三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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え?タイトルが原作のまんま?あー……………正直言うと、良いのが思い付かなかったのでまんまです。これからも思い付かなきゃまんまのスタイルで行きます。

では、どうぞ~。


屋上の告白

「昨日の悪行は心優しい俺がギリギリ許すとしよう。今日はよく集まってくれた」

 

翌日、上杉から『昨日と同じ時間に来てくれ』とメールが来たので、マンションに行ったら5人全員揃っていた。 一花姉さんは寝てるし、二乃はスマホをいじって見向きすらしてないが。

 

「さて、今日集まって貰ったのは「待ちなさい」…………何だ、二乃?俺に聞きたいことでもあるのか?」

 

「あんたじゃなくて、隣のこいつよ」

 

ビシッと指差してきたのは俺の方だった。

 

「俺?」

 

「そうよ。…………昨日の………あんたの使用人の星奈とか言ってた人…………来てないでしょうね………?」

 

……………ははーん。相当星奈さんがトラウマになったのか。

 

「安心しろ、今日はお休みだからな。ついでに言っておくと、星奈さんは家庭教師関連については何も口出しする気はないぞ。立場的には部外者だからな」

 

昨日は誰かさんが犯罪になり得るとんでもない手段を用いたから怒っただけの話である。

 

「ホッ……………」

 

「だが、お望みとあらば電話して5分で来るぞ」

 

「呼ばなくて良いわよ!」

 

即答だな。

 

「話を戻すぞ。二乃、お前は昨日家庭教師はいらないと言っていたな。なら、それを証明してくれ」

 

「証明?」

 

「これは昨日できなかった小テストだ。このテストの合格ラインを超えた奴には金輪際近付かないと約束しよう。勝手に卒業して行ってくれ」

 

ふむ………………なるほど。馬鹿正直に5人教えるんじゃなくて赤点候補のみに絞って教えれば良い的な考えか。まぁ、悪くない考えと言えばそうだが………。

 

「………なんでそんな面倒な事をやらなきゃ」

 

「分かりました、受けましょう」

 

「は?五月、本気なの?」

 

合格すれば(・・・・・)良い話です。これでもう関わらなくて済みますから」

 

……………何かフラグが立った気がするのは気のせいだろうか。

 

「そう言うことならやりますか」

 

「頑張ろー!」

 

「合格ラインは?」

 

「60………いや、50あれば良い」

 

まぁ、このテストでその点数位あれば卒業は何とか出来るか。成績の中身が輝いているかはさておき。

 

「別に受ける義理はないけど…………あんまりあたし達を侮らないでよね」

 

他の4人の様子を見て、二乃もやる気になった模様だ。

 

「ところで、上杉。制限時間は?」

 

「そうだな…………30分って所か」

 

「30分…………それだけあれば、15分の短編アニメを2本見れる!」

 

「ふーん、あんたオタクなんだ。見た目はまぁまぁなのに、中身は陰キャね」

 

「よーし、星奈さん呼ぶか」

 

「え?!ちょ、冗談よ!だから呼ばないで!」

 

暫くは弄って楽しめそうだな(ゲス顔)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『衛〇さんちの今日のご飯』を見て唐揚げとサンドイッチ食いてー、とか考えている間に30分経過。その後、手分けして5人の採点を終えた。

 

「採点終わったぞ!100点だ!全員合わせてな!!」

 

上杉の顔が引きつってやがらぁ。しかし、三玖が1番点数が高いな。流石は俺の(以下略)

 

「お前ら…………まさか………」

 

「逃げろ!」

 

「あ、待て!」

 

自分達の部屋に逃走を図る五つ子。と言うか、何故に四葉も逃げるんだよ。その場のノリか?家庭教師が上杉1人なら今日は逃げられて終了だったろう。

 

──────────だが。

 

「げっ!」

 

「ところがぎっちょん、問屋はそう簡単に卸しませんッ!」

 

もう1人(オレ)いるんだなぁ、これが!こんな事になろうかと思って、階段の前でスタンバっておいて正解だったぜ。

 

「テスト終わってそれで終了!お疲れイエーイで終わっちゃダメでしょうが!これから間違えた所みっちり叩き込むぞ!喜べ、少女達。君達の学力はようやく上がる。………………何か麻婆豆腐食いたくなってきたな」

 

「何でそうなるのよ!?」

 

二乃はツッコミが上手いなー。原作でもツッコミキャラだったのだろう(適当)

 

それから2時間、何度も逃げられそうになりながらも上杉と一緒にたっぷり勉強させた。すんごく疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日後の週明け

 

「ハァ、ハァ……………ギリギリセーフ…………」

 

「朝からお疲れだな」

 

HRの時間まで暇だったので散歩がてら校内をぶらぶら歩いてたら息を切らした上杉と遭遇した。

 

「お…………お前は辛くないのか……………家庭教師と自分の勉強の両立が…………俺は徹夜してたから眠くてしょうがないぜ……………」

 

「んー、別に」

 

上杉と違って体力あるんで(どや顔)

 

そんな話をしていると1台の黒いリムジンが俺達の近くに停車する。

 

「おお、見たこともないカッコいい外国の車だ………100万くらいはするだろうな………」

 

「お前の車の相場はどうなってやがる…………多分1000万円は超えてるぞ」

 

「なん、だと……………!?一体どこのどいつだ、こんな金持ちしか乗れない車に乗ってるのは……………って!」

 

「あっ!フータロー君にソウゴ君!」

 

「またあんた達?」

 

「…………………」

 

「おはようございます!」

 

「なんですか、ジロジロと不躾な」

 

あらー、誰かと思えば中から出てきたのは五つ子ちゃん達ではありゃせんか。車登校とは贅沢な気がしなくもない。

 

「おい、逃げるな!見ろ、俺達は手ぶらだ!害はないぞ!」

 

「騙されないわよ」

 

「参考書とか隠し持ってない?」

 

「油断させて勉強教えてくるかも」

 

二乃、一花姉さん、三玖の反応からどれだけ勉強嫌いなのかよーく伝わってくる。勉強に親友でも殺されたんか?

 

「私達の力不足は認めましょう。ですが、自分の問題は自分で解決します」

 

「1人でも出来る」

 

「そうそう、要は余計なお世話って事よ。じゃ」

 

「あっ、おい待てぃ(江戸っ子)」

 

五月、三玖、二乃がそう主張して去ろうとするのを俺は止める。

 

「そんなに自信があるなら、この前の小テストと同じ問題出されても答えれるよなぁ?」

 

「「「「「…………………」」」」」

 

何故誰も視線を合わせようとしない。おい、こっち見ろ。

 

「………厳島の戦いで毛利元就を破った武将を答えよ」

 

数秒の間の後、背を向けていた五月が振り返る。お、答えれるかと期待したのもつかの間。

 

「…………………(プルプル)」

 

無言ッ………………!この前2時間の時間を掛けた意味とは()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………火野……………あいつらは大の勉強嫌いで………ついでに俺達の事も嫌いらしい」

 

「うーん、悲しいかなそのようだね」

 

今も前を歩く五つ子達と物理的、そして精神的に距離がある。

 

「先ずは1人ずつ信頼関係を築く所からか……………俺の苦手な分野だ…………代わりに火野がやってくれないか?」

 

「俺だけ信頼関係を築くんじゃ駄目だろ、お前も家庭教師を続けるなら」

 

「はぁ…………やっぱりそうだよな……………ん?」

 

「どったの?」

 

すると上杉は『五つ子卒業計画』と書かれたノート を見せてくる。

 

「……………………むむっ。さっき俺が出した問1の問題、三玖は正解してるじゃん。あれ、じゃあ何で」

 

「さっき答えなかった、って事だよな」

 

うーむ……………総悟君的にこれは何か裏があるとみた。

 

「昼飯のタイミングにでも聞いてみるか…………だが、上杉。お前は何も言うな。俺が訊く」

 

「え?まぁ、別に良いがなんでだ?」

 

「だってお前、社交性とか無いやん。そんなお前が話してさらに関係が拗れたら面倒でしょうが」

 

「うぐっ……心当たりが有りすぎてぐうの音も出ない………」

 

─────とまぁ、表面上はそう言っているが実際は三玖と話したいだけだったりする。

 

三玖と2人で話すのに………上杉。お前は邪魔だ(無慈悲)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「いたいた……………やっほー、三玖」

 

「?」

 

食堂で三玖を発見した俺は話し掛ける。後ろには一応上杉がいる。

 

「ちょっと聞きたいことが……………何これ、抹茶ソーダ?何か面白い味がしそう…………」

 

三玖の好物か?元々覚えていた原作の知識にはなかったから初めて知った。

 

「……………意地悪するソウゴにはあげない」

 

ぴえんを通り越してぱおん。あと上杉、後ろで逆に味が気になるとかうるせぇ!

 

「えっとですね……………今日の朝の問題についてなんだが」

 

「上杉さん、火野さん!お昼一緒に食べませんか?」

 

ギャァァァァァァァ!

 

「な、なんだ四葉。それに一花もか。まったく、四葉。お前はいつも突貫だな。驚かせやがって…………」

 

「上杉の言う通りだ!急に来たから心臓止まるかと思ったぞ、もう……………」

 

「あはは、朝は逃げてすみません!それより見てください!英語の宿題、全部間違ってました!」

 

それを笑いながら言うのだから若干頭が痛くなってきた気がする。

 

「ごめんねーソウゴ君、邪魔しちゃって」

 

「一花も一緒に見て貰おうよ」

 

「うーん、パスかな。私達バカだしね」

 

「自覚はあるんだ……………なら普通は見て貰いたくならんのか?」

 

我ながら俺の声には純粋に呆れの成分がみっちり入っていた。

 

「そもそも、折角の高校生活を勉強だけってどうなの?もっと青春をエンジョイしようよ!例えば恋とか!」

 

「恋?」

 

あーもう。また後ろの上杉がスイッチ入っちゃったよ。

 

「アレは学業から最も掛け離れた行為だ。したい奴はすれば…………ッ!?」

 

俺がドラゴンボール(隠喩)潰しの構えに入ると察しの良い上杉は口を閉じる。以降もこうして強制シャットダウンさせよう。

 

「恋愛したくても先ず相手がいないんですけどね。三玖はどう?好きな男子とかできた?」

 

「えっ…………い、いないよ」

 

あ、行っちゃった。つーか結局訊けなかったし。

 

「あの表情、姉妹の私には分かります!三玖は恋をしています」

 

「え。………………だ、誰に?」

 

「うーん、それは流石に分かりませんが…………気になりますね!」

 

「うん、めっ──────────────ちゃ気になる!!」

 

誰だ?クラスの男子か?いや、しかし転校してきたばかりだし……………だが、可能性的に無くはない。くそぅ、誰だ?どいつを消せば良い(過激思想)

 

「ソウゴ君は三玖の好きな人が気になるの?」

 

「え……………うん、まぁ…………そりゃ」

 

クッ、痛いとこを一花姉さんは突いてきやがったな………流石に正直に言うのはちょっとまだ覚悟がなぁ…………。

 

「そりゃ気になるだろうな。勉強して貰わなきゃ困るのに、恋なんかされたらたまったもんじゃない!だろ、火野?」

 

「……………うん。まぁそんな所だ」

 

ナイスゥ、上杉!!今度ピザまん2個奢ってやるよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふー、にしても危なかった。まったく、一花姉さんは痛いとこを突いてきやがる。女の勘って奴は中々の脅威だな……………うん?

 

「手紙?誰から………………ッ!?」

 

まさかの三玖だった!!

 

『放課後に屋上に来て。ソウゴにどうしても伝えたい事がある。どうしてもこの気持ちが抑えられないの』

 

…………………………………え、マジ?これ……………………ラブレター?いやいや、マジ?!え、ちょ………………マジ!?(語彙力低下)

 

「あれ、ソウゴ君どうしたの?顔赤いし、ニヤついてるけど何か良いことでもあったの?」

 

「ちょ、話し掛けるな花〇香菜!俺は今とんでもない事態に直面していて精神的に生きるか死ぬかの瀬戸際のレベルなんだよ!」

 

「え!?て言うか、花〇香菜って誰!?」

 

「お前の中の人だよ!!」

 

「中の人ってどういう事!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

「くそっ、静まれ俺の胸のドキドキ…………静まれってんだよ!…………あぁ、クソ!やっぱ無理だ!」

 

放課後になった瞬間に俺はダッシュで屋上に来たが、三玖はまだ来ていなかった。

 

「ヤバい、意識すればする程胸のドキドキが…………こんな状態じゃまともに話せる気がしない!こうなったら、別の事に意識を集中させるしかねぇ!ガチャ引くぞ!!」

 

どういう思考回路でスマホゲームのガチャを引くことにしたのか後になっても未だによく分からない。

 

「ハァ、ハァ……………引くぞ、俺は引く!☆5キャラを引く!引かなきゃ誰かの養分……………!行けッ………………来た、確定演出!!さぁ、吐き出せ!!お前らが喰らってきた課金ユーザーの金、命、魂、希望、絶望、その全てを吐き出せ!!行けェェェェェェ………………いや、ど゛う゛し゛て゛ダ゛ブ゛リ゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛

 

床を転がりながら、俺の中のカ〇ジ(藤〇竜也)が久しぶりに復活。まぁ、緊張を紛らわす目的もあったが純粋に欲しかったキャラでもあるので普通に悔しい。

 

「悪魔…………このド悪魔め!クソっ、この悲しみはTwitterに書き込んでや………………らぁ?」

 

その時、俺は漸く気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に三玖がいた事に。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「…………い、いつから見てた?」

 

「……………引かなきゃ誰かの養分、辺りから」

 

……………………。

 

俺はスマホをポケットにしまう。そして、床を転がった時についた汚れを軽く払って、咳払いをする。

 

「………………安心しなよ。そんなに待ってないから」

 

「…………何事もなかったかのように進めるのは無理があると思う」

 

ですよねー!!あー、もう恥ずかしい所を見られちまったよ、畜生!!熱中しすぎて気づかなかった!!今日は何て日だ、厄日だ!!

 

「うん……………まぁ、見られちまったものはしょうがない。全部説明すると、ちょっとゲームのガチャでお気に入りの強いキャラを引こうとしたら全然欲しくないダブリが出てきて発狂するほど悲しんでたってだけ。取り敢えず、他の皆には言わないでくれると助かるなーとかお願いしてみたり…………?」

 

「……………分かった」

 

それを聞いて取り敢えずホッとした。

 

「さて、気を取り直してだ………………あの手紙について、なのだが……………」

 

「…………食堂で言えたら良かったんだけど、誰にも聞かれたくなかったから」

 

え。やはりまさか?

 

「ソウゴ、あのね。ずっと言いたかったの………」

 

フーッ………………良いぜ、俺も覚悟が決まった。どんとカモン!

 

「……………す………す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陶 晴賢!」

 

クゥゥゥゥッ!!!来たぁ、告白!勝った!五等分の花嫁、完!!出会って3日しか経ってないけど、まぁ良いか!!その言葉をずっと聞きたかったんだよ、陶晴賢って言葉…………………を?

 

陶晴賢?

 

「陶晴賢……………すえはるたか…………………あ、1問目の答え…………。え、それを言いに来た系?」

 

「そうだけど」

 

「………………………」

 

あぁ………………………ほんとに。告白されると思い上がっていた自分が恥ずかしい。『くっ、殺せ!』の台詞しか今の俺の頭にはない。つーか、冷静に考えたらまだ出会って3日目じゃん!世の中、そう簡単に物事が全て思い通り運ぶわけがないだろ!それは転生しようとも変わらないのがこの世の摂理なんだよ、クソが!(半ギレ)

 

「よし、言えてスッキリした。それじゃ」

 

「あ、うん……………って、ちょっと待って!!」

 

このまま俺が恥かいただけで終われるか!せめて少しでも仲良くなって信頼を勝ち取らないと!

 

そう考えて去ろうとする三玖の肩を掴んだ衝撃で三玖の手からスマホが落ちる。

 

「わーっ」

 

「あ、ごめん!」

 

慌てて拾うとその衝撃で電源かついたのか画面が見える。ホーム画面には『風林火山』の武田菱────。

 

「見た?」

 

ヒッ…………こ、怖っ!

 

「…………み、見ました…………」

 

「………だ、誰にも言わないで………戦国武将、好きなの…………」

 

フム…………三玖は歴女だったのか。それならあの問1が正解できたのも納得できる。

 

「それにしても戦国武将かぁ…………切っ掛けは何だったの?」

 

「切っ掛けは四葉から借りたゲーム。武将達の野心に惹かれて本も沢山読んだ。でも、クラスの皆が好きなのはイケメン俳優や美人なモデル。それに比べて私は髭のおじさん………………変だよ」

 

……………………………。

 

「別によくない?」

 

「え?」

 

「仮にその趣味が人から見て変だとしてもよ。俺から言わせれば、人と変わったものを好きになって何が悪いって話よ。趣味なんて人それぞれバラバラで当たり前だろうし、周りがどうとかなんて気にしないで、三玖は自分が好きになったその趣味に対して自信と誇りだけ持ってれば良いんだよ。変とか言う奴がいても気にすんな。殴って黙らせときゃ良いんだよ………ってのは流石に冗談だけどな」

 

「…………………!」

 

……………あぁ、そう言えば。前にも────前世でもこんな事を言っていたな…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==============

 

俺は小学生の頃からラノベが好きだった。切っ掛けは………………まぁ、正直に言うと本屋に行った時にたまたま視界に映ったラノベの表紙の女がエロ可愛いかったからだ。ちなみにそのラノベ、内容はめっちゃ感動的で涙腺がやられて本屋で大泣きして周りからドン引きされたり、見かねた店員さんからテイッシュを貰ったのは今となっては良い思い出。そのラノベを読み終わる頃には俺はすっかりラノベに夢中になり、そこから派生して漫画やアニメにも興味を持ち始めた。

 

少ない小遣いを貯めては買って、学校でも読み始めたりした。当時、友達はいなかったから別に俺がラノベとか読んでても特に何も言われなかった

 

小5までは。

 

小5になってクラス替えをすると、今まで同じクラスになった事のない奴とクラスが一緒になったのだが─────そいつが厄介者だった。そいつは陽キャでクラスのリーダー的な奴だった。だが、どうもラノベばっかり読んでる俺が気に入らなかったらしい。俺の事を馬鹿にしだしたり、悪口を言いふらしたりしやがった。リーダー的な奴が言い始めるとクラス全体の雰囲気もそう言う感じになって、クラスの居場所がなくなっちまった。

 

ただ、俺は関わるのも面倒だし正直どうでもよかったから何の反応もしなかった。それが奴にとっては面白くなかったのか、ある日呼び出された。

 

『んだよ、わざわざ呼び出して。俺はさっさと帰って今日発売の新刊を買いに行きたいんだが』

 

『安心しろ、お前が素直に従えばすぐ終わる』

 

『(こいつは相変わらずの上から目線の馬鹿だな)』

 

『お前もいい加減意地を張るのをやめろよな?余裕ぶっこいてるけど、ほんとは影口とか悪口を言われて、誰も味方がいなくて悲しく思ってんだろ?家で泣いてんだろ』

 

『(いや、どうでも良いと思ってますー。まぁ、家では(感動的なラノベを読んで)泣いてはいるが)』

 

『ほんと、お前って変な趣味を持ってるよな。お前みたいな何が面白いのか分からない変な本を読んでる陰キャがいるとクラス全体のイメージが汚れるんだよ。だから、2度と学校で読むんじゃねぇ』

 

『変な趣味、ね……………』

 

『あ?』

 

『いーや、何でも……………約束しろよ。止めれば、陰口とかなくなるんだな?』

 

『ふんっ……………あぁ。約束してやるよ。陰口とかはなくなる。さぁ、俺の前で2度とその下らない本を持って来ませんって言えよ』

 

『………………………』

 

『何を黙ってやがる!早く言え!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だが断る』

 

『は!?』

 

『この岸辺ろ………じゃなくて、この火野 総悟の最も好きな事のひとつは自分が偉いと勘違いしてる上から目線の馬鹿に『NO』と断ってやることだ』

 

『て…………てめぇ……………良いぜ。なら、俺に歯向かった罰だ。こうしてやるよ!』

 

『あ、おい!』

 

奴は突然手に持っていたラノベをひったくると、そばにあったゴミ箱の中に捨てた。急いで拾うが、ラノベはゴミで汚れていた。

 

『ざまぁみろ!俺に歯向かうからこうなるんだ!』

 

『…………………』

 

『どうした?悔しかったら何とか言い返してみろよ、あ?あ、ごーめん!変な本ばっかり読んでる陰キャには無理か!ハハハハッ!』

 

『ふーっ…………………よし、お前に一言だけ言い返そう』

 

『お?何だ、言ってみろよ。どうせ大した事もな』

 

『オラァ!』

 

『グベラ!?』

 

不意打ちパンチが奴の顔面にクリーンヒット。咄嗟の事で防御もしなかった為、かなりの距離を吹っ飛んでそいつは倒れる。

 

『さっき一言だけ言い返すと言ったな。あれは嘘だ。一発だけ殴るの間違えだったわ。だが、お前には言いたい事が山ほどあるから、全部吐き出させて貰うぞ』

 

俺は奴の頭を掴んで未だに状況が呑み込めてなさそうな奴の目を真っ正面から見る。

 

『1000歩譲って俺の趣味が変だとしてもだよ、それの何が悪い。人と変わってるものを好きになって何が悪いってんだよ。俺はこの趣味を持ってる事に対して自信と誇りを持ってる。お前からどう思われようとも俺はこの趣味を捨てるつもりはねぇし、そもそも俺の趣味について他人のお前らからあーだこーだ言われる筋合いもねぇんだよ。笑いたきゃ勝手に笑ってろ。こっちも読んでもないくせにラノベを変だ、面白くないだの言ってるお前の滑稽さを逆に笑ってやるからよ。だが、また今みたいな事をやってみろ。暫く学校に来れなくなるかもな』

 

『ヒッ……………………!』

 

『おい、さっきまでの威勢はどうした?所詮は自分が強いとでも勘違いしてた頭お花畑のイキり野郎か?……………チッ、馬鹿馬鹿しい。時間の無駄だし帰るか。じゃーな、アホ陽キャ。また明日なァ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………その後、あいつが何を言ったのかは知らないが、学校中で俺がヤバい奴みたいな噂が広まって、あいつも含めて避けられるようになったんだよなぁ…………しかも最悪な事に、あいつと同じ中学校と高校だったから、その状況が高校を卒業するまで続くと言う、あまり良いとは言えないオチなことで…………)

 

「…………………ソウゴ?」

 

「…………ごめんごめん。前にも似たような事を言ったなーって考えてただけだから……………そうだ!三玖が知ってる戦国武将の事を問題にして出してみてくれないか?」

 

「え?」

 

「こう見えてもですね……………俺、結構歴史好きなんですよねー。ワンチャン、三玖より詳しかったりして」

 

「………じゃあ問題ね!信長が秀吉を猿って呼んでたって話は有名けど、この逸話は間違ってるの!本当はなんて呼ばれてた?」

 

急にめっちゃ喋りますな……………まぁ、本当に好きな事を話すなら誰しもそうか。

 

「簡単ですねぇ。答えは禿げ鼠」

 

「せ、正解…………!」

 

そこから三玖もヒートアップしたのか、いわゆるマシンガントークと言うやつで喋ってくる。

 

「上杉謙信が女だったって説もあってね」

 

ありましたね、そんな説。昭和43年に小説家の八切止夫が提唱したんだっけ。

 

「三成は柿を食べなかったんだ。その話を聞いたときは感動したなぁ」

 

その逸話は石田三成の往生際の悪さとして紹介される事があるらしいが、個人的にはいい話だと思うぞ。

 

「信長が頭蓋骨にお酒を入れたとか………」

 

浅井久政と長政、朝倉義景の頭蓋骨に漆を塗ったやつね。

 

────そしてトークはまだまだ続き、1時間後に三玖が喋り疲れてか終了した。

 

「ほ、ほんとに…………詳しいんだね…………」

 

「まーね」

 

にしても、三玖の知識は中々のものだ。戦国武将にしか興味はなさそうだが、教え方次第では日本史とかすぐに好きになりそうな気もするな。

 

「暗くなってきたな……………そろそろ帰るとしようかね」

 

「え?……………あ、ほんとだ。いつの間にこんな暗くなってたんだ……………気付かなかった」

 

「熱中してたしね。楽しかったよ」

 

三玖がとても楽しそうに話してるのを見ると、こっちも無性に楽しかった。

 

「ありがとう、ソウゴ。私も楽しかった……………そ、それでね…………」

 

ん?

 

「あ、明日……………もし予定とかないなら……………また一緒に話さない…………?」

 

なにぃ!?三玖様からのお誘い、だと…………!?

 

「もっちのろんよ!俺で良ければ、いつでもどうぞ!」

 

断るわけがねぇでしょ!仮に予定が入っていたとしても、その予定を爆☆殺するわ!!

 

「!…………………じ、じゃあ明日…………放課後に校門の前で………………またね」

 

そう言って三玖は屋上から去って行った。それから暫く俺は何も言わずに立っていた。そして屋上から三玖が学校から出ていくのを確認した瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イ゙ェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア───!!」

 

それから5分間、俺氏は狂喜乱舞の雄叫びをあげてたとさ。

 

ちなみにこの後、声を聞き付けて駆けつけた先生にめっちゃ怒られた。

 

to be continue………




三玖「(……………変な叫び声が聞こえたような…………不審者?夜道には気を付けよう……)」

全部見ていた神様「(その不審者、ついさっきまで君と話していた男です)」


今日も駄文を読んでいただきありがとうございました!

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