三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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お待たせ、アイスティー……………あ、違う違う。

四葉の幕間の物語です。案外短い気が……………………まぁ、幕間だし良いでしょ。


罪の鎖は想いを縛って離さず

12月23日

 

「ふんふふふーん~♪」

 

自分の好きなアニメの主題歌を鼻唄で歌いながら町を歩くのは中野家の四女、四葉である。

 

「いやはや、ラスト1個でギリギリセーフだったけど……………何とか手に入れられて良かった~!」

 

今日は四葉の好きなアニメの円盤の発売日。ネット注文でも手に入れる事は出来るのだが、店頭販売限定のイラストカードを求めてわざわざ出向いて手に入れた次第である。

 

「限定イラストカード以外にもアニメの第0話にあたる小説もついてるから楽しみだなー……………………あ、そう言えば火野さんもこのアニメが好きだったような…………私よりも前に来て買ってるのかな?」

 

火野と四葉の共通点に『アニメ好き』と言う共通点がある。それが判明したのは彼と出会って翌日の土曜日。『屋上の告白』の回の話よ。5人で100点のテストをみっちり復習させられた後、四葉は火野に話し掛けていた。

 

『あのー、火野さんってアニメとか好きなんですか?』

 

『そうだよ(肯定)』

 

『やっぱり!私もアニメが好きなんです!』

 

『あ、マジ!?そっかー、何か嬉しいなー。四葉は何のアニメが好き?』

 

『私はですね─────────』

 

この後、他の面子を置いてきぼりに2人はアニメトークを30分程繰り広げていた。途中で二乃が『はよ帰れ』的な事を言っていたのだが、トークが白熱しすぎてどちらからもスルーされたのは言うまでもない。

 

そんなこともあって、共通の趣味を持つ者同士で結構仲が良く、家庭教師の授業終了後に好きなアニメの感想や考察を話したりするのも珍しい光景ではない─────────最近は三玖が少し不満そうにしているのだが。

 

そんな事を考えながら近くの公園に通りかかると─────────

 

「………………あれ?火野さん?」

 

ベンチに座って熱心に何かを見ている人物は自分達の教師だった。四葉は近づいて話し掛ける。

 

「火野さーん」

 

「……………」

 

「……………………あれ?火野さーん!」

 

「んぁ?……………あれ、四葉じゃーん」

 

2回目の呼びかけで漸く反応した総悟。その手には特典の小説が。

 

「漸く反応してくれました。2回呼び掛けたんですよ?」

 

「あ、そうなの?全然気付かなかったなー」

 

「…………ははーん。さては、その特典の小説に夢中になってたんですね?」

 

「あ、バレた?…………お、四葉も買ったのか」

 

「はい!ラスト1個でしたが、滑り込みセーフです!」

 

えっへん、と少し誇らしげに四葉は商品を見せる。

 

「おー、そうかそうか。1つ言っておくと、この特典の小説……………色々と凄いぞ。読んだら尊死しそう(小並感)」

 

「そんなに凄いんですか!一体何が書いてあるんでしょうか…………?」

 

「それは見てのお楽しみって事で。…………あ、そう言えばさ。前から四葉に1つ聞きたかった事があるんだけど、今良いか?」

 

「私に、ですか?よく分かりませんが聞きたいことがあるならお構いなく尋ねてもらって構いませんよ!」

 

「じゃ、お構いなく。…………俺の勘違いだったらごめんだけど。四葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前、5年前に上杉と会ってるだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何でそれを知っ……………あっ!」

 

口を手で塞いだ時にはもう遅かった。予想外の質問だったから、思わず正解と言わんばかりの言葉を漏らしてしまった。私の反応を見て火野さんは確証を得た表情を浮かべる。もう手遅れだ。私の頭ではここから上手く誤魔化す方法は思いつけなかった。

 

「……………やっぱり四葉だったか。忘れていたわけでもないらしいな」

 

火野さんの中ではすでに確信があったのだろうか。口振りからそう感じた。

 

「………………どうしてそう思ったんですか?」

 

「四葉だけは最初から好意的だったからな。そこで俺はこう考察した─────『昔、上杉に会ってたから最初の時点で好感度が高かったんじゃね?』と……………………まぁ、正解だって確証はどこにも無かったけど」

 

「…………だとしても、正解してしまう辺り流石は火野さんですね」

 

「……………………四葉」

 

火野さんの表情に真剣味が増す。

 

「何であの時名乗り出なかった?それに上杉に『もう会えないって』言ったらしいじゃないの。どうしてそんな事を?」

 

「………………………」

 

「……………何か理由があるなら、俺で良ければ力になれないかって思ったんだが…………………余計なお世話だったか」

 

「そ、そんな事はないです!余計なお世話なんて思ってません……………………私の事を考えて言ってくれてるのはとても嬉しいです……………………でも、これで良いんです。私だけが特別であってはいけないですから」

 

「……………………」

 

「昔、私はお母さんの為に。上杉さんはらいはちゃんの為にと、互いに勉強を頑張ろうと約束したんです。ですが…………………私は下らない事に執着して上杉さんとの約束を破り、勉強を疎かにして部活動ばかり打ち込んだ私だけ落第しました。そして私は姉妹の皆を巻き込んで転校する事になって、迷惑を掛けてしまったんです………………」

 

一度話し始めると堰を切ったかのように止まらなかった。何で話してしまったのだろう。私は火野さんに自分の過ちを話して贖罪でもしている気になっていたのだろうか、私は。

 

────────そんな事で私の罪が許される訳ないのに。

 

「上杉さんはテストで1位を取れるようになっていた…………………あれからずっと勉強していたのが私にも分かります。それに比べて私は……………」

 

「…………確かにそれは『自分が京都の子』って言いづらいわな」

 

「………今の私は姉妹皆のおかげでここにいます。なので、自分だけ特別だなんてあってはならない。だから、あの時の事は全部消してしまおう………………そう決めて私は5年前に出会った格好に似せた服で」

 

「『さよなら』を告げたって訳か…………………」

 

私の言葉を火野さんが継ぐ。勿論その言葉は正解だ。

 

「……………………火野さん。この事は」

 

「誰にも言わねーよ。……………この事を勝手に言う気にはなれない。俺の胸の内にしまっておく事を約束する」

 

「……………すみません、ありがとうございます。……………………では、私は失礼しますね!また明日の決行日にお会いしましょう!その時にこの小説の感想も言いますね!」

 

この話題を打ち切るかのように明るい声を出して私はすぐに去ろうとする。逃げようとした理由は簡単だ。火野さんの表情からして私に何を言おうとしてるのか分かったからだ。多分、その言葉は────────

 

「四葉」

 

逃げるよりも前に火野さんから声が掛かる。流石に無視は出来ず私は立ち止まる。

 

「俺も話を聞いたばかりで考えがまとまってる訳じゃないんだが……………………四葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあいつまで経っても四葉は幸せになれない(救われない)ぞ」

 

その言葉は……………………私の行為(さよなら)への否定。そう言って良い。確かにその通りかもしれない。この生き方は私が本当の意味で求める────────いや、求めていた『幸せ』は来ないのかもしれない。

 

「それで良いのか?」

 

「……………私の『幸せ』は姉妹の皆が幸せになってくれる事です。だからもう幸せです(救われてます)よ」

 

私は張り付けたような笑顔でそう言って、公園を去っていた────────その幸せは本当でもあり、嘘でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟は四葉が去った後もベンチに座っていた。その目は小説には向いておらず、黙って空を眺めていた。

 

「まー、総悟君なら気付くと思ってたよ。『京都の子』の正体にね」

 

総悟が声のした方を向くと、滑り台に寝転がる神様の姿が。何気に久しぶりの登場である。

 

「………最近姿を見せないと思ってたら急に来たな」

 

「年末が近くなると、こっちも決算とかで色々と忙しくてね」

 

「会社かよ……………」

 

それで、と神様は切り出す。

 

「どうする?上杉にバラすのかい?」

 

「言わねーよ。誰にも言わないって約束したし」

 

「……………………………」

 

何故か神様は黙り込んで意外そうな顔を浮かべる。総悟が何だよその表情は、と尋ねると────────

 

「いや、てっきり約束を余裕で破ってバラすのかと」

 

「それやったらただの人間の屑だろ」

 

「……………………うん?」

 

「『あれ、違うの?』みたいな顔をすんな!俺は屑じゃなくてSだからな!そこんとこ間違えるんじゃねーぞ!」

 

「はいはい……………………それにしても。私の『幸せ』は姉妹の皆が幸せになってくれる事です、ね」

 

ふざけた表情から神様は真面目な表情に一瞬で変わってそう呟く。

 

「その『幸せ』は確かに『本当』だ。………………ただ、それは姉妹に迷惑を掛けてしまった負い目・罪悪感故から来たもの。だから、その幸せには彼女の『意志』…………『自分の気持ち(本心)』が含まれてない。そう言う意味では『嘘』とも言えるね」

 

「……………………」

 

「……………ただ、あまりその事ばかり考えすぎない方が良い。先ずは自分の幸せを追求しなよ。あらゆる場面において、基本的には他人の事より自分の事が優先するのが道理だからね」

 

「わーってるよ。自分よりも他人を優先する生き方は偽善、って赤い弓兵も言ってた事だし……………………ただ、このまま放置するつもりはねぇよ?俺は四葉の友達であり、そして先生でもあるからな。困っている生徒がいるなら手を差し伸べてやるのが先生って奴だろ?」

 

「────────見捨てるという選択肢は先生にはない。いつでも信じて飛び降りて下さい、か。君も立派な教師の鑑だな」

 

「……………やっぱ声真似上手いな。いや、真似って言うか……………………もはや完全に福〇潤本人だわー」

 

すると、神様はその場でくるりと回転する。次の瞬間には間接が曖昧で黄色い触手を持ち、丸描いてちょんな顔を持つ超生物───────いや

 

「殺せるといいですねぇ、卒業までに。ヌルフフフフフフ」

 

「おー、殺〇んせーだ。スゲー………………って、おい!人前で黄色いタコに変身しちゃまずいだろ!見つかったらネット上でも現実でもとんでもない大騒ぎになるぞ!」

 

「ちゃんと人がいないことは確認済みだっての。…………じゃ、僕は帰るよ。そろそろ休憩時間も終わりだしね」

 

そう言うと、マッハ20のタコの姿からいつもの姿に神様は戻る。

 

「じゃあ、総悟君。たぶん今年来れるのは今日が最後だから、一足早いが良いお年を!」

 

「おう、来年もよろしくなー。………………さて、いよいよ明日か。上杉がどんな反応するか楽しみだなー」

 

───────四葉が過去の鎖から解放されるのは、まだ先の話である。

 

continue to the main story…………




幕間の物語って基本的には1話完結型なんですけど、四葉の場合は本編にもつれ込んで延長戦。今回の話で解決した訳じゃないからね、しょうがないね。

次の幕間の物語はこの小説のメインヒロインの三玖。内容は大方決まってるので、作者の気が乗りだしたら本編と並行して書き始めるのでお楽しみに。

本日も駄文を読んでくれてありがたき幸せ!次の話でもオナシャス!

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