三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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おひさです。言っておきますが、別にウマ娘やってたから遅くなったとかではないです。忙しいんです。

そういや今日からSAOの映画でしたっけ。最速上映で見た人とかいるのかね?まぁ、良いや。作者は明日行くので感想欄でネタバレとかするなよ、フリとかじゃなくて絶対だかんな!

それでは、スクランブルエッグ編最終回どうぞ。


スクランブルエッグ Ⅶ

日付は一日前に遡る。

 

「それじゃあ、早く寝なさい」

 

確保された二乃が部屋に戻り、少し前に部屋に戻っていた三玖、そして一花や五月、四葉の3人がすやすや寝ているのを確認したマルオは部屋から出て行った。

 

「(まさかパパに捕まるなんてね………………ついてないわ。にしても、フー君はメッセージを見てなかったのかしら?)」

 

誰にも頼らず上杉と会おうとした二乃。少し前に上杉の携帯にメッセージを送っておいたのだが、残念ながら会いに来たのは上杉ではなくマルオであった。上杉の携帯の電源が入ってないのを二乃は知らない。

 

「(はぁ………………………旅行中はこれまでね。大したアプローチの一つも出来なかったわ。けど、一花と星奈さんに相談して色々とスッキリ出来たのは良かったわ。………………………覚悟してなさいよ、フー君。絶対に………………振り向かせるから!)」

 

そう宣言して二乃は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後

 

「(………………………相変わらずいい湯だった)」

 

二乃を部屋に届けた後、マルオは1人で貸し切り状態の温泉に浸かっていた。そして今、温泉から上がった所である。

 

「(それにしても、二乃君はこんな夜に一体何をしに外に出かけていたのだろうか?……………………そう言えば、さっき火野君に上杉君の事を聞いていたが、まさか…………………いや、流石に考えすぎだろうか?)」

 

脳内でブツブツ呟きながら脱衣所から出るマルオ。男湯の暖簾をくぐると、同じタイミングでに2つ隣の女湯の暖簾をくぐって出てくる人物が。何気なくその人物に目を向けたマルオの心の中にビックリマークが乱立する。

 

「………………………おや」

 

その人物は星奈であった。容貌は違えども、やはりかつての奥さんである零奈と面影をマルオは感じてしまう。

 

「あなたは…………………マルオさんでしたか。確か会うのは初めてですよね?私は白水 星奈と申します」

 

「……………………ど、どうも(やはり気のせいではない……………否応なく零奈さんの面影を感じる……………!)」

 

マルオは動揺しつつも、何とか返事を返して会釈する。

 

「それにしても、春だというのに今日は少し冷えますね」

 

「………………………そ、そうですね…………ははは(棒読み)」

 

緊張とか動揺で不自然すぎる迫真の棒読みを披露してしまう。この失態に脳内で頭を抱えているマルオ。そんなマルオの心情を知ってか知らずかさておき、星奈はさて、と切り出す。

 

「マルオさん。少し聞きたいことがあるのですが……………………………私の事をよく見てきていましたね?」

 

「!」

 

「……………やはりそのようですね」

 

何も言ってないのだが、顔に出てたのか星奈は確信したように呟く。

 

「その………………………私に何か御用ですか?何か話したい事がある、とか?」

 

マルオは考える。このまま何も言わなければ何故かこちらをちらちら見てきた怪しい変人と思われ、それを星奈が総悟らに話し、そこから更に総悟が自分の娘たちにも話して伝わってしまう可能性がある。そんなことになっては引かれた娘からはさらに距離を置かれるかもしれない。そんな状況は望まないので、ここは正直に話して誤解を解いたりする必要性がある────────そう結論付けるまで掛かった時間は僅か1.35秒である。

 

………………………尤も。そう言った打算を抜きにしても、純粋な興味から零奈と雰囲気が何処となく似ている星奈と話してみたい気持ちはあったが。

 

周りに誰もいないことを確認すると、マルオは口を開く。

 

「……………似ていたんです、あなたが」

 

「……………誰とですか?」

 

「私の妻です─────もうこの世にはいませんが。それでついつい気になってしまって……………」

 

「!………………………すみません、辛いことを思い出させてしまって」

 

「いえ、謝るべきは僕の方です。不審に思われるような事をして申し訳ありませんでした」

 

そう言ってマルオは頭を深く下げた。

 

「別に怒ってもいませんし、気にしてませんから頭を上げてください。…………そう言う事でしたか。私はそんなに似ているんですか?顔とかそっくりなんですか?」

 

「いえ、そっくりと言うわけではないんですが…………………凛としている雰囲気が何処となく似ています」

 

「そうなんですか……………………あ、立ち話もあれですし、座りませんか?」

 

星奈の提案にマルオは頷くと、2人は近くにあった長椅子に座って話を続ける。

 

「………昨日から少し気になっていたのですが、星奈さんは火野君とはどんな関係なんですか?姉弟(きょうだい)みたいに仲が良さそうでしたが」

 

「私は総悟様の家で働かせてもらっている使用人でして。まぁ、総悟様は実の弟のように思っていますが…………………総悟様と言えば、彼はマルオさんの事を私に時々話していましたね」

 

「…………彼は私の事をなんと?」

 

「………………『悪い人ではないけど、娘と距離を置いたりしてるのは『親』としてはちょっとダメなんじゃないのかなー………………例え血の繋がりがないとしても。親なのは変わりはないんだし』と」

 

「!………………火野君は僕と娘に血の繋がりがない事はどこで知っていたのですか?」

 

「前に五月さんが総悟様に話していたそうで。他にも『上杉との電話での会話を聞く限り、家出問題は『解決したならそれで良し』で『何で家出に至ったか』の『過程』には無関心っぽくて……………確かに結果も大事だけど、過程も同じくらい大事だと思うんですよねー』などと言っていましたね」

 

「…………………………」

 

マルオにとっては少し、いやかなり耳が痛くなる言葉だった。子供の言葉故に認めるのは少し癪だが、それらの発言自体はあながち間違えではないからだ。

 

「人の家庭に口を出したり、会ったばかりでこんな事を言うのは無神経かもしれませんが…………………………私も総悟様概ねに賛同です、特に前者は。前に五月さんが話していた事を総悟様から聞いていますが例え血の繋がりはなくとも、娘と距離を取るのはどうかと私は思いますが」

 

「……………………………」

 

全く以てその通りだった。マルオ自身もこのまま距離を取っているままではいけない事は分かっていた。

 

「………………僕もこのままではいけない事は薄々分かっていた。だから今回、別の思惑(・・・・)もありはしましたが、思いきって家族旅行を提案したんです。今までは僕抜きだったんですが…………………………結局、この旅行でも何も変われなかった。相変わらず娘達から距離を取ってしまう………………しかも、距離を取ってしまう理由が分からない。何度自問自答しても分からないっ……………………!」

 

マルオにしては珍しく感情が高ぶったようで拳を強く握りしめていた。

 

「いや、そもそもとして。娘達を引き取って5年間、今まで変われてこなかったのに急に変わろうだなんて無理な話だったと言う訳か…………………きっと僕はこれからもずっとこのまま「それは違いますよ」……………え?」

 

思わず間の抜けた声を上げるマルオ。そんなマルオを目に据えながら星奈は強い口調で語る。

 

「人は変われますよ。決して諦めようとしなければ、ね」

 

「…………………………………」

 

「何でそう言い切れる、と言う顔をしていますね?……………………私もかつて似たような事で苦しみました。変わったと思っていたのに何も変われてなくて………………………そんな時に私のお父さんが言ってくれたんです。『変わりたいと心の底から願っているなら、人は絶対変われるよ。何故なら人間は己の弱さを受け入れて、それと戦える生き物だからね』と」

 

「!」

 

──────人の限界を勝手に決め付けないでくれませんかね。知ってますか?人間ってのは成長する生き物なんですよ。

 

マルオは数か月前に総悟が自身に言っていた言葉を思い出した。成長する/変われる──────言葉こそ違えど、意味合いやその本質はどちらとも一緒なのだろう。そして当の四葉もテストでかつての自分(・・・・・・)からは変わった/成長した事を証明してみせた。

 

「変わりたくて今回の家族旅行を提案したんでしょう?もし今も変わりたいと思っているなら、例えどれだけ時間が掛かったとしても変われますよ。必ず、きっと──────私がそうだったように」

 

そう言って星奈は笑って見せる。その笑顔も何処か零奈と重なって見えた気がした。

 

「…………あなたのお父さんはいい父親ですね」

 

マルオがそう言うと星奈は遠い目をしながら語る。

 

「………………私のお父さんは命の恩人です。絶望して挫けそうになった私をもう一度立ち上がらせてくれました…………………………お父さんがいなかったら私は今ここにいなかったでしょう。あまり頻繁には会えないですけど、私は大好きですし尊敬しています。そして、私のお母さんも命の恩人ですね。もう既に亡くなってしまっているのですが…………………………お父さんと同じく大好きですし尊敬しています」

 

「………そうですか」

 

「………………さて、長く話し過ぎましたね。そろそろお開きとしましょうか」

 

腕時計で時刻を見てみると、もう日付も変わっていた。

 

「とても有意義な時間でした。………………まぁ、不器用なりにやれるだけあがいてみようと思います」

 

「えぇ、それで良いと思いますよ」

 

こうして大人同士の会話は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の女子風呂にて、5つ子やらいは、星奈は帰る前にもう一度温泉に入りに来ていた。各々が堪能する中、四葉がらいはに話し掛ける。

 

「らいはちゃん、今日で旅行もおしまいだけど、どうでしたかー?」

 

「うん、すっごく楽しかったよ!昨日はお父さんとたくさん遊びに行って、凄いところにブランコがあったんだー!とっても良い所だったって学校が始まったら友達に自慢するの!」

 

「わぁーっ!やっぱりらいはちゃんは良い子です!戸籍の改ざんと言う犯罪ギリギリの事をしてでも自分の妹にしたいくらいです!」

 

「思いっきり犯罪ですが………………」

 

「ふふっ」

 

とんでもない事を口走る四葉に五月が静かにツッコミを入れ、それを見て星奈は笑う。

 

「そういえば、三玖さんと一花さんはどこにいるの?」

 

「お2人ならそこのサウナですよ。そう言えば、サウナって脂肪が燃焼してダイエットに効果があるそうで。何かの雑誌で読んだ気がします」

 

「五月、入ってきたら?」

 

「なっ!?何を言っているんですか二乃!別に私は太ってませんよ!……………多分ですが

 

ちなみにこの後、二乃が体重計に乗せてこようとするのに五月が超全力で抵抗したとかしてないとからしいが、その真偽は闇の中である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、サウナの中では三玖と一花によるサウナの我慢対決が行われていた───────ちなみに、別にどちらとも『サウナ耐久レースやろー!』的な事は言ってないのだが、何となく始まった感じである。

 

「三玖……もう限界なんじゃない……………………?」

 

「まだ平気………………………それよりも一花」

 

サウナの熱のせいか表情がとろけそうだっが、三玖はその表情を引き締める。

 

「何か私に言いたい事でもあるの?」

 

「…………………よく分かったね」

 

「一花からサウナに誘われた時に何かあるんじゃないかって。…………それで、話って?」

 

話を促された一花も表情を引き締めると、三玖に叩きつける─────────恋の宣戦布告を。

 

「私ね……………ソウゴ君が好き」

 

「………………………。そっか」

 

演技などではなく、三玖は大して驚いた様子は見せなかった。一花にとってはそれは少しばかり驚きだった。

 

「………………………もしかして、気づいてた?」

 

「ううん。……………ただ、もしかしてって気は少ししてた。確信はなかったけど」

 

「………そうだったんだね」

 

どうやら確信が無かったから口には出さなかっただけで、内心では半信半疑のような感じだったようだ。

 

「三玖には背中を押すとか応援するとか言っておいて急にこんな事を言い出したのは悪いとは思ってる。ごめん。……………………………けど、私は誰よりもソウゴ君の事が好き。だから、例え妹が恋のライバルだとしても………………………………譲るつもりはないから」

 

そう言って一花は三玖に宣戦布告を叩きつけた。三玖はそれを聞いて数舜黙り込んでいたが、すぐに口を開く。

 

「さっき一花が言っていた事だけど、1つだけ間違ってるよ─────────誰よりもソウゴの事を好きなのは私だから」

 

「!」

 

「前にも言ったけど、私は一花を待たない。だって」

 

「早い者勝ちだから………………でしょ?」

 

「ふふっ……………うん、そうだね」

 

一花/三玖も恋のライバル(三玖/一花)に対して笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、前にネットの記事で読んだんだけど、サウナって脂肪燃焼の効果があるからダイエットに良いらしいよ」

 

「そうなんだ………………それなら五月ちゃんはサウナに入った方が良いかもね」

 

「この旅館でもかなり食べてたもんね」

 

ここでもサウナを勧められる五月であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、男子風呂では。

 

「それで昨日、星奈さんにブランコを押してもらってたんだよ!らいはも超楽しそうだったんだぜ!」

 

「ああ^~いいっすね^~。やっぱりブランコは王道を征く遊具ってはっきり分かんですね」

 

「…………………………………」

 

「(……………………何だこの異様な空間は……)」

 

勇也の思い出話を聞く総悟と無言で温泉に浸かるマルオ、そして居づらいと言うか気まずさを感じている上杉と言う光景が繰り広げられていた。

 

「カーッ!にしても風呂で飲む酒は堪んねぇな!マルオ、お前も一杯どうだ?」

 

「上杉、僕を名前で呼ぶな。……………………それに、酒は特別な日だけと決めているんだ」

 

「ったく、相変わらず固い事言うなー」

 

「……………じ、じゃあ俺は先上がるわ」

 

「おー」

 

これ以上耐えられず上杉は先に出て行った。

 

「そういや2人とも、さっき仲居さんから不思議な話を聞いたんだが」

 

「不思議な話と言いますと?」

 

「知っての通り、この旅行はうちの息子、総悟、そしてお前んとこの嬢ちゃんの3人が偶然当てたもんだ。だが、そんな都合のいい話があると思うか?5組限定だぜ?そこで仲居さんに質問したんだ。この旅行券が当たった客は何組来ましたかって」

 

「正確には俺の親父なんですけどね。それで、何組来てたんですか?」

 

「何と俺らより先に既に3組来てたんだとさ」

 

「…………………不思議な話もあったものだね」

 

「だろー!?」

 

「…………………あっ、ふーん(察し)」

 

賢さSSの総悟は大体分かった(ディ〇イド)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、マルオ氏とお爺ちゃんとのこんな会話を俺達はこっそり聞いていた。

 

『最後くらい、孫たちとまともに話してはどうか?貴方に残された時間は少ない』

 

『思い出は残さぬ。あの子らに二度と身内の死の悲しみを与えたくない』

 

そんな訳で俺は賢さLv99の俺はマルオ氏がわざわざ自腹でここに来た真意を悟っていた。無論、上杉もだろうが。

 

さて、もうすぐチェックアウトの時間なので俺達はお爺ちゃんの所に来ていた。

 

「…………………………………」

 

……………………来たんだけど、生きてるよね?マジで微動だにしないな。

 

「お世話になりました」

 

上杉が代表してお礼を良い、一緒に頭を下げる。するとお爺ちゃんが口を開く。

 

「孫達はわしの最後の希望だ。零奈を喪った今となってはな」

 

「え………」

 

「!」

 

…………………そうか。四葉が正体を隠して名乗った『零奈』と言う名前は今はもう亡きお母さんの名前だったのか。これで上杉は零奈が5人の中の誰かと分かった筈だ。上杉が零奈の正体を見抜くのも、そして四葉が再び過去と向き合うことになるのも時間の問題かもな。

 

「どうか孫達に伝えてくれ。自分らしくあれと」

 

「「………………………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、荷物を片付けたりしたら旅館を後にする時間になっていた。全員が外に出るとお爺ちゃんが見送るために外に出てくる。

 

………………………さてと。

 

「1つ提案なんですけど、折角だから旅館をバックに記念写真を撮りませんか?」

 

「賛成ー!皆で写真撮ろうー!」

 

らいはちゃんが賛同したこともあって記念写真を撮ることに。そして少し離れた所で微笑ましそうに見つめているお爺ちゃんの声を掛ける。

 

「お爺ちゃんも一緒に撮りませんか?撮りましょうよ~(提案)」

 

「………………儂もか?」

 

「そう、儂もです!記念写真は皆揃って撮らなきゃいけないって、それ一番言われてますから。そうだよねー?」

 

「そうですよ!お爺ちゃん、一緒に撮りましょう!」

 

四葉の言葉に他の4人もうんうん、と頷く。他ならぬ大切な孫に言われては断れないのか、お爺ちゃんはこちらにやって来る。立ち位置はセンターだ。

 

「それでは撮りますよ。はい、チーズ」

 

江端さんがカメラで撮ってくれたのを真っ先に見せてもらうと、お爺ちゃんは照れくさそうに、楽しそうに笑っているのがはっきり分かった。皆が撮った写真を見て盛り上がっている中、俺はお爺ちゃんの所へ。

 

「良いんですか、思い出残しちゃって?」

 

「……………はて、何の事だかな。年を取ると忘れっぽくなって困るものだ」

 

「フッ………………まぁ、俺から誘っておいて言うのも何かアレなんですけどね。けど、写真のあなたが楽しそうで良かったです」

 

「孫との写真を嫌がる祖父がいるわけなかろう?」

 

「そりゃそうですわな。……………彼女達はきっとあなたの死も乗り越えます。あなたが思っている以上に彼女達は強い。半年ばかりの付き合いですが、それだけは保証します」

 

「……………そうか」

 

「思い出を残さないなんてもう言わないでくださいよ、そんなの悲しすぎますから。また彼女達との思い出を作りに何度も来ます。その時には」

 

「姉妹の顔くらい見分けられるようになっているんだな────もう1人の方にもそう伝えておいてくれ」

 

「えぇ、分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後、総悟はフェリーのデッキにて独り潮風に当たっていた。

 

「Foo!↑気持ちぃ~」

 

「ここにいましたか、火野君」

 

そこに現れたのは五月だった。

 

「ん?あぁ、五月か。………………五月にはこの旅行中で色々とお世話になったな。ありがとさん」

 

「ふふっ、どういたしまして。何があったのかは存じませんが、一花もスッキリした表情を浮かべていましたよ」

 

「そっか。そいつは何よりなことで。この旅行中は色々とあったが、まぁ終わりよければ全て良し…………………………………いや、待てよ。二乃の悩み相談をまだしてないやん!今からここに呼んで聞くしかねぇ!」

 

「二乃は今寝てますよ。と言うか、私以外の姉妹は皆寝てます」

 

「ウゾダドンドコドーン!」

 

膝をついて叫ぶ総悟。が、『………まぁ、ええわ。船が着いて起きたら聞けばええか』と秒速で自己完結した。ちなみに、この後二乃に聞いて『悩み?確かにあったけど、もう解決済み』的な事を言われる。

 

「つーか、もうすぐ3年か………………………ここから受験まであっという間だぞ、マジで。高3の1年間は体感的に早すぎィ!って感じだからな」

 

「そうなんですか…………って、その口振りだと既に体験しているかのような気がしま」

 

「親!親が言ってたの!」

 

慌てて誤魔化す総悟。実際は五月の言う通り高3の1年間は体験済みなのだが。

 

余談だが、彼は前世よりも更にパワーアップしてるので1度目の高3の時よりは色んな面で余裕がある。全国模試の成績も絶好調であり、彼は知るよしもないがこの時点で極端なサボタージュしなければ何処の大学にでも行ける未来が確定している。

 

「受験とか皆も頑張るぞー!テイ、テイ、オー!(…………………帰ったらウマ娘2期見よ)」

 

「いや、そこは普通『エイ、エイ、オー!』なのでは!?」

 

五月のツッコミがデッキに響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太平洋上にある無人島。辺りには海以外に何も見当たらない静かな無人島の静寂を打ち破るかのように空から明滅する何かが勢いよく落ちて、爆音を辺りに響き渡らせて大きなクレーターを作る。

 

「よっ、と」

 

クレーターのすぐ側に静かに着地するのは序列第1位の神様だった。未だに砂埃で視界不良な中、第1位はクレーターに向けてどこからか取り出したメガホンで声を掛ける。

 

「そろそろ抵抗もやめたらー?3時間も戦っては逃げたりを繰り返してさぁー。戦ったり追ったりするこっちの身にもなってくんない?」

 

「ならば死ね、第1位ッ!!!」

 

クレーターから飛び出した男が巨大な大剣を振り下ろすが、第1位は余裕のバックステップで避ける。

 

「やれやれ、人気者は辛いって言葉が身に染みるねぇ」

 

「調子に乗るなァァァァァ!!!」

 

その咆哮には反応せずにどこか呑気な第1位は後ろに出現した黄金の波紋から剣を取り出す。その剣は青く美しい剣身をしており──────そして鍔には青い薔薇(・・・・)の装飾が施されていた。

 

男は大きく跳躍して第1位に襲い掛かる。当の第1位も男に向けて飛び出し────────────互いにすれ違いざまに剣を振るい、そして背を向けた状態で位置を入れ替えて着地した。

 

ピシッ

 

大剣にひびが入る。瞬く間にそのひびは全体に広がった次の瞬間、男の大剣は粉々に砕け散った。だが、男には驚愕する時間すら与えれない。

 

「エンハンス・アーマメント」

 

振り向きざまに第1位がそう唱えて剣を地面に突き刺すと、刺した所から青薔薇の枝のように広がった冷気が男を頭から下を一瞬で凍らせた。氷を破ろうにも既に消耗しているせいで不可能。

 

勝敗は既に決した────────────否。(第1位)と対峙した時点で既に勝敗は決していたのだ。

 

「…………クソッ……………なるほどな。元人間だろうと第1位と呼ばれるだけの実力はあるって訳か……………………」

 

「ほー、やけにあっさり負けを認めるじゃないの(………………俺を襲ってくる奴らには共通してる点がある。特殊な魔術によってあらゆる能力を駆使しても『思考(・・)』や『記憶(・・)』が全く読めない点。しかも無効化や解除が一切出来ない。色々と研究はしているけど、未だにこの魔術の解除法が見つからない………………………厄介なものだな。相手の思考や記憶さえ読めれば黒幕(・・)も分かって解決も早まるんだけどなー)」

 

内心ではそんな事を考えつつ第1位は男に近づく。

 

「で、君の目的は何だったわけ?」

 

「…………………………………」

 

「この世界で何をしでかしたのかと思って魔力が行使された場所を調査してみれば、あらビックリ。君は何もしてなかった(・・・・・・・・)。世界各地で無害な何らかの魔術を行使して魔力の痕跡を残して各地を転々としていた………………………僕に神界を不在にさせる作戦って訳か」

 

そう問い掛けると、男はニヤリと顔を歪ませる。

 

「…………………フハハハハハッ!!流石は第1位サマだなァ!その通りだ、大正解だ!………………………だが、気づくのが遅かったな。もう遅い。既に俺の目的は達成させられた!!神界に連絡でも取ってみろよ。今頃大混乱に陥っ」

 

いつから僕がたった今気づいたと錯覚していた?

 

「………………何?」

 

「僕を不在にさせる誘導なんじゃないかってのは調査初日で予想していた。だからあっち(神界)に連絡して警戒レベルを上げておくように行ったら…………………………ビンゴっ!昨日、機密情報を盗もうとした輩を捕らえたと部下から連絡が入りました~!どんどんぱふぱふ~」

 

「なっ……………………」

 

「覚えておくと良い。僕のモットーは『人の100歩先を行く』、ってね」

 

「この……………たかが元人間風情がァ………………!」

 

「君が見下しているその元人間に出し抜かれちゃってどんな気持ち~、とだけ言っておくよ。はい、つーわけで君を連行してさっさと帰りまーす。こちとら溜まってる通常業務と忙しくて出来なかった漫画の最新話のチェックとか色々やらなアカン事があるからな……………………ぶっちゃけ今は調査と追跡で疲れてるから仕事はしたくない気分なんだけどねー。こいつだけ先に送って海水浴でもしてから帰ろうかなー…………………まぁ、帰るの先延ばしにしても仕事が減らないんだけどね………

 

憂鬱そうにため息をつきながら一時の現実逃避を行おうか真面目に検討している第1位。だから、彼への警戒がほんの一瞬だけ緩んでしまう。それが攻撃の隙となった。

 

「チイッッ!!!!!」

 

会話の為に氷漬けにしてなかった首が眩しく光りながら胴体から外れて彼に飛び掛かる。

 

「このまま牢にぶち込まれるくらいなら───────テメェを道連れにしてやらァ!!!!!」

 

「………………やっべ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、巨大な熱エネルギーが島を丸ごと呑み込んだ───────。

 

to be continued…………………




何だこのマルオ……………………原作よりも感情豊かじゃね?知らんけど。書けば書くほどマルオが原作と乖離していくような……………………だが、これで良い!(強引)

神様が使ってたSAO要素は……………………まぁ、『映画がもうすぐだし、おまけ程度にいれるかー』って感じで入れた。もう一度言うが、ネタバレするなよ、ほんとに。

星奈さんの過去編の大筋は大体纏まっています。いつからやるかはまだ未定ですが、そこら辺で彼女のお父さんやお母さんも出てきますので、お楽しみに。

…………………まぁ、お父さんかお母さんかは言いませんが、どちらかは片方はもう既にこの小説に出てきてるかもしれませんし、出てきてないかも。さー、どっちかなー。

そういや、上杉関連の恋が全然進んでないな……………………まぁ、上杉は別に主人公ではないし、別に良いか。(後で)何とでもなるはずだ!(マ〇ティー)

次回は久々の幕間の物語。二乃と総悟の絡みです。たぶん一週間以内には投稿します。破ったらすまん。

本日もこんな長い駄文を読んでいただきありがとうございました。

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