それでは、どうぞ!
「じゃ、皆お疲れー」
「き、気をつけて帰れよ………(震え声)」
無事に祝賀会は終了。総悟と上杉(コクられて動揺中)は5人にそう声を掛けて去って行った。
「何か物足りませんね…………コンビニで何か買いませんか?」
「いいねー!」
「あんたら太るわよ」
「だ、大丈夫です!食べた分運動もしますから!」
「わ、私も明日ランニングするからたぶん大丈夫だよ!」
二乃と五月、四葉がそんな会話をしながら歩いている中、距離を置きながら後ろを三玖は何処か浮かない顔をして歩いていた。そんな彼女に話し掛けるのは───────
「三玖、どうかしたの?」
一花である。
「い、一花……………べ、別に何で」
「何でもなくないよね。お姉ちゃんはお見通しなんだから。話してみなよ、大方テストの事でしょ?」
「!……………やっぱり、一花はお姉ちゃんだね」
三玖は一花に己の胸中を話し始める。
「私、前に一花に宣言したよね。『5人の中で1番の成績を取って自分に自信を持てるようになったら好きって伝える』って」
「うん、そうだね」
「結果として確かに1番だったけど、『
「うん、分かってるよ。それで?」
「………………宣言は達成出来なかったけど、正直ソウゴに告白したい気持ちが私の中にある。5人の中で1番ではないけど1番なのには変わりはないし、別にソウゴはその宣言を知らないから告白しても良いじゃん、って……………………………………一花はどう思う?」
「……………………」
この時、『お姉ちゃんは三玖が告白したいならしても良いと思うよ。結局の所1番なんだから、そんな細かい事は気にしないでさ!』と後押ししていたかもしれない ────────────
────────────三玖と
「……………………三玖が悩んでるって事はさ。三玖の中には告白したい気持ちと、自分でした宣言を破って告白するのはどうなんだろうって迷いの気持ちがあるんじゃないかなぁ?」
「それは………………………………もしかしたらそうかも……………………」
「やっぱりそうでしょ?宣言を破って告白したら結果はどうあれ後ろめたいものが残って後悔するとお姉さんは思うよ?」
「……………………」
「(……………あと一押し、かな)私も告白後に三玖にそんな気持ちが残ってほしくないしさ。別にこれから先も機会がないわけじゃないし……………だから今回は見送った方が良いと思うよ」
「………………うん、そうだよね。それにソウゴとプライベートでデートとか全然してないから今告白しても成功する可能性は低そうだし……………………今回は見送る事にする」
「……………そっか」
「一花に相談して良かった。ありがとう」
「どういたしまして。私は三玖を
一花はそう言って笑った ────────────そして内心でも三玖の告白を阻止できた事に対してほくそ笑んでいた。
帰宅後、私はベランダで1人空を眺めていた。
『三玖が悩んでるって事はさ。三玖の中には告白したい気持ちと、自分でした宣言を破って告白するのはどうなんだろうって迷いの気持ちがあるんじゃないかな?』
『宣言を破って告白したら結果はどうあれ後ろめたいものが残って後悔するとお姉さんは思うよ?』
先程の三玖との会話を思い出しながら私は口を開く。
「……………………これで、三玖はソウゴ君に告白はしない。暫くこの現状を維持出来る……………………三玖と同点だったのは予想外だったけど、良かった良かった……………………
『私は三玖を応援してるから、また何か相談があったらお姉ちゃんに遠慮なく頼るんだよ?』
……………………最低だね、私…………………」
………………何が良かっただ。そんな事を思ってしまう自分が本当に嫌になる。
私は……………………私は、嫌な女だ。自分が嫌になる。
ずっとこの関係が続いて欲しいと言う私の自己満足の為に人の、しかも自分の妹の脚を引っ張って恋路を邪魔して。そのくせお姉さんぶって頼れ?……………なんて滑稽なんだろう。偉そうに、何様のつもりなのだろうか。
多分彼は私が気が利いて面倒見の良いお姉さんなんて思ってるのだろう。それはとんだ勘違いだ。本当の私はソウゴ君や皆の前でお姉さんぶってるだけの嘘つきで卑怯な女だ。
「ははっ……………………これをソウゴ君が知ったら幻滅するね、きっと……………………」
小さな自嘲の声は夜空に消えて行った─────────。
土日を挟んで翌週の月曜日、俺はドンッと紙の束を皆(一花姉さんは不在。たぶん仕事)の前に置く。
「はい、これ春休みの宿題ね。……………露骨に嫌そうな表情をすな!今までの復習みたいなもんだからヘーキヘーキ」
やらなかったら二乃が何らかの形で餌食になりますからちゃんとやってくださいねー(暗黒微笑)
「そう言えばソウゴは春休みに何か予定はあるの?」
「俺は春休み初日から東京に行ってくるんだー。好きな声優さんのライブの抽選に当たったからさ。ついでに東京と神奈川の観光と言う名の聖地巡礼してくるんだ。3泊4日の長旅だZE☆」
ライブはとんでもない高倍率だったから当たったのはマジで奇跡に違いない。今年の運を全て使い果たしたかもなー。
「そうなんだ(むぅ…………初日からお出かけに誘おうと思ってたのに……………)」
「旅行かぁ。私達もお金に余裕があれば行けるんだけどねー」
「良いなー、火野さん。私も東京の聖地巡礼してみたいな~」
「火野君、美味しいお土産を期待していますね!」
「はいはい」
それから月日は経ち─────────終業式が終わり、春休みに突入。俺は予定通りライブ、そして東京・神奈川での聖地巡礼を十分に満喫してご帰宅した。4日後に帰って来たのが深夜だったので帰ってすぐ爆睡。翌日の正午近くまで寝ていた。その後、旅行で疲労した体を休めながらぐだぐだ買って来たお土産グッズ達を鑑賞したり、ライブの事を思い返していたらあっという間に1日が終わった。帰って1日ぐだぐだしてたらもう完全に疲れは吹っ飛んだ。今の俺に疲労のひの字も無い。いやー、マジで体鍛えてて良かった。前世の俺なら3日は筋肉痛とかで死んでたわ。
さて、その日の夜。父さんの口からとんでもない話が出てきた。
「え?星奈さんと2泊3日の旅行行ってくれば?東京と神奈川に旅行に行ってたばかりなんですがねぇ……………………」
なんでも、親父の知り合いがスーパーのくじ引きで温泉旅行のペアチケットを当てたらしい。だが、両親ともに暫く予定が詰まっているので行く暇がないらしく、そこで俺と星奈さんで行ったらどうか、と言う訳だ。星奈さんには既に話を通しているらしい。
「いいじゃねーか、今度は都会じゃなくて自然豊かな島なんだしよ」
「遊べるときに遊んでおいた方が良いわよ。社会人になったら学生の時よりは遊べなくなるもの。あーあ、私も学生に戻りたいわね~」
…………………うぅむ。確かに母さんの言うことは一理ある。
それに、だ。
明日にでも皆にお土産を渡すつもりだったので、三玖に『明日お土産を渡しに行こうと思うんだけどおK?何か予定でもあったりする?』とメッセージを送ってみたのだが、何と明日から2泊3日の旅行に行くらしく、お土産は帰ってきてからでお願いと言う内容が返ってきた。お土産渡すついでに三玖とお出掛け……………要はデートに誘えたらと思っていたのだが、残念ながら旅行なので無理である。そして特にやることもなくて暇でもあるので……………………
「…………………………うん、行こっかな。それで、いつ?」
「明日」
「は?(威圧)」
明日とか急過ぎィ!
「なんでもっと早く言わないんですかねぇ(正論)」
「すまんすまん、すっかり忘れてた。まぁ、旅館の予約とかは全部済ませておくからそれでチャラで頼むわ」
「釣り合ってないような気がしなくもないが……………………まぁ、そう言うことにしておこう(寛大)」
さて、急いで準備しないと。ヤバイヤバイ。
翌日の午後2時、俺と星奈さんはフェリーに揺られてました。
「~♪」
「星奈さん、ご機嫌ですね。そんなに楽しみだったんですか?」
「ええ。総悟様とペアチケットで行かなくても自費で行こうと思っていたので、少し得しました。この島は私の好きな小説の舞台になっていますので、とても楽しみにしていたんです」
「ははーん、なるほど」
その気持ちはとても分かりますねぇ。俺も聖地巡礼大好き人間ですから。
……………それにしても船か。船と言えばなんだろう……………………あっ、そうだ(閃き)
「星奈さん、2階のデッキに行きませんか?ちょっとやってみたい事がありまして」
「?」
「……あのー、総悟様?そのポーズは一体……………………?」
数分後、デッキに着いた俺氏は星奈さんに腰を支えて貰いながら両手を広げていました。そうです、タイ〇ニックポーズです。
「これはアレです。船に乗ると全人類がついやりたくなるポーズです」
「そんな話は聞いたことがないですが……………………」
「いやいや。気持ちの良い潮風が吹き、目の前には青い海が広がっているんですよ……………これは手を広げるるしかない(断言)」
「……………………」
星奈さんは考え中の模様。そして──────
「……………何故だか私も無性にやりたくなってきましたね。」
「Foo!↑やっぱり皆やりたくなるんですねぇ。じゃ、どうぞー」
つー訳で交代。今度は俺が星奈さんの腰を掴んで支えます。……………つーか、女性の腰に手を添えるとか何か恥ずかしいような気もするが…………レオ〇ルド・デ〇カプリオもやったんだから俺も出来る筈!(トンデモ理論)
「………………何か飛んでるみたいで面白いですね。それに潮風も気持ち良いです」
星奈さんは気に入ってくれた模様。良かった良かった。
ちなみに、俺らがデッキを去った後でタイタニックポーズを真似るカップルがいたとかいなかったとか。
さて、そんな事をやってる内に島へ到着した。
「たまには、こう言うのどかな場所も悪くないものですね」
「あー、確かにのどかでええですのう。それに見所も多いみたいですね、この島。今はいないけど時期によってはイルカと会えたりもするのかぁ」
星奈さんはスマホでパシャパシャ撮ってると、星奈さんが双子連れの家族から頼まれてツーショットを撮ることに。撮り終わると『折角だからお2人さんも撮ってあげるよ!』と言われたので星奈さんのスマホで撮って貰った。
「おー、中々綺麗に撮れてますね」
双子に手を振って別れた後、星奈さんに見せて貰うと中々綺麗に映っていた。
「何かこうして見るとカップルみたいですねー」
「カップルと言うより姉弟みたいな感じがしますね。まぁ、実際に私は総悟様を弟のようにも思っておりますが」
「確かに!しっかりしてて頼りになるし、まさにお姉ちゃんって感じですよねー……………星奈お姉ちゃん?」
「コフッ!?」
…………ちょいとからかい目的で言ってみたら何故か大ダメージを受けてる件について。ちょっ、大丈夫ですか?どこぞの桜セ〇バーみたく吐血してないですか?
「いえ、その………………不意討ちでしたので、かなり動揺しまして………………ふふっ」
「?」
「ああ、すみません。私も頼りがいのあるお姉ちゃんみたいと言われるまでに昔よりも成長出来たのなら、少し嬉しく思いまして。……………………あの、総悟様。もう一度お姉ちゃんと言って貰っても良いですか?」
「お安い御用ですよ、星奈お姉ちゃん」
「……………ふふっ、ふふふ………………」
嬉しそうに笑う星奈さん。ふつーに可愛い、と俺氏は思ってしまうのだった。この後連呼したらめっちゃ嬉しそうだった。
「…………殺してください……………………」
「それは星奈さんが強すぎて無理です(即答)」
真っ赤になった顔を手で覆いながらそう呟く星奈さん。あれから冷静になって恥ずかしくなったのだろう。まぁ、俺的には星奈さんの可愛い一面が見れて得したんですけどね。ただ、俺も少しからかいすぎたかもしれんな。
「すいません、俺も面白くなって連呼しちゃって。後々恥ずかしくなって悶えるでしょうし、流石に自制しますね」
「是非ともそうしてください…………………いえ、自制と言っても全面的にではなく週1のペース位でお願いします……………………」
りょーかいです(笑)……………………さて、そんなやり取りをしながら俺と星奈さんは取り敢えずぶらぶら見ながら辺りを歩き回っていた。
「いやー、やっぱ自然豊かなのは良いですね。心が落ち着く」
「そうですね。総悟様は将来、どちらかを選ぶとすれば都会に住みたいですか?それともここのような田舎ですか?」
それは究極クエスチョンQQ!ですねぇ……………………。
「そうですねぇ…………………………………………どっちかと言われれば都会ですかね。アニ〇イトが多いですし」
「総悟様らしい理由ですね……………」
「けどまぁ、こう言った自然豊かでのどかな田舎も嫌いじゃないですからね。どちらかを選ぶとかじゃなきゃ、都会と田舎の中間位が丁度良いですかねー」
「私もそう思います……………………おや、あれは鐘ですか」
あ、ほんとだ。何の鐘だろう?後でパンフレットでも見ておこっと。鐘のすぐそこには柵が設置されていて前方には海が、下を覗くと崖が広がっていた。
「本来なら山に向かってやるのが鉄板なんでしょうけど、折角ですし海に向かって『やっほー!』って叫びませんか?」
「ええ、構いませんよ。旅の定番と言っても過言ではないですしね」
「よーし、じゃあ……………………せーのっ!」
「「「「やっほー!」」」」
…………………………………………ちょっと待て。今、俺と星奈さん以外の声が混じったよな?
そう思いながら隣を見ると────────
「……………ファッ!?」
「おや……………………」
「…………………はぁ!?」
「…………………えぇ!?」
……………
「う、上杉君に火野君、それに星奈さんも!?どうしてここに!?」
「お前らこそ……………」
「はえー、すっごい偶然……………………いや、もはや
まさか旅行先でも遭遇するとは…………それに五月がいると言う事は…………
「五月、早いよー…………………………って、上杉さん達じゃないですか!」
「はぁ…………………はぁ……ふ、フータローも当たってたんだ……(……………って、ソウゴもいる!?)」
「………嘘………」
「!…………ふふふっ」
「まさかのお前らも家族旅行かよ………ありえねぇ……………」
あー、ですよねぇ。皆いますよねぇー。……………………だが、これはチャンス。幸いにして島には色々とスポットがある。ここで三玖をお出かけに誘ってさらに親睦を深めるチャンS
「まさに家族旅行だ。しかし気を抜いてはいけないよ。旅にトラブルはつきものだからね」
「(お、お父さんっ………………!)」
「(マルオさんまでいるじゃないですかー、やだー!)」
これは……………お出かけはダメみたいですね(即諦め)
「!………………零奈、さん……………?」
「「「?」」」
こっちを見ながら何か呟やいていた気がするが、すぐに視線を外してこちらに背を向けてしまった。何だったんだ?まぁ、それはさておき……………………この状況、どーしよ(笑)
「(………今、私を見ていたような気が……………………)」
to be continued…………
はい、と言うわけで始まったスクランブルエッグ編の第1話でした。
三玖は一花の一押し&告白の成功率を危惧して告白は断念。ただし、諦めるとは言ってないので春休み初日から誘おうと思っていた模様。なのに初日から東京・神奈川にライブや聖地巡りに行ってしまうオタクの総悟ェ………………。まぁ、彼は悪くないんですけどね。
一花姉さんは三玖の告白を阻止出来たのが嬉しくて内心悪い笑みを浮かべる。が、そんな笑みを浮かべてしまう自分に対しての嫌悪も感じており、相反する感情が彼女の中を渦巻いていている状況。姉妹に対して表面上ではいつも通りにしていても裏では結構悩んで思い詰めてる。この旅行で救いはあるのかどうか。
星奈さん、キャラが若干崩壊。幕間の物語でらいはちゃんの可愛さに悶えていたが、総悟からの唐突なおねえちゃん呼びはそれ以上に悶えていた模様。そして後から恥じるオチ。それでも悪い気はしない、むしろ嬉しいので週一で呼ばれたいらしい。何だこのお姉ちゃん、可愛すぎかよ。
そしてマルオは星奈さんを零奈さんに重ねる。別に今のところは恋が始まる予定はないけど、どうなんだこれ。
今日もこんな駄文を読んでいただきありがとうございました。これからの話の展開どうしよっかなー……………………。