が顔を向けると─────

 

「え」

 

─────靴のみがそこにはあった。当の上杉は勢いをつけすぎたのかブランコのてっぺんを通って1週。その後、激しく揺れる。四葉は上杉のブランコの勢いが落ち着くまで言葉が出なかった。

 

「…………ハッ!う、上杉さん大丈夫ですか…?」

 

「……ハッ、ハハハハハ!何が起きたんだよ!ハハハハハ!」

 

無邪気な子供のような笑みを浮かべる上杉。それは今日見せた中でも、100点満点の笑顔だった。

 

「────そう言えば、まだお礼を言ってませんでしたね。上杉さん、今日は楽しい思い出をありがとうございました」

 

「お、おう……みかん狩りを楽しんでくれたなら俺としても来た甲斐があったってもんだ」

 

「みかん狩りも勿論そうですが………今も思い出(上杉さんの笑顔)を貰いました」

 

「?そう、なのか…………?」

 

上杉はいまいち分かっていなそうだったが、気にせずに微笑を浮かべながら四葉は雲のない青い空を見上げる。

 

「またみかん狩りに来ましょうね。今度は皆も一緒に!」

 

「……………ま、それも悪くないな。だが、五月と火野が来たら園内のみかんが全部食べ尽くされそうだな。火野の奴も意外と食うし」

 

「……ぷっ。あははは!」

 

2人によってみかんが食べ尽くされる光景を想像した四葉は吹き出して笑う。四葉の顔に浮かぶ笑顔は先程上杉が見せたものと同じように100点満点の笑顔だった。

 

to be continue………




この話を書こうと思った切っ掛けは作者も四葉と同じくみかん好きだってのも理由の1つにあります。ちなみに、みかん狩りには行ったことないので色々と調べたりしました。意外と大変だった………。

本日もこんな駄文を読んでいただき、ありがとうございました。
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