三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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あと6話で全てに決着が着きます。それが終わったらいつものラブギャグに戻ります。

承認欲求モンスターの作者よりお願いです。シリアス戦闘よりもラブギャグ路線が好きな人、お気に入り登録解除するのはあと6話だけ待ってくれ(懇願)




第10.3巻
ブラザーズ・デスゲーム その1 


「そんな………父上、何故…………………?」

 

リリィは呆然としていた。死んだと思われていた自分の父親が生きていたから。そして、その父親から攻撃を受けたから。

 

「俺は事前にスペアの肉体を作っておき、常に記憶を本体と同調させておくようにしておいた。そして、俺が自爆で死んだ事で起動した。肉体こそオリジナルのものではないが、その記憶や意志などは全て本物という事だ」

 

「なっ…………………」

 

「しっかし、お前は役に立つ駒だったな!俺の()を疑う事もなく信じて、なーんも悪い事をしていない第1位を殺してくれたもんな!」

 

「…………嘘…………………って…………………」

 

「察しが悪いな。第1位が俺を殺して虚偽の発表で名誉を傷つけ、そして神界人を思うがままに洗脳して自分の好きなようにしている…………………そんなの全部嘘に決まってんだろうが!」

 

リリィは頭を殴られたかのような衝撃を受ける。全て嘘。第1位は何の罪もなかったと言う事なのだろうか?

 

「……世間に公表されている……………………人々の記憶や認識を書き換えたのも…………………『天の矛』による虐殺も…………………全部………………本当の……………」

 

「ああ、全部真実だ!第1位は客観的に見ればヒーローそのものだ。なぁ、教えてくれよ。そんなヒーローを騙されて殺してしまった気分はどうだ?!」

 

リリィの目から涙が零れてくる。悔しくて、目の前の男が許せなくて、悲しくて。そして、自分が許せなくて。涙が溢れるのが止まらない。

 

「ま、とは言えお前が俺の言う事を無条件に疑う事なく信じちまうのも無理はねぇ。何故なら、お前には俺の言う事を無条件に信じる(・・・・・・・・・・・・・)神聖術をお前が生まれた時から施していたからな。心当たりはあるだろ?俺が言っていたことを疑う事は無かった筈だ」

 

「ッ…………!」

 

「ま、ここ最近は神聖術の効果が薄れてか俺の行動や第1位を殺す事に対しても僅かに疑念を抱いていたようだがな。あと少し実行の指示を出すのが遅ければ殺害を躊躇していたかもしれんが……………まぁ、もはやそんな事はどうでも良い」

 

ジョーカーはそのまま第1位である事を示す指輪を拾うと指に嵌める。

 

「クックックッ……………これで俺がこの世界のトップに立った!さぁ、始めようか俺の世界(・・・・)を!」

 

「なに、を…………………」

 

「簡単な話だ。全部リセットして、俺好みの世界に書き換えるのさ。前は記憶や認識を弄って俺好みの世界にしたが…………………この方法ではまた第1位の秘書官のようなイレギュラーを生みかねない事が分かった。だから、次はこれを使う」

 

ジョーカーが指を鳴らすと映像が出現し、巨大な球体が映される。リリィは一目でその正体を看破する。それは知識としてはリリィも知っていた。

 

「核爆弾……………!」

 

「博識だな。ただの核じゃねぇ。それを神界の技術で改良し、この1発で世界は簡単に滅びる程度に威力は上がった。これを明日、準備が出来次第このスイッチで作動させる。……………第1位は人間の技術や文化をこの神界に持ち込んだ。その技術でこの神界を全てリセットする。これ以上な皮肉は存在しねぇだろう?」

 

「……そんな事をすれば………………神界人は…………………」

 

「絶滅はしねぇよ。俺とその部下は安全な隔離空間で神界が焼かれる様を楽しむからな!俺達さえ生き残れば、時間は掛かるが神界を再び元の姿に戻るだろうよ!」

 

確かに神界は元に戻るかもしれない。だが、その神界は再びジョーカーの色に全て染まる。第1位(創真)によって変わる前の、ジョーカーにとって都合のいい世界に。神界がジョーカーの私物となってしまう。

 

「(………止めなくては……………………………)」

 

第1位を殺すためにリリィは偽の仕事を数字持ち達やカノン達に与えており、今日は神界から出払うようにしてしまった。恐らくジョーカーは明日になって彼らが戻って来たタイミングで神界を焼き払うきだろう。即ち、この場で恐るべき陰謀を止める事が出来るのは自分だけだった。

 

そして、そうする事が第1位に対して出来るせめてもの償いだった。リリィが立ち上がるのを見てジョーカーは冷めた目を向ける。

 

「…………やめておけ。バージョンアップされた対神兵器の攻撃による傷は回復の神聖術では治らない。その傷があると言うのに、父親であるこの俺に勝てるとでも思っているのか?」

 

「…………もう………あなたを…………………父親とは思わない…………………私を信じてくれていた第1位様の為に…………………序列第2位として…………………お前を倒す!!」

 

そう宣言すると同時に巨大な魔法陣が出現。間髪入れずに極太の光線が放たれる。この間、僅か0.2秒。回避する隙も与えず、持てる力を出し惜しみせずに使った。

 

だが。

 

「そん、な………………今の攻撃を防ぎきるなんて…………………」

 

本気の一撃をジョーカーの対神兵器が全て受けきっていた。傷1つ付いていなかった。

 

「忘れたか?対神兵器は身体に触れる全ての神聖力及び神聖術による攻撃を無効化する!数字持ちの攻撃だろうと、例外はねぇんだよ!」

 

エニグマは内蔵されていた射撃武装を展開するとリリィの胸や足、腕を無慈悲に貫く。対神兵器の攻撃はリリィに致命傷に近いものだった。リリィは全身から血を流しながら倒れる。

 

「まだ殺しはしねぇ。明日、神界が焼かれる光景を見せてから殺してやるからな!!」

 

そう言うとジョーカーは悪趣味な笑い声をあげる。だが、リリィにはその声も徐々に聞こえなくなってくる。視界も徐々に真っ暗になる。

 

「(……第1位様…………申し訳…………………ありません………)」

 

そう心の中で呟くと同時に、リリィの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟side

 

「ああ、ぐあああああァあああああァァあ!?」

 

刀を握った瞬間だった。何かが俺の身体を一瞬で蝕み、そして言語化できない何かを根こそぎ奪っていくような感じが激痛とともに襲ってきた。あまりの激痛に反射的に手を放して膝をつく。

 

『………何とか間に合ったか。もう少し遅ければわしも危うかったかのう』

 

「!?刀が…………喋っ……………………」

 

『……………ふむ。貴様の苦悶に満ちた表情を眺めていたいところではあるが…………………先ずは、顔合わせじゃな』

 

そして次の瞬間、俺の意識は一瞬途切れるが、すぐに意識を取り戻すと目の前には小さな畳の部屋が広がっており、そして先程見たアホ毛をピョンと生やした赤紙の中学生位の女が目の前にいた。

 

「ここは……………大方、あんたの心の中と言った所か」

 

「ほう、察しが良いのう。それに、あの女(・・・)の時と違って左程驚いてもいないようだな?」

 

「まぁ…………さっきから色々と現実離れな事がありすぎて頭が麻痺してるだけかもな」

 

「なるほどのう。ま、それも無理はないじゃろうな。取り敢えずは座れ」

 

そう促されたので素直に畳に座ると、その女も座り込む。

 

「さて…………………わしの名は村正。お主が先程まで触れていた刀に宿っている魂じゃ」

 

「村正…………………確か有名な刀工だった筈だけど…………………その正体がこんなロリの女の子だったとか、F〇Oとかでよくある奴じゃねぇか…………………」

 

本当にあの有名な村正なのかは分からんが、今となってはそこはどうでも良いので口を出さない事にした。

 

「えふじーおーはよく分らぬが、ろりとか言うのはどうもわしの事を馬鹿にされているような気がするが…………………まぁ、よい。さて…………」

 

…………………そうだ、もしかして。

 

「なぁ、村正は星奈さんって言うここで働いてる女の人の行方を知らないか?」

 

「ん?……………ああ。知っておる」

 

「じゃあ、いま彼女はどこにいる!?」

 

何とか冷静でいようとしたが、耐えきれずに思わず大声を出してしまう。それもそうだろう。星奈さんは俺にとって大切な人だ。もう10年以上の付き合いもある。家族の一員と言っても間違いではない。三玖に続いて星奈さんも何かに巻き込まれた事を考えると、得体のしれない不安が込み上げてきて冷静さを失いそうもなる。

 

「…………………すまん、大声を出して。……………大切な人なんだ」

 

「………………。少し長くなるぞ」

 

そう言うと村正は語りだす。俺の屋敷で起こった事を────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ……………静かですね……………」

 

星奈は退屈そうに嘆く。今日から暫く総悟は修学旅行で不在であり、その両親も仕事で留守にしている。故に、現在総悟らの馬鹿でかい家にいるのは星奈のみだ。星奈は両親から家の留守を任されており、総悟が帰ってくるまでは1人でこの家で生活する事になる。

 

「…………思えば、長時間1人でここにいるのは初めてかもしれませんね」

 

両親が不在なのはよくあるが、この家には総悟がほぼ毎日いた。だからか、今は1人だけの状況に少しだけ寂しさを覚える。

 

「……………っと、感傷に浸っている場合ではありませんね。誰もいなくとも、ちゃんと仕事を果たさねば」

 

そう切り替えて先ずは庭の掃除からでも始めようと思った矢先、インターホンが鳴る。そばにあった子機を見ると、そこには荷物を持って帽子を被った男がいた。

 

「………はい?」

 

『あ、すいませーん、宅急便でーす。火野総悟さん宛のものですけどもー』

 

「………分かりました、今参ります」

 

大方、何か総悟が本でも頼んでたのだろうと星奈は考えながら玄関へと向かう。そして、玄関へ到着すると家の鍵を解除してドアノブに手を掛けた瞬間───────星奈の手は止まった。

 

「…………………」

 

「…………すみませーん、どうかしましたかー?」

 

ドアを挟んだ先にいる男から声が掛かる。だが、星奈はその声を無視して問い掛ける。

 

「…………………あなた、誰ですか?」

 

『へ?…………いや、ただの宅急便で「嘘ですね」』

 

男の言葉を星奈は遮って断言する。

 

「近くまで接近しなければ分からないとは、迂闊でした─────あなたは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と同じ(対神兵器)です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………うん、もう誤魔化すのは無理そうだね!」

 

無邪気に聞こえる声が聞こえた次の瞬間、玄関が大きな爆発で吹き飛ぶ。星奈は咄嗟に後ろにジャンプして無傷だった。星奈は玄関の方を見ると、ピエロの仮面を被った男がゆっくりと入ってくる。

 

「旧型にしては勘が鋭いね!これが俗に言う熟練の勘って奴かぁ」

 

「…………誰ですか、あなたは。私が目的でここに来たのですか?」

 

「別に名乗る必要なんてないけど、まぁ良いか。僕の名は総司。僕の目的は君じゃない。君はあくまで目的に必要なパーツに過ぎない」

 

「…………………」

 

男は仮面の下で笑みを浮かべながら目的を言った。

 

「僕の目的はねぇ…………………総悟を殺す事さ!」

 

「──────そうですか」

 

もはや言葉は不要だった。星奈は久しぶりに神聖力を開放すると一気に距離を詰めて拳を振るう。男は拳を避けると、一旦距離を取る。星奈の拳が当たった床には大きな穴が出来ていた。その穴の手前には黒スーツの姿に変身した星奈がいた。

 

「やるね。そんなにあいつの事が大事?怒る価値がある奴なんだ?」

 

「えぇ。あなたには到底理解できないでしょう」

 

言動から殺意が滲み出ている星奈に総司は言い返す。

 

「ああ、理解できないね。あんな奴のどこに魅力があるのか。むしろ教えて欲しい位だよ」

 

「えぇ、幾らでも教えてあげますよ─────あなたの墓前で!」

 

次の瞬間、目にも止まらぬ速さで2人は拳を交える。拳と拳がぶつかり合うたびにその余波で壁や天井に穴が次々と空いていく。

 

「あんたじゃ僕には勝てないよ、絶対」

 

「それは私を倒してから言いなさい!」

 

「ハハッ、確かに。…………………そう言えば、あんたの事はジョーカーから色々と聞いたよ。よくもまぁ、散々人殺しをしておいて平然としていられるもんだね。初めて人を殺した時はどんな気持ちだったのかな?」

 

「黙れ!」

 

怒号と伴に放たれる星奈の膝蹴りを躱して総司はなおも挑発を続ける。

 

「おー、怖い怖い。人殺しをしてると気迫も違うね~。…………ねぇ、俺とは違ってあんたは人間そっくりに人工的に作られたバイオロイドだけど……………その事実を知っても火野総悟は今まで通りの目であんたを見てくれるのかな?」

 

「っ…………」

 

その言葉に星奈は僅かに動揺する。その隙に総司の拳が星奈の腹にめり込み、星奈は大きく吹き飛んで壁に叩きつけられると地に伏して吐血する。

 

「これが…………最新型の対神兵器………ゲホッ………!」

 

「その血塗られた手を、人ですらないあんたをあいつは受け入れるとは思えないけどね。……………生まれてきた事自体があんたの最大の不幸だね。人ですらなく、その手は血に染まっていて。そして、あんたを本当に愛してくれている両親もいない。同情するよ、ほんと可愛そうにね!」

 

「…………………………」

 

「まっ、でも安心しなよ。そんなあんたでも使い道はある。兵器は兵器らしく有効活用してあげる。だから、感謝しなよ?」

 

そう言いながら総司はゆっくり近寄って来るのを感じながら星奈はふらつく足取りで立ち上がりながら考える。

 

「(………………確かに、本当の私(・・・・)を知ったら総悟様はどう思うのでしょうね)」

 

気にしないのか?それとも、拒絶されるのだろうか。後者の方だとは考えたくもないが、実際にあり得る話だ。

 

だが。

 

「………………まぁ、どちらであろうとやる事は変わりませんが」

 

「ん?」

 

「総悟様に受け入れられようが、受けいられまいが彼が私にとって大切な人である事には変わりない………………………故に、彼を殺そうとするあなたは排除する。それだけの事ですから」

 

「ふーん、泣ける忠誠心だね。まぁでも、もう楽にしてあげるよ!」

 

総司はこれまでの倍以上の速さで神聖力を纏った拳で殴り掛かる。その拳を星奈も同じく神聖力を纏った拳で迎え撃つ。近くの窓ガラスは全て割れ、壁や床はどんどんヒビが広がっていく。

 

「やっぱり僕の方が格上だね」

 

「ッ……………」

 

その言葉通り、星奈はどんどん押されていく。やはり対神兵器としては新型の方が出力面では上のようだった。

 

「ええ、そうかもしれませんね。……………………ですが、あなたに唯一勝っている点があります」

 

「へぇ、それは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「熟練度の差です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んなっ……………!?」

 

背後に強い衝撃を受けたかと思えば、その背中には複数のナイフや剣が突き刺さっていた。

 

「あなたはまだ対神兵器………………と言うか、神聖力を身に着けてからまだ日が浅いのでしょう。確かにその出力は凄まじいですが、ただそれだけ(・・・・・・)です。神聖力を応用させる技術は身に着いていないようですね」

 

星奈が独自に隠し武器として身に着けた能力、通称『投影術』。剣や銃などの武器を神聖力を用いて創り出し、それを自由に操る能力。完全に能力を習得するのにはかなり時間が掛かり、実戦レベルにまで使えるようになったのは1年程前の事だった。

 

「(身に着けておいたものの、使う機会はどうせないだろうとは思っていましたが…………………………まさか、こんな所で役に立つとは………)」

 

そんな事を考えながら、目の前で驚愕の色を隠せない男を上に放り投げると、神聖力をありったけ込めた踵落としをクリーンヒットさせる。男はなす術もなく地面に叩きつけられ、そして投影された剣で追撃され、床に縫い付けられる。そして、星奈は投影で産み出した手榴弾を手に取る。

 

「………ああ、それと1つ訂正です。私を愛してくれている両親ならちゃんといますよ。()()のどちらも」

 

そう告げると手榴弾を男の胸の上に放り投げて離れる。次の瞬間、大きな爆発が起こる。星奈が手を振ると黒煙が一気に散って視界が晴れる。先ほどまで男が縫い付けられていた場所には肉片1つ残っていなかった。

 

「っ………………ギリギリ、と言ったところですか……………」

 

緊張の糸が途切れたからか、星奈は片膝をついて地面に座り込む。激しい戦闘や何度も投影を行った事で星奈の神聖力も打ち止めだった。

 

「………取り敢えず、お父さんに連絡しなくては………………………あれ、スマホが…………………」

 

これは明らかに警察で任せられる案件ではない。そう判断した星奈はスマホで創真に連絡を取ろうとするが、スマホがない事に気が付く。辺りを見回すと、少し離れた場所に落ちてるのを見つけた。画面には少しヒビが入っていたが、取り敢えずは使えそうだった。

 

「良かった、これで連絡を……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かはっ……………!」

 

背後からの鈍い衝撃とともに星奈の胸部から剣が飛び出す。先ほどよりも多く吐血しながらも視線を後ろに向けた星奈は驚愕する。

 

「ダメでしょ、倒したと思って油断しちゃ」

 

「なん、で……………」

 

そこには殺した筈のピエロの仮面を被った総司がいた。

 

「(仕留め損ねた!?いや、直撃をくらう所をこの目で見たのに………………どうして無傷……………!?」

 

「少しだけ驚いたよ。まさかあんな隠し玉を持ってたなんて。………………まぁでも、全部無意味なんだけどね。僕の勝ちは最初から決まってたも同然なんだから」

 

そう言うと星奈から剣を引き抜く。神聖力を使い切ったも同然な星奈は傷を修復する事も出来ず、仰向けに倒れこむ。血がとめどなく溢れ、手に持っていたスマホも床に落ちる。

 

「旧式は最新式には勝てないって事が証明された訳だね。………………さて、そろそろ京都の方にも行かないとね」

 

「なに、を……する気………ですか………」

 

「簡単な話だよ。あいつをじっくり痛めつけて殺す為の準備さ。さっきも言ったけど、あんたにもあいつを殺すのに少しばかり手伝って貰うよ」

 

「ッ…………!」

 

星奈は力を振り絞ってナイフを投影し自分の心臓に突き刺そうとするが、それも寸前で止められてしまう。

 

「………総悟……………さま…………お父、さん………」

 

そう呟いたのを最後に星奈は気を失う。それを見て総司は満足げな表情を浮かべる。

 

「さぁて、そろそろ京都の方に『それは少しばかり待ってもらおうかのう』………………は?」

 

自身が優れている事、勝者である事に対する優越感に浸っていた総司はその存在に気付くのに少しばかり遅れた─────自身の背後に浮かぶ刀の存在を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと総司は見知らぬ空間にいた。そこにいたのは当然ながら村正であった。

 

「先ほどの戦闘、見事であったぞ小童」

 

「…………あんた誰?人間じゃないのだけは確かだけど」

 

「そんな事はどうでも良かろう。……………ところで貴様、総悟を殺すのが目的と言うのは本当か?」

 

「ああ。それがどうした?」

 

その問いに村正はニヤリと笑う。

 

「奇遇だな。わしもあいつを殺そうと思っていたんじゃ。ずっとな」

 

「………………へぇ」

 

それを聞いた総司もニヤリと笑う。

 

「そこで、じゃ。お主とわしの利害は一致しておる。故に、ここは手を組むと言うのはどうじゃ?そうすれば、お主は人ならざる力を手に入れる事が出来る。そうなれば、この世界の王になる事も叶うじゃろう。どうじゃ?」

 

それを聞いた総司は少しだけ考える素振りを見せるが、すぐに頷く。

 

「………………良いよ。ただし、条件がある。先にあんたの言う人ならざる力って奴を見せてよ」

 

「なんじゃ、そんな事か。構わぬぞ。そうじゃな………………じゃあ、先ずはわしの手を握れ」

 

総司は差し出された手を握る。村正の方もしっかりと力を入れて手を握る。

 

「で、次はどうすわけ?」

 

「次はな─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────こうするんじゃよ」

 

次の瞬間、総司の首が飛んだ。その表情は何が起こっているのか分かっていなそうだった。村正はいつの間にか手に持っていた刀を超高速で振るい、首だけでなく全身を細切れにする。

 

「………………甘いな、小僧。人の話をすんなりと信じるとは。愚かな奴よ─────奴を殺すのは貴様ではなく、このわしじゃ。悪いが、お主には退場して貰う」

 

そう告げると村正が持っていた刀は消滅する。尤も、これで総司の肉体が消滅した訳ではない。彼の理性、言わば心が無くなった。『精神的に死んだ』と言うのが1番しっくり来るのだろう。

 

「さて……………空っぽとなったこやつの肉体を乗っ取らせてもらおう。あの凄まじい戦闘力にも興味があ…………る…………!?」

 

ふと、何かの気配を察知してジャンプすると足の下を刀が通過する。何とか避けた村正が着地して後ろを振り向くと、そこには先ほど木端微塵にした筈の総司が立っていた。

 

「へぇ、避けたか」

 

「……………どういう事じゃ」

 

先の戦闘を眺めていた村正は彼が何か知らの能力で星奈のとどめを回避したのを見ていた。能力の正体も知れず、まともに殺りあっては勝ち目がない事を考えた村正は自身の心象結界に彼の精神を強引に取り込み、結界内で始末して空っぽとなった総司の肉体を乗っ取る算段だった。だが、彼は始末できていなかった。

 

「危なかったよ、まさか切られるとは思ってもみなかったからね。ちよっと油断したかな」

 

「はっ…………化け物が……………」

 

村正は無意識に彼に対して一抹の恐怖を感じていた。この時点では本人も、そして総司もそれに気づく事はなかったが。

 

「その言葉をそっくりそのまま返すよ。…………………さて、悪いけどもう退散させてもらうよ。僕のプランに支障が出るからね。取り敢えず、ここから出して貰っても良い?この後、京都に行ってあいつが好きな女を拉致して、確実に誘き出す為の人質にしなくちゃいけないからさ」

 

「舐めるなよ、小僧。獲物を譲れと言われて、はいそうですかと引き下がれるほど、わしの憎悪は軽くないぞ」

 

徹底抗戦の意志を見せるがごとく村正は生み出した刀を二刀流で構える。だが、それを見ても総司は余裕の表情だった。

 

「……そう言うと思った。だから、先に手を打たせてもらった」

 

次の瞬間、心象結界に裂け目が出来る。

 

「なっ!?わしの結界が!?」

 

村正が動揺した隙をついて総司は懐に入り込むと、腹をワンパンしてダウンさせ、その頭を強く踏みつける。

 

「カハッ…………………何をした…………貴様…………………!?」

 

「あんたのこの結界を自分で維持してるんだろ?だから、その源を奪わせてもらってるだけだよ」

 

「なっ………そのような事が……………!?」

 

「へぇ、神聖力とは違うけど凄まじいエネルギーだね。呪いの力って奴?総悟を殺す為に今まで貯めてたのかな?安心しなよ、あいつは僕がしっかりと殺してやるから」

 

「………………殺す!」

 

総司の目には負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。嘲笑しながら足を退けて村正を思い切り蹴とばす。

 

「これで殆どの力は吸い取った。もうこの結界だけじゃなくて自分の存在すらも維持できなくなるんじゃない?」

 

その宣言通り心象結界の維持すらままならず、村正の身体からも赤い粒子があふれ出ていた。

 

「じゃあね。このまま放っておいてもすぐ死ぬだろうから、負け犬の雑魚はあの世で自分の仇を横取りされる様を見ていてね!」

 

「……………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………っと。戻ってみたいだね」

 

あたりを見回して総司はそう呟く。心象結界から総悟の自宅に戻って来た事を確認した総司は背後を振り向くと、ボロボロになった刀を拾う。鞘から抜いて刃を何となく見てみようとするが抜けなかった。

 

「……………ま、どうでも良いか」

 

そう言うと放り投げ、刀は壁に刺さる。そして、倒れている星奈を抱えると一瞬でその場から消え去るのだった───────戦いの大きな爪痕を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

「……………くっ………………あの小僧………………やってくれたな…………………!!」

 

何もない暗い空間で独り、気絶していた村正は意識を取り戻すと憎々し気に呟く。自身を負け犬呼ばわりした男の顔がフラッシュして憎悪の炎が燃え盛る。

 

「決めたぞ……………先ずはあの小僧を殺す!わしを負け犬呼ばわりした事を必ず後悔させてやる!」

 

そう叫びながら村正は思考を巡らせる。先ずは自分が消えかかっている事をどうにかしなくてならない。村正は自身でも仕組みは分からないが、自分の力では屋敷の外に出る事すら出来ない。その為、誰かに来てもらってそいつから生命エネルギーを奪わなければならない状態だ。自身でエネルギーを生み出す事は可能なのだが、それもある程度の力を保持していなければならない。総司によってごっそり力を持っていかれた為、自分自身でエネルギーを産み出す事も出来ず、このままではお陀仏である。

 

「…………残っている力をかき集めれば、1回だけ誰かの脳内に念話を送れるが……………………適当に送ってもここへは来てくれないじゃろうな。さて、どうしたものか………………ここに必ずやって来てくれる人物且つ、あの小僧を殺すのにわしの手と足になってくれそうな人物…………………」

 

そこまで考えた所で村正の脳内に1人だけ思い当たる人物がいた。恐らく彼は今頃力を欲している。その力をちらつかせればここに来る可能性が高い。さらに、大切な人物を助ける為ならば総司を倒す───いや、殺す事も躊躇しないだろう。そんな人物がいた。

 

「心底嫌じゃが、あの小僧を殺せる確率が1番高いのは確かじゃろうな………………ここはやむを得んか。さぁ、先ずは食いついて来るか…………………」

 

そう呟いた村正は京都にいるとある人物に向けた念話を送るのだった──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────と言う訳じゃ。やはり、お前を選んだのは正しかったと言う訳じゃ。のう?」

 

「……………………」

 

to be continued………




ジョーカー………その正体は創真との争いに敗れて死んだと思われていた元第2位。実は娘がいるが、自身の駒にすぎない。娘の才能を利用して、第1位を殺害。再び神界を自分のものにするため、核技術を利用して全てをリセットしようと目論む。

リリィ……………幼少期からジョーカーの駒にされていた。真実を知ったが、その時には何もかもが遅かった………。

村正……………自身を侮辱した総司をぶち殺すという理由でに総悟に休戦と共闘を提案する。意外とプライドが高く、煽り耐性がなくて草。

星奈さん………総司に連れ去られる。

あー。もう滅茶苦茶だよ。
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