三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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お 待 た せ

最終話放送後に投稿だよーん。



7つのさよなら その1

「…………遅いですね」

 

五月は玄関前で正座待機をしていた。今日は家庭教師の日なのだが、その家庭教師の2人が何故か時間になっても来ないのだ。

 

「折角皆集まっていると言うのに、一体何をしているのでしょうか…………?」

 

五月は玄関の扉を開けてマンションの廊下を覗く。そして彼女が見たのは──────

 

「………おや、タイミングが良いですね」

 

「あなたは…………星奈さん、でしたよね?」

 

「ええ。五月さんとは祭り以来ですね。…………ああ、そうでした。寝ている教師のお届けものです」

 

そう言って星奈は両手で抱えている男2人(総悟と風太郎)を差し出した。取り敢えず反応に困ったが、五月は星奈を中に入れて2人は床に置く。

 

「し、死んだように寝てますね…………」

 

「揺らしたりしても起きないので仕方なく担いでここまで走ってきました」

 

「………そ、それは凄いですね」

 

五月の頭の中で星奈が2人を米俵のように担いでい疾走する姿が浮かぶ。

 

「この2人は夜更かしでもしたのですか?」

 

「ええ。これを徹夜で作ってました」

 

星奈は上杉の背負っているバックからとんでもない厚さの紙の束を五月に渡す。

 

「…………こ、これは………」

 

「今回のテスト範囲をカバーした問題集だそうで。今日の課題が終わったら取り組んで貰うとか昨日言っていましたね。これを解けばかなりレベルアップするそうですよ」

 

「……………………」

 

「……………流石に多すぎて受け取りたくないとか思ってません?」

 

「!?」

 

「顔に出てます」

 

図星を付かれて驚く五月に星奈はスマホでとある動画を何枚か見せる。

 

「!………これは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~……………良く寝たぁ……………って!?何でマンションにいんの!?」

 

まさか、ついに孫〇空みたく瞬間移動を身に付け

 

「私が運んだのですよ、総悟様。揺すっても起きないので取り敢えず必要そうな物を詰め込んでここに運んできた次第です」

 

「……………ああ、そう言うことですか…………迷惑を掛けてすみません」

 

「いえいえ、この位良いんですよ。それよりも、いい加減上杉君を起こした方が良いのでは?」

 

「おお、そうですな……………グッドモーニング、起きろ上杉!!」

 

「…………んだよ、耳元で騒がしいな……………って!?何でマンションにいるんだ!?」

 

おい、俺と台詞が大分被ってんな。そう思いながら説明すると上杉も星奈さんに一言お礼を言った後にため息をつく。

 

「にしても…………貴重な時間を失っちまったな。俺らいつまで起きてたんだ?」

 

「取り敢えず4時までは起きてた事を覚えてるんだが」

 

「よくそんな夜遅くまで…………いえ、朝までやりますね」

 

「まーね」

 

「お前達だけにやらせるのもフェアじゃないからな。俺達が『お手本』にならないとな」

 

「…『お手本』……………」

 

「よーし、じゃあカテキョをやるか。今日の俺は一味違うぜ。睡眠不足ですぐぶちギレる気がするZE☆」

 

「も、揉め事は起こさないで下さいね?時間は限られているんですから、皆仲良く協力し合いましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リモコンを渡しなさい!今やってるバラエティに好きな俳優が出てるの!」

 

「この時間はドキュメンタリーがやってる。しかも今日は戦国武将の特集なの!」

 

仲良くしようと五月が言った矢先、二乃と三玖の間でリモコンの争奪戦争が繰り広げられてんだけど………。

 

「この2人はよく喧嘩するな………」

 

「まぁ、でも喧嘩する程仲が良いとも言うからね。取り敢えず、平和的にささっと俺が止めてくるわ…………おーい、やめろ2人とも!喧嘩すな!」

 

俺は2人の間に割って入る。

 

「まー、落ち着け。2人の言い分は分かった。そこでだ……………バラエティとドキュメンタリーの間をとってアニメを見ると言うのはどうかな?」

 

第3勢力(アニメ派)として参戦してるんじゃねぇ!こいつに任せた俺が馬鹿だった!勉強中はテレビは消しまーす!」

 

あ、上杉がリモコンを取り上げてテレビを消しやがった!

 

「もー、上杉。折角俺がシリアスな空気を破壊しようとしたのにぃ」

 

「いや、全然破壊できてないんだが!」

 

ほんとだ、まだバチバチしてる。

 

「一花姉さんよー。あの2人って仲悪いのか?」

 

「まぁ、犬猿の仲って感じかな?特に二乃は繊細な子だから、結構衝突が多いんだよね」

 

へー………………。

 

「はーい、皆再開するよ。それじゃあ、ソウゴ君、フータロー君。これから1週間、私達の事をお願いします」

 

「ああ。リベンジマッチだ」

 

「いっちょやってみっか(悟〇風)」

 

口調とは裏腹に何事もなければ良いんだけどなー……なんて不安を俺は抱えていた。そして、その不安はすぐに的中することを俺はすぐに知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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星奈も『面白そうなので見ていたい』と言うわけで少し離れた所で見学。見ているだけなので何をしようが特に口出すつもりはないと言うことなので、二乃も渋々と言った表情で黙認していた。

 

さて、開始から10分。早速また二乃と三玖の間で諍いが発生した。

 

「ちょっと、それ私の消しゴムよ!」

 

「借りただけ………………あ、それ私のジュース」

 

「借りただけよ…………って、まずっ!」

 

生憎、三玖のジュースは抹茶ソーダだったので二乃の口には合わなかったようだ。

 

「まずいぞ、火野。このまま放置しておけば仲違いして赤点回避どころじゃなくなる……」

 

「それはよろしくないな…………どーすっかなー…………誰か、アイデアくんない?」

 

総悟のアイデア募集に真っ先に手を上げたのは四葉だった。

 

「きっと慣れてない勉強でカリカリしているんですよ!だから、良い気分に乗せてあげたら喧嘩も収まるはずです!」

 

「なるほど…………いっちょやってみ「待て火野。俺がやる」…………えぇ……(困惑)」

 

先程の1件が原因か、火野ではなく今度は上杉が作戦を実行することになった

 

「はっはっは!いやー、いいねぇ!」

 

「「?」」

 

「素晴らしい!」

 

「「…………」」

 

「いや、2人ともいい感じだね。なんというか凄く良いしっかりしてて………健康的で………うーん………偉い!」

 

「(誰か時を戻してー!俺の方が絶対上手くやれるからー!!)」

 

総悟の心の叫び通り時が戻る訳もなく、作戦は失敗に終わった。

 

「あえて厳しく当たることで2人にヘイトを集める『第3の勢「却下」……もー!せめて最後まで言わせてよー!」

 

「あはは…………(三玖に厳しく当たって嫌われでもしたらたまったもんじゃないっての…………)」

 

総悟の思惑もあって一花の作戦は却下された。

 

「五月は何かあるか?」

 

「そ、そうですね……………何も言わずに無言の圧力を掛けるのはどうでしょうか?そしたら2人も何かを察して喧嘩をせずに出来るかも…………」

 

「ふーむ………それなら上杉にでも出来るな。よし、やってみたら?」

 

「ああ」

 

と、言うわけで『無言作戦(総悟命名)』がスタート。

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「さっきから黙って何見てるのよ!」

 

無言の空間に耐えられず、二乃が叫ぶ。どうやらあまり効果はなかったようだ。

 

「あ、いや別に……………そ、それより課題は終わったか?」

 

「あんたに言われなくても、もう終わるところよ。ほら!」

 

「………………ん?ここ、テスト範囲じゃないぞ」

 

「あれぇ!?やば…………」

 

「二乃。やるからには真面目にやって」

 

「っ………こんな退屈な事なんてやってらんないわ!部屋でやるから放っておいて!」

 

10分も持たず、早速1名離脱。

 

「くそっ、セットが1つ無駄になった…………」

 

「…………いやいや、俺らこれを作るのにどんどけ時間使ったと思ってんねん!こんな所で離脱されてたまるかっての!」

 

「火野君の言う通り、まだ諦めないでください。頼りにしてますから」

 

五月の応援も受けて、総悟と風太郎は階段を上っている二乃に説得を試みる。

 

「ちょ、待てよ二乃!まだ始めて10分も経ってない。アニメで言えばAパートも終わってない」

 

「どんな例えだよ…………だが、火野の言う通りまだ始まったばかりだ。もう少し残ってくれよ」

 

「……………………」

 

総悟と風太郎の言葉に二乃は何も言わない。

 

「ただでさえお前は姉妹の中でも出遅れてるんだ(・・・・・・・・・・・・・)。しっかり勉強して追い付こうぜ?」

 

─────無論、上杉に悪気はない。色々とされた身ではあるが、意地悪をしたかった訳でもない。だが、彼の発言は彼女の地雷をしっかりと踏んでいた。二乃の表情は冷徹なものに変わる。

 

「うるさいわね、何も知らない部外者のくせに。あんたらみたいな雇われの家庭教師にとやかく言われる筋合いはないわ!」

 

「……………二乃」

 

そこへ割って入ったのは三玖。その手には彼等が作った問題集が。

 

「これ、ソウゴとフータローが私達のために作ってくれた問題集。受け取って」

 

「……問題集作ったくらいで何だってのよ。そんなの、いらないわ!」

 

二乃は三玖の手を振り払う。その拍子に三玖の手から階段にパラパラと落ちる。黙って見ていた星奈も流石にその行為を不快に思ったようで眉をひそめると同時に自分の主の方を見る。恐らく彼女の主も思うところはあったに違いないが、それでも何も言葉には出さなかった。

 

「ね、ねぇ………2人とも落ち着こ?」

 

「そうだ、お前ら」

 

「二乃」

 

仲裁に入ろうとする一花と風太郎を遮って三玖は二乃の名前を呼ぶ。

 

「…………拾って」

 

静かながら明らかに怒気の含まれた三玖の声と蔑むような視線を感じ取った二乃は怒りの余り────

 

「こんな紙切れに騙されてんじゃないわよ…………今日だって遅刻したじゃない!こんなもの渡して………いい加減なのよ!それで教えてるつもりなら大間違いだわ!」

 

────拾った1枚の問題集を破り捨てた。

 

「……………おい」

 

ここで漸く総悟が一言だけ発する。その一言だけで近くにいた風太郎と星奈も総悟が完全にキレているのにすぐに気が付いた。最も、キレているのは総悟だけでなく隣の彼女(三玖)もだったが。

 

「(…………………まずい予感しかしないですね…………)」

 

「(このままだとこいつらの仲が修復不可能になる………!)」

 

風太郎は三玖と総悟の間に割って入ろうとし、星奈も止めようと小走りで近付こうとしたその時だった。

 

──────パチン!

 

乾いた音がリビングに流れた。

 

「二乃。謝って下さい」

 

その音とは五月が二乃にビンタした音だった。キレていた総悟と三玖も五月の行動に思わず毒気が抜かれたようで驚愕の表情を浮かべていた。

 

「………………ッ!」

 

二乃も呆然としていたが、すぐに怒りの表情を露にして五月と同じようにビンタを─────

 

「!」

 

「……………」

 

─────寸前で星奈が無言で二乃の腕を掴んで止めていた。星奈の力は強く、びくともしなかった。不本意ながら二乃はビンタをしようとした手を下ろし、その代わりに口を開く。

 

「五月、あんた………!」

 

「この問題集は火野君と上杉君が私達の為に作ってくれたものです。粗末に扱っていいものではありません。彼らに謝罪を」

 

「………まんまとこいつらの口車に乗せられたってわけね。そんな紙切れに熱くなっちゃって。いつの間にこいつらの味方になったのやら」

 

「………………星奈さん。申し訳ありませんが、二乃にあの動画を見せていただけませんか?」

 

「………………」

 

星奈は無言でスマホを取り出して操作すると、二乃に画面を向けて再生する。

 

「…………!」

 

画面に映っているのは総悟の家にある大量の参考書に囲まれた上杉と総悟。映像と同時に音声も流れ出す。

 

『おい、火野。二乃の問題集の英語の問題はこんな感じで良いんじゃないのか?』

 

『どれどれ…………んー、二乃は英語のここら辺のは多分出来るからカットして良いと思うよ。あ、でも他の姉妹のはカットすんなよ』

 

『分かった…………お、この参考書の数学の問題はかなり良いんじゃないのか?』

 

『………ああ^~いいっすね^~。よし、その問題も追加しておくか。あー、でも一花姉さんは案外すんなり解けそうだから、姉さんだけこっちの似た系統のもう少し難し目のやつを選ぶとすっかなー』

 

ここで動画は終わった。

 

「………呆れました。この問題集、私達ひとりひとり問題が違うんです」

 

「「「「!!」」」」

 

五月の言葉を受けて、一花と四葉は渡された問題集の1枚目の数学の問題を見てみると────。

 

「……あ………ほんとだ………」

 

「………私と四葉の数学の問題、問1から既に違ってる……」

 

四葉の方は基礎系の、一花の方は少しばかりの応用力が試される問題から始まっていた。無論、他の科目も同様に1人1人問題が彼女等の実力に合わせて微妙に違っているのは言うまでもない。

 

ここで漸く星奈が二乃に向けて口を開く。

 

「…………二乃さん。あなたが寝ている間も彼等は眠い眼をこすりながらこの問題集を作っていたのです────他でもない、あなた達の為に。その問題集を破り捨てるのが作った彼等に対して最大の侮辱であることが、あなたにも分かるでしょう?」

 

「…………………」

 

言葉の端々に怒りが滲んでいながらも冷静に諭す星奈に二乃は何も言わない────否、言い返せない。

 

「二乃。私達も彼等に負けないように真剣に取り組むべきです。彼等が自分達の時間を私達の為に費やして、ここまでしてくれたのですから」

 

「…………………」

 

二乃はチラリと姉妹の方を見る。自分の事を擁護でもして貰いたかったのかもしれないが────

 

「二乃…………」

 

「いい加減受け入れて」

 

─────二乃に注がれる視線は困惑や心配、そして責めるようなものだけ。姉妹達からすらも擁護は何もない。

 

この空間に二乃の味方は誰もいなかった。

 

「…………分かったわ。私よりこいつらを選ぶってわけね………いいわ。こんな家、出て行ってやるわ!!」

 

二乃による緊急家出宣言が発令された。

 

「冷静になれ、二乃」

 

「いや…………何も家出まですることは無いだろ………」

 

「そうです、そんなの誰も得しません!」

 

「損とか得とか、そんなの知ったことじゃないわ。それに、これは前から考えてた事なのよ」

 

風太郎、総悟、五月が順に説得するが二乃は聞かない。

 

「こんなのお母さんが悲しみます!」

 

「…………いつまでも未練がましくその演技を続けるのはやめなさい!あんたはお母さんじゃないのよ!」

 

「(…お母さん…………)」

 

総悟が心の中で呟くなか、一花や四葉も仲裁に入る。

 

「二乃、早まらないで」

 

「そ、そうだよ!話し合おうよ!」

 

「話し合う必要なんてないわ。先に手を出したのはあっちよ。あんなドメスティックバイオレンス肉まんおばけなんかと一緒にいられるわけないわ!」

 

大食いの五月にとってその暴言はクリティカルヒット。怒りの余り、りんごの如く顔を真っ赤にさせる。

 

「そ……………そんなに邪魔なら、私が出ていきます!!それに肉まんおばけとは失礼な!!五人の体重も五等分ですよ!?」

 

「五等分ですって?誤魔化してるくせに何言ってるのよ。いいわ、この際だから言ってやるわよ。あんたの本当の体重は「わー!!わー!!」」

 

五月は大声を出してネタバレキャンセル。その後、2人は言い争いを始めてしまい、もう誰にも手を負えなくなってしまった。

 

「ど、どうしたら…………」

 

「なんだよこの展開………」

 

結局その後、今日はもう勉強どころではないのと2人がいてもどうにもならないので星奈と共に3人で帰る事に。帰路につく彼等の間に会話は殆ど無く、重苦しい雰囲気だけが広がっていた─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟は家に帰るとすぐに部屋に籠ってしまう。この件で落ち込んでいるのではないかと思った星奈は部屋をこっそり覗いてみるが、当の総悟は寝不足でただ寝ているだけだった。一先ずホッとして星奈は扉を閉じる。

 

「……まさか、あんなことになるとは……………本当に家出する事態にならなければ良いのですが…………」

 

────星奈の懸念はすぐに的中することになるのを、総悟はまだ知らない。

 

to be continue………




そう言えばシンエヴァンゲリオン見てきました。ネタバレ無しで言うと……………………何か色々と凄かった(小並感)

僕は新劇場版からエヴァンゲリオンを見始めた男なんですよね。ちなみに、エヴァのパイロットの中でも綾波とマリが特に好きです。

この駄文を読んでいただきありがとうございました。……………………ん?Fate HFの再上映だって?行くしかないっしょー!!Foo!!

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