三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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前回のあらすじ

主人公とヒロインが死んだ


エンドゲーム

「はっ…………………はははっ…………………終わってみればあっけないものだね……………」

 

高揚感で震える総司。その視線の先には安らかな表情で眠る2人の人物の死体があった。

 

「…………………さてと。この後は、兄さんの家族と三玖の姉妹も全員殺すとしようかな。少しは楽しめるだろうし。あと、あの対神兵器はもう用済みだから始末しておこうかな…………」

 

もう総悟や三玖に興味を失った様子で、そう呟きながら踵を返す総司。

 

「どこに行こうというのかな?」

 

「ッ!?」

 

声のした方を向くと、自分の頭上ににいつの間にか人が浮いていた。総司は咄嗟に攻撃を仕掛けるが、その攻撃はいとも容易く回避される。

 

「………………誰だ、お前。この結界内は兄さんと三玖、そして対神兵器以外は入れないようになっている。なのに、何故この結界内に平然と入れている?」

 

「…………………」

 

目の前の男は何も言わない。

 

「まぁ良いや。誰かは知らないけど、ここで始末すれば気にする事もないよね!」

 

総司は神聖力を纏うと、男に拳を放つ。避ける動作をする事もなく、確実に命中する事を確信する総司。そして、その確信通り拳は当たった。

 

しかし。

 

「…………………は?」

 

目の前の男は攻撃を受けても平然としていた。総司はもう一度拳を放つ。その攻撃はしっかりと頭を捉える。当たった感触もある。だが、男はビクともしない。蹴りでも拳でも、何度も、何度も攻撃する。だが、男は何も動じない。ただ、黙って総司を見下ろしているだけだ。

 

「なんだ……………何が起こっている………………お前、何者だ!?」

 

「ま、取り敢えず幽霊ではないよ。ただの友人(・・)として総悟君と三玖を助ける者、とでも言っておこうかな」

 

それを聞いて総司は一瞬ポカンとした表情を浮かべるが、すぐに残忍な笑みを浮かべる。

 

「ハハッ!そっかそっか、あの2人を助ける事が目的なんだ!!なら、もうれ遅れだね!!」

 

「……………手遅れ?」

 

「そうさ!何故なら、2人はたった今死んだからさ!僕がこの手で殺したのさ!アハハハハハハハハハハッ!!」

 

勝利宣言するかのように高らかに笑う総司。だが、男はそれを見て心底不思議そうな表情を浮かべる。

 

「………………まぁ、確かにギリギリだったけど、別に手遅れではないよ?」

 

それを聞いた総司は呆れたようにため息をつくと、後ろを指さす。

 

「はぁ……………現実を受け止められなくて壊れたのか?僕の後ろを見て見ろよ、そこにあるだろ兄さんと三玖の死体………………が………?」

 

呆れたような総司の声が徐々に困惑へと変わっていく。そうなるのも無理はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――先ほどまであった2人の死体がまるで最初から無かったかのように消えていたのだから。

 

「ば、馬鹿な!?何で………血の跡も何もない……………………一体どこに消えた!?先程まで、そこに倒れていた筈なんだ!!僕が殺した筈なんだ!!」

 

「違うね、間違っているよ。ここに2人は転がっていない」

 

背後にいた男が指をパチンと鳴らすと目の前の世界にヒビが入っていく。

 

「な、何だ!?一体何が起こっているんだ!?お前は何者なんだ!?」

 

総司の問いに男は答えないで続ける。

 

「ここで転がっているのは―――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

悪夢から目が覚めたかのような気分で、総司の全身は冷や汗で濡れていた。総司は警戒をしつつ後ろを振り返る。そこには誰もいなかった。

 

「は…………………ははっ………………何だ、夢か………………疲れて意識を失っていただけか……………ったく、びびらせやがって………………」

 

そう安心しつつ、視線を戻すと、すぐ目の前には壁があり、頬が触れていた。

 

「―――――――!?」

 

否、壁ではない。地面である。いつの間にか総司は床に倒れていたのだった。

 

「夢の中で聞こえていなかったみたいだからもう一度教えてあげるよ。そこに倒れているのは三玖さんと総悟君ではない」

 

視線だけ上にあげると、そこには先ほどの男が自分を見下ろしていた。

 

「そこに倒れているのは―――――君だよ」

 

起き上がろうとすると、胸に痛みが走る。そこで漸く総司は自身が負傷している事に気が付いた。そして。

 

「なん、だと………」

 

「あと一歩だったってのに、残念だったな総司。生憎だが、俺と三玖はピンピンに生きてるぜ」

 

男の後ろには総悟と三玖が立っていた。2人とも怪我も消えていて、万全の二文字が当てはまる状態だった。

 

「自分にとって都合の良い夢を見ていたみたいだから、こちらから介入して強制的に目覚めさせてあげたよ。ま、夢を邪魔したお詫びとして思い出させてあげるよ。現実では何が起こったのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総司が三玖と総悟を殺すための拳を放とうとしたその時の出来事だった。それは僅か3秒で起こった出来事だった。

 

1秒。突如として、空から放たれたビームの狙撃が総司の拳を消失させた。

 

2秒。そして、総司の目の前に突如として出現すると、ビームサーベルで総司を薙ぎ払って吹き飛ばした。

 

3秒。総悟の体に法外な治癒効果を発揮する妖精郷(アヴァロン)の名を持つ鞘が埋め込まれ、一瞬でソウゴは全快した。

 

これら全てが3秒間で起こったのである。

 

「………ぇ…………え……?」

 

「……………マジかよ」

 

「残念だったね、僕はまだ生きてるよ。それよりも、だ。よくやった総悟君、それに三玖さん。君達が命を懸けて生み出してくれたこの数十分は、よくか悪くか世界の運命を大きく変えた」

 

「………キラ・シャンクス」

 

「君は子供の名付けに関与しない方が良いね(正論)」

 

「うっせ」

 

そう返すと総悟は勢いよく立ち上がる。

 

「ソウゴ、もう大丈夫なの?」

 

「某騎士王の鞘を埋め込んだんだ。全然問題ない筈だよ」

 

「え、俺の中にアヴァロンあんの!?今ならセイバー引けるんじゃね!?」

 

「ソシャゲのガチャじゃないだけどね」

 

「………良かった、いつものソウゴだ」

 

先程瀕死状態だったとは思えない様子を見て三玖は安心したように笑みを溢す。

 

「にしても、一体どういう事なんだ?俺はてっきりあんたは死んだのかと思ってたが……………」

 

「それについては後で話すとしよう。…………先ずはそこの彼(総司)を叩き起こすか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

 

「馬鹿な…………第1位、お前は死んだ筈だ!俺もあの時、この目でお前が第2位の手によって死ぬのを見た!生き残る手段はなかった筈だ!どうやって」

 

「ふーん、君もあの場にいたんだ。知らなかったよ。ま、どうでも良いけど」

 

心底どうでも良さそうに呟くと、第1位こと創真は冷たい目を総司に向ける。

 

「どうやって生き延びたか?そんな事を知ってどうする?そもそも、そんな事を教えるだけ時間の無駄だよ」

 

「は……………?」

 

「だって、どうせこの後お前は僕に殺されるんだ。教える意味などないだろう?」

 

総司は向けられる殺気にヒヤリとしながらも、何とか笑みを浮かべて立ち上がる。

 

「は、はは…………………あんたは知らないだろうから教えてあげるよ。僕には死の概念がないんだ!だから、何度殺そうと僕は何度でも蘇る!それに、気づいてないかもしれないがこの結界は裏切者の第2位が作った試作物で、この結界内では神界人は魔法や固有能力の出力が1/100になる!あんたがいかに強かろうとも、力も制限されているようじゃ僕は殺せない!いずれ力尽きて、僕に殺されるのがオチだ!」

 

「…………………」

 

「それに、この結界の電池として使われているのは星奈とか言うあんたの義理の娘さ!結界内部に鉄壁の防壁で守られた装置の中にあの兵器は僕の合図1つで殺す事が「誰を殺す事が出来ると?」………………なっ」

 

声のした方を向くと、そこには傷1つない星奈がいた。

 

「星奈さん!良かった、無事だったんだですね!」

 

「……………ご心配をおかけしました、総悟様。つい先程、創真さ……………いえ、お父さんに助けていただいて全回復させてもらいました」

 

「そういう事だ。ちなみに、今張られている結界は僕が創り出したそっくりな結界さ。その効果は君がこの結界より外に出れなくなる事。星奈ちゃんを救出して張っていた結界が壊れると同時に創り出したから、壊れている事にも気が付かなかっただろ?………………どんな気分だい?君の持っていた手札が一気に藻屑となった気分は?」

 

嘲るような口調で総司に問い掛ける創真。当の総司は青ざめた表情を浮かべていた。

 

「……けど、星奈さんは結界内部に閉じ込められてたんだったら、星奈さんを解放するまでは出力は1割に抑えられてたって事か」

 

「それでよく防壁を突破出来たな、とでも?甘いね、総悟君。100%の出力で10%になるなら、一時的に1000%(・・・・・)の出力にすれば100%になる。簡単な話さ」

 

「…………敵に回しちゃ勝ち目ないのがマジで分かった。ほんとあんたが味方で良かったわ」

 

総悟がしみじみと呟く一方、総司は何かを思い出したかのように笑みを浮かべる。

 

「た、確かに手札が無くなった事は認めるさ。だけど、あんたは最強の切り札を奪えなかったな!いかに実力で劣っていようと、僕は不死身だ!死の概念が無い僕を殺す事は誰も出来ない!」

 

「何だ、まだ僕の前でそんなもの(・・・・・)を自慢しているのかい?」

 

勝ち誇るかのように宣言する総司に対して創真は冷静に一蹴する。そして、次の瞬間音もなく消えると総司の真後ろに立っていた。

 

「晩鐘は汝の名を指し示した。その権能、天命のもとに剥奪させて貰うよ」

 

そう宣言するといつの間にか創真の手に握られていた大剣に青い炎が宿り、一閃。総司の体には何の傷も出来ていない。

 

「何だ……………お前、何をした!?」

 

だが、総司は感じていた。何か致命傷を喰らった事を。

 

「やばー、バビロニアの山の翁のやつやん!」

 

「バビロニア…………山の翁…………?」

 

総悟は目をキラキラと輝かせているが、よく分かってない三玖はキョトンとしている。

 

「三玖にも分かりやすく言うと………要はアレだ。カッコいいアサシンのじいじの技だ(興奮で語彙力低下)」

 

「それを聞いても何も分からない…………」

 

「そこのタコなすびに変わって僕が説明しよう。今の攻撃で奴に死の概念を付与した。つまり、奴はもう不死身の無敵の存在でも何でもないわけだ。…………どうだい、最強の持ち札とやらを一瞬で奪われた気分は」

 

「…………………」

 

青ざめて震える総司の顔を見れば、最悪な気分であるのは明白だった。対神兵器としての能力は残っているとは言え、心強い切り札を全て失った状態で神と対峙しなければならないのだから当然だろう。

 

「ちなみに、援軍もない。君のお仲間の神界人は全員捕縛した。尤も、彼等にとって君は仲間ではなく、ただのモルモットに過ぎなかったと思うけどね」

 

そう言うと、創真はゆっくりと総司に近づく。

 

「さて、神界は第2位(・・・)に任せているとはいえ、僕もさっさと戻って後始末しなければならないのでね。さっさと処理(・・)させて貰おうか」

 

「し、処理って…………」

 

「………君の考えてる通りの事じゃないかな?」

 

震える声で訪ねる総司に死刑宣告をする創真。

 

「う…………うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

血迷ったのか、声を上げながら総司は創真に神聖力を纏わせた拳で殴り掛かる。だが、その拳は創真には届かない。目に見えない障壁で阻まれる。

 

「対神兵器。神聖力による攻撃や防御を無効。まさに神殺しだ。………けど、どうして勘違いしたんだい?僕が何の対策もしてないと」

 

「馬鹿な、聞いていた話と違う…………!?」

 

「対神兵器と呼ばれるものが出回ってから既に何年も経ってるんだ。こっそりと対策くらいしておくに決まっているだろう──────術式反転『赫』」

 

赤き発散の術式によって総司は吹き飛ばされる。幾つもの建物を貫通し、創真によって張られた結界に叩きつけられて漸く地面に伏す。その体はもはや瀕死同然だった。

 

その総司を見下ろしながら、創真は回復させると無理矢理総司を立たせる。

 

「ほら、立ちなよ。総悟君なら絶対立ち上がるけど?」

 

「や、やめ」

 

「やめて欲しい?君に殺された人達はそう言う事すらも出来なかったと言うのに。君はつくづく自分に甘い」

 

そう言うと創真は思いっきり顔面を殴り、総司を吹き飛ばす。倒れて痙攣する総司に再び創真は回復させる。

 

「君はこの世界では異物だ。本来なら存在する事のなかった存在だからね。なので、君はここでこの世界から退場して貰う」

 

「ま、待ってくれ!分かった、僕が悪かった!反省してるから許してくれ!!」

 

無様に頭を擦り付けて土下座する総司。そんな総司を冷ややかな目で見ながら、創真は長身のライフルを突き付ける。

 

「悪いね、個人的な恨みはな──────いや、違うか。僕の娘に手を出したその罪も含めて、贖って貰おう」

 

そう言うと創真は引き金に指を掛ける。王手だ。

 

「い、嫌だ!!助けて!!誰か助けて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってくれ、神様!」

 

今にも引き金を引こうとしていたその指が寸前で止まる。

 

「……………意外だね。君が止める理由はないと思っていたけど、総悟君?」

 

待ったを掛けたのは先程まで総司に殺され掛けた総悟だった。三玖は総悟に背負われている。

 

「…………確かにこいつは許されない事ばかりした。けど、こいつがこうなったのは環境的な要因も大きい。褒めてばかりで叱ろうとしない両親だったり、兄としての責務を果たしていた俺、とかな…………」

 

「…………………」

 

「我が儘なのは分かってる。ただ、俺は……………こいつに人生をやり直す機会を与えてやって欲しい。俺にもそうしてくれたように。俺とこいつじゃ状況が違うのは分かってる。けど、頼む」

 

「…………………」

 

創真は何も言わない。

 

「………何でだ、兄さん。殺そうとした奴を助けようだなんて」

 

「馬鹿とでも思いたきゃ勝手にしろ。…………今まで兄らしい事を今までしてこなかったし、さっきも言ったがお前がこうなったのには俺にもちっとは原因があると思った。だから、言った。それだけだ」

 

「……………!」

 

それを聞いた総司は驚愕の表情を浮かべる。創真は黙って聞いていたが、やがて手に持っていたライフルが粒子となって消える。

 

「…………このまま無罪放免にはしない。罪は償って貰う。だが、命拾いしたね。次は(・・)無いよ」

 

そう言うとへたり込む総司の横を創真は通り過ぎる。それを見た総悟はホッとした表情を浮かべて、三玖を降ろす。

 

「しかし、よく助けようだなんて思ったね。僕だったら『殺せ殺せー』って思ってるけど」

 

創真はそんな総悟の元に近寄りながら話し掛ける。

 

「俺はサイコパスじゃないんでね。れっきとした人間だから情ってものがちゃんとある訳。分かる、俺と神様のこの差?」

 

「よし、アヴァロン没収して今からでもころ」

 

「すいません、許して下さい何でもしますから!(何でもするとは言っていない)」

 

「ソウゴ、コントみたいな事してないでこれ…………」

 

「おっと、そうだった」

 

総悟は思い出したかのように、手に持っていたある物を渡す。

 

「あー、村正か」

 

「………ちょい待ち、神様は存在を知ってて放置してたのか?俺をぶち殺そうとしてたこのロリババァを?」

 

「(応答がないからかめちゃくちゃ暴言言ってる………)」

 

「ふむ、まぁその質問の答えはYesだ。何かしらの役に立つと思ったからあえて何も干渉しなかった。現に正解だったろ?」

 

「ふん…………まぁ、俺が生き残れたのはこいつのお陰でもあるからな。こう、何とかもう命を狙われないように記憶の改変とかした上で生き返らせて貰えないか?」

 

「……………ふむ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総司side

 

────本当に助かった。

 

お陰で命拾いした。まさか、兄さんが助け船を出してくれるとは思わなかった。全くもって予想外だった。

 

僕は感謝しなくてはならない。

 

「(ありがとう、兄さん…………兄さんが兄さんで良かったよ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿で愚かな兄さんで本当に良かった!)」

 

兄さんが僕の命を嘆願したのが最大のミスだ。そして、実際にそれを認めたあの第1位も愚かだ。所詮、あいつは元人間らしいから、人を殺すのが本当は嫌なだけだったのだろう。

 

すぐにトドメを刺さなかったのは、兄さんが止める事を想定してのものに違いない。

 

「(さて、奴らがあの刀に夢中になっている今が最大のチャンスだ。僕を放置している辺り、あの神も僕が本当に反省してると思っている筈だ。不意打ちなら勝機がある)」

 

僕は奴らに気付かれないようにエネルギーを貯める。

 

「(不意打ちなら俺の残りの力を全て使って極太の神聖力の光線を放って一気に葬る。本当は兄さんは直接殺したかったけど、仕方がないからそこは妥協するとしよう…………)」

 

エネルギーの充填が完了。手の平を奴等に向けた瞬間、極太の光線が手の平から放たれる。奴等は気付いていない。勝った!

 

「残念だったね、兄さん!最後に勝つのはこの僕だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………えっ?」

 

奴等を飲み込む筈だった光線が消える────いや、僕の手の平に戻っていく。

 

「これは…………時間が戻っている…………!?」

 

不味い、あの神に対処されたのか!?いや、僕はまだ生きている。動ける。なら、無力化される前に兄さんだけでも!!

 

急接近して、僕は兄さんの頭目掛けて拳を振るう。しかし、その背後からきた拳に阻まれる。思わず振り返ると。

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

そこにいたのは──────無数の僕?

 

「なんだこれは!?」

 

「なんだこれは!?」

 

「なんだこれは!?」

 

「(ゆ、夢か!?幻覚か!?僕は何を見ているんだ!?一体、何が起こっているんだ!?)」

 

『これが…レクイエム………だ』

 

聞こえてきたのは知らない声。声の主は第1位の側にいつの間にか金色の人型の何かがいた。

 

『お前が起こす行動によって起こる真実に到達することは決してない。私の前に立つ者はどんな能力を持とうと絶対に行くことはない………これが、ゴールド・E・レクイエム!』

 

『この事は私を操る者にも知ることはない─────ただし』

 

「僕は例外だけどね。神だし」

 

そう言葉を引き継いだのは第1位だった。

 

「どうせこうなるだろうとは思ったが、総悟君に免じてもしかしたら君が改心する僅かな可能性があったからチャンスを与えたと言うのに…………………言ったはずだよ、次は無いと。ほい、時間停止」

 

そして、時間の逆行も止まる。意識だけはあるが、身体が動かない。何も話せない。

 

「仏の顔も三度まで、なんて言葉もあるが…………………僕は仏ほど優しくはないのでね。君には僕がわざわざ手を下す価値はない。だから殺しはしない。だが、君は『死んだ』という結果にすら到達できなくなる。良かったじゃないか、君の大好きな『不死身』ってやつだよ」

 

「(や、やめ)」

 

心の中で叫んだ声は通じる事は無かった。そして、ゴールド・E・レクイエムの拳が迫り――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!』

 

拳のラッシュを受けながら、脳裏にとある映像が流れ込む。それは、とある男が薬物の中毒者に刺されたり、生きながらに痛みも感じる状態で体を女医に司法解剖されたり、犬に吠えられた拍子にバランスを崩して道路に倒れ車に轢かれたりする光景――――――これが待ち受ける未来なのか?

 

「(……………乗らなければ良かった………………ジョーカーの話になんか…………………)」

 

そんな後悔と伴に、僕の意識はプツッと途切れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………まぁ、出来ない事は無いよ」

 

「そっか。そりゃ何よりだぜ。…………………あれ、そういや総司はどこに行った?」

 

「ん?あぁ、彼なら先に神界に行ったよ。処分を決めるまではあっちにいて貰わないといけないし。ちなみに、総悟君は彼と会う事はもう出来ないのは確実だけど、そこは飲み込んでくれると助かるよ」

 

「ま、殺人とかしてるしそりゃそうか…………………罪を償って、別の世界でやり直してくれるならそれで良いけどよ」

 

「(…………悪いね、総悟君。折角君が兄として弟にやり直しのチャンスを与えたと言うのに、君の善意を彼が踏みにじったなんて事は知らない方が良いだろうからね。真相は全て僕が闇の中へ持って行こう)」

 

実際、総悟や三玖は総司の顛末を一生知る事は無い。総司は罪を償ってやり直しの機会を与えられたと思う事になる。彼らが真実にたどり着くことは永遠にない。

 

「…………ま、そんな訳でさっさと蘇らせるか」

 

「おう、頼んだぜ」

 

「ザオリク(ドラ〇エの呪文のBGM付)」

 

どこかで聞いた事がある音とともに、刀の刀身が蘇る。さらに、それだけではなく刀が少女の姿へと変貌する。倒れそうになるのを創真がすっと受け止める。

 

「気絶してるけど、その内目が覚めるだろうね。ついでに、とあるモノを結ばせて貰ったよ」

 

「結ぶ?」

 

「ま、後で分かるさ。…………さて、邪魔物は消えるとしよう。お互い、話したいこともあるだろう?」

 

「「!」」

 

「僕はその間にタイムスリップして、彼の行った事を全て無かったことにしてくるよ」

 

「無かったことに…………皆この騒動があったことを皆忘れる…………?」

 

「その通り。ただし、総悟君と三玖さんは例外としよう。あと、もう1人(・・・・)も。じゃあ、また後で」

 

そう告げると質問の隙すら与えずに創真は空へと消えて行った。

 

「いや、もう1人って誰なんだ?…………ま、どうせ後で分かるだろうしええか」

 

そう呟くと、総悟は三玖の方を向く。

 

「…………なぁ、三玖」

 

「……………うん」

 

「…………。あのさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝えたいことがあるんだよね…………」

 

to be continued……………




創真(神様)…………死んだと思ったら生きていたドッキリ。どうやって生き残って、固有能力を取り戻したのかは別の機会に外伝で。

総司…………神様にフルボッコにされ、生き残るチャンスを無駄にした挙げ句、永遠に死ねないと言う最悪の結末を辿る事に。星奈にも手を出したので神様は相当お怒りだったからね、しょうがないね。今日もあなたの世界のどこかで総司は死んでる。創真は自分が第1位をやめる時には止めてあげる予定だが、本人は最低でも後1億年は神様をやるつもり。

次回は……………まぁ、そゆことです。ここにたどり着くまで3年も掛かってしまいました。お楽しみに。


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