三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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毎日投稿期間終了ー。タイトルを見て分かる通り、今回はリゼロの名シーンを盛大にパク……………………パロるゾ。あとはエヴァの台詞もちょいとね。

ではでは、どうぞー。


─────ゼロから

試験から4日後、結果が返却された。隣の一花姉さんのを他の姉妹よりも先行公開で見せてもらうと、赤点回避(30点以上)出来ていた科目は3つ。前回は回避出来てたのは数学だけだったので中々の進歩だと思う。

 

「数学にソウゴ君の問題集その2に出てきてた問題とほぼ同じのが何個あったのに気付いたときは内心しめしめと笑っちゃったよー」

 

「俺も解いてる時、『あ、これ俺がその2で出したやつやん!出来てると良いなー』なんて考えてたんだよねー」

 

いやー、解けてて良かった。一花姉さんの場合、後は国語と社会科目か。まぁ、これもあと数点なので次の試験では全科目回避は出来る希ガス。

 

「ソウゴ君はどうだった?」

 

「プロですから」

 

「あはは、やっぱ流石だね~」

 

俺がオール100点なのは約束された勝利の結末なので(どや顔)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、家庭教師の日なので上杉と共にマンションに行こうかと思いきやその姿がなし。先に行ったのかと自己完結して俺もマンションへゴー。

 

「どーも、お久しぶりでーす」

 

「あ、火野さん!…………あれ、上杉さんと一緒じゃないんですか?」

 

「おろ?」

 

あいつ来てないの?てっきりもう来てるのか思ってたが。

 

「まぁ、その内来るか。よし、取り敢えずテストの結果を見せてくれ」

 

どれどれ………………フム。三玖が前回と続いて1番の成績か。赤点なのも英語のみと。

 

「三玖、やるねぇ………前回よりもさらに出来るようになってる」

 

思わずそう呟くと三玖は嬉しそうな表情を浮かべた。尊い…………。

 

「えっとー、次に点数が高いのは五月か」

 

赤点回避出来たのは3科目か。やっぱり理科がずば抜けて高いな。

 

「………………ちなみに五月さんよ。あなた、この数学の問題に見覚えない?」

 

「え?………………………………あっ!その2で見たのと同じです!うう………」

 

「じゃけん、次同じのが出てきた時は完璧に解けるようにしましょうねー」

 

と言うわけで次。

 

「えー、二乃は………………何かムカつくな」

 

「なんでよ!?」

 

2日間しか指導してないのに、1週間鍛え上げた一花姉さんらを差し置いて英語で1番の成績を取ったからですぅ。

 

「最後に四葉は……………まぁ、一桁の科目がなくなってるから少しは成長してるって、はっきりわかんだね」

 

「ありがとうございます!」

 

これでも、上杉だったら褒めないでリボンを掴んでブンブン揺らしてそう(偏見)

 

「そう言えば、ソウゴはテストはどうだった?」

 

「あー、俺はですね」

 

「どうせ満点でしょ」

 

「……………君のような勘のいいガキ(二乃)は嫌いだよ」

 

そう呟くと笑いが起こる。皆につられて思わず俺も笑ってしまう。その時、来客を知らせるチャイムが鳴った。漸く上杉が来たのか。インターホンに出た五月が上杉の到着を知らせる─────かと思いきや。

 

「………上杉君じゃありませんでした」

 

「え?」 

 

じゃあ誰やねん、と言う疑問はすぐに解消した。やって来たのは前に林間学校の時にお世話になったリムジンの運転手の江端さんだった。

 

「失礼いたします、お嬢様方。それと火野総悟様」

 

「なんだー、江端さんか」

 

「あ、こんにちは。それと、林間学校の時はありがとうございました」

 

「ホホホ、どういたしまして」

 

「今日はお父さんの運転手お休み?」

 

「小さい頃から江端さんにはお世話になってるけど家に来るとか初めてだよね」

 

「私から見たら、まだまだ皆様は小さなお子様ですよ」

 

「江端さんはどうしていらしたのですか?」

 

「本日は上杉様の代わりとして参りました」

 

………………………………………………。

 

「上杉の代わり、ですか?………………上杉の奴、勉強のし過ぎでぶっ倒れたのか?」

 

「あいつならあり得そうね」

 

「頭がパンクしたのかなー」

 

ここまでは大方体調不良で休んでるのかと思った。ここまでは

 

「……………お嬢様方と火野様にはお伝えすることがございます」

 

「「「「「「?」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上杉風太郎様は家庭教師をお辞めになられました」

 

………………………………は?辞めた?上杉が?家庭教師を?

 

「新しい家庭教師が見つかるまで私が上杉様の後任を勤めさせて」

 

「待て待て!待ってください!あいつが家庭教師を辞めたって……………まさか」

 

こんな時でも俺の頭は冴えてると言うか。期末試験当日の日、五月のスマホを借りてらいはちゃんに電話していたと言う話を思い出す。まさか……………………あの時電話していたのはらいはちゃんじゃなくて

 

「もしかして…………………期末試験の日に」

 

「………………旦那様から連絡がありました。期末試験の当日を以て上杉様の契約を解除したと」

 

─────やはりか。もしかして土曜には、いやそれ以前から辞めるつもりだったのかもしれない。

 

「本当なの………………?」

 

「事実でございます」

 

三玖の問いに冗談でした、と言う答えを何処かで期待していた──────────ただ、頭ではそんな答えは返ってこないと分かっていた。これがドッキリでもない事が分からない程、馬鹿じゃない。無論、他の5人も。

 

「え……………つまり、フータロー君はもう来ないの……………?」

 

一花姉さんの問いに改めて江幡さんは無言で肯定の意を示す。場の空気はさっきとは打って変わって重苦しいものに変わっていた。

 

「やっぱり……………赤点の条件は生きてたんだ」

 

「二乃、どういうこと?」

 

「試験の結果のせいよ。あいつは無いって言ってたけどやっぱりパパに言われてたんだわ」

 

「………そりゃないな。もしその条件が生きてたなら俺も今この場にいないだろうよ。つーか、今回はマジで言われてないぞ」

 

「火野様の言う通り、今回旦那様はノルマを課しておりません。上杉様はご自分からお辞めになったそうです」

 

「自分からって…………上杉さん、どうして……………」

 

「……………そんなの急に言われても納得いきません。彼を呼んで直接話を聞きます」

 

そう言って五月はスマホを取り出す。だが

 

「申し訳ありませんがそれは叶いません。上杉様のこの家への侵入を一切禁ずる。旦那様よりそう承っております」

 

「いや……………普通そこまでやる……………?」

 

侵入禁止とかは流石に解せぬ。

 

「なぜそこまで……………それならばお父様に電話して「もういいよ五月」……………ひ、火野君?ですが……………」

 

「電話した所で解除するとは思えない」

 

「なら、直接あいつの所に行くわよ!」

 

……………………俺は二乃の前にスッと立ちふさがる。

 

「どきなさいよ、あんた!」

 

「……………家庭教師の立場的に(・・・・・・・・・)ここでお前が行くのを見過ごして、それが江端さん経由でバレたら家庭教師失格の烙印を押されて俺までも消える事になりかねないんだが」

 

「「「「「……………………」」」」」

 

当然、俺だって今すぐにでも上杉の所に行って色々と聞いたり言ってやりたい事が山ほどある。ただ…………………今の俺は家庭教師として来ている。しかも雇い主の側近的な立場の人がいて、あちらに素行が伝わる可能性がある以上、ここで見過ごしちゃうのはマズい。

 

─────だから、さっさと終わらせて行く。

 

「…………今から家庭教師の時間だ。今日は前に没にした今回の試験問題の範囲をカバーしたテストを復習って事で解いてもらう。…………すんなり終われば今日はこれで終了だ」

 

「「「「「!」」」」」

 

俺の意図が伝わったみたいだな。皆がさっさと終わらせれば行けるって事だ。

 

「では、火野様。もしすんなり行かなければ補習授業と言う事でよろしいですな?」

 

「え…………………………あ、そうですね……………………」

 

二乃から『何で断らないのよ!』的な視線が刺さってるけどさぁ…………ここでノーとか言うとやる気無しと見なされてクビとかあり得そうだからしょうがないだろ。つーか、全部解けば良い話!

 

「時間は今から30分でよろしく。…………悪いが江幡さん。俺は少し外で頭を冷やしたいので数分間彼女等を見ていて貰ってて良いですか?」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「全く、あいつどういうつもりよ」

 

「私はまだ信じられないよ、上杉さんが自分から辞めたなんて……………」

 

「本人の口からちゃんと聞かないとね。誰か終わった?」

 

「私はもうすぐです」

 

「私も」

 

一花の問いに答えたのは期末試験でNo.1&No.2の座を取った三玖と五月。とは言え、他の3人も順調に進んでいる。

 

「ソウゴの作ったこの問題を解いてると、私達成長したんだなって感じるね」

 

「そうね。前の私達なら危うかったに違いないわ。自分でも不思議なほど問題が解ける……………悔しいけど、全部あいつらのおかげだわ」

 

彼等の存在が自分達が思っていたよりも大きかった。改めて5人はそれを実感する。戻ってきた総悟にも見守られながら問題を解き進める。そして────────

 

「あと1問………あと1問なのに………!」

 

「私もあとは最後だけです…………時間も残り僅か…………」

 

「ホホホ。その程度も解けないようであれば補習は確定ですな」

 

このままでは補習確定で上杉の元へ行くのがさらに遠ざかってしまう─────。

 

「こ、これ前にやったよね?」

 

「うーん…………」

 

「なんだっけなー」

 

「…………………………」

 

最後の問題で姉妹たちが頭を悩ませる中、五月が意を決したように言葉を切り出した。

 

「あのー………カンニングペーパーを見ませんか?全員筆入れに隠してた筈ですが…………」

 

「「「「「!」」」」」

 

真面目な五月から不正しようと言う提案が出たことに皆は少し驚く。

 

「え、でも…………良いのかな…………」

 

「今は有事です。なりふり構ってられません」

 

「五月が上杉さんみたい!」

 

「あんた変わったわね……………」

 

そう呟きながら二乃はチラリと総悟の方を見る。彼女等の思惑を察したのか、わざとらしく『水でも飲みましょうねー』と言って台所の方へ向かう。江端の方も5人のお茶でも作るのかお湯を沸かしているので今がチャンス。五月はカンニングペーパーを開け─────

 

「…………あれ?」

 

「どうしたの、五月?」

 

「何と言うか…………私のはミスがあったみたいです」

 

「じゃあ、私の使おう」

 

一花が自分のカンニングペーパーを開ける。が

 

『安易に答えを得ようとは愚か者め』

 

そこに記載されてたのは答えなどではなく、その一言だけだった。

 

「…………あいつ、初めからカンニングさせるつもりなかったのね」

 

「フータローらしい」

 

「ほんと、フータロー君らし…………待って。何か続きが書いてある…………②?」

 

「②…………私のかしら?」

 

次に二乃がカンペを開く。 

 

『カンニングする生徒になんて教えてられるか→③』

 

「…………次は私」

 

三玖のカンペには────────── 

 

『これからは自分の手で掴み取れ→④』

 

そして四葉

 

『やっと地獄の激務から解放されてせいせいするぜ→⑤』

 

「…………あはは。やっぱり上杉さん、辞めたかったのかな?」

 

「…………最後は五月ちゃんだけど……………五月ちゃん?」

 

黙っていた五月は一花に言われて最後の文を読み上げた。

 

「『だがそこそこ楽しい地獄だった。じゃあな。ps 後は頼んだ。お前なら出来る』」

 

「「「「「…………………………………」」」」」

 

最後のpsが誰に向けてのメッセージなのかはもはや言うまでもない。

 

「………あの野郎……………買いかぶり過ぎだっての………………」

 

いつの間にか五月の背後に来ていた総悟が上杉からのメッセージを見て一言呟く。そして次に声をあげたのは四葉だった。

 

「……………私、まだ上杉さんに教えて貰いたい…………7人で勉強したいよ………」

 

「四葉……………」

 

「けど、あいつはここに来られない。もうどうしようもないわ」

 

「二乃、諦めが早い」

 

「じゃあ、あんたは何か名案でもあるわけ?」

 

「………………皆。私から提案がある。また7人で勉強できる案が。耳を貸して」

 

二乃と三玖が軽く口論になりそうになった所で、一花が声をあげる。 5人は一花の提案を小声で聞く。さりげなく総悟も身体を傾ける。

 

「…………ファッ!?」

 

「一花、本気なのですか?」

 

「うん、本気。どうかな?」

 

「……私は良いわ」

 

「私も。皆と一緒なら大丈夫な気がする」

 

「わ、私も!」

 

「私も構いません」

 

賛成の意志を述べる5人。総悟は彼女等の目を見て本気である事、そしてどんなに言おうと覆さない意思を感じ取った。

 

「ここでの生活を捨ててまでの覚悟、か。…………………良いぜ。客観的に見れば正しくない──────────間違ってるのだろう。だが、その『間違ってること』に俺も付き合おうじゃないか。…………これで俺も悪だくみの共犯で、6等分ってか?」

 

総悟の言葉に5人は笑みを浮かべる。そして5人は立ち上がると丁度お茶を持って行こうとしていた江端の前へ。

 

「おや、どうなされました?」

 

「江端さんもお願い。協力して欲しい事がある」

 

「!」

 

江端の目に映っていたのは小さなお子様などではない。何か強い決意を瞳に浮かべた──────────大きくなった5人の姿だった。江端は変わった彼女等を見て微笑を浮かべる。

 

「─────大きくなられましたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

12月24日。性なゲフゲフン………聖なる夜のクリスマスの前日のクリスマスイブ。昨日で全ての準備が完了した。さぁ、1日早いが奴に驚きと言う名のクリスマスプレゼントを渡そうか。星奈さんと伴に上杉がバイトしている店へ凸を開始。

 

「メリークリスマス!ケーキはいかがですかー?」

 

…………いたいた。事前に調べておいた通り、ケーキ屋で働いてますねぇ。

 

「すいませーん」

 

「はい!……って、火野と星奈さん…………」

 

「ケーキを1ホールと、エクレア2つプリーズ」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ^~うめえなぁ!(迫真)おかわり、オナシャス!」

 

「どんだけ食うんだよ……………」

 

「次で最後よー」

 

俺のテーブルの上にはお皿の山が。甘いもの好きだからね、しょうがないね。

 

「…………………で、何をしに来たんだよ」

 

「何をしに、ねぇ………………それはお前が1番分かってるだろ?」

 

「……………………」

 

上杉は目を逸らす。分かりやすい反応な事で。

 

「店長ー、ここ配達って出来ます?上杉にケーキの荷物持ちをさせたいんですけどー?」

 

「は!?いや、配達なんてやってな」

 

「ああ、そんなことなら構わないよ」

 

「店長!?」

 

「もう店も閉める。こっちはいいから、友達の方に行ってあげなよ」

 

店長がそう言いながら最後のエクレアを持ってきてくれる。

 

「まぁ、男2人で華がないかも知れないけど…………メリークリスマス!」

 

「(この職場、辞めようかな………)」

 

「(見るな……………俺達をそんな憐れむような表情で見るな!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

「走れそりよ~♪ 風のように~♪ 特異点を~♪ パドルパドル~♪」

 

どこぞの黒サンタ王の歌を口ずさみながら、雪が降りしきる中を総悟は歩く。その後ろを星奈と上杉がついていく。

 

「さっきまで雪が降っていなかったのに、急に降り始めましたか。ホワイトクリスマスイヴになりましたね」

 

「そうですね……………あ、ここを左か」

 

「……………ん?おい、お前の家はこっちじゃ」

 

「あってるぞー」

 

「(──────わざと遠回りしてるな…………)」

 

仕方なく、上杉も総悟らに着いて行く。

 

「……………あのさ、火」

 

「上杉」

 

上杉が話そうとするのを振り返らずに総悟が遮る。

 

「俺から聞きたいのは1つだけだ─────なぜ辞めた?本当はすぐにでも訊きたかったが、生憎俺も色々と忙しかったもんでな」

 

「…………………」

 

上杉は俯いて視線を下にしながら簡単な話だ、と続ける。

 

「……………家庭教師を始めて3ヶ月。三玖や一花、五月が参加してくれるようになったのはお前の尽力のお陰だった。前回の中間テストでは五月と仲違いを起こしたり、二乃に赤点の条件をバラして足を引っ張った。今回の家出騒動も二乃の説得には失敗して、結局二乃が家に戻ったのはお前と三玖のお陰だった…………」

 

「…………………」

 

「お前に助けて貰ったり、足を引っ張るばかりで俺自身(・・・)は何も出来なかった。……………………あいつらに必要な家庭教師はあいつらの気持ちをしっかり考えてあげられる奴だ。……………勉強しかしてこなかった俺にはそれが出来なかった。だが……………お前ならそれが出来る────いや、既に出来ている。だからお前に後任を任せた。……………これが俺が辞めた理由の全部だ。俺は………………『不要だ』」

 

「……………『不要』ね」

 

「……………そうだ。俺はお前らにとって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不要な」

 

「あんたバカァ!?」

 

上杉の発言を一蹴するように大声をあげる総悟。1年からの付き合いの上杉でも総悟が大声をあげる所は初めて見た。そして総悟は少し呆れた様子で言う。

 

「あのねぇ……………………まぁ、上杉の言う通りお前は確かに色々とやってくれたよ。けどな………………………………俺がお前を『不要』なんて言ったことある?」

 

「………それは…………………」

 

「ないだろ?だからお前は不要じゃない。Q.E.D.証明完了」

 

「…………どんな理論だよ…………」

 

何とも強引な理論を押し付けてくる総悟に思わず上杉も苦笑してしまう。

 

「それに、お前は俺を買い被りすぎだっての。林間学校の後にお前が入院してた時、上杉がいなくて俺1人で5人の面倒を見てただろ?もうあの時はマジで大変だったんだぞ、猫の手も借りたい程にな。2度とごめん被るね、1人で見るのは」

 

「…………………」

 

「それと、大した成果を出せてない的な感じに言ってたけどよ。俺1人だけじゃあんなに凄く良い問題集は生まれなくて、それに関連して皆も期末試験のテストも今よりも悪かっただろうし、二乃が家に戻ったのもお前があいつの所へ毎日諦めずに行ってたからあいつと話せる機会が出来て、そこから解決に向かったんじゃねぇか。なのに成果を出してない的な事をほざきやがって………………ぶっ〇すぞ」

 

「………はっ………お前の口の悪い暴言も久しぶりに聞くとなると懐かしく感じるな」

 

それを聞いた総悟はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「自分ではそうは思ってないかもしれないけど、お前の存在はデカい──────────色々言ったが要するにだ。俺はお前を『不要』なんて思ったことなんて1度もねぇ。俺からすりゃ、家庭教師をするに当たってお前は必要って事だよ。6人(・・)じゃ物足りない。7人(・・)じゃないと面白くないんだよ」

 

「……………!」

 

「………………俺から言いたいことは以上。ほれ、選手交代だ」

 

「!」

 

俯き気味だった視線をあげると──────────

 

「やっほー、フータロー君。久しぶりだね」

 

「やっと来たわね。まったく、か弱い乙女をこんな寒い外で待たせるなんていい度胸してるじゃない」 

 

「二乃がか弱い乙女……………?」

 

「お待ちしていました、上杉さん!」

 

「火野君、ケーキは…………?」

 

「ありますあります」 

 

─────そこにいたのは元教え子の5人。同じクラスの五月以外とは会う機会が殆どなかったので、数週間ぶりとは言え上杉は懐かしさを感じてしまう。最初に話を切り出したのは二乃だった。

 

「あんた、ほんとにこれで良いわけ?5人揃って笑顔で卒業させるって言ったのに、あんただけ私達を見捨てる気?」

 

「…………だがこれ以上、俺の身勝手にお前らを」

 

「そうね。あんたらはずっと身勝手だったわ。したくもない勉強をさせられて、必死に単語や公式を暗記して…………………でも、勉強して問題が解けるようになったら嬉しくなっちゃって。…………こうなったのは全部あんたらのせいよ」

 

かつてホテル前で遭遇して彼等を拒絶した時と同じ言葉。たが─────────続きの言葉はあの時とは違う。

 

「最後までこいつと身勝手でいなさいよ!謙虚なあんたなんてらしくないわ!」

 

「ッ……………………悪い。俺は戻れない。もう家に入ることも禁じられているんだ」

 

「ああ、それなら問題ないよ。言うのが遅くなったけどケーキの配達ご苦労様」

 

「………………ん?いや、お前らの家はまだ先じゃ」

 

「ここだよ。ここが私達の新しい家」

 

高層マンションとは似ても似つかない、古びたアパートを指差しながら一花はそう告げた。

 

「私が借りたんだ。私って女優でしょ?それなりに稼いでるからね」

 

「借りたって………………いや、でも…………未成年だから契約は」

 

「契約は別の人に頼んだよ。お父さんにも事後報告だけどもう言ったから」

 

「………はあぁぁぁぁ!?」

 

「いい反応ね。サプライズ大成功かしら」

 

「………計画通り」

 

上杉の驚きっぷりに二乃と総悟はニヤリと笑う。

 

「これでもう障害は無くなったね、フータロー」

 

「………………嘘だろ。それだけのためにあの家を手放したのか…………?馬鹿か、今すぐ前の家に戻れ!こんなの間違ってる!」

 

「いいえ。上杉さん、私は─────私達は戻りません。だって、私達は上杉さんと火野さんの2人に勉強を教えて貰いたいですから。勿論、ここでの生活がとても大変なのになるのは分かっています。──────でも、皆覚悟は出来ています。星奈さん、お願いします!」

 

四葉に名前を呼ばれた星奈は懐からカードを5枚取り出す。

 

「それは…………お前らのマンションのカードキー………」

 

「最終確認ですが………………本当にやっていいんですね?」

 

「はい!月に届かせる位の勢いでやっちゃってください!!」

 

「………………では、遠慮なく!」

 

「ちょ、待」

 

何をしようとしてるのかを察した上杉が制止しようとした時には既に遅し。星奈はカードキーを持った手を月に向けて大きく振るった。

 

そして次の瞬間には星奈の手にカードキーの姿は何処にもなかった。

 

「あー、たった今大気圏を突破しましたねー(適当)」

 

「え、本当ですか!?」

 

「なっ…………カードキーを…………!?」

 

総悟の適当な大嘘を四葉が真に受けている中、上杉は空を見上げていた。尤も、カードキーの姿は空の何処にもないが。

 

「これが彼女等の覚悟だ──────さぁ。君はどうする?上杉風太郎」

 

「……………………………………」

 

上杉はまだ迷いがあるのか何も言わない。すると、上杉に対してまだ何も言っていなかった五月が前に出て総悟の隣で語り掛ける。

 

「前に言った筈ですよ、上杉君。私達にはあなたが『必要』ですと」

 

「!」

 

「だから、またこの場所から始めまし…………え、何ですか火野君?……………はぁ。まぁ、私が言おうとしていた事と同じなので構いませんが………………」

 

途中、総悟が五月に何かを囁いたので中断されたが、気を取り直してテイク2がスタート。

 

「……………上杉君。ここから始めましょう、イチから──────いいえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロから!

 

『演出してやんよ』とでも言いたげに五月の上空を川に立っていた白い鳥が飛び去る。どこぞの異世界生活アニメの名シーンのオマージュを見れた総悟は内心ガッツポーズ。当然五月は総悟が何故この台詞をリクエストしたのかよく分かってなかったが。

 

「……はっ……………はははっ!」

 

五月の台詞に対してなのかは分からないが、上杉は笑った。そして最初に目の前の2人に向けて口を開く。

 

「……………先ずは素直に礼を言うぜ、火野と五月。俺を『必要』と言ってくれてありがとう」

 

「よせやい、照れる」

 

「どういたしまして」

 

そして今度は全員に向けて語り掛ける───────吹っ切れた表情で。

 

「俺はお前らの事を考えて家庭教師を辞めたんだが……………………何だかお前らの事を配慮するのも馬鹿馬鹿しくなった。だから、俺もやりたいようにやらせてもらう。俺の──────いや、俺達(・・)の身勝手に最後まで付き合えよ!」

 

「………漸く帰ってきたか、いつもの上杉が」

 

上杉の家庭教師復帰宣言に総悟は嬉しそうにニヤリと笑う。5つ子達も、星奈も同じく笑みを浮かべる。

 

「よーし、それじゃあフータロー君の復帰とクリスマスイヴのお祝いを兼ねて、皆でケーキを食べよう!」

 

「俺も良いのか?」

 

「勿論ですよ、上杉さん!」

 

「じゃけん、俺も食いましょうねー」

 

「え……………お前、散々店で食ってたのにまだ食うの…………?」

 

「当たり前だよなぁ?……………でも、皆良いのー?俺らが入ると五等分出来んぞー?」

 

────5人は弾けたように笑った。

 

to be continue………




パーティー終了後

星奈「ポイ捨ては環境に悪いと思ったので、一応投げるふりをしておいたのですが……………………このカードキーはどうしましょうか?」

総悟「んー……………………星奈さんが持っててくれますか?あの5人もいつか元のマンションに帰る時が来るでしょうし。それに、俺が持つより安心ですからネ!」

星奈「了解です」

ちなみに、江端さんがイメチェンしたかどうかはご想像に任せます(放り投げ)書いてから『あ、そういや…………まぁ、別に支障はないし良いか』って感じです。けど、次回に描写を入れれば何とかなるかもだな……………………まぁ、どうするかは考えておきます。

あ、少し前の話になりますがシンエヴァンゲリオンの興行収入が60億突破だそうですね。おめでとう(パチパチ)

さてさて、今回も読んでいただきありがとうございました。この次も、サービスサービスぅ!

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