三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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ほぼ原作のダイジェストです。


第11巻
私と姉妹


私達はいつも一緒だった。見た目も、髪の長さも、服も。

 

かつて、二乃は言った。考え方も共有されてるみたいで心地が良いと。私もそう思っていた。

 

けど、その考えが変わったのはあの時からだ。

 

小学校時代、修学旅行ではぐれた際に風太郎君と出会った。一緒に回って、一緒に話して。

 

そして、誓った。私はお母さんのために。風太郎君は妹さんのために一生懸命勉強しよう、と。

 

そして、お父さんに保護された後にもう一度お話ししようと向かうと、一花と話している風太郎君の姿があった。風太郎君は一花を私だと思って話しているのだろう。

 

「…………………」

 

私達は瓜5つ。つまり、私の代わりは4人もいる。私はそれに気付いてしまった。だから、リボンをつけるようになった。

 

勉強もするようになった。私はもう皆んなと同じ場所にいない。他の皆とは違う。そっくりなんかじゃない。そんな事をお母さんに話した時にこう返されたのを今でも覚えている。一番にならずとも私達は特別だと。特別でなくても良いから、私達に一緒にいて欲しいと。

 

そして

 

『大切なのはどこにいるかではなく、五人でいることです』

 

その意味を当時の私は良く分かっていなかった。そして、その言葉の意味を理解するよりも前に、お母さんは私たちの前からいなくなった。五月が変わってしまったのはその時からだろう。お母さんなろうとしていたのは。

 

私達はマルオさん────────新しいお父さんに引き取られた。

 

そして、中学生になった。けど、5人一緒ではなくなった。現に一花は髪を切った。

 

私は追試を乗り切る為に要点を纏めたノートやプリントを作っていた。約束通り、私は将来の為に勉強を頑張るんだと張り切っていた。この前のテストも姉妹の中で一番になれたし、目標には近付いてる筈だと思っていた。

 

けど、三玖歴史のテストで私より良い点数を取った。私が勉強のために廃棄したゲームのお陰で。五月が理科で私より良い点数を取った。一花は数学で。二乃は英語で。

 

…………………私の点数は落ちて行った。理由は明白だった。お母さんの為に勉強する。その約束はもう果たせない。なら、私が勉強を頑張る意味とはなんなのだろうか。何のために勉強しているのだろうか。それに気付いてしまったが故に、さらに身が入らなくなってしまった。

 

5人一緒のままだと埋もれるだけ。けど、姉妹に違いが出てくると私が落ちこぼれ────────足を引っ張る汚点となる。

 

「(……………なら、勉強以外に活路を見出そう。私は姉妹の中では運動能力が高い…………………そうだ)

 

私は運動部を掛け持ちした。幸い体力だけはあったから、マルチタスクも難なくこなせた。

 

「中野さんのおかげで助かりました!」

 

「また是非助っ人もやってください!」

 

私は多くの人に頼りにされている。必要とされている。他の誰でもない、私だから!

 

「本当に凄いです。同じ姉妹でもあの子(三玖)なんか酷いレベルの運動音痴なのに」

 

「姉妹でこんなに違うんですね」

 

そう、私は他の皆とは違う。一緒ではない。

 

「(お母さん、見てる?私、皆にほめられてる。いろんな人に必要とされてる。姉妹の誰でもなく、私だからなんだよ。私が姉妹で1番なんだ!特別なんだ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「追々試不合格。中野四葉さん、あなたを落第とします」

 

………え?

 

「再三警告をしたはずなのに、あなたは多重入部をやめようとしませんでした。荷物をまとめなさい」

 

………どうして。

 

「内々で話をつけさせていただいた。特例として転校という形で済ませる事が出来た。私の知り合いが理事を務める男女共学の学校に夏休み明けから通うことになる」

 

……………。私は馬鹿だ。全てが手遅れになって漸く気が付いた。いや、違う。前に三玖が心配してくれていたのに、私は酷い態度を取った。あそこで、いやもっと前に気が付くべきだった。

 

私はただ、目の前の問題(勉強)から目をそらして、自分の得意な土俵だけでイキっていただけ。

 

『一緒』ではなく、『特別』になりたかった。だから、姉妹の中で1番になろうとした。けど、姉妹の中で1番にすらなれなくて。『一緒』にすらなれなくて。

 

……私は……………。

 

「待って。四葉が転校するのなら、私達もついて行くわ」

 

………え?二乃?それに皆?

 

「な、何を言っているんだ君達は!追試験は通過した筈だろう!」

 

「ええ、合格できたわ。カンニングしたおかげで」

 

そう言うと皆カンペらしきものを取り出す。カンペなんて嘘だ。する筈がない。何でそんな嘘を。

 

「四葉、あんたがどう考えてるか知らないけれど、私はあんただけいなくなるなんて絶対に嫌よ」

 

「うん。どこに行くにしても皆んな一緒」

 

「それがお母さんの教えですから」

 

「四葉、私達は皆んなで五等分だから。困難も五人でなら乗り越えられるよ」

 

…………そっか。お母さんが言っていたのはこういうことだったんだ。もう誰が1番だ、特別だなんて考えるのは止めよう。

 

そして、決めた。私は皆んなのために生きる。それが私に出来る罪滅ぼしだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1ヶ月後。私達は新しい学校にいた。

 

「ここの食堂、とても美味しいです!」

 

「レベル高いよねー」

 

「前の学校にはこんなのなかった」

 

「試験とかもなんか緩そうだし、そんなに必死に勉強しなくてもよさそうね。転校して正解だったわ」

 

「…………」

 

二乃の気遣いが申し訳無さで余計に苦しくなる。元はと言えば自分の過ちでこうなった。特別や1番になろうとしたから………もう過ちは繰り返さない。特別や1番になんてならなくて良い。私は皆の為に生きる。皆の幸せが私の幸せだ。

 

視線を戻すと、さっきまでは無かった紙が落ちていたことに気付いた。100点のテストだった。 

 

「あー、たぶんさっきの男の子かな。ほら、向こうの角に座ってる」

 

「あ、じゃあ私が届けてくるよ」

 

「100点………まさか……よ、四葉。どうかお気をつけて。恐らく勉強中だと思いますよ………」

 

「え?食堂で?(物好きな人もいるんだなぁ)」

 

……………あれ?あれれ!?風太郎君!?髪の毛は変わったけど間違いない!こんな事あるんだ…………私の事覚えてくれているかな?

 

「風た………」

 

名前を呼ぼうとして気付いた。ご飯中にまで勉強、そして100点のテスト。あれからずっと頑張り続けていたんだ。凄いな、風太郎君は。

 

それに比べて、私は。………とてもじゃないが言えない。幻滅されるのが怖い。

 

「うーえすーぎさーん」

 

「!?」

 

「あはは、やっとこっち見ました」

 

「俺の名前をなんで知ってるんだ?」

 

…………覚えてない、よね。そうだよね、もうだいぶ前こ事だし…………。

 

さらに驚きはそれだけではない。風た…………上杉さんが私達の家庭教師になった。さらに上杉さんだけでなく、もう1人。

 

「お前、5年前に上杉と会ってるだろ?」

 

火野さん。上杉さんと同じ以上の秀才。何と言うか、自由な人。けど、私が上杉さんと会っている事を見抜いてきた。

 

趣味も合うから仲が良かったけど、見抜かれてから暫くは誰かに言うんではないかと密かに警戒していた。けど、結局約束通り誰にも言ってないみたいで疑って申し訳無かった。

 

話は変わって、あれは上杉さんのお見舞いに来た時の事だ。

 

「教えて下さい──────あなたが勉強をする理由を」

 

「!!」

 

上杉さんは私の事を覚えていた!…………けど。

 

「この中で、昔俺に会ったことがあるって人ー?」

 

「………………」

 

………言えない。上杉さんに幻滅されるのが怖い。あの約束も、思いでも今となっては私を苦しめる呪いに等しい。

 

………あの思い出もこの想いも消してしまおう。

 

「やっぱり君は変わらないね、上杉風太郎君」

 

「……………お前は…………」

 

……………ごめんなさい。上杉さん。とても心苦しいけど、これで良いんだ。………良い、はずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くたったある日。私は寂れた公園のブランコを漕いでいた。

 

「上杉さん」

 

ブランコの鎖が軋む。

 

「…………風太郎君」

 

誰もいないのを良いことに下の名前で呼ぶ。

 

「好きだったよ、ずっと」

 

……………ああ。やっぱり辛いなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで良かったの、ソウゴ君?」

 

「そうですよ。まさか『なら良いけど。ほな一花と五月は行くでー』と何もせずに帰ってしまうなんて………」

 

「いーのいーの。こう言うのは俺達が出る幕ではないって相場になってっから」

 

「ですが…………」

 

尚も食い下がる五月に総悟は立ち止まって口を開く。

 

「…………俺もずーっと考えてた。どーすりゃ四葉は救われるのかって。けど、外野が何言っても四葉の心は動かさないってはっきり分かった。例え、姉妹の誰かの言葉でもな」

 

「そんな………では、一体どうすれば………」

 

「まぁ、外野がない無理なら当事者同士でどうにかして貰う他ねーな。四葉は話さないだろうから、上杉が自力で辿り着いて貰うのに期待しよっと」

 

「けど、フータロー君は辿り着くかな?」

 

「大丈夫」

 

総悟は確信を持った声で断言する。

 

「上杉も馬鹿じゃない。恐らく零奈が5人の誰かだと気付いて動いてる筈だ。……………それに、あいつは教師だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒を救うのは教師って生き物だからな」

 

to be continued………




総悟は上杉ならどうにかすると信じています。cvがcvだし、何とかするやろと。まさに、適材適所ってやつやな!

四葉関連の話は原作とは展開が変わる予定です。お楽しみに。

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