あちこちで爆発音や建物が崩れる音が響く。誰もいなくなった建物の中で座り込んでいる三玖はその音を聞いていた。
音が聞こえる度に実感する。今まさに、総悟が命と引き換えに自分を助けようとしてくれている事を。
そして、自分の内から溢れる想いを。
「……………」
やがて、三玖はゆっくりと立ち上がる。その目には何か覚悟を決めた色が宿っていた。
総悟side
戦闘の余波で崩れるビルから抜け出す。右手には村正。左手には火縄銃を携える。そして、周囲には先程まで使っていた木刀が浮いている。
「こうして殺しあっていると、昔を思い出すね兄さん!」
「そうかい!」
襲いかかってくる総司の拳や蹴りを捌きながら、反撃とばかりに手を切り落とす。もう躊躇はない。
「昔から僕は天才だった。そして、兄さんは凡人だった。だから、僕は両親から優遇されて兄さんは冷遇されていた」
すぐさま再生して迫る拳を村正で受けて、後ろにジャンプして距離を取る。
「それが、今となってはただの殺戮者か。俺が高2でお前が高1になりたての頃に事故で死んだあの親もあの世で泣いてるな」
「違うね、僕の不幸を見て泣いてるのさ!」
総司は何かの力を拳に纏わせると、そのまま拳を前に振る。俺は直感的に刀を振るうと、強い衝撃が腕を震わせた。
「鬼○の刃で言う猗○座の技か……映画見てて正解だったな……………」
『ふむ………貴様の記憶にある数々の奥義…………中々に興味深い。これなら再現できそうじゃな』
「じゃ、やってみるか…………炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねりッ!!」
総司が次弾とばかりに猗○座のパクリ的な技を飛ばしてくるのを、火縄銃を放り投げて村正を両手で持ち、某煉○さんの技を再現して防ぐ。本物ではないが、それでも攻撃は防げた。落ちてきた火縄銃で総司を狙って撃つが避けられる。
「あれは不幸だった。兄さんは遺産相続を放棄したから、僕が全て受け継いだ。大金を手に入れて幸せな生活を送っていたのに、僕は巨額の借金を背負うことになった」
「典型的な詐欺話に騙されるとは笑わせてくれるよな、ほんとに、な!」
今度はこちらから仕掛ける。総司の拳と村正がぶつかり合って火花を散らす。
「だから、兄さんを頼った。兄なら弟を助けるのは当然だと思ってたのに、兄さんは僕を見捨てた!!」
「その結果、こんな化物が産み出されたかと思うと反省はしているが後悔はしていないね。つーか、都合の良い時だけ兄を持ち出すなよ。散々こけにしてきたくせによ」
鍔迫りあっている隙に木刀を差し向けるが、総司は距離を取ると2本とも手でキャッチする。そしてそのまま力を入れて2本とも砕く。総悟は間髪いれずに大量の火縄銃で銃撃するが、何発か食らって受けた傷もすぐに治ってしまう。
「結果、僕は高校にも行けなくなって退学。人生のどん底に転落した。……………けど、今となっては感謝してる。お陰でこの力も、兄さんに復讐する機会が出来たからね!」
「ッ………!!」
一気に懐に入られて、拳を振るわれる。何とか拳を村正で反らすが、頬を僅かに掠めて血が出る。
「はっ………話が何となく分かってきたぜ。その力を手に与えたのは、恐らく第1位を殺そうとしてた連中か」
「その通りさ。実験台となる代わりにこの力を与えてくれたよ。実験は苦痛でしかなかったけど強い力が手に入ると思えば、我慢できたね!」
火縄銃や作り出した刀を射出して攻撃するが、さらに速度を上げて総司は回避して接近して蹴りを入れてくる。威力を殺しきれず俺は吹き飛ばされ、ビルの壁に叩きつけられる。今ので骨が何本か折れた気がする。
『次が来るぞ!』
「……伍ノ型 炎虎!!」
接近してきた総司にゼロ距離で烈火の猛虎を生み出すが如く刀を大きく振るい、咬みつくかのように斬りつける。ゼロ距離での強力な攻撃であるが故に、総司は吹き飛ばされるが今の攻撃はかなり命を削った。現に、血が大量に吐き出してしまう。取り敢えずこの隙に近くのビルに身を隠す。
「ゲホッ、ゲホッ……………おい、残り時間は?」
『もう10分くらいかのう。………しかし、このままでは詰むのは我らの方じゃ。いくら攻撃しても奴はすぐに再生する。あの再生さえなければ、奴はとっくに死んでおるのじゃが』
「分かってる。…………あの再生が追い付かない且つ、一撃で確実に殺しきれる技が必要だ。条件としては、再生が追い付かない程の技の威力や速度を兼ね備えたものが。髪の毛の1つも残さずに葬り去るものが」
『速さに威力を兼ね備えた技か…………あるではないか。貴様の記憶に、その条件を全て兼ね備えた技が』
俺は村正から俺の記憶にあるとある技を提示される。
「…………確かに。それはアリだが…………その技、威力も速さも再現できるのか?」
『恐らく再現は出きる。じゃが……………使えるのは1度きりじゃ』
「なるほど。だったら、ありったけの力を集めろ。1発で決める」
『無論じゃ。……………奴が来るぞ』
「…………なら、あそこに誘導するか」
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総司と総悟の2人は一部が崩壊している京都駅ビルの屋根の上に降り立つ。
「良い眺めだね、兄さん。最期に見る景色としては悪くないんじゃないかな?」
「良い眺めなのは否定しねぇ。けど、最後なのは俺じゃねぇ」
総悟は溜めの姿勢を取る事で筋力だけでなく闘気を練り、気を最大限に練り上げて両腕を含めた全身を捻る。そして、全身が燃え盛るような炎に包まれる。
「へぇ…………………まるで、最後の一撃と言わんばかりの雰囲気だね」
「ああ。これで最後だ」
「なら、僕も最大の一撃で相手しようか」
総司の方も全身が神聖力に包まれ、静かに互いを見据える。最初に動いたのは総悟だった。
「玖ノ型────────煉獄」
燻っていた火種が一気に勢いを増して炎上するかのように、爆発的な踏み込みで総司へ突進する。数コンマ遅れて総司も飛び出す。
「総司ィ!!」
「総悟ォ!!」
拳と刀がぶつかり合った瞬間、大きな衝撃波と伴に炎の柱が立った────────。
「…………………認めるよ、兄さん。ただの人間にしては中々やる方だね」
総司は真っ二つになった右手と裂けている右胸の部分を再生しながら言う。
「けど、結果として僕には届かなかったね」
総司は見下ろす。剣を手放し膝をついて今にも死にそうな総悟の姿を。無様な兄の姿を見れて総司は満たされる感じを味わっていた。そして、総司は総悟を思いっきり蹴り飛ばす。総悟は何度も跳ねて転がり、屋根の淵で止まる。総司はゆっくりと近づきながら語り掛ける。
「全部兄さんが悪いんだよ。弟を見捨てた癖に、自分だけ幸せになろうだなんて許される訳がないでしょ?」
「あ……………がっ………………」
「ま、苦しそうだし、せめてもの慈悲ですぐに楽にしてあげるよ」
総司は総悟の首元を掴むと、そのまま持ち上げる。総悟の足が宙から離れる。総司が手を離せば、総悟は60メートル下の地面に真っ逆さまである。
「仮にも兄弟だったからサービスしてあげるよ。何か言い残す事はある?」
「…………………だ」
「え、何?なんて?」
「全て計画通りだって言ってんだよ、馬鹿」
「…………………は?」
次の瞬間、地面に突き刺さっていた村正が飛来して総悟を掴んでいた手を切断した。故に、総悟は地面に向けて自由落下を始める────寸前で総司の足首を掴み、そのまま状況がまだ呑み込めていなかったが故に総司も空中に放り出される。
「お前はこの後、『まさか、道連れか!?』と言う!」
「まさか、道連れか!?…………ッ!?」
総悟の手に再び村正が収まる。総悟の周りに槍が何本も生み出されて射出され、総司の身体を貫く。そして、そのまま総司の身体は空中に固定される。総悟は生み出されて空中に浮く槍の先端に静かに着地する。
「俺の迫真の演技に引っかかって、自分が勝ったと思って油断したな!村正!今度こそ最後の一撃で決めるぞ」
『心得た』
総悟が『平晴眼』の構えを取ると、村正の刀は青い炎で包まれる。
「クソッ、この槍………数が多すぎるんだよ…………!!」
総司は空中に固定する槍を破壊して抜け出そうとするが、数が余りにも多すぎて中々抜け出せない。
「一歩音超え」
総悟は槍の先端から飛び出し、二本目の槍の先端へ。
「二歩無間」
二本目の槍の上でさらに加速する。
「三歩絶刀……!」
そして、気が付いた時には総司の目の前には総悟の姿がなかった。当の総悟は総司の真後ろに浮く槍の上にいた。
「『無明三段突き
総悟がそう呟いた瞬間、全く同時に放たれた三つの突きが貫かれ、総司の心臓部に大きな穴が空く。さらに、その穴を起点として総司の身体は崩壊していく。
「馬鹿な、体が再生しない!?」
『貴様の再生が追い付かぬほどの速さと威力を直撃させたのじゃから当然じゃ。あの世でこの村正に喧嘩を売った事を後悔するがよい、三下』
「…………じゃあな。愚かな
「そ、そんな…………この僕が負ける筈がない!負ける筈がァァァァァァァァァァ…………………!」
そう断末魔を上げながら、総司は消え去るのだった────────。
総司が消え去り、総悟は地面にゆっくりと降り立つ。地に足が付いた瞬間、総悟は地面に倒れこむ。村正は総悟の手から離れ、総悟を見下ろす。
「……………右半身の感覚が全くねぇ…………これが代償か………」
そう呟きながら左手の力で起き上がると、近くのビルの壁に寄っかかって村正の方を見る。
「………………で、次は俺の番ってか?」
『物分かりが良くて助かるのう。邪魔者も消えたからには、本来の目的を果たさせて貰おう』
「はっ…………やるならさっさとしろ…………………」
総悟の心は満たされていた。三玖や皆を守る事ができ、過去の因縁にケリを付ける事が出来た。そもそも、村正か総司に殺されるかの違いで最終的には死ぬのはとっくりに理解して受け入れていた。故に、ここで死んでも未練は無かった。
『なんじゃ、てっきり醜く命乞いでもするのかと思ったが?』
「そしたら見逃してくれるのか?」
『いいや?そんな訳がないじゃろ?』
「そう言うと思ったからしなかった」
『ふん、つまらぬのう……………まぁ良い』
村正は少し離れると、狙いを総悟の心臓に定める。
『最後に言い残すことはあるか?』
「…………あんたが素直に聞いてくれるかは知らんが、殺すのは俺だけにして俺の親には手を出すな。もう子供が産める年でもないから、時が来れば火野家の血筋は滅ぶ。あんたの望み通りだろ?」
『はっ、世迷言を。そのような提案に乗る訳がなかろう』
「…………………」
『…………と、切り捨てるのは簡単じゃが、貴様が言う事も一理ある。それに、一時は共闘した仲じゃ。それに免じて、今回だけは貴様の望みを聞いてやるとしよう』
「……………感謝する」
総悟がそう告げると同時に、村正の刀が紅蓮の炎に包まれる。
『では、さらばじゃ総悟』
総悟は静かに目を瞑り、最期の時を待つ。そして、次の瞬間村正は総悟の心臓めがけて突進した────────。
総悟side
…………………。
「ん?」
…………………いつまで経っても痛みとか衝撃が来ない。思わず目を開けると────────。
「……………なっ」
俺を庇おうと俺の前で手を広げて立ちふさがっている三玖がいた。そして、村正の刃は三玖を貫く寸前で停止していた。
『……………そこを退くがいい。さもなくば』
「っ……………!」
三玖の首元に刀が付きつけられる。首元からは血が一筋流れる。
「てめ、村正ッ………………!」
それを見た総悟は思わず立ち上がろうとするが、やはりダメージが大きく地に伏してしまう。
『今のは警告じゃ。次はない。さぁ、退くがいい(足も震えていて、明らかに怯えておる…………これでさっさと)「い、嫌だ………!」……………は?』
しかし、村正の予想に反して三玖は退かなかった。
『小娘…………貴様……………』
「私は…………………私は!ソウゴが好き!大好き!」
『………は?』
「ウェッ!?」
突然の告白に総悟は思わず大きな声で反応する。
「ソウゴの全てが大好き!カッコいい所も、面白い所も、優しい所も…………………全部が大好き!」
「ウェッ!?(2度目)」
「…………だから、私はソウゴに生きていて欲しい。ソウゴが、私に生きていて欲しいと思っているのと同じように」
「………三玖…………」
『……………ふん、愚かな。こいつは貴様を守る為に多くの代償を支払った。なのに、わしが止まらなければ貴様は死んでいた。こいつの戦いが無意味になったいたのじゃぞ。これを愚かと言わずして何と言うのじゃ?』
「……………うん、本当にその通りだと思う。けど、愚かでもソウゴには生きていて欲しい。私にとってソウゴはそう思える相手」
そう断言する三玖の姿が村正には少々眩しく思えた。自分と違って何と高潔な精神なのだろう、と。
『……………これが最後の警告じゃ。そこを退け。さもなくば、貴様から切り捨てるのみじゃ』
「……………私を殺して、ソウゴを殺してもあなたのお師匠さんは喜ばないと思う」
『!?小娘、貴様記憶が』
「さっき首元に触れた時に全て思い出した。私は前にあなたに会っていた。…………………私はあなたの怒りや悲しみがどれほどのものか分からない。けど、ソウゴやソウゴの家族を殺してもあなたの心は晴れずに永遠に暗闇を彷徨う事になる気がする。そんな事をあなたのお師匠さんが望んでいない筈。だから、もう終わりにするべきだと思う」
『…………………』
聞くに値しない戯言だと。知ったような口をきくなと。言葉も、三玖自身も切り捨ててしまえば良い。なのに。
『(………何なのだ、貴様は………何故……貴様の言葉はこうも暖かくて………………わしの心に響く?お主は何者じゃ?初めて見た時からお主の事はずっと気になっていた。わしにとってお前は何なのじゃ…………………?)』
村正の刀に灯った炎はいつの間にか消えていた。それを見た三玖は安心したかのように息をつくと、総悟の方に駆け寄ってしゃがみ込む。
「……ほんと無茶しやがる……三玖ってそう言うタイプだったっけな……」
「それはソウゴも。だから、お互い様」
「……………そうだな」
そう言うと2人は笑みを溢し、総悟は三玖に支えられながら立ち上がる。
「……………100点満点とは言い難いが、まぁ三玖を守れて俺も命は助かったし……………まぁ、良しとするか…………ケホッ、ケホッ………」
「ソウゴ、今は無理に喋らないで。今は病院で体を見て貰わないと…………」
そう言うと三玖はスマホを取り出して操作を始める。
「…………………あぁ、そうだ三玖。俺からも伝えたい事があるんだけど」
「……………うん」
「あー…………………ほんとはこういうのは俺から言うべきなんだろうけど、いつも日和って先を越されるんよな…………………まぁ、でも俺からもちゃんと伝えないとな。…………………三玖、俺も」
ドスッ
「いたた………」
突如として総悟が前のめりに倒れ込み、支えていた三玖も一緒に倒れてしまう。幸い、三玖には怪我はなかった。
「大丈夫、ソウゴ?やっぱり疲れ…………て………?」
三玖は気が付いた。倒れ込む総悟の背中に刀が突き刺さっている事を。流れ出る血が総悟の服を赤く染めている事も。
「あ……………あぁ………………ソウゴっ!!」
若干パニックに陥りかけている三玖。そんな彼女目掛けて放たれる刀を村正がギリギリで弾く。
『馬鹿な、貴様は…………!?』
「死んだ筈、って言いたいんでしょ?」
そこにいたのは先程死んだ筈の総司の姿だった。
「迫真の演技だったでしょ?そうした方が、こうしてサプライズになると思ってね。で、何で生きているか教えてあげるよ。僕には─────『死』の概念が消失しているのさ」
『死の概念が消失していると言うことは………即ち不死身とでも言うのか!?』
「そう言うことさ。この世界に転生する際に、実験のお礼として1つだけ特典を与えてくれる事になってね。それで、僕は不死身の肉体を手に入れたのさ!再生するのはおまけみたいなものさ。お前達が再生が追い付かない程の技で肉体を消滅させようとも、死の概念がないからすぐに蘇ると言うわけさ。無意味だったんだよ、お前達の戦いは!!」
最初から勝負にすらなっていなかった事を村正は悟った。全て総司による余興でしかなかった事も、自分達に勝ち目は最初から無かった事も。
──────しかし。
『……………小娘!今すぐそこの男を連れて逃げよ』
「……え…………?」
『死なないだと?ならば、死にたくなるまで何度でも殺してやるだけの事よ。お主らがいては邪魔になるだけじゃ。さっさと失せよ』
「で、でも………村正だけじゃ………」
そう、三玖の言う通り先程までは総悟が自身の命を燃料にしていたからこそ、最大限の力を発揮できた。しかし、村正単体では先程のような力は発揮できない。
「な、なら次は私が」
『やかましい!お主ではわしを扱えぬからさっさと連れて逃げよと言っておるのじゃ!行け!』
村正は飛び出すと、総司と戦闘を開始する。その隙に三玖は総悟をおんぶして逃げ出すのだった────。
三玖side
「っ……………!」
当然ながら、男の子のソウゴはそれなりの体重がある。私は四葉とは違って力もない。だが、歯を食い縛ってソウゴを背負ってその場から逃げ出す。背後からは戦闘の音が聞こえてくるけど、振り返る余裕は無かった。
「…………どうして、こんな事に……!!」
ただ、修学旅行を楽しみたかっただけなのに。どうして、こんな事になってしまったのだろう。
神様がいるとするなら、薄情としか言いようがない。一体私達が何をしたと言うのか。
「……………三………玖」
「!……ソウゴ、気が付い「「……もう良い」………え?」
一瞬、理解が追い付かなかった。
「……俺を置いて逃げろ…………」
「な、何を言っ」
「分かるんだよ…………これはもう無理だってな…………」
「ま………まだ、何か方法………が………何か………」
────けど、そこから先の言葉が出てこなかった。現実から目を背けたくてそう言ったけど、私の頭では何か方法が思い浮かぶ訳でもなかった。
やがて、私の頭の中には2文字の言葉が思い浮かぶ。ソウゴはもう危うくて、村正さんも恐らく長くは持たない。あの結界を抜けられる保証もなく、抜けられるとしてもソウゴを背負っている状態ではたどり着くにはまだまだ時間が掛かる────。
─────これは、『詰み』なのでは?
そんな考えが頭の中を過った瞬間、銃声とともに私の足に鋭い痛みが走る。思わず私は倒れてしまい、ソウゴも放り出してしまう。
「いっ…………痛っ………!!」
足を見ると、血が出ていた。痛みのあまり涙が溢れてくる。
「鬼ごっこは楽しかった?」
そんな悪魔の声が聞こえてきた。顔をあげると、少し離れた所に火縄銃を持ったソウゴの弟が立っていた。
「ちなみに、こいつは中々しぶとかったよ」
そう言うと何かが私の傍に投げられる。それは、刀身が半分以下かとなった
「さて……………まだ兄さんは生きているようで安心したよ。僕はメインディッシュは最後まで取っておくのが好きでね。ま、君も一緒に殺してやるから安心してよ」
そう言うと、ソウゴの弟はゆっくり近づいてくる。すぐにこちらに来て殺さない辺り、私達が恐怖するのを楽しんでいるのだろう。
─────けど、私の心にはもう恐怖はなかった。
「み、三玖…………早く…………逃げ………」
「…………………」
私は何も言わず、何とか上体を起こしてソウゴの傍に近寄る。そして、ソウゴの頭を膝に乗せる。
「な、にを………」
「私はもう………
「……………!」
もう逃げ切れる事は不可能。だったら、せめて最期は大好きな人の側にいたい。
「……………そっか」
ソウゴは何か言いたげな表情をしていたが、私の目を見て悟ったのか、安らかな表情をしていた。ソウゴが震える手で私の方に手を伸ばしてくる。それを私は両手でしっかりと握る。
「……あーあ…………やりたいことがまだ山程あったってのに………」
「うん。私も沢山あった」
「…………完結まで………見届けたい作品とか沢山あったのに…………無念だ…………」
ソウゴらしくて思わず私は苦笑してしまった。
「……やばい。もう、意識が………クソッ、まだ寝るな…………絶対に………伝えたいことが…………」
「ソウゴ」
それを遮るように私はソウゴの名前を呼ぶ。伝えようとしてる内容はたぶん分かってる。けど、それを苦しそうに言って欲しいとは思わなかった。
「無理しないで大丈夫。言わなくても、全部分かってるから…………」
「…………。そっか」
いつの間にかすぐ側にソウゴの弟が立ってるのを感じた。けど、私の目はソウゴしか映してない。それ以外のものを映す気もない。
「ソウゴ」
「……………」
返事はない。もう言葉を発するのも難しいみたいだった。けど、今にも閉じられそうなその目はしっかりと私を見ていた。
「大好きだよ」
「……………」
ソウゴは何も言わず、ただ満足げな表情で目を瞑った。
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そして、数秒後。そこにあったのは2つの遺体だった。
総司の固有能力:『死』の消失
彼には死の概念がない。故に髪の毛の1つ残さず消し飛ばして殺そうとも無かったことになる。彼を殺すのはどんな兵器を使おうとも不可能。
次回『エンドゲーム』