では、どうぞー。
かくして無事に懸念事項は全部解決。一行はマンションに戻って来た。自宅の玄関に入る直前、四葉は廊下に何とも美しいジャパニーズ土下座をする。
「この度は、ご迷惑をおかけして」
「ぬわああああん疲れたもおおおおん」
こいついつも疲れてんな
「朝から大変だったね〜」
「早朝だったのでご飯を食べ損ねてしまいました」
…………誰か四葉に反応してさしあげろ。
「全ては私の不徳の致すところでして」
「飲み物以外にも買ってくればよかったな〜」
「今日は
「シェフ、何か高級なコース料理を作ってくんない?」
「姉妹の分だけなら良いわよ」
「は?(威圧)」
誰も四葉に対して反応しない。四葉は思春期症候群を患って誰からも見えてない可能性が微レ存………?取り敢えずバニーガール姿で藤沢の図書館をうろつこうか(悪魔の誘い)
「大変申し訳なく」
「その前に」
一花は最後尾の
「おかえり」
「「ただいま」」
2人はそう言った。だが、両者共に玄関から先に入ろうとしない。
「早く入りなさい」
「お先にどうぞ」
「じゃあ同時に入るわよ。せーの………」
「「………」」
─────────動かない。
「なんで動かないのよ!」
「二乃だって!」
「早く入って、どうぞ(迫真)」
「わぁ!?」
「ちょ、押さないでよ!」
めんどくさいので総悟が押して同着で家に入れさせた。
「久々に賑やか」
「うん。よーし、じゃあこのまま」
「問題解決を祝って夜までパーティーをやりますねぇ!(食い気味)」
「いや、試験勉強だろうが!!」
パーティーになりかけた所で上杉からのストッパーが入った。
「明後日から期末試験なのを忘れたか?全ての問題が解決したんだから、勉強に全振りだ。文句ある奴いるか?」
「も、もちろん、そう言おうとしてたよー」
「そういや試験をすっかり忘れてたわ。朝から色々あったからね、しょうがないね」
一同が話している中、空気の如く扱われている四葉は痺れを切らして顔を上げる。
「もー、皆聞いて」
「あ?いつまで気にしてんだ?早く入れ」
「じゃあ四葉が食事当番」
「おにぎりプリーズ」
「さっ行こ!」
「………うん!」
姉妹たちや教師達の優しさに少し涙を浮かべる四葉だが、拭ってすぐに家に入って行った。残念、バニーガールは永久にお預けかぁ。
「それで、何か言い訳はありますか?」
「……あ、ありません………………」
ソファに座っている私服姿の星奈さんの目の前では二乃が正座をしていると言う、何とも面白い光景が広がっていた。俺的には中々見れないであろう光景が見れて愉☆悦。
「言いましたよね?睡眠薬を盛るのは下手したら犯罪になると」
「は、はい…………」
何故こうなっているかと言うと、どうも二乃が上杉に対して睡眠薬を使ったのが如何なる経路かは不明だが(上杉は話してないらしい)星奈さんにバレて、一花姉さんに許可を取ってここで帰って来るのを待っていたらしい。星奈さんを認識した時の二乃の『ああ、死んだわこれ』的な絶望の表情は一生忘れられない思い出(?)になった。二乃本人も思い出になるかトラウマになるかはさておき一生忘れられないだろう。
「ほんとに話しを聞いてたんですか?散々お灸を据えたつもりだったのですがね」
「そ、その………騙されてた事が分かって怒りの余りすっかり忘れてて…………も、申し訳ありませんでした…………こ、今後は二度とやらないので…………」
「謝る相手は私じゃないと思うんですがね?」
二乃は上杉の方へ方向転換。そして頭を下げる。
「また睡眠薬使って………ご、ごめん…………」
「……お、おう………………ま、まぁ星奈さん。二乃を騙した俺も悪かった訳ですし、俺も全然ピンピンしてるんで……………」
「…………………………」
「そ、そのー………………これくらいで勘弁してあげては如何かと思うのですが………ど、どうでしょうか………」
「………………」
星奈さんの無言の圧故か声が小さくなる上杉。気持ちはすんごく分かる。
「………………はぁ」
星奈さんは小さく息をつくと、フッと場の空間を支配していた無言の圧力が跡形もなく消え去るのを感じた。
「………………まぁ、上杉君がそう言うのならば私からはもう言う事はありません。本人も今回はちゃんと反省しているようですし。もう次は無いですからね」
「!………………は、はい!」
少し離れた所で見守っていた姉妹たちも張りつめていた空気が漂う時間が終わって漸く安心したかのようにホッと息をつく。
「では私は帰りますね。この後、買ってきた本を読む予定があるので。………………あ、四葉さん。このおにぎりを1つ食べてもいいですか?美味しそうですね」
「勿論です!」
「………………あ、美味いですね。では、総悟様に上杉君。最後の追い込み、頑張ってくださいね」
「勿論です」
「はい」
「………………二乃さん」
「!?………………な、何ですか…………?」
「試験勉強、頑張ってください。勿論、他の皆さんも」
「「「「「…………はい!」」」」」
5人の揃った声を聞いて星奈さんは微笑を浮かべた後に去って行った。と言う訳で、腹も減ったしモグモグタイム開始。
「で、陸上部とはどうなった?」
「あの後ちゃんとお話しして、大会だけ協力してお別れする事にしました」
「大会も断ればよかったのに。まぁ、大会は期末試験後だから別に良いか」
あの部長、諦め悪そうな感じだしなー。
「また何か言われたら教えなさい。今度こそ教育してやるわ」
「あぁ^〜いいっすねぇ^〜。今度は徹底的にやりますかねぇ…………」
「SとSが手を組んでSSになってる…………」
面白いことを言うねー、三玖───────さて。本題に移ろうか。
「一花姉さん、三玖、五月の3人は問題集その2に取り掛かっていて、四葉と二乃はその1は終えてる、と。取り敢えずその1は全員終わってる訳だ」
「お前、いつの間にその2なんて作ってたのか…………………」
まーね。
「私達ちゃんとレベルアップしてるのかな?」
「元が村人レベルだからな。ようやくザコを倒せるようになったくらいだ」
つまり、スライムレベルが倒せるようになった訳か。だが、期末試験は中ボスレベルだからなぁ。この2日でどこまで経験値稼ぎをしてレベルアップ出来るかどうか。
「そこでだ。俺は秘策のチートアイテムを持ってきた………………カンニングペーパ!これがあれば
ファッ!?ちょっと、まずいですよ!
「あ、あなたはそんなことしないと思ってたのに…………」
「そんなことして点数取っても意味がないですよ!」
「なら、もっと勉強するしかない!カンペなんて使わなくてもいいようにこの2日でみっちり叩き込むぞ!覚悟しろ!」
…………なるほどな。5人のやる気を焚きつけるためのカンペだったわけか。
「……と、いう感じで進めていきますがよろしいでしょうか二乃様」
「えぇ…………(困惑) 何で家出少女その1にそんなことを聞く必要があるんですか(正論)」
「………………全くよ。今まで好き勝手にやってたくせに。今まで通り、そのまま好き勝手にやればいいじゃない。………………やるわよ。よろしく」
………………漸く5人揃った。ここに至るまで3か月。最初は四葉だけで、次に三玖、そして一花姉さんに五月……………最後に二乃。これで全員集合。ある意味、ここからがスタートラインだ。
「…………ふぅ」
「どうかしたの、ソウゴ?」
「いや…………ここまで長かったような短かったような気がするなー、って」
「………ふふっ。良かったね」
「ああ……………よーし、やりますかね上杉氏!」
「………………………」
「…………もしもーし?オートパイロット状態になってんぞー?」
「!……………悪い、少し考え事をしてた。………よし、やるか」
何を考えてたんだ?………まぁ、何でも良いや。じゃけん、さっさと教えましょうねー。
2日後の試験当日。五月は俺の親がもっと泊っていけとか言ったせいで結局土日も泊まっていった。特に泊る必要性はないのにねー。マイペアレントは五月を相当気に入ったらしい。
「火野君、これをご両親に渡しておいてくれませんか?諸々のお礼です」
「お金か……………あー、その事なんだけど。五月がこれを渡してくる事を父さんは予想していたらしくて、渡して来たら伝えるように言われてた伝言があってな」
「伝言、ですか?」
「『別に金はいらん。特に困ってないし。金の代わりにこれからも総悟と友人でいてくれれば、それでいい。今度は姉妹全員で遊びにでも泊りにでも来な。1週間、楽しかったぜい』だってよ………………でもまぁ、それとは別に俺個人への感謝って事でそのお金をくれてもええんやで?そしたらかなりの額をゲームに課金出来るしネ!」
「……………」
結局くれなかった。色々やってあげたのに、解せぬ。まぁ、どうせもうちょっとで給料とかお小遣いが入るから良いか。そう結論付ける頃には学校に到着。皆揃っていた。
「ついに試験当日かぁ………」
「土日にあれだけやったとは言え少し不安はあるわね……」
「やれることはやった。私達もソウゴとフータローも」
「あれ、上杉さんはどこに行ったんだろう?」
「らいはちゃんに電話ですって。さっきこっそり私の所に来て電話を借りてまで行ったのですから、今じゃなきゃいけない用事だったのでしょう」
へー、いつの間に。全然気付かなかったわー。何だろうね、らいはちゃんに用事って。今日のご飯はオムライスが良いとか?………まぁ、いいや。取り敢えず俺もテスト頑張るか。テストが終わったらペル〇ナ3の映画でも見るかなー。
「本日を持って家庭教師を退任させていただきます」
──────俺がそんな呑気な事を考えている裏で上杉がそんな決断をしていた事を知るのはもう少し先の話である。
to be continued………
今日もこの駄文を読んでいただき、圧倒的感謝ッ……………………!