三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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漸くタスクを片付けて山場を乗り切ったので初投稿です。マジきつかった。




シスターズウォー? その3

時は少し遡る。星奈の前には黒い石みたいなのがあった。

 

「……………これは」

 

「………パンです」

 

何を隠そう、この黒い塊はクロワッサンであってクロワッサンではないものである(?)

 

「ま、まぁ中野さんはバイト始めたばかりだしね。パン作りは難しいから最初は誰でもこうなるよ。幸運にも向かいのパン屋はさほど脅威じゃないしね。頑張ろう!」

 

「はい!」

 

「(謎の敵視……………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少し経ったある日。星奈と今日は四葉も来ていた。そんな2人の目の前にはトロォっとした何かが。

 

「何かベチャッとしてる……………」

 

「おかしい…………手順通り作らせてるのに不思議な力で失敗する……………」

 

「(不思議な力…………もしかして、創真さん(お父さん)の仕業…………?)」

 

※違います by神様の父

 

「まぁ、前よりは食べ物に近づいてると思いますし、大丈夫ですよ。……たぶん

 

「頑張ってね、三玖!」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた少し経ったある日。三玖は誇らしげに星奈にパンを見せた。

 

「おぉ、今回はちゃんとパンですね」

 

「まだお店に出せるレベルじゃないけど、三玖ちゃんがここまで作れるようになって私も嬉しいよ………………」

 

ここに至るまでに一体何があったのか、若干憔悴している店長を嬉しそうであった。

 

「店長さん、ありがとうございます。……………でも、これはまた美味しいパンじゃない」

 

「確か修学旅行までにとか言ってたっけ」

 

「はい。一日目のお昼が自由昼食の筈……………侵略する事火の如し。そこでソウゴに私のとっておきをあげて、そして………」

 

「……………遂にやるんですね」

 

星奈は三玖が総悟の事を好きなのを三玖の総悟を見る目が他の姉妹と少し違う事から、確信はないもののだいぶ前から察してはいた。そして、恐らくもう1人(一花)総悟の事が好きな人物がいる事も。

 

ハッキリと100%の確信に変わったのは、バレンタインのチョコ作りの指導を三玖からお願いされた際に彼女が自ら明かした時である。無論、総悟にはこの事は内緒にしている。

 

余談だが、総悟が三玖の事が好きなのはとっくにお察ししているが、本人から何か相談された訳でもないので自ら干渉する事は控えている。

 

「しかし、同じ班じゃないとお昼を一緒に出来ないかもしれないのでは?」

 

「なので、既に同じ班を組む約束をしておきました」

 

「!…………先手必勝とはこの事ですね」

 

原作以上に行動力の塊とかした三玖であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた修学旅行当日。集合時間よりも1時間早く来た総悟は────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、快活。いやー、やはり漫喫は良い文明だわな。ここの漫喫は無料でトースト提供しているから朝食も済ませれたし」

 

漫喫に来ていた。修学旅行の当日に

 

もう一度言おう。修学旅行の当日に

 

「いやー、楽しみすぎて無駄に早く起きちまったからな。時間に余裕があったら、漫喫行くのはオタクにとっては普通だわな」

 

※修学旅行前に漫喫行くのは全然普通じゃないです。異常です。

 

ブースにある個室のテーブルには既に読み終わった漫画が10冊ほど積み上げられていた。滞在時間は約60分なので、1冊当たり6分ほどで読み終えた計算となる。これはかなり速いタイムと言えるだろう(作者調べ)

 

「おっと、いかんいかん。もう少しで集合時間か。名残惜しいが、そろそろ行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ソウゴ?」

 

「やぁやぁ、おはようさん三玖。皆も」

 

漫喫のあるビルから出るとばったりと三玖達に遭遇した。

 

「え、ソウゴ君………今このビルから出てきたよね……………?」

 

「ん(漫喫の看板指差し)」

 

看板を見た五つ子達は一瞬で「あっ…………(察し)」となって理解した。

 

「まさか火野さん、楽しみすぎてここに泊まってたんですか!?」

 

「んなわけあるか。早く起きたから暇つぶしに寄っただけだ。帰宅困難でもないのにわざわざ俺がここで一泊する奴に見えるか?」

 

「いえ、正直火野君ならやりかねないと思ってしまいます……………」

 

「(コクコク)」

 

五月の言葉に三玖も首を縦に振って同意する。

 

「修学旅行前にもう出費してるなんて呆れるわね…………」

 

「………んだよ、二乃のくせに……………褒めるなよ……………照れるだろうが………」

 

「脳みそ腐ってんのか!!1ミリも褒めてないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟side

 

朝から色々とあっ………………いや、別に特に何もなかったが、問題なく修学旅行開始。

 

先生の諸々の注意事項が終わって、今は駅のホームで新幹線待ちの最中。隣には三玖がいて死にそう(幸せすぎて)

 

「ふわぁ……………」

 

「どうした三玖?楽しみすぎて眠れなかった的な?」

 

「う、うん(ほんとは店長さんに無理を言って早朝に厨房を貸してもらってパンを作ってたからなんだけど………………)」

 

「旅行あるあるだよなー」

 

まぁ、ワイはそこまで旅行に行かんし、旅行死ぬほど大好き人間でもないから『普通の』旅行だったら別にぐっすりすりすり睡眠だが……………………今回は三玖と一緒の旅行なので話は別だ。昨日も楽しみすぎて中々寝付けず、ニヤニヤしながら部屋を左回りしてたわ(サイレン〇スズカ)……………しかし、やっぱ何度見返しても2期が泣けて面白すぎるんだわ。

 

さて、そうこうしてる内に団体専用の新幹線が到着。悲しい事にグリーン車ではなかった。グリーン車は自称進学校の奴らに取られた。クソが(辛辣)

 

「(ま、とは言え席が三玖の隣だしな。これは最高しか言葉が出な)」

 

「ZZZ………」

 

「(いや、寝てる!?)」

 

よっぽど眠かったのか、席に座った瞬間爆睡していた。どんだけ楽しみだったんだ。トランプとかウノとか持ってきたんだが……………………まぁ、寝顔が死ぬほど可愛いからええか!(チョロい)

 

「(ワイもちよっと眠いし、ちよっと寝よっかな。………………その前に三玖の寝顔をあと3分くらい目に焼き付けよ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………きて…………………ウゴ……………………起きて、ソウゴ」

 

あの世に行きかけるほど良い声と体を小さく揺すられる感覚で目を覚ますと、目の前に三玖の顔があった。

 

「…………………あの世?」

 

「いや、ここは現世………………それよりもソウゴ、もうすぐ着くよ」

 

「そうなん?」

 

調べてみると、どうやら丁度京都駅の1個前の駅を通過したみたいだった。

 

「折角の新幹線だけど、お互い寝て過ごしちゃったなー。ま、良い夢見れたけど」

 

「どんな夢を見たの?」

 

「グリーン車を割り当てられた自称進学校の奴らを全員ぶっ倒してグリーン車を1人で占拠する夢」

 

「そ、そうなんだ(そんなにグリーン車乗りたかったんだ…………)」

 

まぁ、そんな訳で新幹線は京都駅に到着。諸注意をパパっと先生から受けて、終わり!解散!そして自由行動開始!

 

「じゃけん、行きましょうね~」

 

「うん!」

 

ここからはダイジェストで三玖と総悟の自由行動をお届けしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都タワー

 

「どうしよう、三玖。この景色見てたら……………軽音やりたくなってきた」

 

「そっか。………………いや、何で軽音?」

 

「………何でか……わかんねぇけど……………やりたかったんだ…………どうしても………地鳴らしを(エ〇ン)」

 

「軽音じゃなかったの…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南禅寺 水楼閣

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!完全にあれやん……………けいおん!けいおん!けいおん!けいおん!けいおん!けいお(以下略)」

 

「そ、ソウゴが…………いよいよ壊れた………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大吉山展望台

 

「ふぅ、しかし先程は流石にはしゃぎすぎちまったな。流石に自重せねば」

 

「ぜぇ………ぜぇ……………」

 

「大丈夫か、三玖?」

 

「な、何とか………………それにしても、良い眺め………………」

 

「そうだな。この宇治の夜景に浮かぶ妖艶な麗奈の姿が浮かぶぜ……………(響け!ユー〇ォニアム )」

 

「いや………まだ午前中だけど……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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伏見稲荷大社

 

一花ら余りも……………仲良し姉妹らは伏見稲荷大社に来ていた。まぁ、もっと言えば主に二乃の先導で上杉らの班の後ろをこっそりと着けて辿り着いたようなものだが。一花も、四葉も、五月も誰もその先導を止めなかったのは各々の思惑や考えがあったからなのは言うまでもない。

 

「(!………………いた、ソウゴ君と三玖だ。予想通りこの時間に来たね)」

 

一花は修学旅行前、総悟がどこを巡るのかをさりげなく尋ね、ここに来ることも把握していた。そして、移動時間や電車・バスの運行間隔、各スポットでの滞在時間等の様々な要素を考慮し、ここに来る時間を大まかに予測していたのだ。

 

その次に一花は自分の班がどう動くのかを考えた。二乃、四葉、五月らの性格等様々な要素を塾慮し、こう結論を出した。

 

恐らく二乃の主導で上杉の班についていくであろう、と。

 

そう考えた一花は今度は上杉らの班にもさりげなくどこを巡る予定なのかを尋ねた。すると、彼らの班も伏見稲荷大社を訪れる事が判明したのだ。そこからまた移動時間や(同上)の様々な要素を考慮し、ここに来る時間を大まかに予測した結果、上杉の班と総悟の班がほぼ同時刻に伏見稲荷大社を訪れるのではないかと言う説が浮かんだ。だから、一花は二乃が上杉の班に着いて行くのに対して異議を唱える事はなかった。

 

無論、一花はただ予測しただけ。当日の状況によっては外れる事など当然ある。故に、半分以上賭けに近かったが──────── 一花はその賭けには勝った。

 

だが、これはまだ勝負の土俵に立っただけなのは当に理解していた。恋のダービー。相手は自分の妹(三玖)

 

「(………………三玖、林間学校の時に言ってたよね、私もお好きにどうぞって。そして、負けるつもりもないからって。………………三玖の告白を邪魔するつもりはない。けど、私は三玖が告白するのを待ったりはしない。私の好きに、自分のタイミングでさせてもらう。そして、私も負けるつもりはないからね)」

 

一花がそう決意している一方、総悟は上杉たちの存在に気が付いた。

 

「おー、誰かと思えば上杉達やん。ここで会うのは偶然とも言えるし─────そうでないとも言えるね」

 

「どっちだよ………」

 

「やぁ、火野君に三玖さん!君たちもここに来るとは奇遇だね。僕たちは今から学問の神様が祀られてる神社に行くつもりだけど、君たちはどうするんだい?」

 

「……………マジか、俺達もそこに行くつもりだったんだよなー」

 

若干苦虫を嚙み潰したような表情になっているのはたぶん気のせいだろう。決してちよっと面倒な武田がいるからとかではない筈だ、恐らく。

 

「私達は受験生だから真剣に神頼みしないと。私は勿論、皆の分も」

 

「だな。特に二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とか二乃とかな」

 

「(あんの野郎……………!)」

 

二乃がツッコミに飛び出そうになるのを何とか理性で抑えているのをいざ知らず、結局5人で目的の神社に到着した。

 

「じゃ、俺ら先にお参りさせて貰うわ。この後も予定があるんでね(と、言うのは嘘ではないけど三玖と2人っきりで回りたいんだわ!!)」

 

「お前らそんなにスケジュールを詰め込んでるのか?」

 

「まぁ、それなりには(そんなに詰め込んでる訳でもないけど、早くソウゴと2人っきりで回りたいしそう言う事にしておこう)」

 

同じことを考えている2人はお賽銭を投げ入れて祈る。

 

「(三玖達が無事に希望の進路に進めますように…………もし進めなかったらこの神社燃やすからな(脅迫))」

 

どこぞの彼女が100人出来る予定のモンスター彼氏と同じような脅迫も付け加えて総悟の参拝は終了。参拝する上杉らと別れて先を進み、千本鳥居のマップに入る。

 

「おぉ、すげぇな…………」

 

「壮観…………………」

 

思わず足を止めてそう呟く2人。写真もパシャパシャ撮っていると、総悟はひみつ道具を取り出すかのように棒を取り出した。

 

「テッテレー!自撮り棒~(某青タヌキ風)……………折角だから一緒に撮る……………撮らない?」

 

「!………うん、撮る!」

 

と、言う訳で鳥居をバックに2人でパシャリ。

 

「おぉ、ええやん。後で三玖にも送るわ(三玖が可愛いすぎるんだわ。世界遺産とギネスとノーベル賞の申請しよ………)」

 

「うん、お願い(後でバックアップして、帰ったら現像して額縁にいれて飾ろ……………)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四ツ辻

 

「ぜぇ…………ぜぇ………………」

 

「ふー、頂上まであと少しか。三玖はマジで大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫…………」

 

瀕死寸前(大嘘)の三玖。総悟は辺りを見回すと、目と鼻の先にお食事屋があるのを見つけた。

 

「………あぁ、そういやここに美味い飯屋あるんだっけ……………あっ、そうだ(唐突) 三玖、あの店にぃ、うまいご飯があるらしいんだけど行きませんか?行きましょうよ(名案)」

 

美味いご飯も食べれて三玖の体力も回復できるまさに一石二鳥の名案。だが、三玖には手作りのパンがある事を総悟は知らない。

 

「!…………待って、総悟。実は……………お昼を作ってきたの」

 

「おー、そうなんかー…………………って、なにィイイイイイィ──────ッ!!

 

一瞬遅れて理解した総悟はジョ〇ョ風の驚きの声をあげた。

 

「私のとっておきを作ったの。だから、お昼は眺めの良いところで食べない?」

 

「勿論勿論モチロン!そんなの当たり前だよなぁ?(あびゃびゃべべぶぶぶぶぶぶぶぶぶ)」

 

まさかの手作りに総悟の心の声は完全に語彙力を失った模様。

 

「ふぅー…………………じゃあ、行こっか」

 

「Oui(フランス語で『はい』)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一花side

 

四ツ辻に到着した時にはもうソウゴ君や三玖の姿はもうなかった。あとフータロー君達も。恐らくもう頂上に向かっているのだろう。……………そして、三玖は恐らく頂上で何か仕掛ける気だ──────例えば告白。

 

根拠はなくてただの勘だけど、何故か確信があった。5つ子故なのだろうか。

 

「へー、行き方が2通りあるんだね」

 

「フー君はどっちの道を行ったのかしら……………」

 

「あ、美味しそうなお食事屋さんがありますよ!」

 

……………五月ちゃんには少し悪いけど、ここは先を優先させてもらおう。

 

「左のルートの方が少し早いみたいだしこっちで良いんじゃないかな?どっちのルートを通ったにせよ、頂上に繋がってるのは同じだからフータロー君ともたぶん頂上で会えるだろうから早く行こうよ」

 

「……………それもそうね。早く行きましょ」

 

「ご飯……………」

 

……………よし、これで計画通り。実際の所、どちらのルートが早いかどうかは知らないし、ソウゴ君らがどっちを選んだのか分からない。ただ、右のルートにはなくて左のルートにしなないものがあるのを私は事前に知っていた。

 

それは──────

 

「あ、お手洗いです」

 

五月ちゃんの言う通り、お手洗いである。

 

「丁度行きたかったのでこちらで正解でしたね」

 

「この先には確かないのよねー。私も行っておこっと」

 

「じゃあ、私もー。一花はどうする?」

 

「私は大丈夫だから待ってるよー」

 

そして、皆がお手洗いに行って私だけになった瞬間──────私は頂上目掛けて駆け出す。これで私1人。何の制限もなく行動できる。

 

「(ソウゴ君単体ならもうとっくに頂上に着いてるだろうけど、体力のない三玖がいるなら話は別。上手く行けば私が先回り出来るはず─────!)」

 

仕掛けられるタイミングがあるかは分からないが、取り敢えず先に着いておけば、三玖のみが告白すると言う『そもそも勝負の土俵にすら立てなかった』と言う事態は避けられる──────結果としてどうなるかはさておき。置いて行ってしまった皆には少し申し訳ないと思ってるけど、この恋を後悔で終わらせたくはないので、今回だけは大目に見て欲しい。

 

「(………見えた、頂上──!)」

 

ソウゴ君らと遭遇しなかったって事は、2人は右のルートだったのだろう。私は一ノ峰に足を踏み入れた。

 

「はぁ……はぁ……………誰も……………いない……………?」

 

どうやら私が1番乗りだったみたいだ。急にどっと疲れが押し寄せてくる。水分補給をしていると、左のルートから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

……………どぎゅああああああああああああああああああああ─────!!」

 

慌てて隠れた瞬間、三玖をおんぶしたソウゴ君が左のルートから現れた。

 

さて─────ここから私はどう動くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟side

 

「ハァ……………ハァ……………………つ、着いたァ!三玖、大丈夫か」

 

「ぜぇ………ぜぇ………な、何とか………………」

 

どうも、三玖がマジでヤバそうだったので途中からおんぶして一気に駆け上がってきた男です。いやぁ、普段から鍛えておいて良かった。

 

「ぜぇ…………ぜぇ……………………そ、ソウゴ……………お、お昼……………………」

 

「待て待て待て!喋るよりも先ずは水分補給しなさんな」

 

「……あ、空っぽ……………そう言えば…………………さっきの展望台の時に……………全部飲んじゃったんだっけ………」

 

おっとっと。…………頂上に自販機とか置いてあるんかな?

 

「ちよっと自販機探してくるから三玖は休んでてな」

 

「……うん、お言葉に甘えてそうさせてもらう…………………」

 

と、言う訳で自販機とかの捜索開始。頂上も案外色々な建造物とかあってまぁまぁな広さがあるんだなー、なんて考えていると。後ろから俺の名前が呼ばれる声がした。聞き覚えしかない声が。

 

「ソウゴ君」

 

「ん?……一花姉さんか。ここに来てたのか。って、他の皆は?」

 

「……………………」

 

……………ん?何かいつもと雰囲気が違う気が。

 

「……………………よしっ」

 

何がよしなん、と思ったが口には出さなかった。否、出せなかったと言うべきか。何故なら一花姉さn……………一花が今までに見たこともないような真剣な表情だったからだ。

 

「……ソウゴ君、話があるんだ。ほんとはこんなタイミングで言うべきじゃないのかも知れないけど……手遅れになったら一生後悔するだろうから……………」

 

そして、彼女は言った。

 

「ソウゴ君、私は─────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の事が好きです」

 

──────ほんの一瞬、思考が止まった。

 

「あの花火大会の日に、背中を押してくれた時からずっと好きでした」

 

ほんの一瞬、理解が追いつかなかった。けれど、すぐに理解した───────俺は今、一花に告白されたのだ、と。

 

「付き合ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バサッ

 

一花姉さんの背後から何かが地面に落ちる音がした。その何かとは小さな紙袋。そして、その紙袋を落としたのは───────

 

「み……三玖…………………」

 

「……………………………」

 

三玖は驚いた様子を見せていた。俺は告白の衝撃を受けてか、何も気の利いたことを言えなかった。対する一花は視線こそ三玖に向けているが何も言わない。三玖の左手が俺からでも震えているように見えた。けど、彼女はそれを右手で抑えて口を開いた。

 

「ソウゴ…………私────!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お取込み中悪いけど、楽しい修学旅行はおしまいだよ兄さん(・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな声背後から聞こえてきた瞬間、殺意(・・)と伴に忘れかけていた前世での記憶(・・・・・・)が一瞬で脳裏を駆け巡った。反射的に振り向くと同時に回し蹴りを放が、俺の足は空を切る。

 

誰もいなかった。嫌な幻聴でも聞いたのかと一瞬思った。だが、違った。

 

カシャン、と背後から何かが地面に落ちた音がする。音のした方を振り向くと、視線の先の地面にあったのは三玖がいつも身に着けているヘッドホン。

 

そして。

 

最初から誰もいなかったかのように。神隠しでもあったかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………三玖?」

 

先程までそこにいた筈の三玖の姿はどこにも無かった。

 

to be continued……………




次回でシスターズウォー(?)編はラストです。次々回からはオリジナル編突入です。ここが物語の大きな山場です。上手く畳めるように頑張ります。

次話を投稿する前に、まだ読んでない人は本編以外の話を読んでおいて貰えると嬉しいです。ここから先は本編以外で書いた話もバリバリ絡んでくるので。

では、次回もよろしくお願いしますばい。

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